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有言実行の男、松坂桃李を追いかけて

俳優、松坂桃李は有言実行の男である。

これは果たしてファンの欲目なのでしょうか。


現在、ドラマ『この世界の片隅に』で北條周作を熱演している桃李くんは先日、舞台『マクガワン・トリロジー』の大千秋楽を終えました。


2018年5月8日。『この世界の片隅に』がクランクイン。そのおよそ2週間後の5月21日。今度は『マクガワン・トリロジー』の稽古開始。


全く毛色の異なる2つの役。当時のアイルランドの専門用語と広島弁を同時に習得しなければならず、現場ごとに気持ちを切り替えるのは相当大変だったのではないかと思います。


さて、私は『マクガワン・トリロジー』の初日と2日目を観に行きました。初日、あえて事前情報を極限まで減らして舞台へ足を運んだ私は、幕間で思わず呟きました。「むり……………」と。

たった2言。たった2言絞り出すので精一杯でした。

一部~狂気のダンス~において板の上で踊り狂っていたのは、私の知っている彼とは遠くかけ離れた、”ヴィクター・マクガワン”だったのです。

どんな想いで引き受け、どんな想いで台本を読み、どんな想いでヴィクターと向き合い、どんな想いで演じていたのでしょう。

そんなことを考え始めたら堪らなくなりました。目から熱いものが零れそうになりました。それを必死に抑え、二部、三部を一瞬たりとも見逃さないようにと気を引き締め直します。


Next One

話は少し遡って2年前の2016年9月。舞台『娼年』(R15)を観た私は「これはとんでもない役だ」と思いました。ここまで振り切った役は今後しばらくないかな、とも密かに思っていました(まさか2年後、R18になって領くんがスクリーンに登場するなんて…!)。


それでも、映画『娼年』はあくまで”森中領”が戻ってきたのであって、やはりもうしばらくは落ち着いた役が続くだろうと思っていました。


「30歳になる前にいろんな役をやっておきたい」という宣言通り2015年頃からsex依存症の医者(エイプリルフールズ)やオカマ(ピースオブケイク)、殺人鬼(MOZU)、クマ(パディントン)、超ピュア()教師(ゆとりですがなにか)…とそれはまあ幅広く手を出してきた彼を見てきた私たちはちょっとやそっとのことでは動じなくなっていたのかもしれません(笑)


しかし、そんな私の予測とは裏腹に今回の『マクガワン・トリロジー』の情報が解禁されます。サイトから得られた情報は「殺人鬼」「アイルランドの問題作」「悲劇」。


やはり彼は有限実行の人でした。

30になる今年に向けて、さわやか好青年から外れた顔をいくつも見せてくださりました。さらにそこへ、歳を重ねるまで残り半年を切ったこの6月、これでどうだ、と言わんばかりのヴィクターの登場。


「すごい………」


と言う他ありません。




以前A-Studioにゲストとして出演した際に座右の銘は「Next One」だとおっしゃっていました。


次の作品は前作を越えるものに。


そんな強い想いを持った彼に、今後もついて行きたいと思わされた2日間の観劇でした。

1幕の異常なまでの狂気の正体が2幕、3幕と
進むにつれて少しずつ明らかになっていく悲劇。

それでいて散りばめられたコメディ要素。
「良い話」とは言い難いけれど、
単なる「怖い話」でもなく、
ただただ惹きつけられる「すごい話」でした。


遅くなってしまいましたが、舞台『マクガワン・トリロジー』最後まで本当に本当にお疲れさまでした。






イケメン俳優から実力派俳優へ

~編集後記的な何か~


2015年冬。個人的にとても大きく印象に残る番組が放送されました。その名も『バナナマンの決断は金曜日!』


「桃李くんは有言実行の人だ」と述べるのには、実はもうひとつ理由があるのです。


この番組で彼はこんなことを言いました。


「イケメン俳優から抜け出したい」―フジテレビ「バナナマンの決断は金曜日!」2015年1月16日放送分


テレビや雑誌などで「イケメン俳優 松坂桃李」と紹介されるのはありがたいけど複雑な思いもある、どうせなら「実力派俳優 松坂桃李」として紹介されたい


とのことでした。

この放送を機に意識しながら紹介文を読んでみると、なるほど確かに「イケメン俳優」という言葉がセットになっていることが多いと気が付きます。



しかし1、2年ほど前から「イケメン」に加えて「実力派」という文言と一緒に桃李くんの名前を見かけることがグンと増えました。3年前の葛藤を聞いた一ファンとしては、こういった紹介を見るたびに何とも言えない喜びでいっぱいになります。



実力派俳優・松坂桃李。

彼が歩くトオリミチ、これからもついて行きたいと思います。



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