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【こころ】発信模索するキリスト教界 ネットやイベント駆使 「いのフェス」メディア掲載記事

(2012年10月29日付「山陽新聞」掲載の記事より)


 キリスト教を取り上げた新書や雑誌が話題になる中、キリスト教界の若手からメディアを用いた発信の在り方を模索する動きが活発化し始めた。

■コスプレ、着ぐるみ

 9月29日、東京都台東区で異色のフリーマーケットが開かれた。書籍や同人誌、漫画、アクセサリーのブースに並ぶのは、全てキリスト教関連。アニメの制服少女が描かれたポスターには「興せ、ぼくらの宗教改革!!」の文字が。今年で2回目の「いのり☆フェスティバル2012」だ。

 コスプレ女性、動物の着ぐるみの男性の姿もあり、サブカルチャー色が濃い。キリスト教関連の集まりとは思えないこのイベントを企画したのは、教会向けの季刊誌「Ministry」編集長の松谷信司さん(35)。

 社会学者の橋爪大三郎氏と大沢真幸氏の対談「ふしぎなキリスト教」がベストセラーになって新書大賞を受賞、雑誌の特集も好調な売れ行きを示すなど、キリスト教への関心が高まっている。ただ、キリスト教界から一般に向けた発信は少ない、と松谷さん。「教会はハードルが高いけれど、イベントだったら行ける。そんな思いを持つ多くの人に向けて企画した」

 超教派の集まりが少ないキリスト教界での出会いの場、さらにキリスト教に関心のある全ての人が一堂に会する場にしたい、との思いがある。

 編集長を務める「Ministry」も教会向け雑誌とは思えないポップな体裁の雑誌で、特別企画では聖書を主題にしたトレーディングカードを作ったほど。ただ、特集はハード。深刻なのに、これまでほとんど語られなかった牧師の鬱に切り込み、反響を呼んだ。今後は、教会における性的少数者や自殺の問題も取り上げたいという。

■オタクと信仰

 「いのり☆フェスティバル2012」で行われた鼎談(ていだん)「カミとホトケと、時々、オタク」。評論家の岡田斗司夫さん、曹洞宗僧侶の吉村昇洋さんとともに、キリスト教の立場から登壇したのは波勢邦生さん(32)。派手なTシャツで漫画を語る姿は一見、アニメ好きのオタク男性だが、伝統的なプロテスタントの教派の教えを深く信仰している。

 岡山市出身。大学卒業後に就職したものの牧師になる夢を諦めきれず、米国で神学修士に。現在は兵庫県尼崎市の武庫之荘教会(日本キリスト改革長老)に所属する。

 インターネットを駆使した活動が特徴。質問サイトで「キリスト教プロテスタントの宣教師だけど何か質問ある?」と呼び掛け、教義からプライベートまで1000以上の問いに答え、同人誌にまとめた。ネットの生放送でキリスト教の講義も行う。

 今年夏、キリスト教ネットメディア研究会を立ち上げた。埋もれゆく教会資料をデジタル化して公共財とし、ネットワーク社会における教会の在り方を模索するのが目的。「社会に対する透明性を確保し、キリスト教の“リアル”がここへ来れば分かるようにしたい」

■教会の今の姿を

 さまざまな教会の声をフリーペーパーという形で全国に届けようと奮闘する牧師もいる。北海道士別市にある日本基督教団士別教会の難波真実さん(39)。タイトルは聖書から採った「れたすらん(let us run)」。「地方の教会は厳しい。だが、一緒にやることで何かが見える。そんな思いで名付けた」

 神戸市出身。教会への支援に対する活動報告がきっかけで昨年2月に創刊。教派を問わず、全国から寄せられた紹介やニュースを掲載する。「他の教会を知る機会がなかったが、これで分かった」などの好評を得た。

 編集から広告集めまで基本的に1人。財政も苦しい。負担軽減のため冊子をやめ、ページをとじ込まない形に変えた。教会の今の姿を伝え、つながりたい。より多くの人に声を届けたい。そんな思いを込めて活動を続けている。

2023年、東北初の「いのフェス」開催に向けてクラウドファンディングに挑戦中です。締め切りは8月31日。ご支援のほどよろしくお願いいたします。


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