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【曲感想】Taiko Super Kicks - 感性の網目

こんにちは。

今回は大好きなTaiko Super Kicksの大好きな楽曲である『感性の網目』の感想を書きます。

私が彼らと出会ったのは2015年のアルバム『Many Shapes』でした。とにかくギターのアンサンブルがいいな、と思ったのを覚えています。インパクトがあまりに強かったので、7th FLOORでの『大安』というイベントにも行きました(リードギターの樺山さんの音作りがものすごくかっこよかったです!! 身体にガツンと圧がくるのに耳が痛くならないバランスのファズの音色が素晴らしかったです)。

フロントマンの伊藤暁里さんの書く歌詞・楽曲ももちろん素晴らしく良いのですが(歌詞から伊藤さん独自のユーモアの感覚や、柔和なまなざしを感じます)彼らの一番の魅力は各楽器のアレンジの面白さにあると思っています。

以前、どこかのサイトかあるいはTwitterで、彼らは日本のBuilt to Spillだ! と書かれているのを見たことがあるのですが、それも頷けるギターアレンジ、ダイナミックな演奏(特に上記の樺山さんのプレイは圧巻です!)が魅力的です(EPの霊感・アルバムのMany Shapesでその素晴らしいプレイが聴けます)。

彼らは2ndアルバムである『Fragment』で方向転換をしました。凝ったアンサンブル(特にドラムが凝っています! 音作りの多彩さが楽しいです!)とやさしい視線をもった歌詞、それを丁寧に伝える伊藤さんのヴォーカリゼーション、樺山さんの鋭いギターサウンドはそのままに、落ち着いた雰囲気の楽曲が並んでいます。私はどちらかというと大人しめな音楽を好む傾向にあるので『Fragment』には相当ハマりました。

『汗はひき』の変則的なドラミングと、ミニマルに絡んで静と動を使い分ける2本のギターからはTelevision的なものを感じますし『のびていく』のひょうきんささえ感じるギタープレイの面白さや『バネのように』の執拗に繰り返されるギターリフと奇妙なパターンのドラム(どの曲もギターが完全に左右に振られていて、オーバーダブでセンターでソロを弾くパートがほとんど無いのも面白いです。こだわりを感じます)。

そして霊感・Many Shapesの頃のサウンドとは異なるやわらかなアレンジの『フラグメント』の素晴らしさ……やさしく、丁寧に語りかけるように歌われる歌詞がとっても素敵です。おそらくですが、この『フラグメント』という曲は生活の断片について歌っていて、何々をしようという言葉に対して「それもありだ」とか「やっぱりやめよう」と応えるフレーズが、生活というものを肯定しているように聞こえて好きです。


前置きが長くなりましたが、『感性の網目』について書いていきます。

この楽曲の最大の魅力は、限りなく詩に近い歌詞にあると思います。少ない言葉で豊かな詩情を生んでいるところに伊藤さんの凄まじさを感じます。録音(音作り)も見事です。全体的にウォームなサウンドで、おだやかに語るような歌声とよくマッチしています。

(余談ですが、この作品でスタジオクルーソーの存在を知りました。私もよくお世話になっている素晴らしいスタジオです!)

「網目」という言葉選びもいいな、と思います。インタビューにもありますが(https://mikiki.tokyo.jp/articles/-/19758?page=3)、感性の「壁」ではないところに伊藤さんのやさしさを強く感じます。私は本作の歌詞の意味を正確に捉えられていないので見当外れだったら恐縮ではありますが、完全に外部からの情報を遮断してしまう「壁」ではなく、通すべきものは通して優しく包んでくれる「網目」であるところが素敵だと思うんです。

また、本作はバンドの演奏も見事です。ころころと毛糸が転がるように、あるいはさらさらと小川が流れていくように紡がれる2本のギターのフレージングが面白く、丸い音色のソフトさも含め、歌詞のおだやかですこし切ないところを巧みに際立たせています。左右どちらのギターもよく動くため、主張が強めなプレイだと感じるのですが、まったく歌の邪魔をしていないところがまた素晴らしいアレンジだと思います。

ドラムは静かながらも不思議なリズムを叩いています。特にハイハットのパターンが奇妙なのに曲によく馴染んでいて、ドラムキット全体の音色(おんしょく)のまろやかさも好きです。心にスッ……と染み込んでくるようなサウンドです。

ベースラインのさりげない動きっぷりも好きです。主張するギターとドラムの中で、しっかりと存在感を示すフレージングがナイスです。

どの楽器(歌も含め)も、静かで柔らかいムードながらも強い主張をしているところが楽しい楽曲だなと思います。聴きどころが多いので、何度再生しても新鮮な気持ちで聴ける作品です。


ぜひ聴いてみてくださいね。





おわり




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