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都合のいい関係

こんばんは。

元彼のことを思い出してしまったので、都合のいい関係になりかけてしまった話を、記録として残しておきます。



彼に「別れたいと思っている」と言われ、距離を置いていた期間のこと。帰り道に、ちょうど彼のバイクを見つけたんだ。あ、彼だ。

ちょうど彼の家の近くを歩いていたので、ついつい声をかけてしまった。「やっほー」なんて意味不明な挨拶をしてしまった。そしたら、彼も普通だった。あれ?


「やっほー、バイト終わり?」

「ううん、そこらへん歩いてて。ちょうど見かけたから来ちゃった。ウケるよね」

「そうなんだ。あ、そういえば、青森に行ってきたんだよ。帰省。お土産もあるよー。いる?」


えーっと。普通のテンションすぎて、どう反応したら良いのか、どれが正解か分からなかった。いやいいよ(笑)なんて返しをしてしまった。


そこからは何故か普通に会話を楽しんだ。久々の彼との会話。
安心感が凄い、私の好きな声だ。私の好きな人と、話せている。しばらく距離を置いていた彼と、隣に座って話せている。終わりが来るというのに。


そろそろ切り出さないと、と思った。

「ねえ。私たちってもう会えないのかな?」

そしたら彼は笑顔で

「いや、なんだかんだ会ってるんじゃない?
全然ご飯くらい行こうよ。作るし。」


ご飯くらい行こうよ、か。
あれ?私たちもう別れてるのか?別れたい、とは言ったけど、別れようって話にはなっていない。ここで初めて、彼は言葉に出さずとも、私たちの関係を消滅させたいんだと気付いた。あえて何も触れず、そっかあ。と私は返答した。


あれ、涙止まらないや。私たち別れたのかな。
思い出が過って、死にたくなってきた。

そしたらアイツ、普通によしよししてきたり
抱きしめてきたんだ。
「は?死ねよ」と思ったよ、まあ。
でも嬉しくて、嬉しくて、突き放せなかった。
その時も君の温もりで包まれていたんだ。
この温もりを冷ましたくなかった。


どんな形でもいいから一緒にいたい、お願い

なんて、縋ってしまった。
絶対に言わない方が良い言葉だと分かってた。


「いや〜、そういうのは良くないよ」
なんて、第一声。
でも何だか彼の中で葛藤してる?そんな気がした。


「もし仮に、俺に彼女が出来たとして
プリクラとかあげ始めたらどうするの?」

「それでもいい。一緒に入れるなら。
関係切るほうがぜんっぜん辛いの。」


涙が止まらなかった。ここで縋らないと。
ここで私が縋らないと、関係が終わってしまう。もう会うことは無いね、とあっさり切られてしまう。そんな展開だけは絶対に避けたかった。


「いや、いくら元カノとはいえ。
こんな可愛い子がセフレにでもなっちゃったら
俺彼女が出来ても愛菜のこと手放せないよ。」


嬉しかった。
手放して欲しくなった。
「元カノ」なんて初めて言われた、やっぱり別れてたんだ、私たち。でもそれ以上に嬉しかった。彼と繋がる、希望が見えた気がした。

「何でもするから」なんて泣きじゃくる私。
成人にもなって何をしているんだろう。
でも彼じゃないと満たされない何かがあった。彼がいないと私の心の穴は埋まらない、そう思った。絶対に手放してはいけない人。話したくなかった。


彼の中の葛藤はあっさり終わった。
「あ〜、じゃあもういっか。こういう関係でも。愛菜がそれでいいって行ったんだからねー?もう。」



そういって、キスした。私の体に触れながら。
外だから、と拒否したんだけど、じゃあ…とそのままホテルに行く流れになってしまった。最悪だ。最悪だとわかっていた。


月曜日の出来事だった。次の日も朝早いのに、私たちは何をしているんだろう。私はいつものように彼のバイクの後ろに乗り、走り出した。風が気持ち良い。彼とよく通ったここの道、コンビニ、居酒屋。思い出が詰まっている地元の街が、当時は輝いて見えたし、大好きだった。


コンビニによりお酒を買い、ホテルに到着。
速攻体を重ねてしまった。


行為中、私は涙が止まらなかった。
もう私の知っている彼では無いのに、体を重ねられて嬉しいのに、彼は私の事もう好きじゃない。好きじゃないのにこんな事してるんだ。嬉しいのに、悲しい。どうしてこうなったんだろう。


「俺のこと好き?」とか
好きに決まってるじゃん。ばかじゃないの?

やっぱり相性いいね、と微笑む彼。
そうだね、なんて中身のない会話をした。

それから暫くして、彼は言った。

「こんな事しといて俺が言えることじゃないけど、やっぱこういうの良くないよ。愛菜だって辛いでしょ?やっぱり、連絡先も…。インスタもLINEも全部切ろう。それが一番いい。」

また、涙が止まらなかった。
そんなの耐えられなかった。


その後
彼はお風呂に入り、ドライヤーをしていた。


ふと、棚の上を見たらiPhone。
ちょっと覗いてしまった。少しだけ。


LINEの1番上、知らない女がピン留めされていた。

知らないというか、一方的に知っていた。


彼のインスタのサブ垢に、急に追加されたから。
厳選されているはずのサブ垢に追加された、
この女。やっぱりこいつだったのか。
もしかしたらこの人かも。会う前に勘づいていた。

「gw中たくさんありがとうね!!!!」
なんて言葉がツラツラ、見えてしまった。


gw中?私距離置いてましたけど。1度も話してないし、会ってませんけど?この人とずっと過ごしてたの?どうして?何でそんなことしたの。


体の震えが止まらなかった。
女がいるかも、とは薄々気付いていたけど、
まさか本当だったなんて。


確かに、彼の行動は怪しかった。
ビーリアル(通知が来たら2分以内に写真を撮ろう!というSNS)に、ネットカフェで映画を見ている姿が投稿されたり、夜景を見に行ったり。インスタで、あいみょんの恋愛ソングを流したりしていた。男と完全個室のネカフェに行き映画を見るなんて有り得ないと思ったし、誰に愛を伝えたいんだ?と思った。気付いていた。


お風呂から出た彼は私の膝の上に乗ってきた。
ルンルンだね、楽しそうだった。

「正直女いるんでしょ?勘だけどさ」

あたかも証拠には気付いていないけど、女の勘ですよ、風に質問をしてみたの。そしたら、ペラペラと嘘が始まった。まじかよ。


「この人?あー誰だっけ。ああ!
友達の友達だわ。
向こうは俺の事知ってるみたいなんだけど、
俺はよく分からないわ。」

LINEももってないし、やりとりもほぼしてない。
誰だっけ?という体で返答してきた。
もうそこが付き合ってるの、私は知ってるのに。


恐ろしさのあまり、
ボイスレコーダーのアプリで録音をしてみた。
彼はいわば虚言癖持ちだ。
彼とは3年前に出会って、友人として関わってきた。付き合ったのはつい2ヶ月前の出来事だったんだよ。彼は平気で嘘をつくタイプだった。しかも、つく必要のない嘘。誰かのための優しい嘘ではなく、ただの嘘でしかない。一部の人から、「虚言癖」と呼ばれているレベルであった。


そうだ、昔から彼は嘘をつくタイプだった。そんな事はとうの昔に分かっていた。周りからも彼と付き合うのを止められていたけれど、私は彼のことを信じていたし、「きっと彼は変わったんだ」と思っていた。仮に何も変わってなくて未熟だとしても、そこも愛してあげたい。嘘をつかれたとしても、そこも受け止めてあげたいと常に思っていたのだから。


彼と、都合のいい関係。それでいいと思っていたけど、女がいるとなると話は違う。その瞬間、瞬間だけは一瞬にして彼への気持ちがなくなってしまった。


私の好きだった人、こんなもんだったんだ。「一生大好きだよ」なんて甘ったるい言葉を並べて、「早く一緒に住もうね」って、気が早いながらも物件探しをしていた彼はどこにいってしまったのだろう。

「親にも紹介させて」と、彼のお母さんと、私で、電話をさせてくれた彼は何だったのだろう。彼のために生きていた私、なんだったのだろう。


朝方には解散した。

「じゃあ、また」


家についてから、
「遅くまでごめんね。ありがとう」

と、彼にLINEをしたら

「こちらこそごめんね。楽しかったよ」

と、すぐに返信をくれた。
もう会うことは無いのだろう、と思っていた。
悲しみで爆発して、
死んでやろうかと思っていたけれど。

彼の団地の5階から飛び降りて
こんなにも好きだったんだと、
アピールをしようと思っていたけれど。


何だかんだ、私は生きてしまっていた。
ほぼ抜け殻状態だった。


彼と解散した、朝の5時半。
いつも通り私は7時に家を出て、
スマホでSNSをチェックした。

私とホテルにて解散した1時間後。
彼のインスタのストーリーには、
彼女と夜景を見に行った幸せそうな写真と
2人のプリクラがアップロードされていた。

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