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運命だった


テゴマスという伝説のユニットがいた。ごく一部の界隈にしか刺さらない超個人的な「伝説」ではあるものの二人が出会ったことは紛れもなく運命だった。テゴマスとはサンリオでいうところのキキララでありハロプロでいうところの辻加護である。ユニット名はそのまんま。歌に特化した踊らないアイドルとして2006年にスウェーデンで先行デビューした異色の経歴を持ちながらも2020年に諸事情で自然消滅してしまった伝説の二人組。


そもそも二人がNEWSというグループでデビューできたのも某社長に「YOUは歌が上手いね」や「YOUの声は面白いね」と褒められたからで。入所した時期の違う二人は歌を通じて出会い歌を通じて同じグループに加入した。もうその時点でやっぱり運命だった。歌が上手い人間は腐るほどいる。同事務所にはKinKi Kidsという別の伝説だって存在する。テゴマスにしかない特別な何かを聞かれても分からない。ただ少なくとも私は彼らに音楽の楽しさを教えてもらった。アイドルを好きになって音楽の楽しさを教えてもらえるなんて思ってもみなかった。

二人は今までにテゴマスの「うた あい まほう 青春」とツアーを引っ提げた四つの作品を出している。ライブはアイドルでは珍しい完全生歌生バンド。私はバンマスをしてくれていた知野芳彦さんが大好きで初めてテゴマスのライブに行ったときは二人に会えたことよりも知野さんに会えたことの方がよっぽど興奮した。そんな知野さん率いるバンドメンバーとの信頼関係も彼らの音楽に大きく影響していたように思う。円盤の特典にあるドキュメンタリー映像はいつも見応えがあった。特に意図せず最後の作品になってしまった「テゴマスの青春」は後付けにはなるんだけど確かに集大成とも言える二人らしくてパワーに満ちた未練を感じない音楽だった。

今Wikipediaを読んでたら「2020年に事実上のグループ解散となったため、本作がラストアルバムとなった」と書かれていた。そうなんだよな。私が書きたいのはその話なんだよな。運命だったはずの二人は地球がひっくり返るほどの何かが起きない限り、もう二度と一緒に歌うことはないのだ。もちろん新しい音楽も生まれない。信じられる?私は信じられない。というか信じたくない。

最後だと知っていて行くライブと最後だなんて思わずに行くライブとでは訳が違いすぎるでしょう。2014年2月15日。大阪では珍しく大雪が降ったバレンタインの翌日で私にとって最初で最後のテゴマスのライブになった日だ。もうあれから10年になる。初の試みとしてマイクを通さずに青いベンチを歌ってくれたとき静かな空間に驚いたのか終始大号泣していた赤ん坊ももう小学生になっている。今だから言わせてもらうけどこんなことになるんなら私はあのときのあの赤ん坊が少しだけ憎いよ。

二人の出会いは運命だった話に戻す。とにもかくにも二人の声はものすごく相性が良かった。あの癖のあるハイトーンボイスを持つ彼にスッと馴染む低音域を持っているのは彼だけだと思う。それぞれ色んな場所で色んなアーティストとコラボをしたことはあったんだけど、そのたびにテゴマスという個性を実感していた。どんなに広い会場の離れた位置で歌っていても同じタイミングで目を合わせるんだよ。性格も体格も価値観も少しずつ違う二人だけど音楽が好きだという部分で強く繋がっていたのかなって。

ある番組でありがとうを伝えようみたいなミニコーナーをしたときマスが「テゴとの出会いがなかったら今の自分はいない」と言ってた。よくある言葉に聞こえるけど二人の関係を知る私からすれば、これはものすごく(もっのすごく)希少価値が高く一生引きずる言葉だったわけよ。なんなら「俺とテゴが出会ってなかったらNEWSもなかったと思えるくらい俺らの出会いは大きかった」とまで。

しんど。

運命やん。ほらやっぱり運命やん!って。そのときにテゴはテゴで「マスは歌う仲間でありライバルであり最大限に刺激し合える存在」とかなんとかめちゃくちゃ拙い言葉を伝えてたんだけども。私は真面目か〜つって突っ込んでたんだけども。この放送があったときは既に最後のライブはとっくに終わっていて新譜を出す機会もなかなかなくて長くしていた首も縮こまってたから、こうして互いの気持ちを確かめ合う姿を見てたまらなく愛おしくなったのを覚えてる。

まあどんなに足掻いても願っても嘆いても二人の音楽は知らん間に終わってた。こればかりはアイドルとして某事務所でデビューをした宿命なので私は誰も責めないよ。そういえば二人はどちらかが泣いてしまったとき絶対に片方は泣いてなかったな。NEWSは二人以外にもメンバーはいたけどいつでもテゴマスの間に流れる空気だけは少し違ってたな。ライブのバラード曲でマスのおふざけにファンが付き合わされたときは後から雑誌で「バラードは静かに聴いてほしかった」となぜかファンだけがテゴに怒られたの今思い出しても面白かったな。絶対に照れてしまうくせにすぐくだらない寸劇を始めるところも「俺が一番こいつのこと知ってる」アピールを無意識にしてしまってるところもそのくせあまり干渉しない仲なのも大好きだったな。テゴマスのこと、大好きだったな。


知らん間に終わってた最後のライブ。アンコール後の演出でメンステのモニターに「see you next live」という文字が出た。また会えるって言ったのにもう会えないなんてなんの嫌がらせだろうか。運命の二人じゃなかったの?何年経ってもこんなこと言うオタク重い?馬鹿にするんじゃないよ。こちとら本気で悔しくて悲しくて信じられなくて寂しいんだよ。ミソスープぶっかけてやろうか。

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