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舟盛り 食べきれなかったお刺身の行く方

旅館の食事は、心づくしで盛りだくさんなことが多い。
うれしい一方で、全部食べなくてはならない。という 妙なプレッシャーに駆られる。

私が年を取ると共に、旅館から遠のいていた理由がここにある。
食事を残すことが苦手だ。

事実、泊まった宿で出た舟盛りはふたりでは食べ切れないほど盛りだくさんだった。

フードロスを出さない 努力をしている宿

給仕をしてくださっている方が「食べきれなかった物は明朝、漬け丼でお召し上がり頂けますよ」と声をかけて下さった。

これって今ではアタリマエのサービスなの?
私は初めてだったので、何て親切なのだろうと驚いた。
そして、私が押されていた「食べきらなきゃ」という妙な使命感から解放してくれた。
食事がより一層楽しくなる。

マグロやカツオの赤身と貝類は漬けにできないと説明があり、ヒラメと真鯛で食べきれなかった分を漬けにしてもらった。

秘伝のタレに漬け込まれて再会
薬味も用意してくれた

刺身は一晩で化けていた

翌朝漬けにされたお刺身と再び再開。
昨晩にはなかった、ねっとりとした食感。
身に程よくつけ汁が染み込んで、魚臭さが封じ込められている。

あれこれ言わず、一言でまとめると

宵越しの刺身は進化する。


昨日 無理して食べなくてよかった。
もともと宵越しの刺身を好んで食べてきたが、この漬けは初体験のおいしさだった。

理由はつけ汁。

昨晩つけ汁を一口なめておけばよかった……
この宿のつけ汁を家でも再現してみたい。

フードロスを出さない工夫

昨晩の刺身を下ろして出たアラは、今朝アラ汁にて登場。
寝ぼけた胃に優しく 染み渡る。
アラ汁だいすき。

できることならおかわりしたかった

アラは丁寧に処理されていて、骨の周りの身を取って食べると美味しかった。

魚を隅から隅まで味わい尽くせたな、という満足感が湧いてきた。

焼きサバが濃厚すぎて食べきれない

ほぐす毎に旨味が滴る焼きサバ

焼き魚で出されたサバが、これまたお見事。
箸を入れる度に旨味がじゅわっと滴る。

残念だが、濃厚すぎる焼きサバは美味しいながらも半分しか食べきれなかった。

残したら捨てられる。私は最後までこのサバを楽しみたい

漬けにあら汁、焼きサバ。
朝から漁師の家にホームステイしているようなメニューだ。
こんなにいろいろな魚料理を朝食で食べたのは人生初。

残念なことに胃袋には限界がある。
焼きサバを半分食べたところで、私の箸は止まってしまった。

できることなら全部食べたい。
でももうお腹がいっぱいだ。
残したらこんなに美味しい焼きサバは捨てられてしまう。
そんなことをしたら今夜夕飯の時に、この瞬間を思い出して後悔するだろう。

よし、持って帰ろう。

クーラーボックスと保冷剤の用意があったので、食べきれなかった焼きサバを、持ち帰りをしていいか質問した。

「もちろんいいですよ。今、パックをお持ちしますね。」

私は食べきれなかった焼きサバと共に、帰宅することができた。なんていい世の中なんだ。

家に持ち帰った焼きサバは、母が一口食べて大絶賛し「全部一人で食べたい」という強気の宣言をした後、本当に全部食べてしまった。

ここの宿ではサバ好きが家族を顧みず、独り占めしたくなるほど美味しい焼きサバが、朝ごはんに提供されます。

あんこう鍋とどぶ汁が名物らしいので、次はあんこうの季節に訪れてみたい。


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