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ひとりぼっちじゃない

宮子という人物

一見「何を考えているかわからないミステリアスで頭のネジがぶっ飛んでいる女性」という印象を受けるけれど、全体を通して考えてみると全く違った人物像が浮かんでくる。

宮子とススメの会話で一番印象的だったのは最初の方にあるお互いの五感に関して話し合っているときだった。ススメの聴覚や味覚の感じ方を宮子が聞いている風に見えた。

次に気になったのは観劇後の意見交換のシーン。何て言ってたかは忘れたけど、宮子は食べられたキリンに対しても食べた人達に対しても肯定的な意見を言った気がする。(意外と優しい目線で物事をみてる人なのかな?って思った)対してススメは「イラついた、無駄死に」と両者に否定的な見方をしたと意見した。その後別れ際に宮子に植物の株分けについて話しかけるのだけど、宮子は口早に簡潔に説明をしてその場を去ってしまう。明らかに宮子が苛立っている。あまり感情が表に出ない宮子なのでとても印象的だった。
これは観劇前に宮子がススメの部屋に来た際に宮子から「私がここに来ていい?」「この子植え替えしてあげなきゃ」とススメに歩み寄りをみせたことでススメの下心から、観劇後の宮子が来てくれるかな、という淡い期待からの呼び止めだったんではなかろうかと思うのだけど、劇の感想が対立したからなのか宮子自身が否定されたような気持ちになったからなのか苛立ち帰ってしまう宮子。
男と女というものがわかりやすく描かれている気がした。
私もそうだけれど、会話をする上で女は同意を求めていることが圧倒的に多い。同意してもらえると安心する。一度同意してもらった上で違う意見を述べられればすんなり受け入れられるのだけど、同意がないと自分自身を否定されたような気持ちに陥る。そういう女性多いんじゃなかろうか。このときの宮子もそうだったんじゃないかなって思ってしまった。

あと要所要所で気になっていた、「ご飯すぐ作るね」。これは2.3回あったと思う。ススメだけでなくナガーツカさんにも。
「おはよう」と言ってススメの口にチョコレート?のような食べ物を入れる。
宮子は甲斐甲斐しく男達に食べるものを与えるのだ。
突然現れたうさぎを可愛いがる様子もあった。
部屋中に置かれた植物に水をあげる様子もあった。
骨折をしたススメを気遣い、宮子がススメの部屋に来て、これからも世話しに来ていいか聞いているようなところもあった。
これらは全て「母性」を感じさせる。

はい、宮子は頭のネジが緩いクソビッチだと思っていた自分を呪う。

行動はとても愛情に溢れて…ん?愛情?なのか?生き物を死なせないための行動ではあるけれどそれは愛と呼べるのかな…?相手を想っての行動だから愛っちゃ愛か。宮子にとっては愛なのかもしれない。ススメ以上に宮子は愛情表現というものが不器用なだけなのかもしれないと思い直した。なんなら愛情表現という点ではススメの方が上手かった。ん…!?待てよ…。ススメの愛情表現は上手かったか!?宮子の誕生日プレゼントとして高級そうなアンクレットを贈っていたススメ。そもそも宮子はジュエリーが欲しいって言ったのか?宮子って高級ジュエリーに興味なさそうなんだが??
これは世の中の男女においても繰り返されている案件で、男性側が良かれと想って自身のセンスで見繕った贈り物をサプライズで渡し、女性側は礼を言い喜ぶ素ぶりをしながら心の中で(違う!!そうじゃない!!)と思っていて、後に女子会で「聞いてよ〜」っていう事になる例のアレだ!!!きっとそうだ!!だからその後宮子はアンクレットを付けて登場しない。笑

お互いに愛を向けているのにお互いに受け取れない。

ススメの孤独を描いた作品と思わせておいて、実は宮子も同じくらい孤独なのかもしれないと思った。
複数人男の影がチラついたり蓉子がいたりドライっぽく見えることで気づきにくかったけれど、人から必要とされることを一番欲しているのは宮子なのかも。愛情をかける矛先を探して彷徨っているような…。

結局のところ蓉子もススメも宮子の元を去ってしまう。ひとりぼっちになったのは宮子だ。

別の考察でも書いたけど、その名の通り子宮を連想させる演出が散見される。水中の中で聴く音のようなコポコポ音、ゆっくりとふんわりと包み込むような話し方は時間感覚を麻痺させる。
いつでも鍵の開いている玄関はいつでも受け入れてくれる母親のような安心感を感じるし、部屋の中は植物で満たされていて生命や呼吸を感じられる。
そして母性と孤独。「女」が持つ特性を宮子は全て体現しているように感じた。

最後にひとりぼっちになって自室でススメが吊るしてくれたキラキラ光るサンキャッチャーを見つめる宮子を想像したらとても悲しくなってしまった…
願わくばうさぎちゃんに宮子なりの愛情をたっぷり注いで幸せを感じて生きて欲しい。

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