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ミスなんてない〜パートナーとの話①

私のパートナーは真面目だ。
人生をミスなく歩くタイプである。

さらに彼は、とてもアーティスティックでセンスが良い。

シックなお店で気に入ったお皿を見つけて上から下から横から眺めることが幸せだったりする。

なんなら、視界を遮る前髪がうっとおしいらしく、まとめて結び、カブトムシのツノのようにし、対象物を目を丸くしてみている。

他の客は、店の商品より彼のことを見ていたりするが、それでも彼は気にしない。

『素晴らしいよ。
作られた方の名前、メモってきた。』
真顔で感動している彼。頭には、ツノ。

うん、今日も彼らしくてイイ。

私はいつも心の中でそう思う。

そんなある日、彼は何かでミスをしたらしく、落ち込んだ様子でいた。

『あー、ミスってしまったなぁ』

私は人生ミスしかないので、歓迎のダンスを披露した。
ディズニーランドのit's a small world人形のように両手をあげ、ヒラヒラさせて左右に揺れる。

おめでとう!ミスの世界へ!
ウェルカム!ウェエエエルカム!

おそらくディズニーランドに置いてあったら故障扱いになるダンスだ。

『嫌だなぁー』

落ち込む、彼。
慰めようとする、私。
ゲームでもして話を変えようと試みた。

大丈夫だよ。
そうだ、イントロクイズやろうか。
アレクサに問題出してもらおうよ!
アレクサ!イントロクイズやってー!

私がたまたま音楽アプリを開いていたという単にそれだけの理由でイントロクイズを始める。

すると、机の上にいたアレクサが起動した。
アレクサはいう。

『クリスマスソングイントロクイズです。
なんの曲か、当ててくださいね』

おークリスマスね。
まだ10月だけどね。

私は心の中で思う。

パートナーもクリスマスに反応したようで

『クリスマスキョングかー。
数少ないけどね。』

と言った。

…く、クリスマスキョング?

クリスマスソングの言い間違いだとしたらすごい噛み方だ。
スとソの間なんだから、
クリスマスショングとかなら、わかる。
わざわざクリスマスのクからとって、カ行で噛むとは!

しかも己のどうにも逃れられない噛みを何事もなかったようにスルーしようとしている。
とんでもないポジティブさだった。

その後、恥ずかしげもなく、アレクサの問題に真剣に取り組む彼。

これには脱帽した。

私ならこのミスに、黙ってやり過ごすことはできず、
やだ!噛んじゃった。(てへ)
くらいのことは一応、言う。

そこで私は気づいたのだった。

そうか!
彼はちょっとしたミスをミスと感じないのだ、と。
ミスなく歩くためには、ミスを感じないという鈍感力が必要なのだ!
と。

アレクサのイントロクイズは終わった。
3問中2問正解だった。

彼は言う。

『クリスマスソングイントロクイズ、簡単だったね』

そうだよね、それはね。

私は彼のことを理解しきれないことを知り、難しいクイズを出されているような気分になった。

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