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鬼が来る日は、福が来る日

「なんで僕が生まれた日は、鬼が来る日なの?僕の誕生日は鬼が来る日だから、みんなが嫌だって言ってくるんだ。だから僕も嫌になってきちゃった…」そんな話を、2月3日に誕生日を迎えるという息子の言葉を聞いて、産んだわたしも悲しくなってきてしまったという話を職場のお姉さんがしていた。

ただ、彼女はそれだけで終わらない、ポジティブかあちゃんだった。

「鬼は外、福は内!ってみんなで豆まきをするでしょ?最後は福を内に呼んでいるの。君のお誕生日は、福を、幸せを呼び込む日なんだよ。」と答えてあげて、息子の顔も「そっか!」と晴れたんだとか。

わたしもその話を聞いて、そっか!と心が晴れた。

2月3日は、札幌の祖母の命日だった。わたしがまだ10歳にもなっていない時だった。余命1年と宣告されてから、母と弟と共に札幌へ移り住み、祖母の介護を手伝った。人が日に日に弱っていく姿、苦しむ姿、喜ぶ姿、死を怖がったり待ち望んだり、痛がったりする姿、全ての姿を見守った。幼心にすべての瞬間は忘れられない思い出となり、今の私の価値観を形成する大きな出来事となった。

だから、あの日のことも忘れない。もう17年も前のことなのに、全てを鮮明に覚えている。

人が亡くなるということは、痛くて悲しい。あまり思い返すこともできなくて、節分をないがしろにしてきたけど。

こんな悲しい日も、鬼は外、福は内。福を呼び込む日なんだなと、

月が綺麗に見える街、神様が楽しむ街、神楽坂を一人とぼとぼと歩きながら思いましたとさ。


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