見出し画像

【アルバム感想】スカート - CALL

こんにちは。

今回はスカートの名作『CALL』について感じたことを書いていきます。


………………

音楽にはつくった人の(あるいはつくった人たちの)人柄が宿っていると信じています。

曲を聴いていると、なんとなく「この人は◯◯な人なんだろうなあ……」と思うことってありますよね? この直感って結構当たると思っていて(単なる思い込みかもしれませんけどね!)、個人的には「この人は誠実な感じがする!」と感じる音楽を好きになりがちです。

………………

それはさておき、スカート(澤部渡さん)の曲を聴いていると「この人は音楽がどうしようもないほどに好きなんだな……!」と感じます。どうしてなのかわかりませんが、はっきりとそう思います。それと同時に「切ない思い出をたくさん背負っていそうだな……」とも感じます。これは歌詞の力もありそうですが。

スカートの曲って聞いているとじんわりと切なさがこみ上げてくるんですよね。それは歌詞のテーマや言葉選びの感覚だったり、歌のメロディだったりコードワークだったりいろいろな要素がそう感じさせてくれるのだと思うのですが、そういうところがとにかく好きなんです。

歌詞・メロディ・コードワークの三点が強靭で、かつお互いをうまく支え合っているので歌の強度が凄まじいことになっているんです。そして、すばらしいのが編曲の巧みさです……! 上記のただでさえ強い三点を更に際立たせるアレンジメントが見事なんです。ギターの音の積み(ひらたく言うと弦の押さえ方ですね)ひとつとっても、凝りに凝っています。そんな押さえ方知らない……と感じるコードがたくさん使われています。コードは同じ名前のものでも積み方で響きが異なるので(私はこの繊細な音の違いをうまく扱えないため、スカートはほんとうに凄いな、と思っています)、同じ進行でも無限の可能性を秘めているんです。

一曲目の「ワルツがきこえる」からもう胸キュンが凄いです。一本のギターと歌だけで静かにしっとりと始まり、バンド全体の音が入ってくる瞬間のドキドキとか、後半になって現れるストリングスがゆっくりと、しかし確実に強く心を締め付ける感じとか……わずか二分で終わってしまうのに充実感に満ちている曲構成とかすっごく好きです。いやあ、いい曲だなあ……

続く「CALL」は「ワルツがきこえる」とはうってかわって、ゴリッとしたベースで始まります。ここでまたドキッとします。静かでやわらかい音に慣れた耳に低音が直撃するこの感じ。アルバムを通しで聴く醍醐味がここにある! と感じます。曲が進むにつれて徐々に熱を帯びてゆく二本のギターが気持ちいいですね。ループするコード進行がBメロ(?)で予想外の方向に行くのも良いですよね。私はこの曲にどうしようもないやりきれなさを感じて胸がキュッとなります。

………………

このアルバムで見事だと思うのが「どうしてこんなに晴れているのに」「アンダーカレント」「ストーリーテラーになりたい」の三曲の流れです。

時間にして九分ほど、ずっとドキドキしっぱなしです。

「どうしてこんなに晴れているのに」はピアノが言葉少なに、しかし雄弁に語りつつ、澤部さんの儚い歌声が真摯に歌詞を伝えてくれるところが大好きです。スカートの曲は二分〜三分ほどの長さにときめくメロディや面白い仕掛けなどがギュッと詰め込まれていて、ポップソングに対するものすごいこだわりと情熱を感じます。聴く人を常にワクワク・ドキドキさせ、繰り返し再生したくなるやさしい魔法です。ほんとうに!

続く「アンダーカレント」で切なさはピークに達します。曲の展開がとても凝っている(難解に感じてもおかしくないほどに)のに、スッと染み込んでくるところが不思議です。どうやったらこんなに響く曲を書けるのだろうと思います。

「階段は深く続いて」のセクションで何か始まりそうな予感を抱かせ(私はこの部分で迷路に閉じ込められたような感覚になります。スネアのゴーストノートが気持ちいいですね)「針のような痛みを」で一気に晴れ渡る開放感がたまりません。歌詞の言葉ひとつひとつがまたよくてですね……言葉の数は多くないものの、はっきりした風景を描いていて見事です。

そして「ストーリーテラーになりたい」です。これは個人的にすごく"効く"曲で……ポップなんですが、すごく「痛み」を感じます。

この曲のドラムすごく好きです! 本作の録音のウォームな質感がすごく好きなんですが、特にドラムのあたたかさがよくて……この曲はものすごく切ないのに音自体はやさしいアンビバレントな感じが好きです。好きすぎて、文章が好きだらけになってしまいましたね……

………………

アルバムのラストを飾る「シリウス」もまたものすごい名曲です。イントロから冬のような寂しさを強く感じます(シリウスといえば冬の大三角形ですよね。コード選び、音選びが見事です……)。

この曲を聴くと私はすごく感傷的になってしまいます。要所要所で巧みに曲を盛り上げるドラムや「君に逢えるような気がするんです」の「するんです」が恐ろしいほどに切実に響くところがたまらないですね……

………………

本作に収録されている楽曲はどれも澤部さんの人柄が強く表れていると感じます。ひねくれつつも人懐っこいところは澤部さんらしいなと思いますし、音へのこだわり(録り音やコード進行やメロディなどなど)は音楽が好きで好きで仕方ないんだなと感じさせてくれますし……

音楽の魅力を凝縮させた濃厚な(でもまろやかな)一枚だと思います。ものすごい名作です!!!


おわり

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?