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【アルバム感想】へんなゆめみたいな…… P-MODEL - KARKADOR

こんにちは。


音楽を聴いたときに「えっ……いや、これはおかしいのでは……?」と思うことってありますよね。人間は自分の持つ感覚の外からヒュッと飛来する音に弱いもので、聴き慣れないメロディ・リズム・ハーモニーが聴こえてくると身構えてしまいます。

このアルバムを初めて聴いたのはずいぶんと昔のことになるのですが、一聴して「これはおかしいぞ……!?」と思った記憶があります。

(このおかしさが癖になる場合があって、一度脳に快感の回路が形成されてしまうと戻れないのです)



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さて、私は戻れなかった側の人間であり、しかも本作を何百回と聴いているので、正直、まっとうなレコメンドができるとは思っていません。そういう意見もあるのだなあ、くらいに思ってもらえると幸いです。

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このアルバムに収録されている曲のなにがおかしいの? と聞かれたら、私は「サウンドの雰囲気」だと答えます。

と、いうわけで、サウンドの雰囲気をみていきましょう。一番特徴的なのはやはりドラムですね。

基本的にどの曲もとにかくスネアの音が大きいです。オフマイクをふんだんに混ぜているのか、スネアだけ(曲によってはキックも)残響音が異様にふくよかです。一方で、シンバル類にはあまり残響音がついていません。ここまで極端な録音はなかなかないですね……わざわざ別々で録っているのでしょう(この手法は前々作のPerspectiveから取り入れられていますが、私は本作を先に聴きました)。初めて聴いたときの印象はドラムの音がヘンだぞ……!? でした。

この「!?」がポイントで、一度この音の魅力にガーンと殴られてしまうと私のように二度と戻れなくなります。

プリセットの音をそのまま使っているであろうシンセの音色もポイントです。個人的にですが、この手の音色のシンセはなんとなく生のドラムやエレキベース、ヴォーカルの質感と馴染まない感覚があるんですよね。なので、ちょっと浮いて聴こえます。そこが私にとって第二の「ヘンだぞ!?」ポイントでした。しかも、このアルバムには横川理彦さんによるバイオリンが入っていたりして、ますますシンセがむき出しに聴こえます。面白い!

そして、第三の「ヘンだぞ!?」ポイントは音数の少なさです。本作の音の少なさは耳に馴染まない感覚があると感じています。あって欲しい、あるいは"普通"ならあるはずの音が鳴っていないんですね。なので、初めて聴いた時は上記の二点とのトリプルパンチでものすごい違和感を覚えました。曲から拒まれているような気持ちになったのを覚えています。

と、褒めているんだかなんなんだかよくわからない言葉を並べましたが、とにかくこのアルバムは素晴らしくポップです。ひとをつっぱねるような要素を多分に含みながらも、なぜだかポップなんですよ。歌は決して感動的なメロディではないし、センセーショナルなコード進行でもないと思うのですが――むしろ本作のキテレツなメロディ・意味がわからない歌詞の歌はひとを遠ざけるはずなのに――とにかくポップなんです。ひとを遠ざける方向に突き抜けているから却って人懐っこく感じるのかもしれません。

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話は逸れますが、私個人が音楽をつくっていて思うのは、中途半端が一番ひとを遠ざけるということです。

激しいんだか静かなんだかわからないとか、キャッチーなんだかアヴァンギャルドなんだかわからないとか……どっちつかずの音楽ってあまり魅力的に映らないんですよね(とはいいつつ、どっちつかずを極めると凄かったりもしますが)。

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本作で特にいいなあと思うのはド定番ですが「CYBORG」と「LEAK」ですね。

「CYBORG」はなんとなくキュートなイントロから心を掴まれます。夕暮れのさびしいイメージ。歌がとにかく魅力的です。サビらしいサビがないからか、むしろ全部がサビに聴こえてくるきれいなメロディです。そして、これまた「!?」が浮かぶ歌詞と潔いドラムパターン、シンプルすぎるベース……結構異質なアレンジだと思うのですがこれ以外は考えられないパーフェクトなアレンジだと思います。

「LEAK」はイントロのコード進行の奇妙さ(ミステリアスな感じ)や、サビの笛のような音色のシンセのメリーゴーランドがくるくる回るような愉快さ、「遠く動く〜」の「ごく〜」の部分、歌の半音の動きが不穏で気持ちいいところとか……この曲は緊張と弛緩のバランスがとても好きです。めまいがサビで急に収まって、晴れやかな気持ちで歩きだすような感じ。


語ろうと思うと収拾がつかなくなるのでひとまずここらへんで終わります……ぜひ聴いてみてくださいね。

おわり






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