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臨時クリニック?  マカピーの日々 #1190

マカピーです。
ハナさんは患者さんに寄り添う治療をしてました。

レストラン改修工事に関わっていたので三日ぶりに村に行くとマカピーはいつもの通り海辺を歩いたのでした。

今回はマングローブの幼生苗が沢山打ち寄せられていたので、これを試しに波の影響のない場所に埋めてみました。

もしかしてマングローブの木が生えるかしら?
そしたら、護岸になるかしら?

(ところが、翌日になるとそんな場所まで、波がすっかりさらってしまっていました。残念)


フジツボの付いたオイル容器

そんな事をしながらプラプラとロビン宅に戻ると、家のベランダでは見慣れない人たちが沢山います。

その中心はロビンの裏手に住む若いお兄ちゃんですが、生気のない顔つきをしています。

彼をハナさんが応急処置をしていたのですが、その両手を見てギョッとしました。

もはや「死人の手」を感じさせる外観で、右手は異様に膨れあがって節々が盛り上がっています。

もはや「ゾンビ」って感じですよ!

もちろん彼は手をニギニギ動かすことなんてできません。

Myasisという蠅蛆症(ようそしょう)というものらしいですが、今回マカピーも初めて見ました。

つまり、蛆が生体に入って組織内(特に関節)で巣を作ってしまうのでした。

彼によると三日前から手の節が痛くなり、ハナさんの来るのを待っていたのだそうです。

ハナさんは慣れたもので直ぐ状況を理解して、彼に抗生物質の注射を打ち、自分の膝の上にロビン宅の古着を乗せてその上に彼の手を乗せて蛆が入った穴を見つけます。

そこに注射針を刺して、皮膚を押して中の膿と蛆を絞るのです。

マングローブの幼生苗

結果的に幾つもの穴から血が流れだし、ハナさんの膝の上の古着はどんどん滲みて行くのでした。(彼女のジーンズにも滲みていたようです)

ロビンは「オレは見ちゃいられん、ダメだ!」と家の中でタバコを吸っている状況でした。

確かに、案外マカピーもいろんな外科手術などを見てきたつもりですが、その様子は言葉で表現し辛い治療内容でした。

それでもハナさんは根気よくその作業を続けて治療していました。

ハナ:「いい、インスタントラーメンや肉類もしばらく食べないで。野菜中心にね。3日後に注射を追加するわ。分かった?」

それから母親に向かって

ハナ:「何か傷があると油を塗るのは止めなさい。感染が酷くなるでしょう。むしろ乾燥させるべきよ。この手じゃ何もできないからちゃんと面倒見てあげて」

そういえばアフリカのザンビアで仕事をした際にアフリカ眠り病の仲介となるツェツェバエというのを見ました。

https://ja.wikipedia.org/wiki

というか、観光サファリに出かけると大概このハエに刺されるのでした。

口吻というか針状のものが衣類の上からも差し込まれるので「痛い」のでした。もっとも唾液腺にトリパノソーマ症(眠り病)になる原虫がいなければ発病しませんが、運悪くそのツェツェバエに当たると大変です。

最初は刺されたあたりが大きく膨らみマラリア症状に似た熱と関節痛があるそうです。

ところが、その時期を過ぎると原虫が血液内で増殖して、遂には脳に及ぶといわゆる「眠り病」となり治療がほとんどできなくなるという事でした。

ガンビア型とローデシア型がありガンビア型では罹患しても数年生きられると言われていますが、ローデシア型は3か月くらいで死亡する急性症状だったのです。


平和そうな海辺の村ですが病魔は襲います

ちなみにザンビアって1964年の東京オリンピックの年に独立した国で、元の国名は「北ローデシア」でまさしく、サファリの野生動物の血を吸っているツェツェバエが媒介する原虫はローデシア型なのでした。

都市化が進んで発症例が少なくなっていますが、地方ではトリパノソーマ症になっても、それを検査することが出来ない状況だったので、多くはマラリアと誤診されたまま死んでしまうのでした。

そこで、その簡易検査キットを作る研究が国際協力機構、科学技術振興機構、国際北海道大学にある「人獣共通感染症センター」の皆さんの協力で行われていたのでした。

それから蠅蛆症(ようそしょう)の一つで衣類に産み付けられた蠅の卵から蛆が知らぬうちに皮膚に入り、皮膚の間を移動し時々空気穴をあけるとかなりの痛みがあるというのがありました。

青年海外協力隊で地方に入った隊員では結構これにやられたと聞いています。友達に頼んで蛆を引きずり出してもらったと語っていた知人がいました。

マカピーは怖くなって、洗濯ものをしたらしっかりTシャツまでアイロンがけをしてもらっていましたが、結局首都ルサカでは眠り病も蠅蛆症(ようそしょう)のケースを見る事はありませんでした。


オートバイは必需品

ところがですよ、今日もう一度村に戻ってみて「あれ?今日はあのお兄ちゃんは治療に来ないの?」とロビンに尋ねるたのでした。

ロビン:「なんと、朝彼がオートバイに乗って走って行ったよ!」
マカピー:「え、だってあの手じゃあ運転は無理でしょうに!」
ロビン:「それが器用に乗ってたよ。薬が効いたのかオレもびっくりしたよ。若いなあ!」

なんか違うような気がしましたが、ハナさんは笑っているだけでした。

マカピーでした。
最後までお読みいただき感謝します。疾病対策には地道な研究が必要です





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