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酒との出合い

青春の若き夢
壮高し
酒が
光陰が
思いを
醸す


「愉しさ発見」(1986年作品)より

 小学校の五年生の頃、祖母の留守中に、いつも祖母が猪口に一ぱい寝酒に旨そうに飲んでいる梅酒を発見。ちょっとー口と、猪目に一ぱい。甘くて口の中でとろけそうな味にビックリ。二口、三口とその甘さ、旨さにつられて、たて続けにロへ。のどから食道を伝わって、胃の周辺がほんわかと温たかく、熱くなっていく感じはいまも忘れません。それに味をしめ、時々、盗み梅酒。
 それから間もなく、雪の降る夕刻。留守番の駄賃とばかり、祖母の梅酒を水屋の棚の奥から引き出し、大胆にも、コップに一ぱい、なみなみと。ジュースを飲むような感じで一気に、ゴクゴクと飲み干す。
 近所の友だちと缶けりで走り、飛びまわり。暖たたかい煉炭の掘ごたつの中。コップ一ぱいの梅酒。と三拍子。いつの間にやら、掘ごたつの中で、いい気分に寝てしまった様子。留守番をしているはずの本人が居ないと大騒ぎになっているとはつゆ知らず、発見された時は、一酸化炭素中毒で救急車を呼ぼうか、どうしようかと皆んなでウロウロしてたらしい。何も知らぬげに目をさました本人は、周りで心配顔にのぞきこんでいる皆んなに、「お帰えり」、とひとこと。その時の皆んなのほっとした様子は、いまも、はっきり憶えています。唯、梅酒の話は、あの世に行った、厳しかった祖母には、いまも内緒。
 高校時代の青春のまん中。悪ども達が、七、八人、授業の途中で教室をぬけ出し、友人の家に集結。酒の肴は、友人の家の近所の酒屋で、スルメや、缶詰、あられ、酢昆布、ビーナッツ等々、山盛り付け買い。
 酒は、友人のおやじ御自慢のウィスキー二、三本。皆んなコップになみなみ。高価なウィスキーをぐっと飲み干し、大人の気分。大音量でレコード回し、大合唱の青春哀歌。光陰矢のごとし。悪ども達も、いまや壮春のまん中。
 以来、三十余年、酒の道に進むも、いまだ極めず。

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