【理系大学生向け】研究室選びのコツ 〜○○と同じ基準で選ぼう〜
皆さんこんにちは。Campusful運営の光山(こうやま)です。
このnoteは、大学生の皆さんを対象に、少し先を行く先輩方が「あの時知りたかったこと」を経験談を交えながらお伝えしていくメディアです。
今回は、理系の大学生の方にとっては特に気になるテーマであろう研究室選びについての記事の第2弾として、具体的に研究室選びは何を基準にしたら良いかを記事にしました。
これから研究室を選ぶ学部3年生や、研究室を変えようかどうか迷っている学部4年生・修士課程の皆さんの参考になれば幸いです。
学部1〜3年生の方向けに書いた第1弾「研究室とはどういう場所?」もよろしければぜひご覧ください。
この記事を書いた人
僕は学部と修士を東京大学の工学部で過ごしたのち、博士課程では東京大学の理学系研究科に移っています。
博士課程で研究室を変えるという決断には勇気が必要でしたし、自分の力だけで情報を集めるのには労力がかかりました。
ちなみに最後2つ迷った研究室の内、選ばなかった方は超絶ブラック研究室だったことを進学後に知って冷や汗ものでした。笑
この記事はその時苦労した経験を自分なりにまとめたものです。よろしければぜひご覧頂けると嬉しいです。
研究室選びは企業選びと同じ!
「研究室は○○と同じ基準で選ぼう」と、思わせぶりなタイトルにさせて頂きました。いきなりこちらの答え合わせです。
というのが僕の意見です。
「研究室は企業選び=就職活動と同じ」について
研究室は教授、准教授というボスを頂点として、講師、助教、ポスドクといったスタッフと、博士、修士、学部の学生で構成された研究組織です。
この構成は、教授を社長・CEOに置き換えると、完全に企業(中小企業)と同じだと言えます。企業や人がどのような力学で動くのかを社会に出る前に学べる貴重な場として捉えると、学びは大きいと思います。
なお、企業と同じと書きましたが、異なる点もあります。
上場企業であれば株主からの声が経営に反映されますし、取締役といえど好き勝手なことはできません。
しかしながら研究室は外部からの目がほとんど届かない閉鎖的な環境であり、教授の意見は絶対的なものです。その意味では企業よりも良くも悪くも教授のカラーが出やすい組織だと言えます。
「就職先や進路を選ぶ時と同じ基準で考える良い」について
研究室選びは自分自身の志向を確認するのにうってつけです。
研究室は必ず何らかの所には所属できるという点は就職活動とは異なります。それだけに適当に選択しても何とかなってしまうのですが、それでは勿体無いなと思います。
研究室選びの基準は沢山あるので、その中で重視するもの、しないものを取捨選択することで、結果的に自身の志向、端的に言えばワクワクするもの、しないものを確認することができます。
自分が何にワクワクするかを知っておくこと、欲を言えば言語化できていることは、今後の人生でめちゃめちゃプラスに働きます。僕自身この考えは社会人になった今、より強くなっています。
結果的に就職活動や、より大きな決断をする際の拠り所となるはずです。
それを学生のうちに、小さなリスクで出来るのはとても良いことだと思います。
余談ですが、組織というのは同じような人が集まっているようで、意見が衝突することもしばしば、あるいは頻繁に起こります。そのような時、相手の一番大事にしていることは何か、何を重視しているかに想いを巡らせると、衝突する理由が分かることもあります。(もちろん理解できない時もあります。)
何を重視するかによって、ご自身にとっての最良の研究室は異なってきます。次章以降で詳しく述べますが、代表的な基準は以下です。
皆さんは何を重視しますか?
ぜひ研究室選びをする前に、自分自身と向き合ってみましょう!
研究室の情報はどうやって入手すれば良いの?
主な方法は以下の2通りです。
研究室のHP
直接訪問
HPを見ることはもちろん大事です。ですが、HPに載っていない情報もあり、言語化できない研究室の雰囲気は自分の目で見ないとわからないものです。
気になる研究室は出来る限り直接訪問したり、難しい場合もオンラインで面談して頂くことを推奨します。
研究室選びにはどんな基準があるの?
1. 研究室の人と雰囲気
僕の経験上、研究室の人と雰囲気が一番重要だと考えています。
強靭なメンタルをお持ちの方や、「人類皆友達」ばりの超絶コミュニケーション能力をお持ちの方は別ですが、そうでない方はどんな方であれ、最も重要視することを推奨します。
特に、ボスである教授と、直接教えを請う事になる可能性が高い助教。この2名(以上)の方々が今後の研究室生活を占う上での最重要人物です。
この人とぜひ一緒に研究したい!という方に出会えたらラッキーです。そのような先生との出会いは人生でも稀有ですので、それ以外の基準がよほどNGで無い限り、ぜひ選んでみてください。
反対に、直接お話しして、どちらか一方でも明らかに合わなさそうな雰囲気を感じたら、敬遠するのが無難です。
ちなみにマスメディアの露出が多い先生がイコール人格者だとも限りませんので、教授の知名度だけで選ばないようにしましょう。
学生については卒業して入れ替わるのでそこまで重要視しなくても問題ありませんが、個々人というよりかは全体的に生き生きしているか、目が死んでいないかはチェックしておいた方が良いです。
2. 研究室の人数と構成員
人数については自身の好みがあると思います。
人数が多い方が人気研究室で、業績も比例して良いことが多いです。
一方、少人数の研究室はその分貴重な学生ということで丁寧に面倒を見てもらえる可能性もありますし、一長一短です。
構成員については
博士課程の学生
留学生
の人数が多い場合は人気があり、研究水準が高い場合が多いでしょう。
特に、「真面目に研究に打ち込みたい・博士課程に進学し将来アカデミックな研究者の道も考えている」という方の場合は、博士課程の学生の人数と質を確認しておくと良いです。
博士課程の学生が少ないと、良し悪しはともかくとして業績としてはあまり出ていない場合が多いです。
博士課程の学生がいる場合は、さらに、日本学術振興会の特別研究員が何人いるかも確認すると良いと思います。この特別研究員はよく「学振」と略されます。学振は優れた研究業績をおさめ、将来有望とされる博士課程の学生に与えられる研究奨励金です。博士課程1年次からのDC1、2年次以降のDC2とに分かれます。
学振持ちの博士課程学生が複数人いるような研究室は、その分野の将来有望な学生が集まっている組織であると言えるでしょう。
即物的な話にはなってしまいますが、通りやすい学振の申請書の書き方が研究室内で代々伝承されることもありますので、DC1またはDC2の先輩がいる研究室はその点でも若干有利かもしれません。
ただし、博士課程の学生の人数が多い場合でも、博士課程4年生や5年生が多い所は、いつまで経っても卒業できない所謂ブラック研究室の可能性もあるので要注意です。
もちろん学科や研究分野によってはそれが当然というところもあると思います。そもそもそれ自体が良いことだとは思いませんが、気になる場合は直接話を聞くことをお勧めします。
3. 研究テーマ
大きく実験系か理論系に分かれます。
理論系は数値計算やシミュレーションなど、プログラミングをする分野も含んでいます。(厳密な分類ではありませんので、ご了承ください。)
絶対にこのテーマに取り組む!という強い動機がある方はぜひそちらを選んでください。
一方で、テーマ自体にそこまでこだわりが無い、あるいは興味あるテーマが複数ある、という方は、
手を動かすのが好きか
理論が好きか
プログラミングに興味があるか
という手段の軸で選んでみてはいかがでしょうか。
研究テーマについては、正直それほど重視しなくて良いと思います。
その分野の楽しさは実際にやってみないと分からないからです。
前述の手段の軸と、興味が持てないと確信しているテーマは除く、程度の選択基準で問題ないと思います。
4. 業績
研究室の業績はまずは論文の数と質が評価されます。国際学会誌が特に重要です。研究室のHPに載っていますので、チェックしてみましょう。
年に何本も国際学会誌に投稿している研究室もあれば、1本も無い研究室もあり、露骨に差がつく要素です。
また、国際学会での発表や講演などの実績も合わせて確認すると良いと思います。もし学生が国際学会で発表していたら、学生の海外での発表を推奨している研究室の可能性があります。研究を頑張りたい、と考えている学生にとっては大きなチャンスとなるでしょう。
業績関連では、他研究室あるいは企業との共同研究が多いかどうかも一つ重要なポイントです。共同研究が多いということは、その研究がタコツボ化しておらず、他の研究分野からも必要とされている良い研究、ということを意味します。また、教授に共同研究を取り付けるだけの人脈や能力があることの証明になります。
5. 教育
ちゃんとした研究室だと教育方針が決まっており、きちんと明文化されています。教育方針がしっかりしたところが良い、という方は確認してみましょう。
6. 活動方針(コアタイム)
研究室にはコアタイムと呼ばれる、確実に研究にあてる必要のある時間帯が設定される場合があります。これは所属学部ではなく、各研究室が独自に設定しています。
コアタイムが無い場合もありますし、あっても10:00〜18:00やその前後が一般的だと思います。ですが、「9:00〜21:00」「土曜日も必須」など、とんでもない時間帯や曜日帯が設定されている研究室が稀にあります。
部活やアルバイトなど、他に打ち込みたい課外活動がある場合は特に、確認をとっておくことをお勧めします。
7. 課外活動(就職活動、アルバイトなど)の理解度
教授やスタッフは就職活動未経験な方が多く、就活の大変さを理解していない方も一定数存在します。しかしながら良い先生だと就活に寛容で、就活の時期はそれに配慮した研究スケジュールを引いてくれる方もいらっしゃいます。
貴重な戦力である学生が就活で長期にわたり不在なのを良しとしない教授の気持ちも分かるので難しいところですが、「就活絶対NG」などとんでもない方針で無いかは確認しておくと良いでしょう。
アルバイトについても、日中常に不在にするようなものは流石にダメだと思いますが、夕方以降に週1~3程度行うのは本来問題が無いはずです。「アルバイト全面禁止」「アルバイトをしづらい雰囲気が充満している」などが無いかは事前に調べておきましょう。
なお、教授の中には、研究室内のアルバイト(サーバ管理など)やティーチングアシスタント(TA)などの仕事を紹介してくれるような神様のような方もいらっしゃいます。
どの基準を重視したらいいの?
前述の通り、僕が一番大事だと思うのは「研究室の人と雰囲気」です。
良い先生や良い雰囲気の研究室が見つかればベストですし、そうでなかったとしても、「絶対に合わない」と直感した所は除外するのがベターです。
それを前提として、2番目以降の優先順位は人によって異なります。
今回はよくある3パターンに分けて書いてみました。
皆さんはどのタイプでしょうか?
研究を頑張りたい!博士課程まで視野に入れて選びたい
「2. 研究室の人数と構成員」「3. 研究テーマ」「4. 業績」を特に重視すると良いと思います。
実は前述の学振(DC1、DC2)取る場合、4年生から同じ研究室にいた方が正直有利です。
学振は修士課程までの成果で評価されるため、修士課程で研究室を変えた方と比べてその分野に費やした時間が1年多いので、その分成果が出やすいからです。
博士課程への進学が視野に入っている方は、学部での研究室配属の時点で色々情報を集めておくと良いでしょう。(とはいえもちろん口説いようですが、修士課程以降で研究室を変えても本人の努力次第で何とかなります。)
興味はあるけど、研究に向いているかどうか、よく分からない。
まずは「1. 研究室の人、雰囲気」で判断して、良いなと思う研究室で研究者としての第一歩を踏み出してください。
修士課程や博士課程で研究室を移動する選択肢もありますので、現時点で思い悩む必要は無いでしょう。あまり自信が無い場合は「5. 教育」がしっかりしているかどうかも重視すると良いと思います。
バイトや部活が忙しいので、両立出来るところがいい。
「6. 活動方針(コアタイム)」「7. 課外活動(就職活動含む)の理解度」を確認しておきましょう。
入った後無用なトラブルを避けるために、もし時間拘束の激しい部活動に属している場合は、事前に教授やスタッフに話をつけておくとスムーズです。
さいごに
今回は「【理系大学生向け】研究室選びのコツ 〜○○と同じ基準で選ぼう」と題しまして、研究室選びで迷っている学部3、4年生の方と大学院生の方向けに記事をお届けしました。
せっかくの機会ですので、組織や人を見る目を養う機会、自分自身と向き合う機会としてもうまく活用して頂けたらと嬉しいです。
そうは言っても深く考えすぎず、特に学部生の方は大学院で変更することもできますので、こちらでご紹介した内容を参考にしつつ選んで頂けたらと思います。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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