中食•惣菜の未来

 食の外部化が進む中、惣菜市場は10兆円を超えた。惣菜を単なるモノとして捉えるのではなく、豊かで合理的な食シーンを提供する「中食」として捉えてビジネスを構築していくことが業界には求められる。
 中食は内・外食では対応できないフィールドである。食の外部化は「自分ですべてやらなくてはならない」という食べものの作り手から、手間や時間、技術を他の人に頼るようになってきていると捉えられる。中食市場が拡大するということは、いつでもどこでもどのようにでも食べられる状況が増えるということだ。どんな食をどんな形で提供できるのかがキーワードになる。そこで食べたい物を食べたい時に食べたいように食べるために買いたい人に、どう提供するかをマッチングさせることがビジネスとして重要になってくる。
 中食ビジネスは「食事をつくるためにどれだけ準備が楽になるか」そして「手軽においしい食事ができるか」というサポートを中食業界が担っている。惣菜はこれまで「Ready to Eat」のものだったが、「Ready to Heat」「Ready to Cook」へと概念も広がっている。冷凍食品やミールキットがその代表格であり、さらに生鮮分野の「Ready to Prepare」も即食性を高めた商品が並ぶ。生活者のニーズ変化が商品や売り場変革を促している。
 こうした生活者の潜在的ニーズもつかみつつ、変化対応していくことが中食ビジネスには求められている。実際、新型コロナウイルスのパンデミックは生活者の価値観を変え、新しい生活様式を求めている。スーパーではバラ売りを敬遠したり、日持ちがしなかったりする惣菜の売り上げは芳しくない状況が続いている。一方、ファストフードのテークアウトは売り上げが大きく伸びた。デリバリービジネスもしかりだ。ここでは生活者とのリスクコミュニケーションが重要であることを裏付ける結果ともなった。惣菜・中食ビジネスその2)生活者は出来上がった食べ物(調理済み食品)を中心に毎日の食を成り立たせていく。結果、中食ビジネスにかかわる人たちは国民の明日の命を担う、ますます重要な責任を負った仕事にかかわっていくことになる。その観点からすればモノを売るのではなく、あらゆる食事のシーンで満足してもらえるコト(体験)やイミ(価値)を売るビジネスモデルへ転換であろう。
 大切なことは、結果として食をとることに、食べる人にどういう価値を提供できるかが重要。買ってもらって食べてもらった結果、どのような満足が実感してもらえるか。食べるとこんな経験が実感できる、という何かが重要だ。
 そして業界の発展には人材が欠かせない。従業員が心から満足し、そこで長く働きたいと思う産業でありたい。働きやすい環境を整え、社会に貢献していくという企業姿勢を明確に打ち出し、働きがいのある企業風土を醸成していくことが何よりも企業の持続可能性を担保することになる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?