見出し画像

だって、いつ裏切られるかわからないじゃないか

人に見捨てられるのが怖い。

僕は、自分に友だちができる理由を知らない。仕事も無く、たいした学歴も経験も無く、特に人柄が良いわけでもなく、むしろ抱えている病気のせいで誰かに迷惑をかけ続けて暮らしている。
だから、今仲良くしてくれている人たちが、いつ僕から離れていってしまうのか気が気ではなく、安心して接することがなかなかできない。


僕のことを慕ってくれている後輩がいる。知り合って1年半ほどだろうか。会うことはほとんど無いが、毎日のようになんらかのSNSで互いの生活を見守っている。いや、彼が僕のことを見てくれているのかはわからないが、少なくとも僕の方は彼のSNSをずっと見て、学業やその周りの活動、気持ち、体験、体調などを把握している。

彼が僕を慕う理由は、おそらく体験していることが似通っていることと、学業において僕が先輩に当たっていて彼よりも少しだけ知識が多いことだと思われる。

なぜか、彼については僕はいつ裏切られるのかという感情を抱いたことが無い。「まーたんさんがいたからここまで来れたんです」という言葉に、僕ができたことなど無かっただろうと謎ではあったが、まあありがとうと思ったし、きっとこの先も彼は僕のことを見てくれる。
そう思う理由はよくわからない。普段の壊れ切った僕を見ても戸惑わず、ただ側にいてくれているからだろうか。


一方で、もっと近い存在なのに僕が見捨てられ不安を消せない相手がいる。こちらは出会って8年が経ち、最初の6年間はたまに趣味をきっかけに会って日帰り旅行をする仲で、最近の2年ほどは1週間に一回くらいのペースでよく会い、毎日LINEで雑談するような人である。
実は、交際相手である。

この人もまた、壊れ切った僕を知っている。僕が病気であり、たまにTwitterで死にたいと喚いてはタイムラインを不穏にしたり、学業や生活すべてに失敗して廃人のように生きていたり、突然会う約束をキャンセルしたり、病気のせいで身体の自由がきかなかったり、そういうことを丸ごと受け入れてくれる人だ。

この人の僕に対する接し方はあまりにも温かい。

突然「ごめん、今日体調が悪くて会えない」と当日に連絡したことは数知れずあるが、毎回「いいよ、ゆっくり休んでね」と返ってくる。
僕が人に甘えるのが苦手なのを知っていて、それでも頼りにしていいよと言い、「(甘えるのを)少しずつ慣れていこう」とフォローしてくれる。
病気の症状が酷い時、1時間半の電車の移動にわざわざ交通費をかけてまで付き添ってくれたり、歩くスピードを落としてふらつく僕を気にかけてくれたり、目が見えていないので「あそこに●●がある」「これは▲▲だよ」と教えてくれたりする。
一度「僕が障害者で嫌ではないのか」と直球で尋ねたことがあるのだが、「別にまーたんの障害で困ったことはないからねえ」と否定された。
僕と交際することでこの人にデメリットが生じていると思うのだが、それについて話したら「迷惑だったらとっくに別れてるよ、気にするのはなかなかやめられないと思うけど、こちらにデメリットは無いからね」と返ってきた。
僕が死にたいと言い続けても止めることをしない。「まーたんが死にたいと言っても、なにかできるわけではないしわかってあげられないし、まーたんの人生はまーたんのものだから、死のうとするのを勝手に止めるのはできないな」だそうで、いや、それは"わかっている"んだよと泣きそうになった。

先ほどの後輩よりも更に上をいく理解者なのに、こちらはなぜか見捨てられ不安がしばしば暴走する。
これが適当な見せかけの優しさであって面倒になったらそのまま連絡を絶たれるのではないかと思うことが頻繁にあり、僕はこの人に依存するかのようにして生きているのでそのように捨てられたらいよいよ頼れる人がいなくなり僕の生きていく必要性が消えるなと考える。僕が死にたいと言いながら生きているのは、主にこの人を悲しませたくないからと言っても過言ではない。

この人は僕が暴走しているのを知っているので、時々「見捨てることはないよ」と声をかけてくれる。それでもどうしても怖い。

これはこの人に対してかなり失礼なことだとは思っている。理解者であり、一緒にいてくれて、わざわざ「見捨てない」と断言までしているのにそれを疑っているので。信じないといけないのはわかっている。なのに身を任せて信じきることができずにいる。


僕に友だちは数多くいるが、特にこの2人を取り上げて見てみると、見捨てられ不安を抱える人と抱えない人がいることがわかる。どうしてこんなことになっているのかはよくわからない。

それでも僕はたいていの人間関係を信頼しきっていない。1人目の登場人物である後輩はかなりの例外である。

だって、人はいつ裏切るかわからないじゃないか。

結局、僕が心から「この子は裏切らないから安心して頼れるし安心して甘えられる」と思っているのは、16年一緒に暮らしてきたいぬのぬいぐるみただ一人なのかもしれない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?