孤独と湖

一人、湖畔で夜明けを待った。

山と雲の隙間を縫って差し込む光が、真っ赤に湖面を染めていく様子を固唾を飲んで見守った。
心震える。生まれてから死ぬまで人は寂しい。あまりにひとりぽっちを感じさせるその景色は、生きる不安を駆り立てさせた。
一人でこんなにも美しい景色を見てしまったな。愛する人の顔が浮かんで、この景色を共有したいと思った。
何かをシェアしたいと思った時に感じるこの強い寂しさはいつか消えるのだろうか。

自然の中で、忘れられない風景を得た時に、この風景が自分を生涯励まし続けてくれるだろうという確信を授けられつつ。
寂しさの正体について考える。

そうしているうちに、夜が明けきる少し前に、近くの工場の夜勤明けらしき男が私と同じように日の出を見に、程近くの流木に腰かけた。
二人とも煙草の煙を燻らせながら。無言でいいよね、と交信した気分だった。

やがて、始発の電車の音が聞こえてきて、徐々にわたしは実生活へと引き戻されていくのだった。

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