見出し画像

SOMPOによるABEJA関連会社化、実は今後大流行のM&A手法|ニュース解説プレミアム Vol.23

本記事は有料コンテンツの一括購読サービス
M&A BANKプレミアム』(月額990円)の対象コンテンツです。

その他、単品での購入(500円)、
ニュース解説プレミアムマガジン
(4,000円、1本あたり175円以下)でのまとめ買い
にてお読みいただけます。

【シェアでもう1本】有料記事プレゼントキャンペーン中
詳細はこちら


「救済的なM&A」「経営者はEXIT」か?


4月23日、SOMPOホールディングスはAI系スタートアップのABEJAを傘下に入れたとのニュースが出ました。


背景の説明などがあまりなくわかりづらい表現もあったため、受け取り方は人それぞれで様々な意見を見かけました。
「ABEJAは経営危機で救済的な案件」、「ABEJAはSOMPOの子会社になりM&Aイグジット」などなど。
ただ、これらはおそらく事実ではなく、まずは背景を整理して認識を合わせましょう。


まず、本件によりSOMPOは既存株主より21.9%の株式を取得してABEJAを関連会社化し、筆頭株主になりました。
記事では「傘下に」とあるのでパっと見では子会社化しているように見えますが、あくまでも約20%の取得なのでこの表現はミスリードです。

また、M&Aイグジットとありますが、ABEJA経営陣は株を売ってないようですので、経営者にとってはM&Aイグジットには該当しません

さらに、経営危機という表現は適切ではないでしょう。そうであれば100億以上の評価はつかないためです。
メルカリによるOrigami買収はタダ同然で行われていましたが、経営危機であればこのような水準になることが多いです。

ただし、金額については注意してみる必要がありそうです。
2018年資金調達時のABEJAの時価総額は約245億、今回は100-150億程度ということで大きく評価額が下がっていることになります。
この点注意が必要なのが、2018年はABEJAが新株を発行し、それをグーグルなどが取得したものですが、今回は新株を発行しているわけではなく、既存投資家であるセールスフォースなどからSOMPOが買っているということです。
そのため、買い手売り手間の協議により株価は決まり、前回より低い評価額で資金調達をするダウンラウンドとは厳密には異なります



既存投資家はなぜ株を売ったのか


売りたい理由は色々ありますが、典型的にはファンドには期限があり、満期が近づけばイグジット先を探す必要があるため、IPOがまだまだ先なのであれば上場前に売却するという形です。
とはいえ、普通に考えれば分かる通り、投資時よりは高い株価であったとしても、会社が順調に成長していればわざわざ前回ラウンドより低い金額で売ろうとする株主はいませんので、前回調達時に描いていた計画通りに成長していないことはほぼ間違いないといえます。
例えばSansanも上場前に既存投資家が他の投資家に持株を譲渡して投資家として上場前にイグジットしていますが、この時の評価額は直近ラウンドから下がっていません。

ちなみに、ABEJAは投資銀行出身のCFOの方が活躍されていると以下記事になっていますが、すでに退職されているようです。

本件がそうかは不明ですが、CXOクラスが上場前に退職するのは事業成長が思うようにいかなかった際によく起こることです。



今後大流行する?○○○○○○投資


状況整理が長くなりましたが、言いたいことはこれからです。
タイトルで「実は今後大流行のM&A手法」と書きましたが、ここではマイノリティ投資を含む広義の意味でのM&Aとして使用しています。
今回の最大のポイントは、新株発行を伴わない既存の投資家持分の取得ということです。

・今後日本のスタートアップ業界で大流行する投資
・○○○○○○投資の魅力・有効なケースとは

ここから先は

1,197字
この記事のみ ¥ 500