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実録・赤名リカを追え。vol.2

第2話。まず、アイスホッケー観戦でエキサイトしている永尾完治を見て、後の世界陸上で「地球に生まれて良かったーーー!」ってなってる織田氏が脳裏に浮かんだことを先に報告しておきます。や、フォローするわけじゃないが、今作の織田裕二は輝きまくってると思う。なんというか、演技が次世代っぽくて新鮮だ。や、30年前なんだけども。シンプルに素敵だと思う。

ともあれ、私がリカに沼落ちしたのはこのときからだ。完治へのブチ切れ案件「だったら教えてよ! 人を好きにならないで済む方法!」このセリフで全私がもっていかれた。リカのトリッキーな言動のすべてが線で繋がった気がした。そうなのだ。好きになったら止められない。相手にとことん応えてほしくなる。とことん相手に応えたくなる。その情動でようやく生きている気がする。これが得難くて、何より尊い気がして、倫理すら瑣末に思えてしまう。そんな自分が本当は嫌いなのだ。無自覚かもしれないが、内心はそうなのだ。コントロールできなくなる自分を受け入れる余裕などない。だからこそ、本当にあるならぜひ教えて欲しいはずだ。人を好きにならずに済む方法。

「ホットロード」(紡木たく)の春山洋志が、なすすべもなく暴走族にのめり込みながら、「だって仕方ねえじゃんかよ! 止めらんねえんだもんよ!」(セリフうろ覚え)と苛立っていたのを思い出す。わたしの中で春山とリカがリンクする。誰だってアンコントロールな自分は怖い。願わくば誰かに止めてもらいたい。リカの恋愛はきっと、ストッパーの希求でもある。切実なのだ。全身全霊なのだ。よもや純朴な青年に受け止めきれるはずもない。初めから負け戦なのかもしれない。だからこの終わりの始まりみたいなBGMがしっくりハマるんだろうなあ。くっ。

この時点でリカをかろうじて理解しているのは、和賀部長だろう。「不器用なんだ。あいつは荷物を捨てられない。1人でいろんなものを背負い込んでる」と言い、その上で完治とリカはお似合いかもしれないと評している。なぜって2人は正反対だから。「(完治は)何も荷物を持ってない。少しぐらいなら肩代わりできるだろ。」和賀が心底リカを心配しているのか、罪悪感から逃れたいだけなのかは置いといて、たしかにリカにとって完治は対極の存在だ。ここまで対極の完治ならストッパーになりうるかもしれないと私もこのとき思った。がんばれカンチ!となった。リカが救われることで私も救われる気がしてきた(何から?)。私のバウンダリーよ、いずこ。

それにしても、このリカというキャラクターを当時の視聴者はどう解釈したのだろう。共感したのだろうか。最高視聴率は33%近くに達したらしいが、その熱源は何だっただろう。愛とは抱えている荷物を肩代わりすることなのか。そういう愛は存在するのか。存在してほしい。証明してくれ! 闘えカンチ!! という気分だったのだろうか。それだけみんな何かを抱えていたってことなのか? 視聴率からしてもそれなりの社会現象だったろうから、その辺の分析も調べればいくつか出てきそうだよなあ。ぜひ知りたい。

しかし、そんなこんなの思考が巡るのも多分に脚本の力なのだと思う。なんせエピソードタイトルは「愛ってやつは」だ。リカの愛、さとみの愛、三上の愛、多種多様の愛が描かれている。完治の愛やいかに。 

終盤、待ち合わせに来ないかもしれない完治をひたすら待ち続けるリカだったが、これまたトリッキーだ。待つ道理がない。リカ自身、完治は来ないだろうと思っている。それでも待つ。心の中のモロが「お前にリカを救えるか!」と吠えている。外は雨だったが、心は嵐だったと思う。だから完治が現れたとき、ついに電池が切れた。全身全霊の賭けをやっていたのだから当然だ。もはや意識すら朦朧としている。賭けに勝ったんだか負けたんだかも分からない。ただ首の皮一枚で繋がっただけ。ふらふらと立ち去ろうとするリカに、完治はひとまず傘を握らせる。そういうとこよ完治! 君の土壇場の優しさは唯一の希望だ。がんばれ! 生きろ!! というわけで、vol.3に続く。

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