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【アルバム感想】サーフロック? シューゲイズ? ……いや、まるで即興のスリル Beach Fossils - Beach Fossils

Mac DeMarco、Wild Nothing、DIIVらとともにCaptured Tracksの代表格として君臨していたBeach Fossilsのファーストアルバム。
ローファイかつドリーミーなネオサイケ、あるいはポスト・パンク的なサウンドのバンド・アーティストを数多く輩出したレーベルからのリリースであるためその音楽性についてやれサーフだのなんだのと誤解されていることが多いように思います(あくまで個人の感覚です)が、彼らの演っていることはちょっと特殊なんです。今回はその特殊さについて取り上げたいと思います。

昨年リリースされたセルフカヴァーアルバム「THE OTHER SIDE OF LIFE: PIANO BALLADS」の惹句にこういうものがありました。


「ダスティン・ペイサーはジャズを聴いている時の感覚を自身の楽曲に取り込もうと考えていました。Beach Fossilsの楽曲には常にジャズの要素があります。コードはほとんど演奏されませんが、楽器は単音を演奏し、それらが集まってコードを作っているのです」


おそらく、「ジャズ」という言葉が指しているのはインタープレイのことでしょう。インタープレイというのは直訳で相互作用という意味で(いろいろな解釈があるようですが)ジャズにおいては演者と演者があるプレイヤーの即興演奏に触発され、自らもそれに合わせ即興でプレイするようなスタイルの演奏のことをいいます。僕はこのインタープレイというものが大好物です。あらゆるしがらみから開放された演奏は本当にエキサイティングで、ドキドキしてしまいます。日本のバンドですとヒカシューがこういった即興演奏をライブに取り入れており、例えば4分の原曲にインタープレイを挟んで10分演奏することでリスナーに強烈な印象とスリルをもたらしています。

話をBeach Fossilsのファーストアルバムに戻します。上記太字の通り、この作品に収録されている楽曲ではギターがほとんど和音を弾きません。ほとんどの曲が2本のギターが独立して単音のリフを弾くアレンジとなっています。結果、ギター、ベース、ヴォーカルが重なる瞬間瞬間で様々な和声感が生まれており、それが音楽に不思議な彩り(自分はこのアルバムを聴いていると頭にマーブル模様が浮かび上がります)を与えているのです。これが実に「インタープレイ的」だな、と僕は思います。シンプルなベースのフレーズにおそらくインプロ的手法で考えたであろうギターフレーズが絡み合う面白さは、ジャズに近いものがあるかなと思います。また、どの楽曲においても基本的に軸となるリフが繰り返し演奏されるため、テクノやジャーマンプログレにも似た高揚感があります。

そういったインディ・ポップとしてはかなり特殊な方法で作られた楽曲群ですが、歌がしっかり立っており、聞きづらさは全くありません。いわゆる弾き語りでも成り立つような曲が揃っており、不思議なコード感もあって、飽きずに繰り返し聴ける、魅力に溢れたアルバムになっています。ぜひ、聴いてみてくださいね。

おわり

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