銭湯が始めた裏稼業 別れ編
別れは、突然やってきました。黒色カートリッジのファミコンソフトを激安で販売してくれる、風呂屋のオッチャンとの別れです。
出会い編、成長編は以下からご覧ください。
昨日、オッチャンは僕たちに約束をしてくれました。”機械を貸してくれている人”に新しいソフトでも黒色ソフトが使えるようにする方法を聞くことをです。
オッチャンなら、方法を見つけてくれるはずだ。放課後にN君、D君と一緒に、風呂屋に向かいました。
なぜだか、絶対に解決していると確信していて、みんなでオッチャンに昨日は怒ったような感じになって悪かったことと、対応のお礼も言おうと決めていました。昨日は少し大人気なかったです。こどもだけど。
国道から駅の方に向かい1つ目の筋を曲がったところが、オッチャンの銭湯です。3人でもうダッシュで自転車を乗り、角を曲がった瞬間、期待が絶望にかわりました。
オッチャンの風呂屋の前に、2−3台のパトカーとポリ、、いえ、警察官がいっぱいいらっしゃいます。岸和田で警察官の標準語は「ポリ」です。そして野次馬もいっぱいです。
駆け寄ると、オッチャンがでてきました。
テレビのドラマやニュースでよく見る光景です。唯一違うのは、頭の上から、風呂屋オリジナル手ぬぐいが、かかっていることぐらいです。
今、思えばオッチャンの風呂屋としての最後のプライドだったと思います。。いや、違うか。
三人でオッチャンに叫びました。オッチャン！、オッチャン！こういう時には名前しか呼べません。でも、D君は、「魔界村は！魔界村は！どうなったん！ねえ、魔界村は！」って、叫んでました。今、思えば、相当なクズキャラだと思います。
その絶叫に、オッチャンは薄っすらと笑みを浮かべて、行ってくるわーと口元が動いたと思います。そして、そのままパトカーの中に消えていきました。
残った僕たちは、最初はオッチャン大丈夫かなあといっていましたが、いや、D君だけは、「もう魔界村できひん、最悪や」といってました。かなりのクズキャラです。ただ、すぐに、えっ、僕たちも捕まるんかなあ、小学校とかに連絡がくるんかなあと、自分たちの心配に変わっていました。全員クズキャラです。
もちろん、小学生が捕まるわけでもなく、かつ、学校にも連絡などは来ませんでした。ただ、学校の掲示板に、違法なゲームソフトを使ってはいけませんという、張り紙が貼られ、たしか全校集会で話があった記憶があります。
その後、オッチャンがどうなったのかは、わかりません。いえ、怖くて知ろうとしなかったというのが、事実かもしれません。
ただ、先日、久々に実家に戻ったとき、そこら中が空き地にかわり、いっそう、町が寂しくなっているのを見て、ふと、この話を思い出しました。
最後になりますが、不正コピー・違法コピーは絶対だめです！40年以上前の出来事ですので、お許しください。あと、オッチャン、上手くいえませんが、ごめんなさい。でも、間違いなく、あなたは小学生のヒーローでした。（終）
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