クセ強おやじとの思い出
人の大切さや、本当の良さを失った後気付く。嫌いな部分も、後から思うと長所だったりする。謝りたくても、もういない。そう思うと悲しくて寂しくて、鼻の奥がツンとする。
亡き父はかなりクセの強い人
自由奔放、エキセントリック、自分勝手、とにかく短気。家族は父にブンブン振り回された。
母と妹は父の怪奇行動に悩んだ。長女の私は、父の気質を受け継いだらしい。いつも「そんなものだ」とスルー。友は、父にツッコミを入れ笑いに変えてた。おかげで父を嫌いではなかった。
そんな面白くも迷惑な父の話。
父、中学校の校門に立つ。
思春期の女子は親が学校に来るなんて、絶対イヤだ。しかし、ある日突然、父は学校の校門にドーンと立っていた。
校門に入って行く生徒達に、「おはよー!」と大声で言っていた。
知らない人は、体育の先生がいる、と思ったろう。
父は娘の私を見つけると、「おーい!」と声をかけてきた。目立つ事が嫌な私は、軽く会釈して早足で通り過ぎた。我が友は「今日もパパ来てたね〜!」と笑った。一緒に笑うと『恥ずかしい』から『おいしい』と思えた。
父、音楽室に現る
音楽の授業中、父がいた。
いや、音楽室の扉越しにこちらを見ている不審者がいた。
そして、こちらの方を見て手招いている。私は必死に気付かないフリをした。
しかし、さすがに限界で父の元へ。
何を言うかと思えば、
「お前のクラスは私語が多い。真面目に勉強するように注意してこい!」
と言われ、私は泣きそうになった。
その時、チャイムが鳴り、授業が終わった。
今となっては笑える大切な思い出のひとつだ。