さあ、逃げるんだ! マカピーの日々 ♯1537
マカピーです。
オートバイに乗ってハナさんのクリニックを手伝ってます。
今日も午前中にイフガオのロスリンのところへ行く事になっていたのは、昨日に診察するからと伝えてあったからです。
朝食を食べた後でイフガオへ行く前にまず市場に行ってハリー叔父との食事に必要な食料を買い出しました。
更に、ハードウエア店にいってスクリュー・ドライバーとプライヤーを買ってきたのは叔父のところのくくりつけが緩んでいるのが分かったからでした。
これで週末は過ごせそうですので、出かけようとしたその時に誰かが訪問しました。
あ、最近通い詰めているオジサンで手に何か持っています。
「これ食べてください」
なんと、生きたニワトリ(地鶏)です。
オジサンはお金がないのでこれまで3回の理学療法を施したのですが、支払うことが出来ないのでしたがハナさんはそれを承知で治療していました。
そして今朝は支払いの代わりの「モノ」を持ってきてくれたのでした。
フィリピンの田舎では、昔の日本の習慣のようにこうした「モノ」を持ってくる人がいるのだそうです。
そういえば先日「自分で作った豆菓子です」と小さな袋が50個ほど入ったプラスチック袋を持ってきたおばさん(患者)がいました。
「おや、トウモロコシのお菓子ね。あら、美味しいわ。ありがとう」
長丁場を予想している患者さんやその家族の多くは、自分で水や食料を持ってくる人がいます。
こちらもリビングの一角で施療しているので、目の前でご飯の準備をしたりおやつがあると、「ほら、ご飯を食べて!」「このお菓子美味しいわよ」とふるまい食べさせたりしています。
お互いにこの場の人たちがいろいろ持ち寄って食べていると、なんだかとってもアットホームな臨時診療所だとマカピーの心はホッコリしたのでした。
それで、オジサンの治療を終えて出発したのは午前11時を回っていました。
午前中には何とかたどり着きたいなあ!
道路のしっかりしたルートは5㎞程遠回りになりますが、近道は未舗装部分が多く埃だらけの道なのですがそちらを選びます!
とてもいい天気で、イフガオの山々には雲がかかっていますが雨雲でないので何とか一日持ってくれればいいなあ。
このルートのクライマックスは州境を流れる川にかかる橋です。
洪水でも流されないように設計された立派な橋ですがいまだに建設中です。
中央部分はほぼ完成していますが橋へのアプローチの部分がありません!
新しい橋を見上げるようにその脇を仮の橋が架かっていますが、雨季で流れが逆巻く本流にかかる部分は鉄製の橋なのですがなんと片側通行なんです。
しかも誰も交通整理をする人がいないので「アウンの呼吸」で両方向からのバイクや車が「譲り合い」していました。
お互いがオートバイの場合は良いのですが、相手がトライシクルとなり車幅が広がると緊張が走ります。
だってその脇を走り抜けるにも、橋の欄干などないので停まってやり過ごすことになったら誤って転落してしまう恐れがあるからです!
まるで河原の玉石だらけの道路をバイクで行くのですが、マカピーも次第にこのホンダのスクーターの運転に慣れてきました。
150㏄ですが、ノンクラッチでとっても安定しているので坂道でも問題ありません。
ハリー叔父はハナさんに「出かけるのに車が無くて不自由させて悪かったね」と謝っていたそうです。
このバイクがあるだけでもマカピー達はラッキーです。
確かにヘルメットを購入したりしましたが、ハリー叔父の息子のマーンはBMW社のバイク部門と仕事をしているらしくこのバイクも彼が整備してくれていました。
灌漑用水路を幾つか渡り、バランガイ(村)を幾つも抜けてロスリンの家に着いたのは11時45分でした。
そこには、すでに10人ほどの人がハナさんの登場を待っていました。
彼女が診察を始めると、マカピーは急に暇になります。
しばらくは彼女の診察の様子を見ていますが現地語が分からないのでスマホを取り出すのですがインターネットの接続が無いので写真を撮るくらいしか使い物になりません。
ロスリンが昼食を用意してくれ、マカピーは誘われるままそれを食べるのですが一方のハナさんは患者さんを待たせて食事をとる事はしません。
どうやら、これは以前からのスタイルだそうで時々水やコーラを口にする程度です。
マカピーが椅子でうつらうつらしてくると、ロスリンが「あっちに寝床をとったのでどうぞ」と昨日と同じように案内してくれるのでした。
最初はそこからハナさんの診療を眺めているのですが、次第に瞼が下がり知らぬうちに昼寝をしているマカピーでした。
ここ数日苦しめられていた胸の痛みも薬が効いて来たのか耐えられる程に落ち着いてきています。
フッと気が付くと時間は4時を回っていて、辺りはかなり薄暗いのでした。
患者さんやハナさんが見えません。
ロスリンがやって来てブラックコーヒーとキャッサバのお菓子を持ってきてくれたのはハナさんがそうするように伝えていたからだそうです。
ロスリンに「ハナさんはどこ?」って聞くと「別の場所で治療している」そうでした。
やがて5時ころになるとますます暗くなってきたのは雨雲が近づいてきて夕陽を遮っているからでした。
そこにハナさんが帰って来たのですが、どうやら最後の家族が彼女に従ってきて診療が開始されました。
その診療が終わると同時に、屋根にパラパラと音がしました。
「雨が降って来たわね」とロスリン。
そりゃヤバイよ、ボクらはオートバイなんだから!
マカピーはいったん家の外に出て雲の様子を確認しました。
さて、どちらのルートが雨に遭遇する確率が少ないか?
もう暗くなっているけれど、雲の様子から近道ルートで帰ることに決めました。
そそくさと帰り支度をして、「週末は来ないから月曜日ね」とロスリンや患者家族にサヨナラをしてバイクにまたがりました。
すでに空の半分は黒い雲に覆われ、マカピー達が向かう先の雲からは雨のカーテンが下がっている様子が手に取るように分かります。
さあ、逃げるんだ!
あの、雨雲のカーテンに捕まらないように急ごう!
マカピーは無理をしないように安全運転をしながらも急ぎます。
やがて最難関の橋も工事中のトラックに一時停止させられるも無事に通過。
ハリー叔父の家にたどりつくと、午前中に干していた洗濯物が取り込んでありました。
隣の家のマリアが雨が降りそうなので取り込んでくれていたのです。
ありがたいですね。
家に入りハリー叔父に帰って来たと報告していると突然サーッと雨が降り注いできました。
到着から10分足らずの出来事で、マカピー達は雨にぬれずに帰って来ることが出来たんです!
ラッキー!
マカピーでした。
最後までお読みいただき感謝します。危なくても安全第一走行!