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銀ちゃんといっしょ 98

介護って…15

玉子焼き用のフライパンを処分した
買った時の事を覚えてる

母がまだどうにか一緒に買い物に行けた頃
このフライパンを買うというから
〝玉子焼きなんて最近作ってるっけ?〟と聞いた

母は何も言わなかった

息子(兄)と二人暮らしで料理はしていたけど
玉子焼き用フライパンを使ってまで
ちゃんとした玉子焼きなんて作っていないと
思っていたから

でも買うと言うなら反対する理由は私にはない

おまけに天婦羅用の鍋まで買うと言い出した
小ぶりで使い勝手は良さそうだけど
天婦羅なんてもう何年も揚げていないはず

おかしいな…とは思ったけど
暇をもてあまして再び料理に目覚めようと
思っているのかも知れないとも思い
買って帰った

週に1度泊まりに行っていたけど
料理はだんだん手抜きになって
ほぼお惣菜を私が買って行って
それに手を加える程度になっていった

行く前に買い物リストを聞くために
電話をしていたけど
それも
〝なんでもいるものを買ってらっしゃい〟に
なっていった

あれやこれやで母が亡くなってから
キッチンを見てみると
玉子焼き用のフライパンも天婦羅鍋もそのまま
使われずに置かれていた

やっぱり……と同時に
もうあの時から傷んでいたんだなぁと寂しくなった

よく認知症はいつから…なんて言うけれど
いつから…とかいう問題じゃなくて
何十年も使っている機械が傷んでいくように
人の身体だって少しずつ誰でも傷んでくる

ただそれだけの事

その使われずに置かれていたフライパンが
今日処分したフライパン
娘のお弁当作りが始まって毎日酷使していたから
底の色もわからなくなっていた

ところで
母が亡くなったのは何年前だったっけ?

私の身体も間違いなく傷んで来ている



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