初日の出

12歳の少年が世界を変える

        「疑問から始まります」


「僕も借金してるの?」

「僕も借金を返さなきゃいけないの?」


この物語は

「国の借金は国民が返す」

「次の世代に借金を残さないように」

テレビの報道番組を見ていた

小学6年生の男の子の疑問から始まりました。


男の子は希望稔というごく普通の男の子。

父親は証券マンで転勤が多く単身赴任です。

お母さんは中学の教諭で妹は小学3年生。

庭付きの一戸建てで郊外に住んでいます。

稔は幼いころから父親の持論を聞いてきた。

「お金は社会を良くするためにあるんだ」と・・・


ところが

「まだ働いてもいない子供にも借金のために苦しむなんて、

大人が言ってることは変じゃないか?」

心の中でモヤモヤしたものが湧いていました。

社会の時間では担任の先生に

「お金は社会が良くなるためにあるって

お父さんから聞いたのにどうしてお金で苦しむ人が多いんですか?」

と聞いてみた。


「それはね、国も国民もお金の使い方が良くないんだと思うよ」

と先生は言ったけど

稔の疑問は解けなかった。

むしろ、

これ以上聞いたところで自分を納得させて

くれる答えは期待できそうになかった。

とにかく借金をしたことのない借金を

返さなければいけないことに

憤慨をしていたのだ。


稔の頭の中には

借金の二文字が住み着いてしまった。

借金をどうすれば良いのか?

自分の将来が

どうなるのか考えるようになります。

「そうだ、お父さんに相談してみよう」

と心の中でつぶやいてみたものの

「どうせいつものようにお金の大切さを力説するんだろうな~」

と諦めてしまった。


とりあえずお母さんに聞いてみようと

思った稔は台所へ向かった。

「ねえ、お母さん気になっていることがあるんだけどね」

「なあに」

「僕んちも国の借金を返してるの?」

「え~!そんなこと考えたことないわよ」

「どうして?」

「家のローンなら我が家の借金だけどね」

「そうなの?」

「確かに税金を増やして国の借金を埋めるみたいね」

「あ!そっか~」

稔は何かに気が付いたようです。


「消費税を上げるって言ってたけど国に

収めるお金を増やして借金を返すことなんだ」

「そうね、国の借金も家の借金も国民の

生活が苦しくなるのは確かね」

お金があれば行きたい所にも行けるし

欲しいものが自由に手に入るから

お金は便利なものなのに、

どうしてこんなに苦しまなきゃいけないのか

疑問は広がっていった。

「こんな難しいことはインターネットで

多くの人の意見を聞いてみたらどう?」

お母さんもどう説明すればいいのかわからず

稔に提案してみた。

稔の部屋には中古のパソコンが

インターネットに繋がれていたのだ。

学校の授業でパソコンを使うことがあり、

稔は中古でいいからと買ってもらっていた。

「インターネットで質問したら多くの人の意見も聞けるよね」

さっそく自分の部屋に戻った。

机の前に座ってパソコンの電源を入れながら

「さあ、どんな所で何を質問したらいいんだろう?」

稔は不安だらけであった。


        「失望から希望へ」


稔は日本の未来について

ネットサーフィンをやってみた。

多くの人は悲観的に

未来を見つめているようだった。


ある掲示板を見ていると

「ここまで膨らんだ借金は返せるはずないよ」

「収入以上に支出が多い政策はいつまでも変わらないです」

「政府のお金の使い方が悪いんだよ」

国の政策批判の書き込みが目立つことにうんざり。

稔の頭の中ではいろんな言葉が頭の中で駆け巡っていた。

「大人が未来を悲観的に思うんだったら子供が不安になるのは当たり前だよ」

「やはり借金が原因なんだろうか?」

「今の大人がこの社会を良くすることが出来ないのに未来の大人が良くすることなんか出来ないよ」

「じゃあ、日本の未来を良くするために何をすれば良いんだろう?」

と思い検索してみた。


日本企業が世界との競争で勝つこと、

経済的に豊かになること、

経済成長を続けること。

なんだか恐ろしい気持ちが湧いてきた。

「競争を続けないといけない」

「奪い合いに負けてはいけない」

知ってはいたけど生きるために必要なことだと思うと身震いがしてきた。

「だから子供のころから競争を教えてきたんだ」

「自分が勝つためには相手が負けること、相手が失敗することが良いことと教わってきた」

「お父さんもそういう世界で働いているんだ」

お父さんのことが可哀想に思えてきた。

お父さんが僕たち家族を養うために

競争に負けないように戦っている。


稔は涙が込み上げてきた。

お金は人をしあわせにしてくれると思っていた。

人はお金を求めて競争をしている。

競争で勝てばしあわせになれるけど、

競争で負ければ・・・・。

稔はこの社会が怖くなってきた。

家のローンの借金は返すために努力しているけど、

国の借金は誰も考えようとはしない。

稔は借金より大人の社会に不安になっていた。

稔は

「大人も子供も夢や希望の持てる世界は出来ないの?」

と思った。

そう言えばお父さんから

こんなことを言われたことがあった。

それは

「お金がないと何も出来ないからお金は大切にしなきゃいけないよ」と。

「やっぱりお金は希望や夢を叶えるために

必要なんだ、だから経済を活性化させて

みんなにお金が行き届くようにしているんだ」


それでも

「お金がないと何も出来ないって変じゃない?」

という疑問も湧いてくる。

その疑問を

インターネットで検索してみた

「お金がないと何も出来ないって変じゃない?」と。

そうすると

「はっきり言って世の中は金です」

「お金があれば大抵の事が出来ると言えますよ」

「物々交換や善意のみでは生活できないよ」

「お金が安心や信頼をもたらしてくれます」

「お金(仕事)がないと結婚もできません」

なんと

お金の大切さを力説するコメントが多い。

すごかったのは

「人間は動物と違ってお金というものを使って

文明社会を作ったんですよ」と。

お金を使う人間の素晴らしさを強調していた。

人間が動物より優れているって学校で聞いたことはあるけど、

「本当にそうなの?」と言いたくなった。

それは

「地球をこんなに壊して住みにくい環境を作ったじゃないか」

「お金がないと何も出来ないなんてやっぱり変だよ」と。


稔は

「大人の人でも僕と同じように疑問を

持ってる人はいるんじゃないかな~?」

と期待しながらいろんな掲示板を捜し求めていると

「物々交換が無くなったらお金は無くなるよ」

というコメントが目に入った。

この世の中は

お金のおかげで物々交換から開放されて

便利な社会になったと教わってきたのに。

「物々交換が無くなったら」

と言うことは

「今の社会は物々交換の社会なの?」

と新たな疑問が湧いてきた。


       「常識って何だ?」


「物々交換が無くなったら」

というフレーズが頭の中を占領してしまった。

稔は

「当たり前のこと」が揺らいでしまった。

世間では【常識】と言うが。

稔は頭の中を整理しないと前に進めないと思った。

「え~っと、最初は何だっけ?」

国の借金は僕たちが大人になっても返さなきゃいけない。

借りた覚えのない借金をなぜ払わなきゃいけないの?

借金を返すために重税を課せられて生活が苦しむなんて許せない。

お金は人を幸せにしてくれると思っていたのに、

お金のために苦しむのは変。

お金の大切さはお金がないと何も出来ない社会だからと言うことは

お父さんの教えでわかった。

親から教わったことが当たり前だと思っていた。

学校で習ったことは

「お金が出来たおかげで物々交換をしなくなり、

お金はいつまでも保存が出来る便利な道具です」

と。

だから物々交換はしなくてもお金さえあれば何でも交換できると

思っていた。

それなのに

「物々交換が無くなったら」

と言っている。

そのコメントを書いた人に聞いてみようと思い

「今の社会は物々交換じゃないでしょ?」

と書き込んでみた。

しばらくして返事が返ってきた。

「お金は物々交換を便利にするために作られたものですよ。

物と物を交換するには不便だから

信用のあるお金と言うものが交換するモノに変わったんです」

たしかに

人間社会では自分が欲しいものは自分が持っているものを手放して

他人のものと交換しなければ何も手に入れることが出来ない。

お父さんに教わった

「お金がないと何も出来ない」

ってことは

「お金がないと何も得ることができないってことなんだ」

稔は納得した。

そして稔は改めて聞いてみた

「物々交換が無くなったらなぜお金は

無くなるんですか?」と。

「物々交換を便利にするためにお金があるでしょ?

物々交換が無くなればお金は必要ないんですよ」

「じゃあ、

お金のない社会が出来るんですか?」

「ええ、そうですよ」

稔は衝撃を受けた。

「そんな、この世からお金が無くなるなんて」

そして

「お父さんの仕事はどうなるの?」

稔は12年の短い人生でも

世の中の常識はわかっているつもり。

お父さんが家族を養っていること。

お金があるから生きていける安心感。

今までになかったお金のない社会。

いや、

「お金が存在しない原始的時代に戻ってしまうの?」

稔の頭の中はまた混乱してしまった。

「すみません、僕の頭の中が混乱してよくわからないんです。

よくわかるように教えてください。

お金のない社会ってどんな社会ですか?」

「そうねえ、君は家庭の中でお金のやり取りをしないでしょ?」

「はい、しません」

「なぜお金のやり取りをしないの?」

「それは家族だからです」

「家族は何人いるの?」

「家族は両親と妹と4人です」

「地球が一つの家族だったら?」

「あ!」稔は何かに気がついた。

稔は宇宙に興味を持った時期があった。

地球は太陽の周りを回る青色の惑星であることも知っていたし、

地球は【宇宙船地球号」という名前も好きだった。

稔は続けて質問をした。

「地球の上に住んでいる地球人を一つの家族として考えるんですか?」

「そうね、そのように考えたほうがわかりやすいわね」

「70億人以上の家族って一度も思ったことがないです」

「宇宙空間から見ると地球って小さな惑星よ」

「そうですよね」

稔はなんだかワクワクしてきた。

それは

夏休みの一人旅行を夢見ていたのだ。

「一人でも旅行できるじゃないか」と。

「ねえ、旅行だって自由に出来るんでしょ?」

「そうよ、運賃も食事も泊まる所もみんなタダだからね、

 ただし両親のお許しは要るわね(笑)」

「わーい!いろんな冒険だってできるんだ」

稔は国の借金のことなんかすっかり忘れていた。

そのとき

「すみません、突然割り込んでしまいました、

 お二人の会話をしばらく傍観していたんですが、

 僕も興味があるので参加させてください」

「いいですよ、僕は稔と言います、小学6年生で12歳です、

 よろしくお願いします」

「僕はお金を稼ぐことに疲れた23歳のサラリーマン栄治えいじです、

 よろしくお願いします」

「申し遅れましたね、私は60歳の主婦素子もとこです、

 よろしくね」

稔はなんだか仲間が増えてきたことで不安から解消された。


      「物は何のために作るの?」


稔は新しく参加した栄治のコメントに興味があって聞いてみた。

「栄治さんはお金を稼ぐことに疲れたって言われましたけど、

 どう言うことですか?」

「僕は大学を卒業して大手の会社に就職したんだけどね、

 売り上げを上げるために働かされているって感じで、

 なんだか自分らしくない仕事をしている違和感を感じたんだよ」

そこで主婦の素子が

「そうよね、会社に入れば会社が儲かるための労働が義務付けられるからね、

 この社会の当たり前のことなんですね」

「そうなんですよ、僕の先輩なんか売り上げが少ないからって、

 あたかも仕事をしていないかのようにイヤミを言われて転職を考えているんです」

「こんなに景気が悪いと転職するにも希望の仕事は見つかりにくいわね」

稔は素子に聞いてみた。

「お金のない社会だったらお金を稼がなくても良いんでしょ?」

「そうよ」

「だったら、働かなくても良いってことですか?」

「働きたくない人は働かなくてもいいけど、働きたくなる社会になるのよ」

「どういうことですか?」

またまた稔は疑問が増えてきました。

働いても働かなくても良いなんて。

「稔君はお家の中で働いたことがあるでしょ?」

「え?子供は働かないでしょう?」

「誤解しないでね、稔君はお家の中でお父さんやお母さんのお手伝いを

 するでしょ?」

「はい、それなら毎日やってますよ」

「自分の周りの人の役に立つことを働くって言うんですよ」

稔は働くことはお金を稼ぐことだと思っていた。

お金を稼ぐためには仕事を探して働くことだと思っていたのだ。

「あの~、僕のことで言われたらよく分かったんですけど、

栄治さんのように大人の人はどうなるんですか?」

「以前にも言ったけど、世界が一つの家族として考えれば

 分かりやすいかも知れないわね」

「あ、そうでした」

稔の頭の中では理解が半分不安が半分あるようです。

「あの~、さっき働かなくてもいいって言われましたよね、

 働かない人が多かったら困るんじゃないかって思うんですけど」

「ぜんぜん困らないわよ」

「どうしてですか?」

「生活に必要なものを生産して生活に必要なサービスがあればいいんでしょ?」

稔はわかったようなわからないような気分です。

「あの~もうチョットわかりやすいようにお願いします」

「では、電気・ガス・水道・着る服や野菜や魚などの食料、

 車や電気製品、学校や病院、遊園地公園など

 いつでも使うことができれば良いわよね」

「はい、それならわかります」

「いま、稔君は生活するのに困ってることはあるの?」

「いえ、無いです」

この話題は何を意味するのか?

生産って何だろう?

売り上げって何だろう?

稔はもうチョット聞いてみたくなった。

「生産って必要とする人がいるから作るんでしょ?」

と素子に質問を書いてみた。

「そうよ」

「日本では物があふれていっぱい余ってるって聞いたことがあるよ」

「でもね工場は作り続けないとお金が入ってこないのよ」

「余ってるのに作り続けるの?」

「それはね外国に輸出して売ってるの」

「そうなんだ」

稔は納得したけど世界が一つの家族と考えれば疑問が起きた。

「あの~もう一つ質問して良いですか?」

「どうぞ」

「社会勉強で輸出する車の船積みを見に行ったことがあるんです、

 すごいなーって思ったけどこれだけたくさん運ぶのなら現地で作れば

 良いのにって思ったんです」

「自動車会社が世界に一つしかないのならすべて現地生産するでしょうね」

そこへ栄治がコメントをはさんだ

「会社がいっぱいあって競争するから仕方がないんだと思うよ」

稔は栄治に聞いたみた

「栄治さんは売り上げを上げるために働いているんでしょ?」

「そうだよ」

「売り上げを上げないとどうなるんですか?」

「給料泥棒と言われたくないから辞めるだろうね」

「給料泥棒ですか?」

「会社で働くためには会社が儲かるために働かなきゃいけなんだよ、

 会社が儲かっていないのに給料だけもらうのはつらいよね」

稔はお金の要る社会での大人の大変さが分かったような気がした。

稔はお金の要る資本主義社会という言葉を検索してみた。

<資本主義社会は、

まず第一に商品生産者の社会である。

各人は生産手段を私的に所有し、

私的労働の産物である商品を相互に

等価で交換する。>

「僕調べてみたんです、

 お金の要る日本では資本主義社会って言うんですよね、

 やっぱり交換って書いてありました」

「そう?よく調べたわね」

「物々交換がなくなればお金もなくなるって言ったよね?」

「そうよ」

「じゃあ、働くという意味が変わるの?」

「そうね、変わるわねお金を稼がなくても良いんだからね」

「僕、学校でボランティアというのに参加したことがあるんです、

 ゴミ拾いとか老人ホームでの演奏会とか、それを思い出しました」

「そう、えらいわね、ご褒美はお金ではなく誰かが喜んでくれることでしょうね」

「はい、それを思い出したんです」

稔はお金のない世界はボランティアの世界だと思った。

でも、

「ボランティアだけの社会なんて出来るのか?」なぞは深まる。


       「交換しない社会」


稔はボランティアの素晴らしさや大切さは体験して理解していた。

しかし、

ボランティアしか存在しない社会なんてあり得るのか疑問だった。

人生経験豊富の素子に質問してみた。

「素子さん、僕は経験不足でよくわらないんですけど、

 ボランティアだけで大丈夫ですか?」

「人生経験は稔君より多いけどボランティア社会はいままでなかったからね、

 私なりの意見だけど大丈夫だと思うよ」

「どうしてそう思うんですか?」

「それはね、私の実家が農家なの、野菜やお米を作っているのよ」

そこでコメントが終わっていた。

稔は「どうしたんですか?」とコメントを書いて心配していたら・・

「ごめんなさいね、主人が帰ってきてご飯の支度をしなきゃならないの、

出来たらインターネットで農家の働く年齢を検索してみてね」

「はい、わかりました」稔は安心した。

稔は農家の働く人たちの年齢を調べれば何かが分かるんだと思って検索してみた。

農林水産省のHPで調べると平均年齢が67歳とあった。

稔は小学5年生のとき社会科で食料自給率や農家の高齢化の話は

習っていたがあまり記憶に残ってはいなかった。

学校の宿題を済ませお風呂からあがってパソコンのスイッチを入れてみたら、

すでに素子がコメントを入れていた。

「さっきはごめんなさいね、主婦の仕事もしなくちゃいけないから(笑)、

 ところで検索してみましたか?」

「はい、僕も宿題とお風呂を済ませてきました、

 農家の年齢は平均で67歳と書いてありました」

「農家の高齢化は知ってるよね?」

「はい、5年生のとき習いました」

「農家のお年寄りはお金を稼ぐという気持ちはないのよ、

 野菜やお米が出来るように働いているの、

 自分たちや他のみなさんに食べてもらえるようにね」

「そうなんですか?」

「でもね、お金の要る社会でしょ?

 損してまで作りたくない農家が増えてきたの、

 だから作らなくなった田んぼや畑が増えているの」

「そっか~、お金が儲からないと作れないんですね?」

「そうなの、お金儲けのために作る人が増えてきたの」

稔はチョット考えてみた。

お金のない世界になったら農家の人も安心してお米や野菜を作ることが

出来るんじゃないか?

日本の食糧は平均年齢67歳のお年寄りが作っているという現実。

67歳といえばお金儲けの労働社会から卒業した人たちである。

稔は働くことの意味がわからなくなった。

あらためて稔は聞いてみた。

「やっぱりお金が儲からないと農業もやっていけないんですね」

「そうよ、生活費が要るからね、だから兼業農家が多いの」

「兼業農家って?」

「家族の中で農業以外のお仕事をしてお金を稼いでいる農家のことよ」

「あ!そっか~、お年寄りは生活費を稼がなくても良いから安心して

 農作業をしているんですね」

「そうね、年金収入もあるからね」

生活費を稼がなくても安定した生活が出来るのならボランティアでも

良いじゃないか?

稔は自分がボランティアをしたことを思い出した。

「僕だってお金を稼がなくても良いから安心してボランティアが出来たんだ」と。

お金を稼がなくても生活が出来るのならお金のない世界は出来ると思って、

稔は栄治のことを思い出した。

「栄治さん見てますか?」

「見てるよ」

「栄治さんはお金の要る世界とお金のない世界とどっちが良いですか?」

「もちろんお金のない世界だよ、でもねまだお金のない世界が

 想像できないから怖いよ(笑)」

「僕はなんだかワクワクするよ(笑)」

栄治は稔に聞いてみた

「どんなことを想像するの?」

「お金のない世界ってなんでもタダでしょ?」

「そうだね」

「欲しくても買ってもらえなかったおもちゃやゲームのソフトも

 自由に使えるよ」

「そこなんだよね~、怖いのが」

「どういうことですか?」

「なんでも努力しないで欲しいものが手に入ることとたくさん作って

 資源が無駄に使われないかってことね」

そこへ素子がコメントを入れた。

「たしかに欲しいものが簡単に手に入れると努力をしないようになるだろうけど、

 物への執着がなくなって良い面があると思うわ」

「あ~、そういう面も考えられますね、納得です」

「そういう考え方もあるんですね」

 と稔も納得してコメントを入れた。

「あと、資源が無駄に使われないようにしないとね、

 なんでもタダだったら使い捨てが当たり前のようになってしまう気がするよ」

 と栄治は不安を語った。

 そこへ一つのコメントが入ってきた。

「こんにちは幸夫ゆきおと言います、お邪魔して良いですか?」


       「循環型社会は可能」


「こんにちは、よろしいですよ、私は60歳の主婦素子です、

 よろしくお願いしますね」

「僕は23歳の会社員栄治です、よろしくお願いします」

「僕は小学6年生の稔です、わからないことが多いので

 参加しています、いろいろ教えてください」

「丁寧な紹介ありがとうございます、僕は40歳です、

 いろんな仕事をしていま契約社員です、よろしくお願いします」

掲示板に幸夫という男性が入ってきて少し緊張気味だけど、

「いろんな仕事をして」という文言に興味を持った栄治が尋ねてみた。

「幸夫さんはどんな仕事をされたんですか?」

「金融業や運送業や他にもいろいろですよ」

「僕は社会人になったばかりだけどなんだかお金儲けがイヤになって

 転職を考えているんです」

「僕も同じ気持ちでいろいろ転職してきましたよ」

「それで何かわかったんですか?」

「お金がないと生きていけないってこと、それに・・・」

幸夫は続けて答えた。

「お金儲けをしない社会なら仕事が楽しくなるってね」

「へ~、仕事が楽しくなるんですか?」

「そうですよ、罪悪感が無くなることが大きいかもしれませんね」

「罪悪感ですか?」

「いろんな罪悪感がありましたね」

「そう言えば『お金儲けが悪いんですか?』という

 言葉を思い出しましたよ(笑)」

「お金儲けのために心を痛めることは多いですよ」

「そうなんですか」

「保険会社のことを書きたいけど、いまは資源の無駄という話題に

 参加しようと思って参加しました」

稔も幸夫の「仕事が楽しい」というコメントに興味を持った。

栄治が「仕事がつらい」と言ってたからだ。

そこで稔は幸夫に尋ねた。

「幸夫さん、資源が無駄にならない方法があるんですか?」

「ありますよ、お金の要る社会では難しいことだけどね」

「それはなんですか?」

「完全循環型システムを作ることなんです」

「完全循環型システムですか?僕はよくわかりません」

「インターネットで検索してみてごらん」

「はい、さっそく見てみます」

稔は聞きなれた「循環型社会」で調べてみた。

ウィキペディアでは

「循環型社会とは、

有限である資源を効率的に利用とするとともに再生産を行って、

持続可能な形で循環させながら利用していく社会のこと」

とあった。

「あの~循環って同じ資源を何度も使うってことですか?」

「簡単に言うと、そうですよ」

「すごいじゃないですか」

「それがいまのお金の要る世界では難しいんですか?」

「そうですね、すべてはお金が原因だからね」

「でもお金を使えば出来ることなんでしょ?」

「ところが誰もお金を使うことを嫌がるんですよ」

稔はこんなに良いことがなぜ難しいんだろうと疑問に思った。

稔はどうしても聞いてみたくなった。

「幸夫さん、僕はどうしても大人の社会がわかりません、

 良いと思うことがなぜ出来ないのか」

「それはね、お金をもうけなきゃいけないからですよ」

「やっぱりそうなるんですか?」

「すこし話が長くなるけど良いですか?」

「はい、かまいません、知りたいです」

幸夫は語り始めた。

「この社会は大人も子供もお金がないと何も出来ないことは

 わかっているよね?」

「それはわかってます」

「だからすべての仕事はお金を得るためにします、

 だから損することは出来ないんです」

「はい」

幸夫は続けてコメントを書き始めた。

「産業廃棄物の運搬をしてたときの話です。

 住宅リフォームや建築会社の廃棄物を山間部の産業廃棄物処分場へ

 持って行くんですけどね、まだ使える新品や

 『これを埋めたら土壌汚染になるんじゃないか?』

 と言うような物まで埋めて土をかぶせるんです。

 小さな末端の運送屋は分別する経費を浮かせるために運ぶんです」

「しっかり分別する会社もあるんでしょ?」

と素子が気になって聞いてみた。

「従業員が多くて経営が安定している企業はそんな事はしないと思いますよ」

「それなら安心ね」

「問題なのは産業廃棄物の不法投棄です」

「テレビでかなり取り上げていましたね、芸能人が不法投棄を近所の人たちと

 片付けるボランティア活動」

「僕も見ましたよ」

と稔もコメントを入れた。

幸夫は続けて

「自然の立場から見たら不法投棄も産業廃棄物処分場も無くして欲しいと

 思ったんです。

 『捨てるならここに捨ててください』

 という場所を作ったら良いのにってね」

「それなら不法投棄が無くなるじゃないですか、

 私の実家の近所の山間部も不法投棄で悩んでましたよ」

と素子が喜んだ。

「それでね、産業廃棄物処分場はそのまま埋められてしまうけど、

 一箇所に集められた産業廃棄物をすべてリサイクル出来るように

 大規模リサイクルセンターの建設を考えたんです」

「僕学校で習ったことがあります、リサイクルは大切だって、

 でもいまの社会はやっているんじゃないんですか?」

「すべてを回収して分別したり、再利用するには

 お金がかかりすぎるんですよ」

「そうですよね」

栄治が気になってコメントを書いた。

「リサイクルが当たり前になってくるといままで作ってきた会社の仕事が

 減ってくるじゃないですか?」

「そうなんです、たくさん作ることで経営が成り立っていたから

 リサイクルが増えると経営が出来なくなるんです」

「それならリサイクルと生産と両立させれば良いじゃないですか」

「そうなんですよね、それを簡単に実現してくれるのがお金のない世界なんです。

 大規模リサイクルセンターの実現が解決してくれるんです」

そこでみんなは納得した。

お金の要る世界では出来なかったことが

お金のない世界では簡単なことなんだと。


       「大規模リサイクルセンター」


稔はお金のない世界がますます好きになってきた。

罪悪感のない生き方にも興味を持ち始めた。

稔は質問をしてみた

「幸夫さん、その大規模リサイクルセンターってどんな所ですか?」

幸夫は

お金の要る社会で大規模リサイクルセンターを作るとしたら、

こんな大規模リサイクルセンターを作りたいと

自分のブログで提案していた内容をコピペした。

「こんな内容で提案しています」と。

「大規模リサイクルセンターはすべての要らない物を回収する所です。

そこでは

・回収・持ちこみ全て無料

・すぐ使える物は買取、その他は無料

・修理できる物は修理して各商店にて販売

・修理できない物は部品としてメーカーに安く卸す

・その他は溶解して原料として再利用

・再利用出来ない物は微生物で無害化して埋める

・外食産業や家庭生ゴミ下水処理のヘドロについては

 すべて善玉微生物で発酵処理して肥料として再利用」

★大規模リサイクルセンターの建設理由は?

・雇用の場を作り失業者を無くすことです。

・資源を無駄なく有効に使うことです。

・企業間の情報交換を促進することで発明率を上げることです。

・必要な生産物や生産の必要量などを把握しやすい環境を作ることです。」

「以上が概略ですが、お金のない世界になれば

 物の流通がスムースになると思いますよ」

「お金の要る世界では難しいと言われたのは企業の事情があるんですか?」

栄治が質問した。

「そうなんです、お金の要る世界では競争の世界です。

 競争に負けると売り上げが落ちて利益を上げることが出来なくなり

 給料も払えない倒産状態です」

「競争をやめてみんなが成功する社会にすればいいのに」

「それを嫌う人たちが多いんです」

「どうしてですか?」

「共産主義とか社会主義とか言われて

『過去の歴史を見ればすべて失敗したじゃないか』ってね」

「資本主義社会も限界に来ているんじゃないでか?」

「もう一つ個人主義と全体主義の考え方があるんですよ」

「それはどんな考え方ですか?」

「一人ひとりの人権を尊重することと、社会全体を大切にする考え方なんです」

「そういえば資本主義社会が民主主義のような気がします」

「人の考え方は人それぞれですからね」

「お金のない世界では解決できるんですか?」

「はい、出来ますよ」

「言い切りましたけど、どうしてですか?」

「それはね、お金のない世界では個人と社会全体と両方大切にしないと

 成り立たないんです」

「そうなんですか、いいですね」

「競争をやめるといろんな良いことがあるんですよ」

競争をやめると良いことが起きるとは?

競争は人や社会の成長に必要なものだと信じていた。

世の中から競争が無くなるなんて考えられない。

競争の種類が変わるのだろうか?

競争することで人間は成長する。

誰もがそれを信じているから競争は必要だと思っている。

栄治は質問をしてみた

「競争をやめたら人間は怠惰になり社会は衰退に向かうんじゃないですか?」

 「たしかに、より良くなるためには競争が便利ですね。

 大規模リサイクルセンターの仕組みを考えていたとき思ったんですよ」

「仕組みと競争になにか関係があるんですか?」

「そうなんです」

幸夫は続けてコメントした。

「大規模リサイクルセンターではすべての製品が持ち込まれます、

 センターでは再利用を基本に考えますから製品の規格が同じで

 あることが便利なんです。

 早い話が企業間で部品が融通できれば『より良い』ことなんです」

「あ!思い出した、ビデオテープがベータとVHSがありましたよね、

 あれも二台のデッキを買うのがもったいないって父親も言ってましたよ」

 と栄治が思い出したようにコメントした。

「メーカーによっていろんな部品を作るから資源がもったいないしね、

 車の部品も電気製品の部品も企業間で同じ規格のものを作れば良いのにって

 思ったんです」

「それで競争はやめたほうがいいって思ったんですか?」

 稔は少しわかったような気がした。

幸夫は続けて

「そうなんです、さっき栄治さんが怠惰とか衰退とか書かれていたけど、

 僕はこう思うんです。

 競争は共走と協走に変わり、共に走る共走と協力しながら走る協走が

 成長を促せてくれると」

「おもしろい発想ですね、競争と言う言葉が無くなるんですか?」

「いえ、違った競争があるんですよ」

「え?どんな」

栄治も稔も思いつかなかった。

「稔君は学校でテストの成績とか運動会の徒競走の順位が気になる

 ことがあるでしょ?」

「はい、成績は進学に影響あるし、徒競走でビリになると恥ずかしいです」

「それは他人との競争なんだよね」

「はい、そうです」

「僕は他人との競争より自分との競争に興味を持ったんです」

「どういうことですか?」

「栄治さんが言ったように競争が無くなると怠惰や衰退とか言ったよね、

 ところで怠惰とか衰退の意味わかりますか?」

「はい、さっきインターネットで検索してわかりまた」

「便利よね~♪」

 と久しぶりに素子がコメントを入れた。

「素子さんありがとう♪、

 自分との競争についてだけどね、昨日のテストの成績より今日のテストの

 成績が良かったら嬉しいよね、しかも先生や友達から褒めてもらえたら」

「はい、嬉しいです」

「徒競走も友達より早く走る努力より今までより一秒早く走れたほうが

 楽しいという教育に変えたほうが良いと思ったんです」

栄治が思いついたようにコメントを入れた。

「大規模リサイクルセンターの役割を考えたら企業のあり方や人間の生き方が

 変わるってことですか?」

「そうなんです、お金のない世界だったら人も社会も成長するんじゃないかって

 思ったんです。

 それと、大規模リサイクルセンターは地震や台風などの自然災害に対しても

 即効果があるんです。

 すぐに回収できること、すぐに使えるものを提供できることですね」

稔はワクワクしながら

「そんな大規模リサイクルセンターが出来たら見学したいです」

とコメントした。

そうすると栄治が

「いっそのこと義務教育の一環で体験学習したらどうでしょう?」

と意見を述べた。

幸夫は

「僕もそれを考えましたよ、体験することで資源の大切さもゴミ分別の必要性も

 自然と理解するようになりますからね」

お金の要る世界では「得るための競争」が必要でした。

そのための奪い合いや騙し合いが心を痛めていたんです。


       「もう一つの世界」


稔も栄治も幸夫の提案に感動してしばらくコメントを書くのを忘れていたが、

栄治が

「これって日本だけでいいの?」

と疑問を書いた。

「私も聞いてみたかったことなんだけどね、循環って資源に

 限ったことではないですよね。

 空気や水も世界中で循環してるから汚染されないように

 世界中が循環型システムを取り入れないとね」

と素子が意見を書いた。

しばらくして幸夫がコメントした。

「世界中が大規模リサイクルセンターを作ったらどうなるのか、

 温暖化も海洋汚染も大気汚染も貧困も飢餓も格差も無くなるんじゃないか、

 もしかして

 世界平和が実現するんじゃないか、そこまでイメージしたことがあるんです」

「それはチョット考え過ぎじゃないですか?(笑)」

すぐ突っ込みを入れたのは栄治だった。

「私は60年生きてきて実家の農業の手伝いをしていると

 幸夫さんのイメージがわかるような気がするんですよ」

素子がそうコメントすると

稔も

「僕は12歳だから社会経験がないけど大規模リサイクルセンターと

 お金のない世界が出来るような気がします」

と書いた。

それでも栄治は

「宗教や文化や風習が違う外国の人に賛同を得るのは難しいんじゃないですか?」

と疑問を持ちかけた。

「とりあえず日本だけ世界のお手本を作ったらどうでしょう?」

と追加コメントした。

幸夫はいままでのいきさつを書いた。

「世界中に広げる前に日本だけ作ったらどうだろうって、

 多くの人と意見交換してみたんです」

「どんな意見が多かったですか?」

「日本はすでに循環型社会になってると言う人がいたり、

 企業の利益を優先するいまのシステムには向かないと言う

 意見も多かったです」

「やっぱりね、世界同時が良いんでしょうか?」

「そうなんですよね、いまのようにグローバル化で世界中がつながっていると

一部だけシステムを変えるより一緒に変えたほうが良いみたいです」

「それで世界平和も実現できると言うことですね?」

「そうなんですよ」

「世界中に提案したらどんな反響が起きると思いますか?」

という幸夫の質問に

「経済大国でもお金を出したがらないし、戦争や紛争が絶えない国は

 お金に余裕がないから提案は賛同するだろうけど

 行動までは無理だろうって思います」

と栄治は答えた。

「無理と思えることを出来ると思えるように知恵を出し合うのはどうですか?」

「いままで幸夫さんの提案を聞いているだけで希望が持てるようになりましたね」

「僕も出来ることを考えてみます」

栄治も稔も前向きな気持ちになったようです。

みんなは現実を変えることは難しいと知っているし、

戦争も紛争も貧困も格差も自分たちが考えてもどうにもならないことも知ってる。

稔はしばらくインターネットで検索してみた。

世界が平和になるために何をすれば良いのか?。

国連の活動、日本の平和活動、稔にとっては難しすぎた。

「僕には難しすぎてどうすれば良いのかよくわからないんですけど、

いくら良いことでも世界を変えるのは難しいです、

だから僕が考えた方法ですけど書きますね、

もう一つの世界を作ったらどうだろうってことです」

稔は精一杯考えてコメントしてみた。

これには誰もがビックリです。

「まさかもう一つの地球が要るって事なの?」

一つの地球に二つの世界をイメージすることは出来なかった。

「もう少しわかりやすく書いてもらえるかしら」

と素子がコメントした。

「お金の要る世界が大人の世界だとしたらお金のない世界は子供の世界と

 考えてみたんです」

「ほう、良いじゃないの」

「おもしろそうだね」

栄治も幸夫も興味を持った。

「子供の世界はどんな世界なんだろう?」

素子も興味を持って質問してみた。

「大人の人も子供の頃を思い出してもらいたいんだけど、

僕たち子供は友達同士でお金のやり取りをしないで

勉強したり遊んだりしています。

空き地で遊ぶのも山や小川で遊ぶのもお金は要りません」

みんなは子供の頃を思い出して

「そうだよね」と懐かしんでいます。

子供ならではの発想だけど、大人は仕事をするけど子供は仕事をしない。

そういう視点から子供は見ていないようです。

「どんなことをすれば子供のような世界が作れるんだろう?」

と栄治が聞いてみた。

「インターネットでいろいろ検索して興味のある活動があったんです、

 『国境なき医師団』とか『国際NGО』とか『ユニセフ』とかです。

 ほかにもいっぱいあるんですけどね、

 これらが自由に活動できる世界を作ったら良いのにな~って」

「いま現在やっているよ」

と水を差すようにコメントをはさんだ。

「それなのに世界はますます悪くなっているのが変だと思ったんです」

「たしかに」

これには誰もが納得です。

「それを自由に活動できれば良いってことなのね?」

「そうなんです、そこまではひらめいたんですけど・・・」

稔のひらめきにはみんなが驚いたが未知なる世界のイメージが

すぐに湧いてこなかった。

「チョット考える時間が必要ですね(笑)。

なにか思いついたらいつでも書き込むのはどうでしょう?」

幸夫は思考の限界を感じて提案した。

2,3日だれも書き込みはなかった。

そして4日後

「こんにちは、お邪魔してよろしいでしょうか?

 美佐枝と申します、26歳会社員です」

新しい人が参加しました。


       「知るべきこと」


「おや、珍しいわね若い女性じゃないですか、

 よろしいですよ。

 私は60歳の主婦です、素子もとこと言います。

 よろしくお願いしますね」

「はじめまして、美佐枝と申します。

 初めから読んでるわけじゃないけど、ユニセフで検索してみたら

 世界平和の話題のようなので私も参加したくて来ました。

 よろしくお願いします」

「よろしくね」

素子は女性の参加で少し嬉しくなった。

「ほかの男性たちはまだ思案中なのかしら、しばらく二人でお話しましょうか」

「ありがとうございます」

「ところで美佐枝さんはユニセフと関係がおありなんですか?」

「一時期、飢餓や貧困を無くす活動をしていてユニセフにも募金をしていました」

「素晴らしいわね、いまも続けていらっしゃるの?」

「残念ながらいまはやっていないんです」

「そうですの?いろいろ訳ありのようですね」

「世界中で募金活動も支援活動も多くの人が頑張っているんですけど、

 世界が平和にならないのが辛いんです」

「そうよね、温暖化も戦争も貧困も解決しないのが不思議に思っていたわ」

「こんにちは、新しい人が参加されているんですね。

 僕は稔と言います、12歳の6年生です。

ここでいろいろ勉強しています。よろしくお願いします」

「26歳のOLで美佐枝と言います。こちらこそよろしくお願いします」

「みさえさんですか?どこかで聞いた名前ですね」

「はい、時々『おい、みさえ』と呼ばれます(笑)」

「クレヨンしんちゃんじゃないですか♪」

「こんにちは、にぎやかですね。美佐枝さんこんにちは、僕は23歳の会社員で

 栄治と言います、よろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願いします」

「みなさんこんにちは、久しぶりです。美佐枝さんこんにちは、

 僕は40歳契約社員している幸夫と言います、よろしくお願いします」

「みなさんご丁寧にありがとうございます、よろしくお願いします」

不思議と意気投合して何かが始まりました。

それは

世界平和という共通のキーワードがあるようです。

稔が新しく参加した美佐枝に興味を持って聞いてみた

「飢餓や貧困を無くすために募金活動をされていたんですか?」

「そうです、いくら募金をしても解決しないから違う方法が良いんじゃないかって

 思うようになったんです」

「それで思い出したんですけど、夏休みに愛は地球を救うというテレビ番組で

 募金活動をしているのに温暖化で地球が苦しんでいるんですよね」

「稔君は的確に見てるね」

幸夫が感心してコメントを入れた。

「僕が生まれる前から続けているのに地球が救われていないのはなぜなんだろう?」

栄治も疑問を書いた。

そこへ素子が

「それはいまの経済活動が問題だと思うわね」

とお金の要る世界の欠点を書いた。

幸夫が大規模リサイクルセンターの提案をした時思ったことを書いた。

「お金の要る世界ではお金をいくら使っても問題が解決することが

 出来ないんだと思うよ」

「やっぱり、もう一つの世界を作るほうが良いかもしれないわね、

 ところで2~3日休憩があったけどどなたか案は出ましたか?」

素子が進行役になった。

美佐枝がさっそくコメントを入れた。

「やはり先日稔君が提案したもう一つの世界を考えたほうがいいと思います」

「美佐枝さんはなぜそう思うの?」

「現実を知れば知るほど難しいことを感じるんです」

美佐枝は現実の中に潜む何かを感じているようです。

美佐枝は思ったことを書き続けた。

「もう一つの世界を作るという稔君の提案に共感するんです。

 なぜそう思うのかというと数年前ある記事を見たんです。

 それは善意の井戸が壊されるという記事でした。

 みなさんもテレビ番組で善意の井戸を見たことがありますか?」

「僕見たよ、でも井戸が壊されるなんて知らなかった」

と稔が答えた。

美佐枝が伝えたかったのは

「貧困国に作った

『善意の井戸』を巡り大虐殺も...マスコミが伝えない人道支援の闇」

という記事で、

「日本人が善意で行った支援活動が、現地では殺し合いのキッカケになってしまった

 のである。」という内容であった。

美佐枝は続けて

「多くの支援活動が素晴らしい結果を出していることは間違いのないことですが、

 この記事にもあるように一時的に部分的な支援より全体を同時に

 支援活動をしたほうが良いことに気付いたんです」

「本当に悲しいことですね」

素子がつぶやいた。

栄治が思い出したように

「だから国連の活動を疑問視する人が多いのかな~?」

と書くと

美佐枝が

「国連は大切な機関だと思うんです。それを有効に生かすためには

 稔さんが提案したようにもう一つの世界を作る必要があると思いました」

たしかに現実の裏に潜んでいる現実は多くの人に知らされていない。

「もう少し真剣に情報を収集してみませんか?」

「そうですね」

幸夫の提案にみんなは賛同した。

「もう一つの世界を作るという思いを強くするためにもいろんな立場の意見を

 知っておくことは良いことだと思いますね」

素子は心からそう思ってコメントした。

そして、

それぞれがインターネットを活用して世界の現実を知り、

もう一つの世界を作るヒントを探すことになった。

翌日、稔が

「おもしろいのを見つけました」

とコメントを入れた。

「あれ?誰もいないの?」

稔は残念そうにコメントだけ残そうと書いた。

「ベーシック・インカムというのを見たんです。

 これなら誰もお金で苦しむことは無くなるって。こんなのはどうですか?」

しばらくして幸夫が返事を書いた。

「稔君こんにちは、僕も以前から知っていたけどね、

 お金の要る世界を続けるには良いアイデアだと思ったよ。

 稔君が提案したようなもう一つの世界を作る過程としてなら

 このベーシック・インカムは一時的な効果はあると思うよ」

「でしょ?

 とりあえずお金で苦しむ人がいなくなればお金のない世界をイメージする人が

 増えると思ったんです」

という稔の意見に

美佐枝がコメントを入れた。

「私も興味があった時期があって調べてみたんですけどね、

 スイスではベーシック・インカムを導入するかを国民投票をしたら否決されたって、

 主な反対意見は膨大な原資が必要だということ、

 労働意欲がなくなり経済的混乱が起きる、資本主義社会にマルクス主義の思想は

 そぐわないって」

「やっぱりね、

 お金の要る世界ではお金ですべてを解決するなんて不可能ですよね」

栄治も参加してコメントを入れた。

「せめて日本だけでもこのベーシック・インカムをやって欲しいわ、

 年金だけでは生活費が足らないのよ」

素子が深刻なコメントを入れた。

国民年金は20歳から60歳までまじめに納入しても

年額80万円しかもらえないのだ。

月額7万円以下で生活しなければならない。

これも現実の一つです。


       「世界へ向けて」


高齢化が進めば年金受給者が増えてくる。

むかしは

「自分が貯めた年金を定年過ぎたらもらえる」

と言っていたものだが、

いまは

「若者が高齢者の生活を守る」

という考え方に変わってしまった。

素子はそれを実感して悲痛なコメントを入れたのだ。

「現状悪化を防ぐためにもベーシック・インカムは大歓迎ですね」

美佐枝は素子の心情を気遣って

コメントを入れた。

そしてもう一言

「それにしても年金積立金を増やそうとマネーゲームに投資されているわね。

投資家に餌をばらまいているような気がする(涙)」

「そうなのよ、

そんなに積立金があるのなら

高齢者が安心して生活できるだけのお金を支給すれば良いのよ。

そうすれば健康維持のためにも社会のために働くわよ。

みんな『何かしたい』と思いながら生きているんだから」

「そういえば以前書いていましたよね農家はほとんどが高齢者が働いているって」

と幸夫がコメントした。

高齢者はお金儲けは出来ないけど

社会のために何かをするだけで健康になれる

ということを素子は実感しているのだった。

「話を元に戻して、もう一つの世界を作るきっかけは何かないかしら?」

素子が軌道修正した。

「政治家に僕たちの提案を聞いてもらうのはどうですか?」

栄治が提案した。

「僕は何年か前政治家やテレビ局へ提案投稿をしたことがあるんですよ」

幸夫が書た。

「え!あるんですか?」

「大規模リサイクルセンターを思いついたときですけどね、

 首相官邸や各政党、マスコミのHPに投稿したんです」

「そうなんですか?何か反応はありましたか?」

「残念ながらないです(笑)」

「こんなに良いことなのに、なぜ誰も取り上げてくれないんですか?」

稔が素朴な疑問を投げかけた。

「不思議だよね、資本主義社会の中では取り上げたくない話題かもしれないね」

「もう一つの世界作りの話題ならなおさらですね(笑)」

幸夫も栄治も否定的な意見しか書けなかった。

しばらくして新しく参加した美佐枝がコメントした

「インターネットって世界中につながっているんでしょ?

 せっかくインターネットを利用しているんだから

 私たちの会話に外国の人も参加してもらえると良いかもしれないわね」

「僕たちは日本語しか話せないよ(笑)」

「それもそうね(笑)」

「そうだ!良いこと思いつきました」

稔が叫ぶようにコメントを書いた。

「なになに?」

みんなが一斉に書いた。

「こんなのはどうですか?世界中の人に提案したいから国連で訴えてみるんです」

とんでもない内容に

みんなはしばらくコメントが書けなかった。

たしかに

国連を活用するという話はあったが、

まさか

国連に行って訴えるなんて想像すらしていなかった。

子供らしいアイデアに大人たちは戸惑った。

国連で演説するのは国の代表者だが、過去にも国連で演説をした子供はいた。

国連で世界中の代表者に訴えることが出来たら、一歩前進するかもしれない。

「稔君らしい提案ですね(笑)」

「僕らしいですか?」

「感動もんだよ(笑)」

「そうね、

私たちはそこまで思いつかなかったわ」

みんなは稔を賞賛した。

「良いアイデアが出たけどこの先はどうすれば良いの?」

と素子が聞いた。

この先のシナリオが思い付かないのである。

美佐枝が提案してみた

「いつでも演説できるように演説の文章を考えてみるのはどうかしら?」

「そうですね、

とりあえず文章を書いてみてそれを見ながら意見を出し合うのも良いですね」

幸夫が賛同した。

「一つ提案なんですが、よろしいでしょうか?」

素子がコメントを入れた。

「どうぞ」

「幸夫さんが政府やマスコミに提案投稿された経験を活かして

 演説の原稿を書かれたらどうでしょう?」

「え~僕ですか?」

「その原稿を参考にしてみんなで考えてみましょうよ」

「そうですね、何か書かないと考えようがないですからね」

とりあえず

幸夫が演説の原稿を書くことになった。

「ところで、

幸夫さんが原稿を考えてくださる間に世界平和の世界はどんな世界なのか

 考えてみませんか?」

素子が提案した。

「そうですね、

目標は世界平和でお金のない世界だけど具体的にどんな世界なのか

 よくわらないですよね」

「僕も想像はつくけどもっと知りたいです」

栄治も稔も世界平和の世界を考えてみたくなった。

「とりあえず思いつくままに書いてみませんか?」

「そうですね、とりあえずですね♪」

「思いつくままに書いてみましょう」

美佐枝の提案にみんなが賛同した。

「誰でもいいから書いてみましょう」

「了解しました」

「核武装や軍隊のない世界」

「世界中の人たちが自由に行き来することができる」

「どこの国の人も衣食住に困らない」

「自分たちの言葉や宗教や文化が守られている」

「資源が無駄なく循環されている」

「領土問題が起きない」

「働く時間が少なくなる」

「空気や水がもっときれいになる」

「温暖化がストップする」

「フリーエネルギーが普及する」

「砂漠地帯が減って、もっと緑豊かな環境になる」

書き始めたらけっこう出てくるものですが。

ここで美佐枝が提案を出した。

「私たちだけの意見だけでなくいろんな人の意見を聞いてみたいです。

 そこでいろんな人に声をかけてみましょうよ」

「そうね、

それぞれの立場で考えることが違いますからね」

「僕も友だちに聞いてみるよ」

そこで栄治がコメントを入れた。

「お金のない世界が良いのかどうかを聞くのではなく、

 世界平和はお金のない世界だということ

 を前提に世界平和はどんな世界だと思うかを聞いたほうが良いですね」


       「世界平和はどんな世界?」


世界平和が実現したらどんな世界なのか?

インターネットを活用して多くの人の意見を聞いてみることにした。

ところが

本当の世界平和を体験していないのに、

世界平和はお金のない世界だということを知ると

なおさらイメージが出来ないようだった。

そして

「平和な世界は助け合いの社会ですと言えば嫌いな人は助けたくない」

と言い。

「みんなが食べたいだけ食べれば食料はいくらあっても足らないよ」

と批判的なことも言われた。

助け合いの世界は困ったとき助け合うのは当たり前だが、

すべてが無料の社会が助け合いの社会になっている。

「僕のブログではイメージできる人のコメントは無かったけど

 みなさんの所ではどうでしたか?」

と栄治がコメントした。

「僕は学校で友だちに話したら早くお金のない世界にして欲しいって

言ってました」

「私のブログでは世界平和はあこがれの世界だから早く実現して欲しいという

 意見が多かったです」

と稔と美佐枝がコメントを書いた。

そこへ素子が参加した。

「私のところも世界平和とお金のない世界の実現は急いで欲しいという

 要望が多かったですよ、皆さんの急ぐ理由は何でしょうね?」

「それは僕も気になりますね」

と栄治が書いた。

「チョットいいですか?」

と久しぶりに幸夫が参加した。

「いま演説の原稿を考えている最中なんですけどね、いきなりお金のない世界を

 強調するのではなく世界平和の実現を訴えて補足的に

 お金の流通をしないお金のない世界を提案しようと思っているんです」

栄治が

「そのほうが穏便に行きそうな気がしますね」

とコメント。

幸夫は

「でもね、お金のない世界になればいまの社会問題がどれくらい解決するの

 かも多くの人に知ってもらいたいですね」

と補足した。

「そうですよね、

 いまの社会問題なら誰もがわかる話だからお金のない世界の良さが

 わかってもらえますね」

お金のない世界になれば

お金の要る世界の悪いところがどれくらい解決できるのか?

そちらのほうも気になりはじめたようです。

稔も自分の知らない大人の世界に興味を持ち始めた。

お金の要る世界での問題点は何なのか?

お金のない世界になったら解決できるのか?

とりあえず

自分たちが思っていたことやそれぞれのブログで意見を聞いたことを

書き出すことにした。

・やりたい仕事はお金が儲からないからお金が儲かるやりたくない仕事をしなけ

 ればいけない。

・震災で壊れかけた実家に住んでいるけどお金がないから建て直しも引越しも

 できない。

・結婚したいけど共稼ぎしないと生活できないし、子育てにお金がかかることが

 不安だから結婚できない。

・いまの職場を辞めたいけど給料が下がると生活できないので転職がしにくい。

・子供に塾に行かせたいけど生活費を削れないので塾に行かせることができない。

・離婚したいけど離婚後の生活費の保証がないから離婚できない。

・単身赴任を命じられて家族と離れて生活をしなければいけない。単身赴任を

 断ると会社に居づらくなる。

・社員が少ないから休みたいときに休むことが難しい。

・ホームレスの老人が軽犯罪を犯してまで安定した生活ができる刑務所に入り

 たがる。

・お金欲しさに強盗や空き巣や詐欺が無くならない。

・保険の営業のときに長年かけた積み立て型の保険を高額保障の掛け捨て型

 の保険に転換を薦めるとき罪悪感を感じました。

・取引先によって販売価格を変えることが正しいと言われたけど相手をだまして

 いるようで心苦しい。

・お米を作るよりお米を買ったほうが安いので山間部の田んぼは荒地になって

 しまった。

・市街地の田んぼは農家が高額で土地を売ってマンションやホームセンターが

 出来てしまった。

・森林は手入れをしたいけど人を雇うお金がないので荒れてしまい山崩れもたく

 さん起きている。

・空き家や空きビルが多いのにまだマンションやビルが建てられる。

・学校も病院も介護施設もお金が儲からないと閉鎖されてしまう。

・病気だと思っていてもお金がないからできるだけ我慢して病院に行かないよう

 にしている。

・原発は要らないと言っているのに補助金がもらえるから原発賛成と言っている。

・経済優先だから原発は必要だと言われる。

・電化生活は理想だと思うけど、発電方法が悪いのに節電を強要される。

 クリーンエネルギー発電が普及して欲しい。

・発明や実用新案などで、いくら良いものでも利益の上がらないものは無視さ

 れる。

・企業や国は新しい資源を求めて自然が破壊されていく。

・資源の奪い合いで領土問題を起こして紛争や戦争が起きる。

・世界的な経済格差で移民が増えて生活風習の違いで困窮する人が増える。

「けっこうあるもんですね(笑)とりあえずこれくらいにして、

 これから発言する人たちの意見も交えて紹介したいですね」

素子が区切りを入れた。

稔は学校では教えてくれないいろんな社会問題に驚いていた。


       「世界の問題は身近な問題」


身近な問題は自分が我慢したり注意すればなんとかそれなりに

解決はできるが、国際問題になると自分たちで何とかなるはずもない。

「先日は身近な問題について書いてもらったけど世界に目を向けて

お金の要る世界の問題点を考えてみませんか?」

美佐枝が提案した。

「そうですね、いろんな人から身近な問題点を書いてもらったけど、

 すでに出ている問題点と同じようなものでした、

 気になったのが世界の問題点が日本に影響があるってことでした」

そこへ栄治が追記として

「それに、急を要するって多くの人が言ってましたよ。

 グローバル化した世界だから身近な問題として考えたほうが良いって」

とコメントした。

「それでは、すぐにでも日本に影響を与えるような

 外国の問題点を考えてみましょうか?」

美佐枝が提案した。

そのとき稔がコメントを入れた

「学校で先生が言ってたよ

 『難民の人たちを助けるために何をすれば良いか考えてみよう』って、

 僕はどうすれば良いかわからないから

 『難民にならないようにすれば良いじゃないですか?』

 って言ったんです」

「そうなの?

 先生は個人的にできることを考えてみようって言ってたんでしょうね。

 そして稔君は根本的なところに視点が行ったんですね。素晴らしいと思うわ」

美佐枝が感心して褒めた。

「ありがとうございます」

ここで美佐枝と栄治の会話が始まりました

「稔君が言ったように難民を受け入れることより難民にならないように

 支援していく方が大切かもしれませんね。

 ほかに何か急を要する問題はあるかしら?」

「原発事故が気になるという意見がありましたよ」

「それはどの国も言える話ですよね」

「日本から見ると中国や韓国の原発が気になるという意見でした」

「それはどういうことでしょう?」

「中国や韓国で原発事故が起きたら放射能が黄砂と同じように偏西風に

 乗って飛んでくるということです」

「以前中国で起きた高速鉄道の事故処理のように

 原発事故が起きたときの事故処理がずさんだったら放射能汚染も

 避けられないでしょうね」

「困ったことになりますね」

稔が真剣にコメントした。

これ以上難民が増えて日本が数万人レベルで受け入れるとしたらどうなるのか?

中国や韓国で原発事故が起きたら放射能汚染はどのくらい広がるのか?

外国の問題が日本の問題として考えなければならない。

近隣諸国の問題はこの程度ではないです。

日本の未来を考えると

「早くなんとかしなければ」

と思う話題が持ち上がってきます。

難民問題も中国の原発問題もどうにもならい。

そこへ稔が

「中国漁船が日本の周りで魚をいっぱい獲って困るって言ってました。

 それと尖閣諸島が取られるって」

「領土問題もあるわね」

栄治がこれに続けてコメントを書いた。

「中国の計画を検索したんだけどね、2050年までに日本を含む

 東南アジアは中国の管理下に、

 そして日本をチベット自治区のように日本自治区にするそうです」

「それは私も見たことがあるわ、これを実現するために南沙諸島に

 軍事基地を作ったり、経済的に権限を握ったり国連での

 発言権を持ったりしているんでしょうね」

「あの~、

こういうことはよくわからないんですけど戦争がおきるんですか?」

稔が不安そうにコメントした。

「自国の都合の良いように経済を発展させようと思えば軍隊を大きくしたり

 核を持ったりして他国を服従させることに力を注ぐでしょうね」

「だから

お金の要る経済をやめさせないといけないってことなんですか?」

「そうね、早く世界平和の実現が求められるのは

 自分たちのためでもあるんですよ」

「戦争をしないという平和条約を結んでも本当の世界平和にはなれないんですね?」

「そうよ、平和条約って軍隊を持っても良いけど

 お互いに戦争をしませんという約束ですからね」

「約束っていつまでも守られる保証なんてないですよね」

「平和条約のように

 直接戦争や暴力をしない平和を消極的平和主義って言うんだそうですよ」

「と言うと、

 積極的平和主義ってあるんですか?」

「はい、

 貧困や飢餓、政治的抑圧、格差や差別などのない穏やかな生活ができる状態を

 積極的平和主義と言うんです」

「なんだか、以前総理大臣が言っていた積極的平和主義と違いますね」

「武力を強化して平和を守ることを言っていたようですね」

参加者は誰も戦争を体験したことはないけどニュースで戦争や紛争で

殺し合いをしていること難民にならざるを得ない状況を見ていると

日本も巻き込まれるのではないかと不安が募るのでした。

「核を無くそうとか、原発を無くそうとかいろんな無くす活動をしなくても

 世界平和とお金のない世界が解決してくれるんですね?」

「そうなのよ」

稔はこれで世界平和とお金のない世界の必要性をひしひしと感じた。

そして早く実現しないと取り返しのつかないことになるのではないかと。

素子が

「中国と言えば中国経済の危機問題が話題になってるわね」

「考えてみれば

 これだけ世界がグローバル化したんだから世界同時の経済危機は

 免れないんでしょうね」

美佐枝も同じ意見を書いた。

「ますますお金のない世界を実現させたいです」

稔がポツリとコメントした。

そこへ素子が切り出した

「個人レベルで考えて答えが出せる話じゃないですね。

 稔君が言ったように

 もう一つの世界を作るために急がなきゃいけないってことですね」


       「世界平和の仕組み」


世界中が世界平和を願っているのに世界平和が実現しない。その原因を考えたからってどうにもならないことは参加者はわかっていました。

どうにもならないことに知恵を出すことより何とかなることに知恵を出し合うことが良いと思ったのがもう一つの世界の提案でした。

もう一つの世界とは?

世界平和とお金のない世界です。

12歳の稔君が提案した世界ですが、「本当の世界平和とはなんなのか?」それを理解していないと「みんながやるべきこと」さえわからない状態でした。

世界中の人たちが平和に暮らせるために何が必要か?

一人で考えてもなかなか思いつかないものですが、多くの人が考えれば何かのヒントが出るかもしれない。

インターネットはそれを助けてくれる素晴らしいツールなんですね。

頭の中が混乱した状況の中で美佐枝がコメントした。

「お金のない世界は

世界平和とともに実現すると思うけど

稔君が言ったように

もう一つの世界を

イメージしてみませんか?」

「はい、僕が提案したことなのに

イメージがまだはっきり湧いていないです」

「まず世界が平和になったときの

イメージを書いてみませんか?」

「そうですね、

世界平和は今とどう違うのかを

知っておくのも良いですね」

栄治も平和な世界について知りたくなった。

インターネットは便利なもので

検索すればすぐわかる。

国語辞典で「平和」とは?

1、戦争もなく世の中が穏やかである

  こと(さま)。

2、争いや心配事もなく穏やかである

  こと(さま)。

「稔君、平和の意味はわかりましたか?」

「はい、なんとなくわかりました」

「では、世界中が平和になったら

どんな状態なのかをみんなで考えましょう」

と素子が提案した。

それぞれがブログで意見を聞いた内容や

自分たちが思いついたことを書き出した。

・生活に必要な衣食住が足りている。

・民族の文化や風習が守られている。

・すべての子供たちに教育が行き渡っている。

・水や空気がきれいである。

・生活用品の資源が

 完全循環型システムである。

・「人が喜ぶことをしよう」が教育の基本。

・支え合うために必要な教育をしている。

・働くことが楽しい社会。

・生まれて良かった生きていて

 良かったと思える。

・食べ物は健康に良いものしか作らない。

・エンジンからモーターの車に変わってる。

・発電はすべて害のない

 自然エネルギーで作る。

・世界中どこにも自由に安心して

 旅行が出来る。

・どんな製品もどこの国で作っても

 品質が高い。

・世界中が行ってみたい観光地になる。

そこで素子が

「まだまだあるみたいですが、

おもしろいコメントがあれば

また追加することにして、

世界中の人たちが

これらの生活が出来るために

何をどのようにしたら良いのかを

考えてみたいですね」

「それが一番大切なことかもしれませんね」

「国連で演説するための原稿を書いている

幸夫さんの支えにもなりそうですよ」

美佐枝と栄治がコメントを入れた。

「稔君も考えてみてね」

「はい、考えてみます」


       「世界平和の提案書」


国連で演説するための提案書は幸夫が原稿を書くことになっていたが・・・。

「ところで幸夫さんはどうされていますか?」

素子が幸夫に参加して欲しくて

コメントを書いた。

しばらくして幸夫が

「皆さんの会話は時々チェックしていますよ」

「提案書の原稿は進んでいますか?」

「概略は書き終わっているんですけどね、書いている時

『これで良いのか?』

という不安が湧いてくるんです」

「それなら皆さんで原稿を見ながら考えてみましょうよ」

「それなら僕も安心です。少しずつ書きますからよろしくお願いします」

~~~提案書原稿(1)~~~

私たちは世界平和の実現を提案します。

いままで私たちは

軍隊を無くせば平和になれると思っていました。

なぜ軍隊が無くならないのか?

軍隊を必要とする世界だからです。

奪い合いや騙し合いの世界だからです。

世界平和になれば軍隊は要りません。

軍隊や核を無くすための努力より

世界平和の実現に努力を傾けたほうが良い。

そう思うのです。

世界平和は

「支え合い」「分かち合い」の世界です。

互いが互いを必要とし助け合っているのです。

それが実現するための提案をします。

一つ目の提案ですが、国連を中心とした

国際支援団(International support group)の

設立をお願いします。

「国際支援団(ISG)」とは

「国境なき医師団」を参考にして

世界中の国と地域が参加して作られますが

国際支援団(ISG)は常時活動する団体です。

設立の目的は

世界の貧困や差別を無くすことです。

世界のあらゆる地域が独自の文化が守られ

安心して生活できるお手伝いをすることです。

世界中の技術と資源を無駄なく有効活用します。

国際支援団の仕事は

それぞれの国の代表が

「自分の国が出来ること、出来ないこと」

「自分の国に足るもの、足らないもの」

「自分の国が必要なもの、して欲しいこと」

シェアをし合います。

そして

農業生産が出来る所

工業生産が出来る所

科学技術が得意な所

世界中で生産と技術を分かち合うのです。

たとえば

「私たちの国は土地は広いけど砂漠が多いです」

「私たちは砂漠を農地に変える技術を提供します」

「海に面しているけど水不足で困っています」

「私たちは海水淡水化の技術を提供しますよ」

「水はいっぱいあるのに汚染がひどいです」

「私たちは汚泥浄水装置を提供しましょう」

「広大な農地はあるけど生産能力が低いです」

「私たちが生産能率の高い技術を提供しましょう」

「きれいな海に面しているので養殖技術が欲しい」

「私たちが養殖の技術を提供しましょう」

などなど

もっとたくさんの協力関係が出来上がります。

~~~提案書原稿(1)以上~~~

「とりあえずここまでを(1)として皆さんで

検討していただきませんか?」

「ありがとうございます、私はこれでよいと思いますが

皆さんの意見も聞いてみたいですね」

「国際支援団っておもしろそうですね」

と稔が興味深くコメントした。


       「国際支援団って?」


「幸夫さんが書かれた原稿を読んでの感想を皆さんに

書いていただきたいのですが」

と素子が提案した。

「国際支援団というのは良いと思いますが、今までの国連にある団体とは

どう違うんですか?」

と美佐枝が聞いた。

「今までの団体の活動はお金という制約の中でしか活動できなかったから

一部の地域しか支援できなかったんです。

だから

今回考えたのは世界中の国と地域が参加することで地域に合った支援が

出来ると思うんです」

「そうすると支援団の人数はかなりの数になりますね」

「そうですね、できれば100万人くらいが良いですね」

「そんなに必要ですか?」

「世界の国は約200ヶ国ですけどね、一つの国の中にも民族の違いや

文化の違いで差別されている環境が多いからすべての民族の人たちが

恩恵を受けられるようにしたいと思ったんです」

「それなら先日美佐枝さんが言っていた『善意の井戸での悲劇』は

起こらないでしょうね」

「どこの地域でも安心安全な水が供給されて、取り残される人たちが

出ないようにしなければと思ったんです」

「そう言うことですか、納得しました。みんなが同じ仲間意識が持てれば

いいですね」

「文化や宗教の違いで他国民が入ると拒絶反応をする人たちも

いるんじゃないですか?」

「それをスムースにするためには国や地域の地元の人たちをリーダーとして

国際支援団の組み合わせを作ったらトラブルはないと思いますよ」

「なるほど、地域の人たちの都合に合わせて組織を作るんですね」

「そうです」

稔も疑問を書いてみた

「それらの人にボランティアで働いてもらうんですか?」

「それは無理ですね、いま働いている人たちや無職の人たちも

生活費は要りますからね、生活するための人件費は必要ですね」

「そのお金は誰が払うんですか?」

「これが最大の悩みだったんだけどね、世界平和のための活動だから

世界中の軍事費の一部を活用してもらおうとお願いするんです」

「こういう内容も提案書に書いたらいいですね」

この提案にはみんなが「良いですね♪」

と賛同した。

ちなみに

世界の軍事費は

2015年一年間で185兆円。

185000000000000円です。

「一人当たりの人件費の金額はどうなるんですか?」

「国や地域の状況に応じて支払えばよいと思いますよ」

「そうですよね、生活費は地域によって違いますからね」

「もう一つの世界を作ると言っても

お金の要る世界ではお金がないと何も出来ませんからね」

「人や人件費が確保されればあとは企業の協力が要りますね」

「技術や資源は企業の協力がないと得ることが出来ませんからね」

「企業も利益を求めないで損をしない程度に参加してもらえれば

良いんじゃないですか?」

「そうですね、損しなければ企業も協力してくれるでしょう」

稔にとっては知らない世界の話だけど

夢の実現には必要な知識を理解しなければと感じていました。

それを気遣ってか素子が

「稔君、難しいかもしれないけど稔君の未来のためにも頑張ってね♪」

「はい!頑張ります♪」


       「地球と共存・循環型社会」


「国際支援団が企業と連携して活動を開始すれば次に考えられるのが

 地球環境です。

 世界中に先進国のような公害を持ち込んではいけないので、

 そこで考えたのが完全循環型システム

 ・提案書原稿(2)です」

~~~提案書原稿(2)~~~

そして

人々が平和に共生することと同時に地球との共生を

大切にしなければいけません。

そこで

公害を出さない、資源を無駄にしない

完全循環型システムを構築するために

すべての国と地域に

大規模リサイクルセンターの建設を提案します。

大規模リサイクルセンターは

すべての要らない物を回収する所です。

そこでは

・すぐ使える物はきれいにして再利用

・修理できる物は修理して再利用

・修理できない物は部品として再利用

・その他は溶解して原料として再利用

・外食産業や家庭生ゴミ、下水処理の

 ヘドロについては肥料として再利用

・再利用できない物は無害化して自然に戻す

このシステムの特徴は

・資源を無駄なく使います。

・永続的な循環型社会が実現します。

限られた資源を無駄にしないこと

環境に良いもの

健康に良いもの

必要量以上に生産しないこと

それぞれの国や地域に応じて生産する。

温暖化対策や生活必需品、食糧生産など

地球環境に悪影響を与えないシステムです。

先進国が培ってきた新技術で

地球と人類がいつまでも健康でいられる

そういう世界を実現させたいのです。

~~~提案書原稿(2)以上~~~

「地球と人類が共存していくために完全循環型システムを考えました。

 詳しい内容は専門家ではないので細かいことまで書けませんが

 概略だけでもわかっていただけたら良いと思うんです」

「そうですね、これでも充分わかると思いますよ」

「これってこのあいだ幸夫さんが言っていたリサイクルセンターのことですよね、

 僕はこれはすごいと思っていました」

と稔も感動していた。


       「資源をどう使うか?」


「僕もこのシステムは素晴らしいと思いましたよ」

「これからの資源の使い方はこのシステムは大切だと思いました」

と栄治と美佐枝がコメントした。

「ところで、

 このシステムの規模は世界中同じなの?」

と素子が問いかけた。

「国や地域によって生活様式が違うから現状に合わせて作れば良いと思いますよ」

「早い話が

 循環型システムになればいいんですよね」

と稔が意見を書いた。

稔も地球全体のことがイメージできるようになったようです。

美佐枝が温暖化について

「一つ質問して良いですか?

 温暖化対策にも触れているけど、効果はあるのかしら?」

「CО2削減に限って考えてみたんですけどね、

 大規模リサイクルセンターの活躍で新規の生産が少なくなって生産工場の

 活動が減ると思うんです」

「それはエネルギーが分散されるだけで両方あわせれば同じじゃないですか?」

「専門的なことはわかりませんが

 大規模に生産するより小規模で生産するほうが公害を減らせる技術は

 可能だと思うんです」

考えてみればゴミの焼却でも大量のゴミより

少量のゴミのほうが公害を起こさないシステムは作りやすいです。

「それに電化をもっと推進するべきだと思うんです」

「どうしてですか?

 今は出来るだけ節電をするようにしているけど」

「電気を使うことがいけないのではなく電気の発電方法が

 温暖化を助長しているんです」

「どういうことですか?」

稔を初めみんなが疑問を投げかけました。

「排気ガスが出る自動車より電気自動車が良いでしょ?」

「はい」

「石油や石炭や天然ガスを使った発電より水力や風力発電が良いでしょ?」

「はい」

「もしも、もしもですよ。フリーエネルギーが一般化して各家庭で発電できれば

 良いでしょ?」

「もちろんです」

この頃はフリーエネルギーは賛否両論あったものの一部で使われていました。

「各工場も大規模リサイクルセンターも出来るだけ電気モーターを採用すれば

 温暖化ガスを極力出さないように出来ると思うんです」

「そうですね、素晴らしい提案だと思うわ」

「大規模リサイクルセンターの実現が

 いままでの生産方法にも改善を促すってことですね」

「そう言うことです」

大規模リサイクルセンターの実現はいろんな分野を

改善していくきっかけになるようです。

そして稔が

「僕んちでも電気が自由に作れるようになると電気代を気にしないで良いんですよね?」

「でも、遅くまで起きてちゃダメよ」

と素子が釘を刺した。

「はい」

経済活動はコストを第一に考えるけどコストを考えなければ

良いことが沢山おきそうです。

それに

生産に必要な資源やエネルギーの問題も解決する手がかりが見つかるのでしょう。

自動車やバイクもエンジンからモーターへ全面的に移行する計画も

持ち上がっているようで、

部品製造の会社も激減すれば今より少ない資源で生産可能になりそうです。


       「奪い合いをなくすために」


「循環システムの次は流通のシステムの提案です。

 人件費は軍事費の一部から流用してもらうけど

 いつまでもというわけにも行かないので

 最初に提案したほうが良いと思うんです。

 だから

 お金のない世界への提案です」

~~~提案書原稿(3)~~~

世界平和が実現するために提案をさせていただいておりますが、

基本的な提案をしたいと思います。

それは

「すべての提供者はお金を要求しない」

と言うことです。

物を提供する人や団体も

技術を提供する人や団体も

サービスを提供する人や団体も

すべてボランティアです。

そうすれば

すべての人や物が自由に流通します。

利益のために人や物が動くのではなく

平和のために人や物が動くのです。

国際支援団の活動が円滑になるだけでなく

世界中の人々の交流が増えると言うことです。

温暖化や異常気象が続くと食糧不足や

生産能力が陥ってしまうことがあります。

「有る所から無い所へ」

「余る所から不足する所へ」

物や人材が自由に行き来することが出来ます。

世界平和は人々の交流が基本です。

互いの文化を尊重し互いの不足を補う関係を作ること。

損得なしで行動できるシステムにしたいのです。

~~~提案書原稿(3)以上~~~

「温暖化もすぐには解決しませんが異常気象による食糧不足や

 生活必需品の生産不足が解決されないと困りますからね」

「そうなんです、お金のやり取りをしないと何も手に入れることが出来なければ

 奪い合いの戦争は続きますからね」

「お金を大切にする人たちから見たらどう思うんでしょうね?」

「お金を助け合いの道具に使ってる人たちが多いからね」

「自分が動けなくてもお金が代理になってくれる」

「だからこそ、もう一つの世界が必要なんですね」

お金がないと何も出来ないシステムから卒業するために何が必要か?


       「お金のない世界は世界一家」


「ついにお金を使わないシステムの提案が出てきましたね」

美佐枝が待ち構えたようにコメントした。

「お金のやり取りは本当に面倒くさいです。

物に価値を付けなければ値段が決まりません。

今すぐ欲しいものがあってもお金がないと手に入らない」

世界中で人や物が自由に行き来するためには

お金がないと何も出来ないシステムは不便です。

世界が一つの家族のようになるには

どうすればよいか?

「助け合い、分かち合いの必要性はわかるんですけど、

 国レベルでも個人レベルでも自分の物は誰にも渡したくない

 っていう気持ちはどうすればいいですか?」

と栄治が疑問を書いた。

「提案の中に

 『互いの文化を尊重し』

 と書いたのは互いの生活に必要な思想やものを侵害しないという

 意味合いを持たせたんです」

「それはどういう意味ですか?」

「個人や国が必要とするものを奪ってはいけないという意味なんです」

そこで素子が質問した

「ものであれば所有権を侵害してはならないってことなの?」

「そうなんですけどね、所有権は廃止したほうが良いと思うんです」

「それは困るでしょう?」

「所有権を廃止するけど使用権(占有権)だけで良いと思うんですよ」

「どう違うの?」

「もう一つの世界の提案は世界平和とお金のない世界だけどね、

 地球は一つの家族と言う考え方なんです」

「あ!このあいだ言ってましたよね、家族だったらお金のやり取りはしないし、

 自分の物でも自分が使わなくなったら誰が使っても良いって」

と稔がコメントした。

「そうなんだよ。自分が使っている間は誰も奪ってはいけないけど

 管理が出来なくなれば誰かが自由に使っても良いって言うことです」

個人の所有地も国の所有地もゴミ屋敷が増えたり森林破壊が増えたり、

管理が出来ないのに放置している状態が所有権の存在でおきている。

「だからね、

 国でも個人でも使用権さえあれば他人や他国は侵害してはならないという

 決まりごとがあれば問題ないと思うんです。

 ただし

 『使っている間は大切に管理すること』

 が条件だけどね」

「循環型システムと同じですね」

「どういうこと?」

「地球と共存するためには必要な約束だと思ったんです」

「稔君もよくわかってきたね」

「ありがとうございます」

「お金のやり取りをしなくても資源の奪い合いが無くなるためには

 今以上の信頼関係が必要になってくるわね」

美佐枝が心配してコメントを入れた。

「それを助けてくれるのが国際支援団の活躍なんです。

 一つの地域に支援活動するのは200ヶ国以上の人たちが一団となって

 行動すれば世界が一つの家族のように理解しあえると思うんです」

「それは良いアイデアだと思うわね」

それぞれの国や地域に応じた環境と人々を大切にするということを

幸夫は言いたかったようです。


       「家族のような世界」


200を超える国や地域の民族が家族のようになる世界って?

幸夫が続いて提案を出してきた。

「以前、世界中の民族の文化を尊重するという話をしましたが、

信頼関係をもっと深めるために文化交流を盛んにしたら良いと思うんです。

それが次の提案です」

~~~提案書原稿(4)~~~

生活のために人々の交流は大切ですが

文化交流も大きな力を持っています。

文化交流は

互いが「自分を知ってもらう」ことです。

世界中に友人ができれば

子どもたちの笑顔を見たら・・・

戦争なんて考えられません。

音楽や芸術をはじめ生活文化など

互いに紹介しあったり

専門職の技術は多くの人に知って欲しいです。

私は子どもたちの声が大好きです。

人種を超えて歌う歌声は心が豊かになります。

その一つが

「What a Wonderful World」です。

(なんと素晴らしい世界だろう)

子どもたちが仲良くなれば大人も同じ。

「いつまでも平和でいたい」と思います。

軍隊も核もない世界は努力しなくても実現します。

世界は楽しいと思える環境を作ることです。

テレビ番組もユーチューブも大きな力です。

新しいもう一つの世界を創りましょう。

世界中でそう思うだけで実現します。

お金のない平和な世界です。

よろしくお願いします。

~~~提案書原稿(4)以上~~~

「国際支援団の役割はすべての民族が幸せに暮らせる環境を作る仕事だけど

 民族間の交流も大切ではないかと思うんです」

「そうね、好き嫌いは誰にもあるけど交流が好き嫌いを払拭してくれるかも

 しれないわね」

美佐枝がコメントした。


       「家族のありかた」


「文化交流は今でもいっぱいあるけど日本を知らない人たちも多いですよね」

「日本を知らない人たちも日本を嫌っている人たちも

 交流が増えれば解決しそうな気がします」

「僕もそう思います」

みんながコメントを書いた。

そこで稔が思い出したことを書いた。

「学校でいじめの話があったとき嫌いな人と好きな人の話があったんです。

 そのとき

 『嫌いな人は敵じゃない』って言ったんです」

「ほ~それはすごいじゃないの。どうしてそう思ったの?」

「僕は『人様に迷惑をかけてはいけない』って教わりました。

 でもね

 友だちに何か言おうとしても『迷惑になるんじゃないか?』って

 思うようになったんです。

 それでね

 『人が喜ぶことをしよう』が良いんじゃないかって思ったんです」

「一緒に楽しめれば迷惑をかけずに相手も喜ぶってことね?」

「そうなんです、幸夫さんの交流の話を見てそれを思い出したんです」

そこで素子が

「私も子供の頃から『人様に迷惑をかけてはいけない』って

 しつこく言われたものよ。

 だから

 人と接することはなるだけ避けてきたわ。

 稔君の言う通りよね、良い話をありがとう」

「稔君もいろいろ経験しているんだね」

と栄治も一言書いた。

「ありがとうございます」

利益を上げるために働いている栄治が

「たしかに今までは損得勘定で生きてきたから、

 損することは出来るだけ避けて、自分にとって得する相手を

 味方のように接してきたんだよね」

「これからは敵も味方も作らないほうがいいですね。

 敵と思うから争いになるんですね」

と美佐枝がコメントした。

「稔君が言ったように『人が喜ぶことをしよう』と言うのは

 人が喜んでもらえる行為は自分のためでもあるんですよね。

 そういう人たちが自分をいじめることなんてありえないですからね。

 そこでこんなことを考えたんです。

 お金の要る世界が損得勘定で生きるのなら

 お金のない世界は尊徳感情で生きていける。

 だからお金のない世界のほうが自分らしく生きていけるんじゃないかなって」

「そうですね、稔君の一言でいつも考えさせられますね♪。

 ところで、提案書の原稿はこれで終了ですか?」

「いえ、あと一つあります」

「それでは最後の部分を書きますね」

~~~提案書原稿(5)~~~

最後にみなさんにもう一度イメージしていただきたいことがあります。

一つの時代に二つの世界を作ることです。

今のお金の要る世界とお金を使わないもう一つの世界です。 

戦争も貧困も飢餓も核もあるこの世界に、

戦争も貧困も飢餓も核もない世界を作ります。

同じ時代に二つの世界を作ろうと言う訳です。

もう一つの世界は世界中が手をつなぎます。

世界中の情報をまとめるには国連が必要です。

ここにおられるみなさんの力が必要です。

僕は12年前日本で生まれて日本で育ちました。

日本の食事「和食」がユネスコ無形文化遺産になりました。

僕は日本の心「和をもって貴しとなす」が大好きです。

意味は

「何ごとをやるにも、みんなが仲良くやり、いさかいを起こさないのが良い」

と言うことです。

今までは

軍事力で世界平和を訴えていますが、

これからは

「和をもって尊しとなす」を実践してこの言葉がユネスコ無形文化遺産に

なるように頑張りたいです。

二つの世界は二階建ての家のようにお金の要る社会とお金のない社会が

同居します。

お手本の社会を創ると言うことです。

お金のない社会が軌道に乗ればお金の要る社会は崩壊します。

それで

本当の世界平和が実現するんです。

よろしくお願いします。

大切な時間をいただいてありがとうございました。

~~~提案書原稿(5)以上~~~

「提案書は以上で最後になります」

「幸夫さん、12年前の誕生って僕のことですか?」

稔がびっくりして質問をした。

「そうだよ」

「え~、ダメですよ」

「大丈夫だよ、今の稔君だったらみんなの意見を発表できるよ」

「そうですか?

国連には一度行ってみたいと思ったことがあるけど」

「稔君なら大丈夫よ」

「稔君だからこそ世界の人たちに感動を与えると思うよ」

「日本の心を世界の人たちに知ってもらえることは良いことですね」

「平和の『和』を知ってもらうことも大切なことかもしれないわね」

「それを12歳の稔君が伝えることも良いことですね」

参加した全員が賛同してコメントした。

お金の要る世界にもう一つのお金のない世界を作るという提案は

稔だったから打って付けなのかもしれない。


       「学校で未来を学ぶ」


「さて、幸夫さんが書いてくださった提案書だけど

 内容について変更とか書き足しとかありますか?」

素子が全員の意見を聞いてみた。

「細かいことまで書き足したら文章が長くなって聞く人の感動が

 薄れてしまうと思いますよ」

「私もそう思います。

 細かい内容は『やる』と決まってから提案したら良いと思いますよ」

「そうですね、

とりあえずこの文章で提案書にしたいと思います」

みんなの意見が一致したところで次の話題に進むことにした。

「さて、すぐには国連で演説することは叶いませんがこの計画を多くの人に

 知ってもらうことが必要です」

「国連で演説することを知ってもらうんですか?」

「それも大切ですが、もっと大切なのは世界平和の実現が可能だと

 思ってもらうことね」

「世界平和になれば自衛隊の活動も要らないし、

難民の受け入れも悩まなくても良いし、

領土問題も飢餓や貧困も無くなりますもんね」

「そうですね、

世界平和が実現する方法を話し合えば提案書の内容が理解できますよね」

「ところで稔君は学校で平和について話し合ったことがある?」

「はい、社会の時間で勉強しました」

「どんな勉強したんだろう?」

「近ごろは自衛隊の必要性なんかも教えるんじゃないの?」

「政府が言う積極的平和主義は自衛隊の必要性と言うくらいだからね」

「積極的に平和を訴えるのなら軍隊を廃止できる環境を作れば良いのにね」

それぞれ意見が出たところで稔がコメントした。

「学校で提案してみようと思うんですけど」

「何をですか?」

「幸夫さんが作ってくれた提案書を授業で取り上げてくださいって」

「良いかもしれないわね」

「僕が国連で発表するって言っても良いですか?」

「先生は本気にしないだろうけど提案書の内容をみんなで考えてみるのは

 良いと思うよ」

「じゃあ先生に提案書を見てもらってお願いしてみます」

稔は提案書をプリントして翌日担任の先生に見てもらうことにした。

先生は一度読んでみて

「わかった、職員会議で提案してみるよ」

と快諾してくれた。

数日後稔は職員室に呼ばれた。

「稔君、会議で話し合ったんだけどね、小学生レベルで考えることなのか

 疑問に思う先生もいるんだよ」

「僕はインターネットで大人の人たちと一緒に考えて国連で僕が発表しようと

 決めたんです」

「え!そうなの?」

「はい!」

「それじゃあ、

 もう一度会議で話し合ってみるよ、稔君はもう決めているんだね」

「はい」

「もうしばらく待ってね」

「はい、お願いします」

稔は自分が本気であることを先生に伝えた。

先生も稔の想いを大切にしようともう一度会議で取り上げる気持ちになった。

小学校の職員会議では小学生が国連で演説することなどありえないと

一笑していたが特別活動としてなら学ぶ価値はあると判断しました。

そして一週間後稔は職員室へ呼ばれた。

「稔君、やっと許可が下りたよ。特別活動の中で勉強して良いって。

 良かったな。近いうちみんなで勉強しような」

「はい!ありがとうございます」

帰宅した稔はさっそくインターネットを開いてコメントを書いておいた。

「皆さん学校で提案書を取り上げて勉強することになりました。特別活動だけど」

しばらくして素子が

「そう、良かったわね。で、先生は何か言わなかった?」

「僕が国連で演説しますって言ったら笑ってました」

「でしょうね(笑)みんなが考えてもらえれば大人も考えてくれると思うわ」

「そうなると良いです」

「ところで、特別活動って何なの?」

「教科書のない勉強です」

「どんな勉強するの?」

「道徳とか社会の一員としての体験とかです」

「へ~そうなの?」

素子は古い教育を受けていたのでわからなかった。

「それなら、提案書は良い教科書になるわね(笑)」

しばらくして参加者全員が稔の報告に

喜びのコメントを入れた。

そして

「良いことが起きそうなので皆さんも提案書の原稿を拡散しましょうよ」

と美佐枝が意見を書いた。

「そうですね、それと同時に各政党やテレビ局の番組などに

 取り上げてもらえるように投稿しませんか?」

「良いですね、ぜひやってみましょうよ」

「マスコミ関係の人が協力してくれると早く広がると思いますね」

幸夫も栄治も前向きな意見を書いた。

「それではみんなで提案書の拡散と稔君の学校での勉強会を中心に

 活動してみましょう」

「賛成です」

「それでは時々状況報告会をやることにして散会します」

「状況報告会は定期的にするんですか?」

「いえ、報告したいと思った時に書いてくださればOKですよ。

 お互い忙しいでしょうから」

「そうですね。見るだけなら毎日でも出来ます」

「では、そういうことで」

稔は学校の特別活動でどのように意見を言ってくれるのか気になっていた。

インターネットでは反対意見はほとんどなく楽しく意見交換が出来たからである。

そしてその日が訪れた。

「稔君から提案書が出されました。それは『世界平和とお金のない世界』です」

「え~!」クラス全員が叫んだ。

「みんなはインターネットをやってますか?」

「はい」

「稔君はインターネットで大人の人たちと世界平和について話し合ったそうです。

 そして

 世界の人たちに世界平和を実現しようと提案書を作りました。

 その提案書がこれです。

 コピーしたのでみんなで一枚ずつ取ってください」

さあ授業が始まりました。


       「小学生の意見は」


プリントが配られてみんながざわついた。

「みんなは世界平和ってどんな世界かわかりますか?」

先生がみんなに質問をした。

「はい、世界から戦争がなくなることです」

「世界中の人たちが仲良くすることです」

「困っている人たちがいたら助けてあげることです」

生徒たちはそれぞれ思っていることを言った。

「ところで、提案書を見てビックリしたと思うけど、

 お金のない世界の話も書いてあります。

 先生も今まで考えたことのない世界だけど稔君はどうして

 お金のない世界を考えたの?」

「それは大人の人たちが物々交換をしなければ良いって言ったんです」

「ほ~、物々交換ね。現在は文明が発達して物々交換はしないよ」

「それも僕が言ったんですけどね、お金は物々交換を便利にしたけど

 物々交換は今でも続いているんだって」

「なるほど、交換社会は今でも確かにあるね」

「先生、お金は何でも交換できる便利な道具だと聞いたことがあります」

と一人の生徒が発言した。

「たしかに。そうだよね。ところで稔君はどう思ったの?」

「はい、世界平和は世界中の人たちが家族のようになったら良いという

話しになって、家族は物々交換なんてしないという話になったんです」

「なるほどね、70億人が一つの家族という考え方だね。

みんなはこの意見をどう思いますか?」

「僕は宇宙のことが大好きで宇宙から撮った地球の写真を見て

 『こんな小さな惑星に僕たちがいるんだ』って思いました。

 それを思い出したら一つの家族と思ったほうが良いと思います」

「家族の中でもケンカはあるから戦争もあるかもしれません」

「そうだね、いろんな意見があるからケンカもあるよね、

 それが文化も言葉も考え方も違えば戦争が起きるかもしれないね。

 そう言うことは提案書にも書いてあったね。

 え~っと、これだ

 『互いの文化を尊重し、互いの不足を補う関係を作ること。

 損得なしで行動できるシステムにしたいのです。

 世界中で支え合いの関係が築かれれば飢餓も貧困もなくなり

 軍隊は不要になります』

ここに書いてあったね」

「先生、この文章もそうだと思います。

 『世界平和は「支え合い」「分かち合い」の世界です。

 互いが互いを必要とし助け合っているのです』」

「そうだね、

 ケンカしても互いが必要な人だったら戦争で殺し合いはしないよね」

「先生、世界平和はなぜ実現しないんですか?」女子生徒が疑問を投げかけた。

「そうだね、

 誰もが願っているのにいまだに実現しないのはなぜなんだろうね?」

「先生も子供のころ世界平和について勉強したことがあるんですか?」

「そうだよ、

 みんなと同じように戦争の悲惨さも世界平和の素晴らしさも勉強したよ」

「先生、こうしたらどうですか。今まで世界平和が実現しなかった理由を

 考えるのを宿題にしたら」

「そうだね、みんながおうちに帰ってお父さんやお母さんと話し合ったり、

 インターネットで調べてみたりするのも良いね」

先生は生徒に宿題を与え、授業の内容を職員会議で発表した。

稔は帰宅するとインターネットを開いて仲間たちへ状況報告した。

「みなさん、学校で提案書の勉強会をしました。

 そしたら先生が『世界平和はなぜ実現しないのか?』

 という宿題を出されました」

しばらくして栄治が

「学校の先生にも答えは見つからないんだろうね」

とコメントして稔が応えた。

「とりあえず、みんなが親に聞いたりインターネットで理由を探そうと

 言うことになりました」

しばらくして参加者が集まり意見交換した。

「世界平和が実現するとお金儲けができなくなるという人たちもいるよね」

「それは戦争兵器を作る会社でしょ?」

「そこで働いている人たちは死活問題よね」

「戦争は無いほうが良いけど戦争が無くなると困る人たちがいるという

 ことですよね」

「殺すための道具を作る人たちと、敵から自国を守る人たちの生活が

 かかっているってことね」

そこで稔はみんなに質問をした。

「いままで世界平和が実現しなかったのは戦争が無くなると困る人たちが

 多かったからですか?」

「そうだね。結論はそういうことかな~」

「それだけじゃないでしょう」

「心の問題とか考え方の問題もあるんじゃないですか?」

「やっぱりお金の要る経済活動の中では心も思考も敵味方にわかれて

 判断するんじゃないかな~」

「だから僕が提案したようにもう一つの世界が出来たら良いってことですよね」

「そうだよね、いまの社会システムの中では世界平和は夢物語になってしまうよね」

「経済活動の中でしか考えられない人は世界平和は不可能だと思っていると思うよ」

「やっぱりそうなんですね」

稔はわかっていたことだけど宿題の答えを書くには難しすぎた。

数日後宿題の発表会をした。

「みなさん、宿題の答えの用紙を集めてください」

後ろから集めた用紙を先生がファイルに収めた。

「みんなの答えはあとから先生が読んでまとめます。

 ところで、調べてみた感想をみんなに発表してもらいたいんだ」

「え~」みんなは驚いた。

「みんなの答えは尊重するよ。

 でも、紙には書いていないみんなの気持ちを聞きたいんだよ」

「そうなんですか。それなら言いたいことがいっぱいあります(笑)」

「何でも良いから言ってくれ」

みんなは手を挙げて言いたいことを順番に言った。

「大人はずるいと思いました。

 世界平和は自分とは関係ないってお父さんが言ってました」

「僕の父さんも言ってたよ」

「僕のお父さんは子供の頃から世界平和になったら良いって思ってたけど

 いつのまにか大人になって何も出来なかったって言ってました」

「大人のずるさが出ているんだね、他には?」

「大人も子供と同じところを見つけました」

「何を見つけたの?」

「面倒くさいことはしたくないから出来ない理由を考えているってことです」

「へ~、何だろう?」

「それはね、私が買い物を頼まれて行きたくないから

 『いま宿題やってるから行けない』と言ったときと同じなんです」

「うんうん、それで」

「世界平和なんて難しいじゃないですか、お父さんはボランティア活動も

 しているけど会社の仕事が忙しくて私たちと遊ぶ時間がないんです。

 たまに休んでいるときも『仕事で疲れているから』って私たちと

 遊ぶことができないし、世界平和なんて考えもしないんです」

「そうだね。仕事を優先するから子供のことや世界平和のことまで考える

 暇がないんだね。ほかに意見のある人いますか?」

「はい!」

「稔君どうぞ」

「はい、みんなの話を聞いて思い出したんですけど、

 インターネットでいろいろ調べたり大人の人とお話して

 思ったことなんですけどね。

 夢や希望を言う人は多いのに夢や希望が実現するために

 行動する人はほとんどいないってことです。

 それと政府の批判や愚痴を言ってる人も多かったです」

「そっか~、なるほどね。みんなもありがとう」

世界平和は誰もが望むことなのに世界平和のために

行動を起こすことが出来ない理由をいっぱい持っているようです。

先生は生徒たちの本音を聞いたのち宿題の答えを読みながら

違う視点で生徒たちに考えるきっかけを考えていた。


       「意識改革を知る」


次の特別活動の授業では

先生があらかじめプリントを生徒全員の机に配っていた。

そのプリントには生徒たちに考えて欲しい内容が書かれていた。

「このあいだ、みんなの意見を聞いてとても参考になりました。

 ありがとう。

 きょうは先生とみんなが一緒に考えて欲しいことを書いて

 プリントにしました。

 これは、みんなの意見と稔君からもらった提案書を参考に書いたものです。

 一度先生が読むから一緒に目を通してください」

~~~~~~~

世界平和はなぜ実現しないのか?

それは大きな錯覚から来ているのかもしれない。

自愛や愛国心。

自分が第一 自国が第一

それは

自分さえ良ければ良い

自国さえ良ければ良い

愛の勘違いだったのかもしれない。

愛はすべてを大切にする心。

自分を大切にしたいのなら周りの人を大切にすること。

周りの人を大切にすると周りの人は自分を大切にしてくれる。

自国を大切にしたいのなら他国を大切にすること。

他国を大切にすると他国は自国を大切にしてくれる。

お金の要る経済活動は自分や自国を最優先に考えてしまう。

自分が幸せにならないと周りの人を幸せにしてあげることが出来ない。

できれば世界中が一緒に幸せになったほうが良いんじゃないか。

~~~~~~~

「ざっと読んだけどわからないところはありますか?」

「大きな錯覚って何ですか?」

「たとえば自愛と愛国心で言うと・・・ところで『愛』ってわかるよね?」

「え~っと、好きってことですか?」

「それもあるけど、大切にする心なんだよ」

「へ~」

「続けるよ、自愛は自分を大切にする、

 愛国心は自分の住んでいる国を大切にする。

 ここまでわかるね?」

「はい」

「自分を大切にするために他人を犠牲にしたり

 自分が住んでいる国を大切にするために他国を利用して

 自分の国の利益ばかりを追求する。ここまでわかりますか?」

「はい、なんとなくわかります。

 このあいだテレビでTPPのニュースを見ていたとき父さんが

 『日本が損をしないように交渉してるのか?』って言ってました」

「これも愛国心からくるんだろうね」

「これのどこが大きな錯覚なんですか?」

「では、続きを読むよ。自分さえ良ければ良い、自国さえ良ければ良い

 という所です」

「自分さえって考えている人は少ないと思いますよ」

「では、貯金を考えてみるよ。みんなは貯金をしていますか?」

「お年玉はまだ少し残ってます」

彼の言葉で大爆笑を誘った。

「世界中に貧困や飢餓があるのは知っているよね」

「はい。授業で習いました」

「貧困や飢餓の人たちから見たらどうだろう?」

「でも、貯金していないと困ることになるよってお母さんに言われたよ」

「そうだよね。

 これは当たり前のことだよね。自分さえ良ければ良いって思っていないのに

 お金が無くて生きることさえ出来ない人たちから見たら?」

「貯金するお金があるなら分けてくださいって言うでしょうね」

「そこなんだよ。

 提案書を読んでみてみんなにも考えて欲しかったことなんだよ」

「自分が良くなるために誰かを犠牲にしてはいけないってことですか?」

「そうなんだよ」


       「自分と他人の関係」


先生は生徒たちに言いたかったことはまだあったようです。

「君たちにもう一つ

 これから連想してもらいたいことがあるんだ。

 それはね、いじめの問題なんだ」

「いじめの問題と関係あるんですか?」

「この文章を考えて欲しいんだよ

 『自分を大切にしたいのなら周りの人を大切にすること。

 周りの人を大切にすると周りの人は自分を大切にしてくれる』」

「いじめることは人を大切にしないからですか?」

「そうだね、さっき『愛』の話があったよね。

 嫌いな人は愛せないって。

 愛は大切にする心とも言ったけど。

 『敵を作らない』ということを言いたかったんです。

 これは稔君の意見を参考にしました」

「敵を作らないほうが良いって、どういうことですか?」

「それはね、敵を作るとやっつけたくなるんだよ」

「味方は大切にするけど敵は大切にしないってことですよね」

「そうなんだよ。

 きらいな人でも敵ではなかったらいじめたりすることはないんだよ」

「そっか~!」

「世界でも敵がいなかったら戦争だって起きないだろ?」

生徒たちは世界平和の話からいじめの話に納得がいった。

「稔君はインターネットで大人の人たちと

 ほかにどんな話をしたんだい?」

「世界平和は戦争をしないことだけど、

 敵を作らないためには家族のように必要としあう関係が

 良いって言うことでした。

 人様に迷惑をかけてはいけないことも大切だけど

 人が喜ぶことをしようというのも大切だって」

「稔君が言ったように

 学校では人に迷惑をかけてはいけないって教えるけど

 人が喜ぶことをしようと積極的に教えなかった気もするよ。

 これは教育委員会にも提言しようと思う。

 そこで

 みんなに提案なんだけどね、稔君を国連へ行かせようと思うんだ」

「え~!」

生徒全員がビックリして驚きの声をあげた。

「この世界平和の提案書は

 稔君の大人の友だちが作ってくれたものだけどね、

 稔君が国連で発表するために作ったそうなんだ」

またまた生徒たちは驚いた。

子供が国連へ行くなんて、

誰も思ってもいないことだったからである。

「君たちの未来のためにも世界平和を実現したいし、

 僕たちの仲間が国連で演説をする姿を見たいじゃないか」

「はい!賛成で~す」

教室は歓声と拍手で満たされた。

「そこで、みんなにお願いがあるんだ。

 インターネットを使って世界平和の提案書を拡散してもらいたいんだよ」

「どうすれば良いんですか?」

「スマホでもパソコンでも良いから

 提案書を見てもらえるように働きかけるんだよ。

 そして

 『僕たちの仲間が国連で演説できるように協力してください』ってね」

「なんか難しいことでもするんじゃないかって

 思っていたけど、こんなことなら簡単だから誰もが出来ると思います」

教室の仲間たちは稔の提案に賛同して協力をしてくれることになった。

稔は帰宅するとさっそくインターネットを開いて仲間に報告文章を書き込んだ。

「みなさん、学校でクラス全員がインターネットで世界平和の提案書を

 拡散してくれることになりました」

書き込んだあとしばらく待っていたが誰も書き込みが無かったので

電源を切って宿題を済ませることにした。

数時間後インターネットでは素子と美佐枝が会話を始めていた。

「稔君ご苦労様。朗報をありがとう」

「稔君が学校で活躍しているみたいですね」

「そうね、提案書の拡散は私たちもやっているけど学校の仲間たちも

 参加してくれれば広がりは早いですね」

そして幸夫も栄治も会話に加わった。

「稔君やったじゃないか」

「提案書の内容も良かったんじゃないですか?」

「そうかな~?」

「そうですとも、

 あの内容だったら私も取り上げてもらえると思いましたよ」

「ところで、稔君はどうしているんだろうね」

「勉強もあるし大変でしょうね」

「私たちも拡散以外に何か出来ることは無いかしら?」

「幸夫さんが以前いろんな所に提案したことがあるって言われましたよね」

「循環型システムの提案とか各政党やテレビ局に出したけどね」

「世界平和の提案書も出したらどうでしょう?」

「みんなで出したら取り上げてもらえるかもしれませんね」

「それぞれ分担して提案書を出しましょうよ」

「そうですね、テレビ局と各政党、それに国連関係や世界平和を

 訴えている団体とかのホームページを探して一覧表にしてみましょうか?」

「まずそれからですね」

「こんにちは」

「あら、稔さんこんにちは」

稔が参加した。

「次の作戦会議ですか?」

「そうだよ、稔君が学校で頑張ってるから僕たち大人も頑張らなくっちゃね」

「ありがとうございます。

 学校では先生が教育委員会へ提案するとかクラス全員がインターネットで

 拡散しようということになりました」

「すごい成果だよね。だからこそ僕たちも頑張らないといけないよね」

世界平和の提案書が拡散され、政治家やテレビ局などに提案投稿されること

になりました。


       「拡散とテレビ局の取材」


翌日、幸夫が各政党とテレビ局のブログを探し出し一覧表を作って提示した。

「幸夫さんご苦労様です。ありがとうございます」

「稔君、こんにちは。

 各政党とテレビ局への提案投稿は僕と栄治君と素子さんと美佐枝さんの

 4人でやるから稔君はこの一覧表にない所を探してくれないか?」

「はい、わかりました」

その日はこれからの行動を確認しあった。

いまの政治家が興味を持ってくれるのか?

政治家は理想を語るが理想を実現する気はない。

それは

立候補するときの政見がいつまでも実現しないことで

実証されているからである。

それは参加者みんなが理解していることではあったが、

やれることは何でもやってみることに異論は無かった。

テレビ局へ提案投稿すると

ブログのアクセス数が異常に増えていることがあった。

あきらかに関係者が訪問して確認していることがわかった。

各政党への提案投稿は相変わらず

「ご提案ありがとうございます。参考にさせていただきます」

などお決まりの返事で対処していた。

「皆さん、その後の反応はどうですか?」

素子がコメントを入れた。

しばらくして栄治が

「応援していますよってけっこうコメントがありましたよ」

「それは良かったですね。私のブログでも応援メッセージがありましたよ。

 ほかの人たちのところも支援者が多いといいですね」

「楽しみです」

しばらくして稔が

「学校でこんな話がありました。それは友達のお父さんがテレビ局で

 働いているんですけどね、テレビ局で話題になって僕を取材したいって

 言うことになりました。どうしたらいいですか?」

栄治がビックリして

「それはまたとないチャンスじゃないか」

素子は

「稔君、良い話だけどご両親に相談してから返事したほうがいいですよ」

と返事を書いた。

「やっぱりそうですよね。お父さんとお母さんに言ってから決めます」

稔は父親が単身赴任で県外にいるのでいつも相談事は

メールでやり取りをしていた。

さっそく事態の経緯を書いてメール送信して返事を待った。

しばらくして父親から返事が届いた。

「元気そうで何よりです。大体のことはわかったよ。

 お父さんは稔君がこんなに真剣に取り組んでいることが嬉しいよ。

 お父さんは大賛成だよ。

 お母さんにも了解をもらわなきゃいけないよ。

 取材する人が家に来るかもしれないからね。

 それから

 『お父さんは大賛成』と言っておいてね」

稔は「ありがとう」と返事メールを送った。

母親にも了解をもらってから稔はインターネットの仲間たちに報告した。

「みなさん、お父さんとお母さんに了解をもらいました。

 明日学校で友達にOKの返事をします」

ローカルのテレビ番組とはいえ、

多くの人に知ってもらえるきっかけになる可能性が出てきた。

稔は学校へ行くとさっそく友達に取材OKの話をした。

そして担任の先生にも報告すると

「良かったな~、頑張れよ。応援してるからな」と言ってくれた。

翌日テレビ局から稔の自宅へ電話がかかった。

「テレビ局のものですが、希望さんのお宅ですか?」

「はい」

「稔君のお母さんですか?」

「はい、そうです」

「取材の承諾をしていただいてありがとうございます。

 3日後の夕方7時から二時間伺いたいのですがご都合はよろしいでしょうか?」

「はい、いいですよ」

「でわ、よろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願いします」

テレビ局の取材日時が決まった。

その日の夕方

学校から帰った稔はお母さんから

「テレビ局の人から電話があって、3日後の夕方7時から

 二時間取材に来るってよ。部屋の掃除をしておいてね」

と言われ「うん。わかった」と自分の部屋に行った。

稔は部屋に入ったとたんパソコンの電源を入れた。

「どうしよう。どうしよう」

とつぶやきながら。

いつもの掲示板を開いて

「みなさん、ついに取材の日にちが決まりました。3日後の夜です。

何を話していいのかわかりませんあせってます」

と書き込んだが誰もコメントを書いてくれなかった。

その夜パソコンを覗いてみるとみんながコメントを入れていた。

「稔君よかったね、あせらなくても大丈夫だよ」

「ついにやってきたね。思っていること話せば良いよ」

「大丈夫よ。ここで話すように話せば良いのよ」

「カメラに向かって話しちゃダメよ。質問した人の目を見ながら話してね」

「みなさん、ありがとうございます」

そして

3日後その日が来た。

「こんばんは。テレビ局のものですが」

「は~い」

稔のお母さんが玄関に迎えに出た。

お母さんは昼間のうちに美容院で髪のセットとメイクをしっかりしていた。

「こんばんは。きょうはよろしくお願いします」

男性カメラマンと女性レポーターの二人が玄関の前に立っていた。

「こちらこそよろしく、どうぞこちらへ」

と二階の稔の部屋に案内した。

「稔君こんばんは」

「あ!はい、こんばんは」

「よろしくお願いしますね」

「はい、お願いします」

稔は緊張して深呼吸をした。

「稔君は星が好きなの?」

「はい」

レポーターは稔の緊張をとぎほぐすように部屋の写真を見て言った。

「僕は宇宙が好きで天体写真なんか飾るのが好きなんです」

「そう、いいわね~」

「これがプレアデス星団でこちらがアンドロメダ星雲です。

 そしてこっちがオリオン大星雲です」

「まあ、きれいな色ね」

レポーターはカメラの準備が済み、稔の緊張もほぐれたところで

稔の前にマイクを差し出して

「ちょっとテストするからお話してくれる?」

「はい」

「マイクの音量を確かめないとね。きょうは二人だけだから大変なの」

と笑って穏やかな雰囲気になった。

「それでは稔君に質問しますね」

「はい」

取材が始まった。


       「稔君は何を語る?」


女性リポーターは

国連で演説する「世界平和の提案書」の原稿を手に持って稔に質問をした。

「この提案書は素晴らしいことが書いてあるけど稔君が書いたの?」

「いえ、僕じゃないです。

 インターネットで知り合った幸夫さんに書いてもらいました」

「そう、ところで稔君はどうしてこういう話に興味があったの?」

「それは~、借金がきっかけなんです」

「借金?・・・誰の?」

「僕じゃないですよ。国の借金です」

「国の借金からこんな話になるなんて不思議ね、ハハハハごめんなさいね。

 どうしてなんだろう?」

「国の借金は僕たち国民が返さなきゃいけないって聞いたんです」

「それで?」

「僕は借りたことのない借金を返さなきゃいけないのが不思議で

 インターネットで大人の人に聞いてみたんです」

「はい、それで?」

「物々交換をやめなきゃいけないって」

「え?」

「僕も『え?』って思いましたよ、ハハハハ」

「ですよね」

「お金は物々交換を便利にしただけだって。

 物々交換はいまでも続いているんだって」

「そう言われるとそうよね」

「でしょ?。だから世界中が家族のようにならなきゃいけないって」

「どうして?」

「家族は物々交換もお金のやり取りをしないでしょ?」

「そう言われるとそうよね」

「世界中の人たちが家族のようになればお金のやり取りもしないし

 世界平和も実現するんだって」

「な~るほど。

 稔君のお話聞いていると学校の先生のお話を聞いているみたい。ハハハハ」

「そうですか?ハハハハ」

「提案書を読んでみてお金のない世界の話が書いてあるけど稔君の言葉で聞くと

 説得力があったわ」

「そうですか?」

「稔君が国連で演説するって聞いたけど稔君なら大丈夫ね」

「そうですか?」

「稔君とお話している大人の人たちはどんな人たちなの?」

「栄治さんと幸夫さんと美佐枝さんと素子さんです」

「へ~、いろんな人たちがいるんですね」

「はい、インターネットでお話しすると時々いろんな人が意見を

 書いてくれるので勉強になります」

「インターネットで遊ぶ人が多いのに

 稔君は素晴らしい社会勉強をしているのね。

 借金の話から世界平和の話になるまで稔君はどう思ったの?」

「どう思ったかって?」

「世界平和を望む人が多かったと思うの、どんな意見が多かったの?」

「世界平和を望む人は多いのに実現しないと思っている人が多かったです」

「それでも稔君の仲間たちは世界平和が実現するって思っていたのね」

「はい、実現しないと思っている人は実現しない理由ばかりを言っていたんです」

「そうなの、私もその一人かもしれないわね。

 世界平和を望んでいるのに可能性を信じていない自分があるから」

「僕は借金で苦しむのがイヤだから世界平和の実現をしたいんです」

「それが一番の力ね」

二人の会話は趣味の話や宇宙の話で時間が過ぎていき・・・・

「そろそろ終わりになりますが、稔君が国連で演説できるように応援してるね。

 今回は本当にありがとうございました」

「ありがとうございました」

取材班は後片付けをしながら

「3日後の夕方ニュースで流しますから見てね」

と言って家族に挨拶して帰って行った。

取材を終えた稔は早速インターネットを開いてみんなに報告メッセージを書いた。

「みなさん、やっと取材が終わりました。

 緊張して何を話したか覚えていません(笑)

 きょうは疲れたのでもう寝ます。放送は3日後の夕方だそうです。

 何分放送されるかわからないけど録画しておきます。おやすみなさい」

そして数分後稔が電源を切ったあと仲間たちからコメントが書き込まれた。

「稔君ご苦労様、ゆっくり休んでね」

「稔君やったね、放送が楽しみだね。お休み」

「稔君の勇気に励まされるよ。ありがとう。ゆっくり休んでください」

「みのるくん、おやすみ~♪」

翌日学校から帰った稔は宿題を済ませパソコンに向かった。

電源を入れて掲示板を見ると

仲間以外にも多くの人たちのコメントが書かれていた。

嬉しくなった稔はコメントを書いた。

「みなさん、こんにちは。たくさんのコメントありがとうございます。

 とっても嬉いです」

放送当日の朝、稔はお母さんの声で目が覚めた。

「みのる~起きて、新聞のテレビ欄に載ってるよ

 『12歳の少年が国連で演説』って」

「え~?」

「まだ決まってないのにね」

「なんだよ、?マークが付いてるじゃないか」

「あらホント」

学校では稔のテレビ出演の話題で持ちきりです。

先生が「今日はみんなでしっかり見ようね」と言ってくれた。

ついに放送時間が訪れた。

稔は放送時間の5分前からDVDの録画を始めていた。

仲間との約束で録画を忘れないように。

番組が始まった。

稔の出番はすぐではなかった。

県内のニュースや天気予報があって身近な話題のコーナーが始まった。

コーナーのタイトルは「12歳の少年が国連で演説!?」

新聞のテレビ欄と同じタイトルだった。

これが女性リポーターの精一杯の応援だったようです。

映像は家に入る前から始まって玄関に入ると母親に挨拶。

「あ~恥ずかしい」とお母さんが顔を押さえながら

テレビの前から台所へ逃げた。

映像は二階へ上がって稔の部屋へ、

部屋の中を映し稔の紹介から本題に入った。

国連で何を演説するのか、

演説することになったきっかけは何なのか、

それをわかりやすく稔に質問するレポーターの印象がさわやかさを与えた。

そして、放送では世界平和の提案書がナレーションで紹介された。

終盤で稔の将来の夢などを聞いて終わった。

わずか5分の出来事だった。

「もう終わったの?」

「うん」

「二時間近く取材してたった5分なのね」

「そんなもんでしょ?」

「でもわかりやすかったわね」

「うん」

稔の初テレビは大成功に終わった。

稔は安堵感と恥ずかしさと物足りなさを感じた。

この電波は地元しか届いていないことを。


       「テレビの影響は」


放送が終わって稔は自分の部屋に入りパソコンのスイッチを入れた。

「さあ、みんなに報告しよう」

掲示板に向かうとすでに会話が弾んでいた。

「稔君は初めてテレビに出たんでしょ? 凄いわよね」

「僕なんか一度もないよ」

「私だって(笑)」

「みなさんこんばんは」

「あら、稔君こんばんは。どうだった? テレビ出演は」

「恥ずかしかったです」

 

「録画は出来たの?」

「はい、出来ました」

「パソコンに入れたの?」

「いえ、DVDです」

「DVDからパソコンへ入れられますか?」

「はい、出来ます」

「パソコンに入れたら みんなに送ってもらえるかしら」

「はい、やってみます」

「ではお願いね、一時間くらいしてまた来ますから一旦電源を切りますね」

「了解しました」

 

稔はテレビの放送をDVDで録画したものをパソコンに取り込んだ。

そして仲間たちに送信した。

一時間後掲示板に行ってみるとすでに会話が始まっていた。

 

「稔君すごいよね。 しっかり話してるじゃないですか」

「私も見たわ、12歳とは見えないわよ」

「これで多くの人に知ってもらえたと思うよ」

「こんばんは。見てくれたんですね。 ありがとうございます」

「稔君ご苦労様でした」

「お母さんはきれいな人なんだね」

「はい、ありがとうございます」

 

稔のほかに栄治と美佐枝と素子の4人だったが幸夫が遅くれて会話に参加してきた。

 

「みなさん遅くなりました。残業があって夕飯が遅くなりました」

「幸夫さんこんばんは」

「稔君こんばんは、録画を見たよ。良かったよ。ご苦労様でした。

 ところでみなさんに提案があるんです」

「何でしょう?」

「稔君が活躍するお話がテレビで放送されたので

 それを活用してみようと思うんです」

「どうするんですか?」

「稔君に送ってもらった録画を ユーチューブに載せて世界中の人に

 見てもらおうと思うんです」

「世界中ですか?

 僕は地域の人たちだけしか見ることが出来なくて

 チョットがっかりしていたんです」

「そうよね、国連で演説する目標があるんだから幸夫さんの提案は有効ですね」

「私も大賛成よ」

「それから稔君にお願いなんだけどね、

テレビ局の人にユーチューブに載せて良いですかって了解をもらっておいてね」

「はい、わかりました」

「ところで、世界中に発信するんだからせめて英語に翻訳して字幕を入れるとか、

 二ヶ国語放送にしないとね」

「まあ本格的ね(笑)」

「だれか知り合いにいませんか?」

「映像を編集する人ですよね?」

「とりあえず友人知人に当たってみましょうよ」

「そうですね、できれば無料でやってもらえると嬉しいです♪」

「了解♪」

翌日稔は女性レポーターにもらっていた名刺を見て直接電話をしてみた。

「あ、モシモシ希望稔です」

「あら、こんにちは。きょうは何ごと?」

「お友だちとお話して僕が出たテレビ放送をユーチューブに

流そうっていうことになったんです。

そしたらテレビ局の人に了解をもらってって言われたので」

「あらそうなの、上司に聞いてみるから チョット待ってね」

「はい」

「お待たせ、録画は使って良いそうよ。ただしあの5分だけね」

「はい、ありがとうございました」

テレビ局に了解をもらった稔は掲示板に了解をもらったという伝言を

書いておいた。

ローカルテレビの出演から世界へデビューすることになりそうです。


       「世界が注目」


掲示板では栄治が緊急メッセージと題してコメントを入れていた。

「皆さんに嬉しいメッセージがあります。

 友だちに稔君のテレビの映像を見せたら感動して

 『僕に翻訳させてくれ』って言ってくれたんです。

 彼は帰国子女なんです。とりあえず彼に任せることにしました」

突然の朗報に美佐枝と素子がさっそくコメントを入れた。

「栄治さん、ありがとう」

「栄治さんは素敵な友だちに恵まれているんですね」

その夜は掲示板ではメンバーが集まって編集会議が始まった。

稔出演のテレビ映像の前後に解説を入れるものだった。

「稔君の紹介といきさつを簡単に説明したらどうでしょう?」

「誰が説明するの?」

「美佐枝さんが良いんじゃないですか?」

「え?ダメですよ」

「栄治さんが良いんじゃないですか?」

「僕は若すぎてダメです」

「素子さんなら」

「私は老いぼれているからダメね(笑)」

「あ、それなら提案書を書いた幸夫さんが良いんじゃないですか?」

「そうね。それが一番良いんじゃないかな?」

「幸夫さんに決まりですね」

「仕方ないですね。私がやります」

幸夫の解説で日本語と英語の二種類の動画を作ることになった。

数日後みんなの協力で二種類の動画が出来上がり、

さっそくユーチューブに載せることになった。

「さあ、皆さん世界へ発信しますよ。皆さんのブログからも

 動画を紹介してくださいね」

栄治は裏方の仕事は大好きだった。

お金儲けのために働くのは嫌だったが誰かの役に立つことをすることに

疲れを感じていなかった。

栄治がユーチューブに動画を投稿した。

タイトルは

「12歳の少年が国連で演説!?」というテレビ番組と同じ題名であった。

あらかじめ拡散していたこともあって時間とともに視聴回数が増えていった。

視聴回数が2000回を超えてから減速気味ではあったが少しずつ増えていた。

「なんだか選挙の投票を見てるみたいね笑)」

美佐枝が掲示板でコメントを入れていた。

ユーチューブ動画のコメント欄には多くの賞賛の声が書かれていた。

「本当に国連で演説できたら良いですね。応援しています」

「すばらしい!稔君がんばれ。応援していますよ」

「世界平和が実現する実感が湧いてきました。稔君ありがとう」

「早く実現できるように私たちも拡散します」

3日後には視聴回数が1万回を超えた。

4日後には一つの民放が朝の情報番組で取り上げた。

たった1分の紹介だったが

ユーチューブの視聴回数はますます増えていった。

掲示板では

「すごい反響ですよ」

「みんな演説に期待してるみたいね」

ユーチューブのコメント欄には多くの意見が書き込まれた。

「僕は大学生です。安全保障について考えていたけど

 世界平和の実現が一番良いんだと気付かされました」

「政府がやれなかったことが一般人でもやれることが

 出来るような気がします」

「私は中小企業の経営をしています。

 社会に役立つ製品をいっぱい発明したけど儲からないので廃業を考えています。

 でも、

 この提案書を読んでみて私たちの技術が社会の役に立てそうな気がしています。

 私たちもぜひ参加させてください」

 など。

とくに日本の中小企業の経営者や大学の研究員が注目していた。

自分が培ってきた技術が経済活動の中では実用化されてこなかったこと。

資金不足のために開発を断念せざるを得なかったこと。

彼らはお金儲けのために技術を磨いてきたわけではなかった。

社会のために自分たちの技術を活かしたかったのだ。

大手企業も販売量を増やすために発展途上国への進出して一時的に

売り上げを上げても為替の変動で利益を上げられず、

利益中心の経営に将来の不安を抱えていたが、

今回の提案に企業の将来性を感じ取ったようです。

そして、

世界平和の実現に注目したのは軍事基地を持つ市町村の人たちだった。

「世界平和になれば軍事基地は要らなくなるんですよね。

 そうなれば大賛成です」

「私たちは基地があるから平和が守られると教わってきました。

 だから

 軍事基地を受け入れて危険や騒音を我慢してきました。

 世界平和はそういう我慢をしなくても良いんですよね」

「私は核を無くす活動をしてきたけど戦争抑止力のために必要だと言われて

 反論できずにいました。これで解決できますね」

テレビ番組ではお金中心の経済活動に疑問を投げかける話題が多くなっていた。

お金がかかり過ぎるオリンピックの誘致を辞退する都市が増えたり、

経済活性化のために賭博と言われるカジノを合法化したり、

全国で800万戸を超える空き家があっても新築が止まらない。

経済のために耕作放棄地が増えている。

活用されない田畑が商業地や工場団地に変えられている。

お金を稼ぐ必要のない社会になれば本当に必要なものが守られるのではないか?

そういう話題が増えていた。

掲示板では幸夫が

「みなさんもすでに知っていると思いますがユーチューブの視聴回数が

 100万回を越えました。

 先日民放のテレビ局からメールが届きました。

 稔君と一緒にテレビに出て欲しいと言うことです。

 稔君に了解をもらわないと返事が出来ないので保留状態にしてあります。

 稔君、これを見たらご両親と相談して返事してくださいね」

これを読んだ稔はすぐ両親に相談して了解をもらった。

そして

「幸夫さん、お父さんとお母さんに言ったら条件付でOKが出ました。

 条件はいつも通りに学校へ行くことでした。

 よろしくお願いします」

とコメントを入れた。

「稔君ありがとう。

 さっそくテレビ局へ了解のメールをしておくね。

 それから

 稔君の都合の良い日とテレビ局の都合の良い日を相談しながら決めますね」

「よろしくお願いします」

そろそろ忙しくなりそうです。


       「全国ネットのテレビ」


民放のテレビ局は稔と幸夫を招いて一時間の特別番組を作ることに決まった。

収録日時は幸夫と稔の都合に合わせて日曜日になった。

収録前日の土曜日には幸夫は稔を連れてテレビ局の近くのホテルに泊まった。

往復運賃や宿泊費は局もちだった。

「幸夫さん、あしたはうまくいきますか?ぼく緊張してきました」

「大丈夫だよ。難しい話になったら僕が代わりに言うからね。

 何も心配しなくて良いよ」

「はい、わかりました」

収録日には幸夫はノートパソコンを持って行った。

自分たちの活動内容がすべて入っているからである。

撮影は10時から始まった。

ローカルテレビの取材とは違って大きなスタジオの中に数人のコメンテーター、

ひな壇には50人くらいの視聴者代表などがいた。

スタジオには大きなテレビモニターがあり、

あらかじめ作られたビデオが流されるようになっていて、

話題に応じてビデオを見ながら話が進められた。

一番論議がされたのが戦争や紛争が多い地域で平和活動が可能なのか?

お金の要る世界の中でお金のない世界に混乱は起きないのか?

インターネットで多くの人と議論してきたことがスタジオの中で再現された。

やはり、

国際支援団の活躍が全員の興味を引いた。

全人類の代表者たちが一緒に行動するからである。

午前中の収録は12時に終わり、一時間ほど休憩に入った。

「幸夫さん稔君お疲れ様でした。昼食は局の食堂で自由に食べてください」

とスタッフが食券を二人に渡しながら言った。

昼からの収録は13時半から始まった。

午前中の侃々諤々の議論に打って変わって

世界平和やお金のない世界の良いところや疑問などが話し合われた。

とくに経済学者の理論が視聴者代表たちを納得させることが出来なかった。

彼らは人間社会にお金の必要性を感じなくなっていた。

お金の要る社会とお金のない社会の比較をしたとき進化を

感じ取っていたのである。

いままで「21世紀型世界」を社会学者や政治家が言ってきたことと

明らかに違う。

そういうことがわかった時点で司会のアナウンサーが締めくくった。

「皆さん、きょうは長時間ご苦労様でした。

 稔君が国連で演説したいという熱意もわかりました。

 視聴者の皆さんにも伝わったと思います。

 世界平和とお金のない世界の素晴らしさもわかりました。

 温暖化も解決し、

 戦争も貧困も難民も無くなる世界も実現するかもしれません。

 私たちはこの提案に大賛成です。

 世界が平和になり新しい文明社会が実現するように

 祈って終わりにしたいと思います。

 ありがとうございました」

収録は16時に終わった。

収録した番組は1週間後に放映されることを伝えられた幸夫と稔は

テレビ局の売店でお土産を買って帰途に着いた。


       「全国放送と国連の反応」


自宅に帰った稔は家でも学校でもテレビ局での話題に持ちきりだった。

「芸能人に会ったの?」とか

「サインもらえばよかったのに」とか。

掲示板では収録の報告会が行われた。

5時間に及ぶ収録が1時間番組に編集される。

しかも

CM時間を入れると40分程度である。

その代わり日曜日のゴールデンタイムにしてもらった。

「幸夫さん、稔君お疲れ様でした。

 一週間後には有名人になってますね(笑)」

「僕たちより世界平和やお金のない世界に興味を持ってもらいたいね」

「テレビの収録で思ったことなんですけどね。

 経済学者に専門的なことを質問されて答えられない場面があったんです。

 そんな時どう対応したらいいのか?」

「そうだよね。僕たちは専門家ではないからね。

 僕たちはきっかけを作るための活動だと思えば良いよ。

 世界平和はこうすれば出来ますよって、方法を提案するしか出来ないからね」

一週間後テレビ番組の放送日が訪れた。

番組タイトルは「12歳の少年が世界を変える!?」だった。

放送時間がゴールデンタイムと、

ユーチューブのコメント欄に放送予定が書かれたこともあって

視聴率は高かったようである。

放送の翌日、

学校では稔はヒーローのように扱われたが

稔はいつもの態度でいた。

一方掲示板では

多くの賛同者がコメントを入れていた。

「稔君、国連に行けるよう応援してるよ」

「私たちの学校でも勉強会をしますね」

など読みきれないほどだった。

「稔君、ここまで広がったら挑戦してみたいことがあるんだよ」

「幸夫さん、なんとなくわかりますよ」

稔がこう応えると栄治が

「ついにやってみますか?」

と理解したようにコメントを書いた。

「何々、

みなさん何を計画されているんですか?」

美佐枝も参加してきた。

「ついに来たんですね。国連でしょ?」

と素子が入ってきた。

国連での演説はどうすれば出来るのかは誰も知らなかったが、

思いつくままに関係機関のブログへ行って提案投稿することになった。

数日後

「皆さんに報告があります。国連本部からメッセージが届きました」

と幸夫が緊急連絡を掲示板に載せた。

幸夫は密かに国連関係のブログに何度も提案投稿していたようです。

世間でも話題になっている国連演説は国連本部でも話題になっていた。

掲示板では幸夫の緊急連絡に仲間たちがコメントを入れ始めた

「幸夫さん、どんな内容ですか?」

「良い話なら良いのにね」

「こんなに早く国連からメッセージが来るなんてね」

「実はかなり前から国連関係のブログに何度も提案投稿していたんですよ」

「そうなんですか」

「それでね、メッセージと言うのが国連でも取り上げたいことなので

 直接会って詳しくお話を聞きたいって」

「え~そうなんですか。それでいつなんですか?」

「僕たちの都合の良い日を教えてくださいって」

「すごいじゃないですか。もちろん幸夫さんが話しに行くんですよね?」

「そうですね、稔君と一緒に行ったほうが良いと思うんです」

幸夫が「世界平和の提案」の原稿を作って稔が演説をする計画は

大きな前進を始めた。

提案が実行に移されるかはまだ未知なるものはあったが

提案を発表する場が提供されるだけでも大きな前進と言えるのかもしれない。

数日後幸夫は稔の都合の良い日を国連に伝えた。

そして

その翌日国連から会談の日時が報告された。

幸夫はすぐに了解の返事を送った。

「皆さん、ついに会談の日時が決まりましたよ。

稔君の両親も賛同してくださったので話が早く進みました」

「それは良かったですね。楽しみです♪」

「もちろん提案書の内容についての話なんでしょうね?」

「おそらくそうなると思います。

 提案書の内容に過不足があれば変えるけど僕たちはこのままで通したいと

 思ってます」

「そうですね、小さいことは私たちだけでは決められませんからね。

 基本さえ伝えれば良いと思いますね」

そしてその日がやってきた。

国連関係者との会談は国連関係の施設の中で行うことになった。

国連関係者はすでに民放で放送された録画を何度も見て内容を

把握していたようだった。

国連関係者は稔の考え方を確認したかった。

わずか12歳の男の子が「世界平和を国連で演説したいなんて」

と不思議に思っていたのだ。

それが

「国の借金を子供の僕も返さなきゃいけない」

という疑問から始まったことに笑いが止まらなかった。

会談は始終和やかに行われ快く国連での演説を承諾してくれた。

そして

演説の日時は後日知らせてくれるということ、

宿泊費や交通費はすべて国連が支払うことなど伝えて会談は終了した。

帰りすがら幸夫は稔に言った

「稔君ついにやったね」

「はい。少し不安だけど」

「何が?」

「僕飛行機乗ったことないんです」

「そう言うことか。ハハハハ・・・

 てっきり演説のことかと思ったよ」

「演説もだけど僕高い所が恐いんです」

「そっかそっか大丈夫僕がそばにいるから」

ともあれ国連での演説が決まった。


       「国連での演説が決定」


国連での演説が決定してから、

もう一度提案書の内容を確認することになった。

それは栄治が

「一つの国の中でも違う民族がいたり生活や風習が違えば

支援の仕方が違わないと支援の押し付けになるんじゃないですか?」

という疑問だった。

提案書には

「世界中の国と地域が参加して作られます」と書かれてあるものの、

地域性をもっと強調しておかないと発展途上国の人たちに不安を

与えるかもしれないと思ったからであった。

栄治の提案で提案書はこれ以上の長文にならない程度に

文章の書き加えを考えた。

「このあいだ誰かが言っていたけど地域によって生活が違うから

地域に応じた活動が出来るようにするために地域の人がリーダーになって

指示するようにしたら良いんじゃないです?」

美佐枝が提案した。

「そうですね、

 たしかにこういう話はしたけど提案書には書いておいたほうが良いですね」

「他にも疑問に思うことは出てくると思うけど世界平和への道筋が

 イメージできれば細かいことはあとから考えても良いんじゃないですか?」

「そうですね、とりあえずこの文章だけ入れておきましょう」

~~~~~

国際支援団の活動の仕方を少し説明させていただきます。

国の代表だけでは部族間の格差が出来ますので

地域活動の組織編成は地域の人が

リーダーとなって世界中の人が参加して行います。

地域の風習やしきたりや宗教に合わせた活動が求められるからです。

それぞれの地域や宗教を大切にし合う関係を作れば

世界平和にもつながると思っています。

~~~~~

新しい提案書が出来て演説の準備は出来上がった。

そして

演説の二日前に幸夫と稔は東京羽田からニューヨークまで

行くことになった。

およそ13時間ものあいだ稔は高所恐怖症を感じることもなく

飛行機から見る地球の素晴らしい姿を満喫していた。

ニューヨークに着いた二人は国連職員の迎えを受けてホテルまで案内された。

そして、翌日は国連本部に案内されて演説のための打ち合わせが行われた。

打ち合わせが終わると二人は職員の案内で街の観光とお土産を買うことになり

有意義な時間を過ごした。

いよいよ演説の日を迎えました。

ホテルでは早めに起きた幸夫と稔は国連職員の迎えが来るのを待った。

あまり待つ時間もなく国連職員が乗った車がホテルの前で静かに止まった。

「稔君さあ行こう」

幸夫は稔に言って車に向かった。


       「国連本部で演説(1)」


国連本部に到着した幸夫と稔は

すでに会議が始まっていた会議場のそばで待つように言われた。

心の準備は出来ていたものの本番が目前に迫ると緊張が高ぶってきた。

会議場の中では稔の紹介がされているのが稔の耳に入ってきた。

「出番になりましたのでこちらにどうぞ」

と案内され、稔と幸夫は会議場の中に入って行った。

各国の代表者たちは立ち上がって拍手をして二人を歓迎した。

稔は壇上へ幸夫は稔のそばにある椅子の横に立って

ゆっくりと丁寧にお辞儀をした。

幸夫は椅子に座り、稔は手に持っていた封筒から提案書を取り出した。

そして

読み始める前に一言国連と各国代表者の人たちにお礼の言葉を言った。

そして

「それでは僕の提案を読ませていただきます」

と言って提案書を読み始めた。

~~~~~

私たちは世界平和の実現を提案します。

いままで私たちは軍隊を無くせば平和になれると思っていました。

なぜ軍隊が無くならないのか?

軍隊を必要とする世界だからです。

奪い合いや騙し合いの世界だからです。

世界平和になれば軍隊は要りません。

軍隊や核を無くすための努力より世界平和の実現に努力を傾けたほうが良い。

そう思うのです。

世界平和は

「支え合い」「分かち合い」の世界です。

互いが互いを必要とし助け合っているのです。

それが実現するための提案をします。

一つ目の提案ですが、国連を中心とした

国際支援団(International support group)の

設立をお願いします。

「国際支援団(ISG)」とは

「国境なき医師団」を参考にして世界中の国と地域が参加して作られますが

国際支援団(ISG)は常時活動する団体です。

設立の目的は世界の貧困や差別を無くすことです。

世界のあらゆる地域が独自の文化が守られ

安心して生活できるお手伝いをすることです。

世界中の技術と資源を無駄なく有効活用します。

国際支援団の仕事は

それぞれの国の代表が

「自分の国が出来ること、出来ないこと」

「自分の国に足るもの、足らないもの」

「自分の国が必要なもの、して欲しいこと」

などのシェアをし合います。

そして

農業生産が出来る所

工業生産が出来る所

科学技術が得意な所

世界中で生産と技術を分かち合うのです。

たとえば

「私たちの国は土地は広いけど砂漠が多いです」

「私たちは砂漠を農地に変える技術を提供します」

「海に面しているけど水不足で困っています」

「私たちは海水淡水化の技術を提供します」

「水はいっぱいあるのに汚染がひどいです」

「私たちは汚泥浄水装置を提供しましょう」

「広大な農地はあるけど生産能力が低いです」

「私たちが生産能率の高い技術を提供します」

「きれいな海に面しているので養殖技術が欲しい」

「私たちが養殖の技術を提供しましょう」

などなど

もっとたくさんの協力関係が出来上がります。

国際支援団の活動の仕方を少し説明させていただきます。

国の代表だけでは部族間の格差が出来ますので

地域活動の組織編成は地域の人がリーダーとなって

世界中の人が参加して行います。

地域の風習やしきたりや宗教に合わせた活動が求められるからです。

それぞれの地域や宗教を大切にし合う関係を作れば

世界平和にもつながると思っています。

~~~~~

ここまで読んだ時、会議場で拍手があがった。

とくに発展途上国や部族間で争いが多い国であった。

そして、

その拍手は会議場全体でしばらく続いた。

稔も幸雄も支援団の働き方の文面を追加したことが良かったと安心していた。

拍手が終わってから稔は続きを読み始めた。


       「国連本部で演説(2)」


~~~~~

そして

人々が平和に共生することと同時に

地球との共生を大切にしなければいけません。

そこで

公害を出さない、資源を無駄にしない

完全循環型システムを構築するために

すべての国と地域に

大規模リサイクルセンターの建設を提案します。

大規模リサイクルセンターは

すべての要らない物を回収する所です。

そこでは

・すぐ使える物はきれいにして再利用

・修理できる物は修理して再利用

・修理できない物は部品として再利用

・その他は溶解して原料として再利用

・外食産業や家庭生ゴミ、下水処理のヘドロ については肥料として再利用

・再利用できない物は無害化して自然に戻す

このシステムの特徴は

・資源を無駄なく使います。

・永続的な循環型社会が実現します。

限られた資源を無駄にしないこと

環境に良いもの

健康に良いもの

必要量以上に生産しないこと

それぞれの国や地域に応じて生産する。

温暖化対策や生活必需品、食糧生産など

地球環境に悪影響を与えないシステムです。

先進国が培ってきた新技術で地球と人類がいつまでも健康でいられる

そういう世界を実現させたいのです。

~~~

世界平和が実現するために提案をさせていただいておりますが

基本的な提案をしたいと思います。

それは

「すべての提供者はお金を要求しない」

と言うことです。

物を提供する人や団体も

技術を提供する人や団体も

サービスを提供する人や団体も

すべてボランティアです。

そうすれば

すべての人や物が自由に流通します。

利益のために人や物が動くのではなく

平和のために人や物が動くのです。

国際支援団の活動が円滑になるだけでなく

世界中の人々の交流が増えると言うことです。

温暖化や異常気象が続くと食糧不足や

生産能力が陥ってしまうことがあります。

「有る所から無い所へ」

「余る所から不足する所へ」

物や人材が自由に行き来することが出来ます。

世界平和は人々の交流が基本です。

互いの文化を尊重し互いの不足を補う関係を作ること。

損得なしで行動できるシステムにしたいのです。

~~~~~

ここで会議場がざわついた。

稔はしばらく戸惑っていたが

「あとで詳しく説明しますので続けます」

と言って静かになってから続きを読み始めた。


       「国連本部で演説(3)」


~~~

生活のために人々の交流は大切ですが

文化交流も大きな力を持っています。

文化交流は

互いが「自分を知ってもらう」ことです。

世界中に友人ができれば

子どもたちの笑顔を見たら・・・

戦争なんて考えられません。

音楽や芸術をはじめ生活文化など互いに紹介しあったり

専門職の技術は多くの人に知って欲しいです。

私は子どもたちの声が大好きです。

人種を超えて歌う歌声は心が豊かになります。

その一つが

「What a Wonderful World」です。

(なんと素晴らしい世界だろう)

子どもたちが仲良くなれば大人も同じ。

「いつまでも平和でいたい」と思います。

軍隊も核もない世界は努力しなくても実現します。

世界は楽しいと思える環境を作ることです。

テレビ番組もユーチューブも大きな力です。

新しいもう一つの世界を創りましょう。

世界中でそう思うだけで実現します。

お金のない平和な世界です。

よろしくお願いします。

~~~

最後にみなさんにもう一度

イメージしていただきたいことがあります。

一つの時代に二つの世界を作ることです。

今のお金の要る世界とお金を使わないもう一つの世界です。 

戦争も貧困も飢餓も核もあるこの世界に、

戦争も貧困も飢餓も核もない世界を作ります。

同じ時代に二つの世界を作ろうと言う訳です。

もう一つの世界は世界中が手をつなぎます。

世界中の情報をまとめるには国連が必要です。

ここにおられるみなさんの力が必要です。

僕は12年前

日本で生まれて日本で育ちました。

日本の食事「和食」がユネスコ無形文化遺産になりました。

僕は日本の心「和をもって貴しとなす」が大好きです。

意味は

「何ごとをやるにも、みんなが仲良くやり、

いさかいを起こさないのが良い」と言うことです。

今までは

軍事力で世界平和を訴えていますが、

これからは

「和をもって尊しとなす」を実践して

この言葉がユネスコ無形文化遺産になるように頑張りたいです。

二つの世界は二階建ての家のように

お金の要る社会とお金のない社会が同居します。

お手本の社会を創ると言うことです。

お金のない社会が軌道に乗れば

お金の要る社会は崩壊します。

それで

本当の世界平和が実現するんです。

よろしくお願いします。

大切な時間をいただいてありがとうございました。

~~~~~

稔は提案書を読み終わって幸夫を紹介した。

「僕の提案のためにこの原稿を作ってくれた幸夫さんを紹介します」と。

幸夫は壇上に立ってゆっくりお辞儀をして話し始めた。

「内容に驚いたところがあると思います。

 稔君も僕たち仲間もお金の存在を真剣に考えてきました。

 世界平和をイメージしたときお金のない世界がみんなの頭の中に

 浮かんだのです。

 国際支援団の活動には生活を支えるためにお金が要りますが、

 それは世界中の軍事費の一部を投入していただきたいと思っています」

それを聞いた代表者たちは全員立ち上がって拍手をした。

軍隊はすぐには無くせないが軍事費の一部を出し合うだけで

世界平和が実現するのなら惜しみなく支援する決意を持ったのである。

二人はそろって挨拶をして会場から出て行った。

出てもしばらく

スタンディングオベーションで送り、あちらこちらで歓声が上がっていた。

演説は大成功で終了したのだ。


       「国連で大成功」


演説を終えた稔と幸夫は国連事務総長室へ招待された。

事務総長から感謝の言葉をもらって

今後の活動方法について協力以来があった。

国連では国際支援団の活動を前もって準備していたようです。

国際支援団の設立理念を世界中に浸透することと同時に

世界中の企業や研究機関の協力を得るために力を注いで

欲しいということだった。

稔も幸夫も出来る限り協力することを約束した。

二人はその日はゆっくり体を休め

翌朝ニューヨークを飛び立ち東京羽田に向けて帰国の途に就いた。

羽田に到着してロビーに出るとたくさんのカメラが二人を待っていた。

二人が国連で演説したというニュースが世界中に流れていたのだ。

二人は報道陣の中に連れて行かれ記者会見コーナーがすでに設置されていた。

およそ30分のあいだ多くの質問に答えて二人は解放された。

「幸夫さん、ビックリしましたね」

「そうだよな、まさかこんな大騒ぎになるなんて。疲れたよ」

「僕も疲れました」

稔は両親が迎えに来ていた。

「あ!お父さん、お母さんもありがとう」

「お帰り、ご苦労さん」

「幸夫さんご苦労様でした。ありがとうございました」

「稔君もご苦労様、じゃあね」

全員それぞれの家に帰って行った。

一週間後

国連が国際支援団の設立を正式に発表した。

世界中の企業と大学や一般研究機関などに技術や資源の提供を呼びかけた。

日本ではテレビや新聞で参加希望の企業や研究機関が紹介され、

日に日に参加希望者も増えていった。

経営不振の中小企業が息を吹き返したように活気付いていた。

大学や専門学校を卒業して就職先が見つからなかった若者も

インターネットを活用して参加仲間を募っていた。

そして

稔と幸夫は各地で講演を依頼されて土日は休日返上で講演会に行った。

インターネットの掲示板ではいつもの仲間に加えて多くの賛同者が

意見交換していた。

異論反論はなく国際支援団が順調に活動できるために

何をすれば良いかという話題が多かった。

仲間たちは

「提案書どおりに行きそうだね」と確信をもって話していた。

掲示板の中に興味のある質問があった。

「わたしは稔君のフアンです♪

 皆さんの意見交換を見ていつも思っていたことがあります。

 歳の差があるのになぜ同じ志を持って国連まで行けたのですか?」

その質問に興味のある答えが書かれた。

「私も同じような経験があります、

 それは生まれる前にやるべきことを決めた仲間が居るってことです。

 生まれる順番は違うけど約束をした仲間が自然と集まったんでしょうね」

これらのコメントには多くの「いいね」が贈られた。


       「もう一つの世界」


国際支援団は国連中心で結成され世界中に参加希望を募集した。

参加希望者は100万人を超え、

企業は1万社を超え大学や研究所なども5千団体超える参加希望があった。

稔と幸夫は日本の心「和をもって貴しとなす」の精神を理解してもらうために

世界中で勉強会をすることになった。

栄治と美佐枝、素子は

掲示板を活用して参加希望者の疑問や質問の対応に力を注いでいた。

彼らの努力もあって半年後には世界中で活動が始まった。

当初200万人の支援団が月日を経るごとに

希望者が増え子供たちのあこがれの仕事になっていた。

稔は中学生になって留学を兼ねて

世界中で新しい世界の勉強会に奔走していた。

夢にまで見たもう一つの世界が順調に作られていることを実感し、

最初の悩みであった国の借金のことは稔の頭の中にはなかった。

その後国際支援団は規模を拡大して「和をもって貴しとなす」が世界中に浸透し、

軍事基地など軍備はもちろん核も解体されることになっていた。

そして

お金の要る世界からお金のない世界に移行するのも身近な話題になり

世界中が一つの家族のようになっていた。

おわり

追記

後書きを読んでください。

~~~~~~~~~~

この部分は2018年1月22日に書いています。

この小説の続きを考えています。

国際支援団はどのようにして結成されるのか?

国際支援団はどんな活動をするのか?

国際支援団の活躍で人々がどのように変わっていくのか?

意識改革が起こり社会システムが変わっていきます。

その話の流れを書いています。

https://plaza.rakuten.co.jp/chienowa/5034/

できれば

小説の専門家に書いていただきたい。

そう願っています。

~~~~~~~~~~

今の日本と世界を見たとき世界平和の必要性を感じます。

それはすべての人類が望むことだと思います。

そして

お金がないと生きていけない。

お金がないと何も出来ない。

そういう社会システムは終わりにしないといつまでも世界平和は実現しないしお金で苦しむ人々は無くなりません。

この小説が世界平和のきっかけになれば嬉しいです。

楽天ブログ「お金のない世界 知恵の輪」を元に作りました。

http://plaza.rakuten.co.jp/chienowa/

楽天ブログでは

「小説を読んでみて思うこと」

を連載中です。

小説を読んで話題にして欲しいことなどを書いています。(2016年12月31日記)

~~~~~~~~~~~

国連で演説する提案書です。

私たちは世界平和の実現を提案します。

いままで私たちは

軍隊を無くせば平和になれると思っていました。

なぜ軍隊が無くならないのか?

軍隊を必要とする世界だからです。

奪い合いや騙し合いの世界だからです。

世界平和になれば軍隊は要りません。

軍隊や核を無くすための努力より

世界平和の実現に努力を傾けたほうが良い。

そう思うのです。

世界平和は

「支え合い」「分かち合い」の世界です。

互いが互いを必要とし助け合っているのです。

それが実現するための提案をします。

一つ目の提案ですが、国連を中心とした

国際支援団(International support group)の

設立をお願いします。

「国際支援団(ISG)」とは

「国境なき医師団」を参考にして

世界中の国と地域が参加して作られますが

国際支援団(ISG)は常時活動する団体です。

設立の目的は

世界の貧困や差別を無くすことです。

世界のあらゆる地域が独自の文化が守られ

安心して生活できるお手伝いをすることです。

世界中の技術と資源を無駄なく有効活用します。

国際支援団の仕事は

それぞれの国と地域の代表が

「自分の国が出来ること、出来ないこと」

「自分の国に足るもの、足らないもの」

「自分の国が必要なもの、して欲しいこと」

シェアをし合います。

そして

農業生産が出来る所

工業生産が出来る所

科学技術が得意な所

世界中で生産と技術を分かち合うのです。

たとえば

「私たちの国は土地は広いけど砂漠が多いです」

「私たちは砂漠を農地に変える技術を提供します」

「海に面しているけど水不足で困っています」

「私たちは海水淡水化の技術を提供しますよ」

「水はいっぱいあるのに汚染がひどいです」

「私たちは汚泥浄水装置を提供しましょう」

「広大な農地はあるけど生産能力が低いです」

「私たちが生産能率の高い技術を提供しましょう」

「きれいな海に面しているので養殖技術が欲しい」

「私たちが養殖の技術を提供しましょう」

などなど

もっとたくさんの協力関係が出来上がります。

国際支援団の活動の仕方を少し

説明させていただきます。

国の代表だけでは部族間の格差が出来ますので

地域活動の組織編成は地域の人がリーダーとなって

世界中の人が参加して行います。

地域の風習やしきたりや宗教に合わせた活動が

求められるからです。

それぞれの地域や宗教を大切にし合う関係を作れば

世界平和にもつながると思っています。

~~~

そして

人々が平和に共生することと同時に

地球との共生を大切にしなければいけません。

そこで

公害を出さない、資源を無駄にしない

完全循環型システムを構築するために

すべての国と地域に

大規模リサイクルセンターの建設を提案します。

大規模リサイクルセンターは

すべての要らない物を回収する所です。

そこでは

・すぐ使える物はきれいにして再利用

・修理できる物は修理して再利用

・修理できない物は部品として再利用

・その他は溶解して原料として再利用

・外食産業や家庭生ゴミ、下水処理の

 ヘドロについては肥料として再利用

・再利用できない物は無害化して自然に戻す

このシステムの特徴は

・資源を無駄なく使います。

・永続的な循環型社会が実現します。

限られた資源を無駄にしないこと

環境に良いもの

健康に良いもの

必要量以上に生産しないこと

それぞれの国や地域に応じて生産する。

温暖化対策や生活必需品、食糧生産など

地球環境に悪影響を与えないシステムです。

先進国が培ってきた新技術で

地球と人類がいつまでも健康でいられる

そういう世界を実現させたいのです。

~~~

世界平和が実現するために

提案をさせていただいておりますが

基本的な提案をしたいと思います。

それは

「すべての提供者はお金を要求しない」

と言うことです。

物を提供する人や団体も

技術を提供する人や団体も

サービスを提供する人や団体も

すべてボランティアです。

そうすれば

すべての人や物が自由に流通します。

利益のために人や物が動くのではなく

平和のために人や物が動くのです。

国際支援団の活動が円滑になるだけではなく

世界中の人々の交流が増えると言うことです。

温暖化や異常気象が続くと食糧不足や

生産能力が陥ってしまうことがあります。

「有る所から無い所へ」

「余る所から不足する所へ」

物や人材が自由に行き来することが出来ます。

世界平和は人々の交流が基本です。

互いの文化を尊重し

互いの不足を補う関係を作ること。

損得なしで行動できるシステムにしたいのです。

ここで一つ補足しておきたいことがあります。

それは

国際支援団の活動には生活を支えるために

お金が必要です。

その経費は世界中の軍事費の一部を

投入していただきたいと思っています。

~~~

生活のために人々の交流は大切ですが

文化交流も大きな力を持っています。

文化交流は

互いが「自分を知ってもらう」ことです。

世界中に友人ができれば

子どもたちの笑顔を見たら・・・

戦争なんて考えられません。

音楽や芸術をはじめ生活文化など

互いに紹介しあったり

専門職の技術は多くの人に知って欲しいです。

私は子どもたちの声が大好きです。

人種を超えて歌う歌声は心が豊かになります。

その一つが

「What a Wonderful World」です。

(なんと素晴らしい世界だろう)

子どもたちが仲良くなれば大人も同じ。

「いつまでも平和でいたい」と思います。

軍隊も核もない世界は努力しなくても実現します。

世界は楽しいと思える環境を作ることです。

テレビ番組もユーチューブも大きな力です。

新しいもう一つの世界を創りましょう。

世界中でそう思うだけで実現します。

お金のない平和な世界です。

よろしくお願いします。

~~~

最後にみなさんにもう一度

イメージしていただきたいことがあります。

一つの時代に二つの世界を作ることです。

今のお金の要る世界と

お金を使わないもう一つの世界です。

戦争も貧困も飢餓も核もあるこの世界に、

戦争も貧困も飢餓も核もない世界を作ります。

同じ時代に二つの世界を作ろうと言う訳です。

もう一つの世界は世界中が手をつなぎます。

世界中の情報をまとめるには国連が必要です。

ここにおられるみなさんの力が必要です。

私は日本で生まれて日本で育ちました。

日本の食事「和食」が

ユネスコ無形文化遺産になりました。

私は日本の心「和をもって貴しとなす」が大好きです。

意味は

「何ごとをやるにも、みんなが仲良くやり、

いさかいを起こさないのが良い」と言うことです。

今までは軍事力で世界平和を訴えていますが、

これからは

「和をもって尊しとなす」を実践して

この言葉がユネスコ無形文化遺産になるように

頑張りたいです。

二つの世界は二階建ての家のように

お金の要る社会とお金のない社会が同居します。

お手本の社会を創ると言うことです。

お金のない社会が軌道に乗れば

お金の要る社会は崩壊します。

それで

本当の世界平和が実現するのです。

よろしくお願いします。

大切な時間をいただいてありがとうございました。

(以上)

小説「12歳の少年が世界を変える」では

「国際支援団(ISG)」とは

「国境なき医師団」を参考にして

世界中の国と地域が

参加して作られ常時活動する団体です。

とあります。

国境なき医師団は、

中立・独立・公平な立場で医療・人道

援助活動を行う民間・非営利の国際団体です。

国際支援団は国連に属し

世界の貧困や格差を無くすことです。

世界のあらゆる地域が独自の文化が守られ

安心して生活できるお手伝いをすることです。

これを読んで違いはわかると思いますが

医師団は医師が働きますが

支援団は民間人が働きます。

そして

支援団は生活するための報酬を得ます。

言い方を変えると

給料をもらってボランティア活動をする。

と言うことです。

とくに

貧困で苦しんでいる人たちに参加してもらって

彼らの仲間たちが貧困で苦しまないように

支援するリーダーになってもらえば良いですね。

支援団は

自国で働く人と他国で働く人にわかれます。

自国で働く人は言葉の問題はありませんが

他国で働く人は他国語を覚えると働きやすいです。

自国で働く人は

自国の問題点を改善する方法を考え

自国の良い点を他国へ提供することを考えます。

他国で働く人は

他国の問題点を改善する支援をします。

そして

それぞれの国の人たちが

「自分の国が出来ること、出来ないこと」

「自分の国に足るもの、足らないもの」

「自分の国が必要なもの、して欲しいこと」

シェアをし合います。

彼らはそういう仕組みを理解するために

研修を受けます。

報酬を得ながら学んでいただきます。

それは

普通の会社のシステムと同じですね。

活動費は

医師団の場合ほとんどが民間からの寄付ですが

支援団の場合は世界中の国からの寄付です。

それは軍事費の一部を提供してもらいます。

世界平和のための活動ですから。

     ※

国際支援団は企業も参加します。

自社の技術を世界で活用してもらうために。

とくに

素晴らしい技術を持っている中小企業は

世界で活躍して欲しいですね。

参加企業も経費は必要です。

その経費も国連から支払われます。

ただし

ボランティア活動だから利益を上げません。

非営利団体です。

世界が必要とする会社は存続するんです。

利益を上げないで

必要なものを必要な量を生産する。

それは

お金のない世界になれば実現するのと同じです。

お金のない世界の予行練習のような感じです。

国際支援団は企業が大きな役割があります。

それは技術の提供です。

小説の中にこんな文面があります。

~~~~~

そして

農業生産が出来る所

工業生産が出来る所

科学技術が得意な所

豊かな資源がある所

世界中で生産と技術を分かち合うのです。

~~~~~~

日本で例えるなら

日本の企業が外国へ行って

農業の技術を提供して自給率を上げる。

その国に必要な生産物の工場を設置する。

安定した水資源を確保できるようにする。

早い話が自立できるように支援するんです。

国や地域によって支援の仕方が変わります。

それは

地域の風土や風習、宗教や生き方に応じて、

人たちの希望に即した方法が必要だからです。

世界のあらゆる所でこういった支援があれば

資源の乏しい日本への支援が自然と出来ます。

お金のやり取りをしない支援活動です。

日本も100%の食糧自給率が必要ですね。

「食糧は外国から買えばいい」はダメです。

身近な田んぼが埋め立てられるのを見ました。

苦労して作った先人たちに申し訳ないです。

国際支援団の活躍は

支援するほうも支援されるほうも

心豊かになれるほのぼのとした関係です。

     ※

国際支援団の役割は

世界平和を実現するために活動します。

世界各国から集まった集団が行動します。

そのためには国境は障害になります。

彼らは戦争や紛争地域を避けて活動します。

そして

世界中の地域が

健康で平和に暮らせる環境を作っていきます。

それぞれの地域が

安心して働くことが出来て

生活に必要なものが自由に生産出来て

外国と必要に応じて輸出入が出来る状態にする。

平和な暮らしが出来る環境が出来上がってくると

戦争や紛争地域の人々も

「私たちの所もお願いします」と声がかかります。

そうなれば

世界から戦争と紛争が無くなります。

世界中の国が

自由に資源をやり取り出来る関係が出来上がります。

国境があっても必要に応じて自由に出入りできます。

それは

世界が一つになれる世界一家の実現です。

ここへ辿り着くには時間はかかりますが

目標がしっかりしていれば実現可能です。

多くの人に国際支援団を知ってもらいたいですね。


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