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ゴメンね、ベン。 マカピーの日々 1456

マカピーです。
今日もハマナスレストランの挑戦は続きます。

昨日の社員慰安ピクニックへ行ってきましたが、その晩にベンに職場から去ってもらいました。

金曜日は午後3時から開店し午後は11時までレストランを運営することになっています。

ピクニックから帰って来たのですが、なんとなくダラダラ感覚がスタッフの気持ちに残っていたのは確かです。

それに気付いたハナさんが注意するのですが、うまく行かないイライラが感じられていました。


あの漁船でフィリピンへ行けるのかしら?

マカピーも夕食を食べようとすると、レストランにお客さんが来たのですが、なんだか厨房でガタガタしています。

戻って来たハナさんはちょっと興奮気味です。

「どうしたの?」マカピーはハナさんに尋ねました。

「お客さんに提供するご飯が炊けていないのよ。それなのに自分たちはご飯を食べようとしているって一体どういう事なの!?」

「え、じゃあさっきのご飯が最後なの? じゃあこれからくるお客さんにご飯が無いってこと?」

「だから、さっきベンを叱って私たちの夕飯よりも、早くご飯を炊くように言ってたのよ」

「彼だけじゃないわ。うちのスタッフはスマホを使って暇そうにしているけど全くルーチンが出来てなくても気にしないのよ。やっぱり仕事中はスマホを取り上げた方が良いみたいね」

「どうして言われないと全く動けないのかしら。だから毎日のように、お客さんへのサービスをどうするのか言い続けなくてはいけないのよ!」

「自分の頭で動けないスタッフばかりで・・・私、疲れたわ」


これでも最近ゴミを片付けるキャンペーンでキレイなっている市場の裏手

ベンはマカピー達がフィリピンへ出かける前に現れたシェフ補佐で「何でも料理できる」との触れ込みでしたが、実は何もできないブラフだったでした。

それでも、未成年のアジズが店の二階に一人で住居はまずいのでとりあえずシェフのラン夫妻に泊まり込んでもらう事になっていました。

それでもベンが宿泊するところが欲しいというので「じゃあアジズをよろしくね」と頼んで出かけたのですが、フィリピン滞在中に彼は夜半に心臓発作を起こして危うく死にかけたんです。

アジズからの緊急連絡で様子を聞き出したハナさんはアジズに薬品バッグからの薬を飲ませ発作が収まるまで背中を軽くたたくことをさせ何とか持ち直したので救急車を呼ぶのをとどまれました。

実はベンもマレーシアに住んで長いですが実は身分証明がない一人だったので、もしも彼が突然死すれば警察が来て、更に検死、事情徴集となればレストランの営業中止にもなりかねませんでした。

マカピー達が戻って来ると、ベンの他にもさらに3人も若者が増えていて合計4名も二階に住むことになっていたのです。

確かに人手が少なかったのですが、ランに「任せる」と頼んだ手前「二階にスタッフを住まわせない」方針が崩れるのを仕方なく受け入れたのでした。

スタッフは変わっても、不思議なことにこれまでのスタッフとの共同生活での経験と同じ事が起こるのでした。

身分証明のあやふやな若者が住むことは警察や出入国管理局の調査対象になる事でもあり、それを雇用していると雇用主も罰せられるのです。

スタッフもリスクを知っているはずなのに、状況に慣れてしまうと若者の行動は大胆になり仕事が終わっても戸外でタバコを吸いながら雑談している事が多かったのです。

その都度「部屋に戻って静かにしていなさい! あなたたちイミグレ(Immigration 出入国管理局)にしょっ引かれたらどうなるか知っているのでしょうね!」とハナさんが幾度も叱りつけていたのです。

実際に定期的なイミグレのオペレーション(違法滞在者捕獲対策)が計画的にしかも隠密裏に実施されています。

突然夜に対象地区周辺を警察官が取り囲んでしらみつぶしに「人狩り」をするのです。

身分の証明できない人は、警察の金網のついたトラックに乗せられて出入国管理局管轄の収容所に収監されてしまうのでした。

保釈金を支払えば保釈され国外退去という事になりますが、フィリピンやインドネシアからの不法滞在者が沢山収監されたままになっています。


あわよくば、魚のおこぼれをねらうサギたちが屋根上から見ていますね

マカピーがブルネイを旅した際に、そこで働くフィリピン女性(ビサヤ)と話をすると「私の友達もサバ州で捕まって収監されたままよ」と言っていました。

保釈は一人約1万リンギ(30万円)くらいで、違法滞在者の雇用では一人5千リンギ(1万5千円)の罰金が科せられるとも以前聞いてます。

そこで麻薬患者だったり犯罪への関与が判明すると、本格的に刑務所に収監され刑期が長引きます。

実際に、マカピーが関わった農産物ビジネスの地区の顔見知りは油ヤシの実を盗み捕まったのですが、麻薬中毒患者でもあったので8年ほどの刑期を言い渡されたとあります。

彼には家族があるのに、一体どうするのでしょう?

こちらは別の海で見かけたサギです

ベンには最初の一カ月で仕事ぶりを評価すると言ってありました。

残念ながらランが料理を教えても全く上達せずに、逆に任せるとトンデモナイ料理を提供しそうになりハナさんやランが止めに入る事が絶えないのでした。

つまり料理のセンスが無いのです。

そこでアシスタントシェフとして、彼には厨房をもっときれいにするように注意するのですが、叱ったりマカピーがやって見せないとタバコを吸うかスマホを見るだけで動かないのは最初から変わらずじまいでした。

ハナさんは一か月分の給与を渡しながら「結局あなたが出来ると言っていた料理は上手にならなかったわね。それに病気を抱えているのだから早くフィリピンに戻りなさい」と別れを伝えました。

マカピーはこれまで沢山の人がハマナスレストランで仕事をしては去っていったことを思い出しながら、ゲイでもあるベンにも彼に活躍できる場を提供できれば良かったのになあと残念に思うのでした。

ゴメンね、ベン。

クアンさんのいる町の水上家屋(レストラン)

誰一人として同じ人生背景を持った人はいません。

そして誰もが何とか生きようともがいています。

だからたまたまの出会いにしても、採用する際に必ず新人に「ハマナスレストランで働くことになったら一緒に成功しましょう」とハナさんは伝えるのです。

「そうして売り上げが伸びて来れば、あなたの給料もふえるんです」って。


ところが、なんと人間とは悲しい生き物なんでしょう。

自分の置かれた環境に直ぐに順応して「安きに流れる」傾向があります。

つまり、新人でオドオドしていたのも束の間で直ぐにサボり始めるのです。

スタッフでもないのにハナさんやマカピーそしてアジズが働くのを当然のように思いながらスマホをいじっているのです。

「流しの洗い物が溜まっているでしょう!」

「ゴミが落ちているのが見えないの?」

「トイレが掃除してないけどどういう事なの?」

「ティッシュペーパーが無くなっているのに補給されていないよ」


今日も、ベンのいなくなったハマナスレストランの挑戦は続くのでした。

マカピーでした。
最後までお読みいただき感謝します。一期一会だからこそ活かしたいチャンス。





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