見出し画像

怪異合同誌「名無しに代わりまして」感想

※こちらはよみ34様主催、私 makaも参加させていただきました、創作怪異合同誌「名無しに代わりまして」を読んだ感想になります、ネタバレを大量に含みますので、まだ本を読んでいない方は是非購入してから読んでくださいね!電子版もあるぞ!

※参加者氏名と作者名が違う人もいらっしゃいますので、作者様呼びで統一させていただいております。作品への感想+PS.〜は作者様への感想になります。というかプレゼン資料みたいになってる。

※恐れ多いのですがFAも添えております……小説作品のキャラデザは挿絵があるものはそれを元に、無いものは主催様が描いたものを使用させていただいたり、私が勝手に妄想したものになりますので、苦手な方は薄目で見てください……!


「自撮り鬼ごっこ」「ずるり」

何考えているかわからないしオカルト好きでいつか死ぬぞ!って思う程危なげな行動をしているのに、自分の危険に対しての察知能力が高く生きることに向き過ぎているK先輩と、圧倒的巻き込まれ体質の不憫属性SSS+の作者様がおりなす巻き込まれ型ホラーコメディ!二人に起こる現象は不可解で謎が多い……とは言いつつ、K先輩が自分から深淵を覗きに行っているので因果応報ではあるのだけど、そんな理不尽に負けない二人の個性が読んでて小気味良い作品でした!二人の性別がどっちかわからない……ということは男男、女女、男女、女男、4種類楽しめる……ってコト!?実質4回読めるじゃないですか!おすすめは作者巻き込まれ不憫男、K先輩が僕っ子オカルト大好き変人女子ですね(ろくろ回し)普通にキャンプデートしてる……いいね。「ずるり」の方の怪異が蛇なの、まさに「藪をつついて蛇を出す」というお話になっていて最高ですね!

PS.K先輩がこんなに連れ回す相手が作者しかいない……という特大エモ感情が隠れているような気がしております。オフフ……これは妄想ですが、作者男、K先輩女の場合(場合ってなんだ)作者はビクビクオロオロしつつ半泣きになりつつも、K先輩がコケそうになった時は普通に腰に手を回して助けたりしそうな感があって非常に興奮を禁じ得ないですね(メガネチャキ)そして、主催お疲れ様でした!楽しく書かせていただいて、怖くて面白い怪異の話がたくさん読めて最高企画……!スレ立て乙です!


「手つなぎ」

S先輩推しで〜〜〜す!私は高笑いする自信満々だけど聡明で顔がいい男が推しです。わっはっはと元気に笑うイケメンのくせに文章書くのかい貴方……推しなんですが……?そして、S先輩とK先輩とYちゃんのトリオが可愛くてしゃーない!愛おしい……ここに恋愛感情は無く「仲間」という大切な繋がりがあって、全員が全員を大切に思っているのがとてもよくわかる……S先輩もKくんも、普段気軽に女子とよく話すタイプじゃ無さそうなのに、Yちゃんのことを大切に思っている描写が多くて、そして二人とも申し訳ないと思ったらちゃんと謝れる良い子で、百合をよく描かれる作者様だけど、その中に出てくる男子キャラの描き方が凄く素敵!私は女慣れしてなさそうな男が女子のこと大切してる描写が好きなオタクです。Yちゃん周りのお母さんや友人も含めて、表の人間関係が全員優しくて人に恵まれているのがわかる素敵な関係性が大好き!
……そして、それが色濃くキラキラと輝く度に、今回の怪異だけがこの作品で一人ぽつんと苦しく悲しく置き去りにされているのが表現されていて、作者様の文才に圧倒されます。初め読んだとき、怪異になってしまった過去の女子高生ちゃんは母と娘両方から手を離されてしまった……と悲しい百合だと思ったんですが、読み返して思ったのは、一緒に死のうと手を取り、そして離された女子高生の怪異は、手を離した相手が後に、娘を愛する優しい母となり生きているのを見て、思うところはあったのではないかと思います。一度は一緒に死のうと思える程に愛していたんだもん。「あの時貴女は死なないでよかった」と全てを許すことはできなくても、その先の人生を生きていることを最期に知れたのは、きっと悪いことだけじゃないと思う。

PS.挿絵がプロ作家すぎてびっくりしました。一枚目の挿絵とか青い鳥文庫じゃん。これ小学生の頃読んでたら怪異のイラストがトラウマになってたしイラストが好きすぎてめっちゃ影響受けてたと思う。S先輩が好きです。S先輩が、好きです。S先輩と同じクラスの女子になって3年のバレンタインの時に「余ったからあげる」ってキットカット渡して「受験頑張ってね」って言うモブになりたい。


「怪異の発生」「パンドラの家」

「パンドラの家」:惚れた腫れたの恋模様より、田舎の情報網の広さと世間体を気にする部分に等身大の中学生を感じました!田舎の情報網、まじで早いよな……男子くんにとっては隣の女子との噂話よりも、もっと大きな誰にも言えない使命を背負っているのでサラリと言ってのけれるのですが、主人公にとってはたまったもんじゃない。まるで自分が当事者になったかのようなむず痒さが活字だけで表現されているのが凄すぎる!今回の脅威は怪異そのもの+誰もが尊敬する村のお偉いさん。そしてその人こそが女児誘拐事件の黒幕。そんな事実を一端の男子中学生一人で告発するのは無理だと悟ってのこの騒動。この男子くんは聡明で身の振り方をよく考えている子、読んでいてハラハラはするけどモヤモヤはしない、ちょうどいいバランスが読んでいて心地よかったです。でも主人公にとってはたまったもんじゃない(2回目)!作者様の文章は、淡々と描写されているのに頭に情景がスッと浮かび、まるで体験記を読んでいるような臨場感に、文章とは相対して情緒は乱されまくります。感情ジェットコースター……!家の中を廻って外へ逃げるシーンなんて心臓がバクバクしてカビの匂いが鼻を抜けながら走っているような感覚に陥りました。ドアを開ける音がトラウマになりそう……家から脱出した体当たりを提案したのが主人公の方だったのも、この二人が一緒に居ないときっとバッドエンドだったというのが想起させられてゾクゾクします。最後、後日談をもスルスルと事実を書いていくような文章の中に、妹の手の温かさや田舎の帰り道の匂いが感じられるノスタルジーさに、文章に温度が感じられてとても素敵!難しい言葉を使っていないのに、読み物としてのクオリティがとても高くて、作者様の文章力の高さが窺えるような話でした!
「怪異の発生」:そして、こちらの話では「パンドラの家」がじわじわと追い詰めるホラーだとしたら、グッと心臓を絞られるような急直下のホラー。「死ねよ」という言葉に言葉以上の魔力が込められております。たった3文字の言葉一つで自分の人生が変わるわけでもないのに、言った後と言われた後の人生の見え方、心のしこりは絶対に変化しているような、THE・ホラーのお話でとても怖かったです!

PS.個人的に、自分以外にも二作書いている人がいて安心しました(笑)数ある洒落怖の中でも「禁后」は怪異とミステリーのバランスが丁度良くてとても好きなので、それを元にされた作品が読めて嬉しかったです!


「夢落ち」

短編なのに、読んだ後にぐっと重みが残る満足感のある文章!個人的に作者様の絵も文章も大好きで大ファンなので、こうやって読めるのが超嬉しいです。あいも変わらず貴方の文章が好きだ。短い文章でここまで世界観に引き込めるものを作れる才能に脱帽です。そして掲示板という特性を活かした文章、書いているということは本人が生きているという安心感があるわけで、それが最後覆されるのは、一気に体が強張り緊張が走ります。最高!

PS.「カシラケ」の挿絵ありがとうございました!合法的に貴方の黒髪儚げ耽美男を見れると聞いてキャラデザしました。やったぜ。「カシラケ」完成できたのはまじで挿絵の力が大きい。二枚目の挿絵の人間の形をした神様のような人外の青年は私には絶対に描けなかったので、頼んでよかったです。頭なでなでしたい東条楓を描いてくれてありがとう!!!猫東条楓も最高です!ギャップで皆風邪引くであれ。(FA描きたかったんだけど、文章として完成されすぎていて表現できませんでした……)


「ミマモリ様」

漫画、うま過ぎ〜〜〜っ!!読みやすさや絵の上手さもさることながら、表情が特に秀逸!ここのコマでこう!とバシッと決まるような表情を魅せてくださるので、ホラー漫画でしっかり怖いのに、読後はもはや爽快感すら感じるような……いや、ラストページ怖過ぎ……夢に出るよ……「ミマモリサマ」という言葉、存在の説明が途中で終わっていながら、こちらへ走る足を見た後に説明の続き、「ああ、これもう動いたから終わりやん」とゾクゾクさせる展開、10Pとは思えぬ充足感でした……!あと幼女ミマモリサマの2chの解像度に笑いました。それにしても漫画がうめぇ〜!キャラクターはデフォルメ寄りで、怪異はリアル寄りなのに同じ作家の絵であるとすぐにわかるのは絵が超絶上手い証拠なんですよね……!本当に怖かった……!

PS.自分の他にもう一人漫画を描く人が居ると知って、とても安心して漫画を描きました。実は、漫画描くの一人だったら「さねじき様」描くの諦めていたので執筆中の精神安定剤でした。ありがとうございます……!漫画二本が「〇〇様」タイトルなの素敵!と勝手に一人で小躍りしてました(笑)


「さねじき様」「カシラケ」

お人好しアナログオカルトライター×怪異に詳しい大学院生デジタル漫画家のバディ物です。怪異×ブロマンスバディが大好き!洒落怖大好き人間なものでウキウキプロット描いたら漫画48P小説39Pとかいう……君さぁ……。主催にはご飯を奢ります。
わかる人にはわかるんですが、「さねじき様」の元になった2chのスレッドがあります。あの話大好き。「カシラケ」も一応マイナーですが元ネタがあります。二作ともしっかりと種明かしをしているのですが、恐怖がカタルシスになるホラーというよりは、謎解明がカタルシスとなるミステリーの方がジャンルとして近いんですよね。ホラー自体は苦手です。未知、というのが怖くてたまらない。普段小説は推理物しか描かないので、不可解な現象への動機や理由を少しづつ紐解いて行きました。
実は前にも、洒落怖風小説として「指輪」という同人誌を出したのですが、それと世界観がつながっています。「カシラケ」で楓が連絡を取っていた民俗学に詳しい知り合いは、指輪のPの彼氏です。指輪は「呪い」をテーマに一本書いた話で、こちらも男子幼馴染がメインです。ちなみにこれは「巣くうものシリーズ」が元ネタです。あの話も大好きなんですよ……!
4話完結、再録はしていますのでpixivに全文あります。そしてなんと2話まで主催様が朗読動画を上げてくださっているぞ!こんな幸せなことがあっていいのか……!

柳と楓の話はまだまだ書き足りないので、いつか二人の物語をもっと増やしていきたいと思っています。柳の強火過激ファンの楓はクソデカ感情拗らせているんですが、当の柳はサラッと人助けで命張るようなお人好し狂人。意外にもまともなのは楓の方だったり……。

そんな楓は、昔怪異に巻き込まれて即死に近い状態だった所を、近くの神社の神様がたまたま「怪異などの人智を超えた現状に干渉できる」力を持ち、その神に怪我を治してもらう代わりに、体を作り替えられた半神様の人間です。名前のない不可解現象に名前をつける「名無しに代わりまして」というこの本のタイトルから思いついたこの二作、楽しんでいただけたら幸いです!

おわりに

これは、柳と楓のまた別のお話。短編小説です。時系列的には「カシラケ」の半年後が「さねじき様」、そしてこの話はそのまた半年後くらいかな。お暇があるときにでもどうぞ!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?