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【アルバム感想】今にも瓦解しそうな青春の煌き……Felt/Crumbling The Antiseptic Beauty

好きなアルバムについて時々記事を書いていこうと思います。

大好きなバンドであるFeltの記念すべきファーストアルバムです。

このアルバムは
Lawrence(Vo・Gt)
Maurice Deebank(Gt)
Nick Gilbert(Ba)
Gary Ainge(Dr)
とシンプルなツインギターのバンド編成で録音されています。ベース・ドラムが入っていない曲もありますが、全曲に共通するムードがあり、違和感はありません。統一感でいったら彼らの作品の中でNo.1なのではないでしょうか。

ところで、僕はMaurice Deebankというギタリストがめちゃくちゃに好きです。クリーントーンでアルペジオを弾くのが彼の基本的なプレイスタイルで、Lawrenceがぼそぼそ歌うのを支えるように音を積み重ねていくのが巧みだなと思います。クリーンが得意なのはThe Durutti ColumnのVini Reillyに似たところがあるような気もしますし、影響を受けているのかな? と初めは思いましたが、コピーしてみて、オーソドックスな握りのフレーズを多用するという点でDeebankはVini Reillyとはちょっと違ったプレイスタイルを貫いているなと思いました。Deebankはクラシックギターの素養もあると思います。また、丸い音を使うVini Reillyとは対象的に、おそらくTelevision(Venusという曲がFeltのバンド名の由来にもなっています)の影響である尖った音色も特徴的ですね。音色は違えど両者ともに熱い力を感じますが……!

この作品に収録されている曲たちには、ある種の危うさが多分に含まれていると感じます。それは精緻につくりあげられたガラス細工のように脆く儚いものにのみ宿る危うさで、自身の内面をボソボソとすこしずつ吐き出すようにささやくヴォーカルに、奇妙な透明の輝きを放ちながら流れてゆくギター、原始的な、タムを多用したドラミングが影響しているのではないかと思います。
自意識が過剰で、お互いの言動や行動に刺しつ刺されつしていた、いつ倒れてもおかしくなかった青春時代を思い出させてくれるところがあります。触れたら一瞬にして血が吹き出してくるようなヒリヒリ感……こういった感覚を想起させてくれるところがこのアルバム最大の魅力であると思っています。


おわり

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