店主中野が語るお客さまの声からスタンプを作る理由
日常生活で感じる「毎日書くのがわずらわしい……と感じるシーンこそスタンプの出番だと思っています」と語ってくれたのは、スタンプマルシェ|STAMP MARCHÉ(以下スタンプマルシェ)店主の中野美奈さん。
スタンプマルシェでは、ぬくもりあるテイストのスタンプや可愛らしいイラスト付きのシャチハタ印、スタンプインクなどを取り扱っています。
商品企画の際にはお客さまの「こんなスタンプあったらいいな」を大切にするのがモットーのオンラインスタンプショップ。
今回は、店主中野さんのスタンプマルシェへの想いと、モノづくりを通じてお客さまに寄り添うスタンプマルシェの今後のビジョンについて話を伺いました。
ースタンプマルシェ|STAMP MARCHÉー
ープロフィールー
脱ハンコ文化の中で誕生
スタンプマルシェでは、手帳に使える「手帳スタンプmini」「セミオーダータイプのスタンプ」「手帳スタンプ」「オリジナルデザインの日付印」などの商品を販売しています。
他にも保育士さんが保護者向けに書く、毎日の日誌用の「先生スタンプ」や、芸能人やアイドルなど“推しの応援”いわゆる推し活の予定を管理する「推し活スタンプ」もご用意しています。
家業がハンコ屋(運営会社の有限会社三星堂)なので、スタンプマルシェのスタンプだけでなく、実印や銀行印などのハンコも同じ工房内で作っています。
有限会社三星堂は、私の曽祖父から高知のハンコ屋さんとして90余年続いていて、実店舗とオンラインでハンコ事業を展開しています。
現在取り扱うスタンプの数は500商品を超えています。「お客さまの声」を元に商品は日々増えています。
計画的に週に何個リリースというよりも、リクエストに臨機応変に対応して制作していますね。
オンラインショップの制作は夫が協力してくれ、スタンプマルシェの立ち上げ自体はスムーズでした。
私は家業のハンコ屋事業の中で「オンラインショップの運営」も担当しています。オンラインショップを運営した経験はスタンプマルシェにも活かせていると思います。
スタンプマルシェを立ち上げてからの1年間は、とにかく商品の充実したショップを目指して、ボリュームのあるお店にすることに徹しました。新商品をたくさんリリースした1年間でしたね。
商品数は、スタンプのアイデアやリクエストをお店に送りやすくすることにも影響があると思っていたので、商品の充実度は第一優先でした。
お客さまは商品数が少なくまっさらな状態のお店には、アイデアやリクエストを送ることに不安を感じてしまうはず。
商品を充実させていき「こんなスタンプを作れるよ」「こんなものまで?と思うようなニッチなスタンプも作れるよ」と伝えることが大切だと思い、力を入れていました。
スタンプマルシェではお客さまに声掛けをしてもらいやすい空気を作ることを重要視しています。
大きな流れは「企画・デザイン作成・商品撮影・WEBページ作成・SNSでの告知・受注のお問い合わせ対応」です。商品製作は受注後に行います。製作完了後に検品し、お客さまのもとへ発送しています。
企画ですが、自分たちでスタンプデザイン案を考えたり、お客さまのリクエストを元にデザイン案を作ったりしています。商品化が決まったスタンプデザイン案をクリエイターの方に描いてもらうときもあります。企画の段階ではケースバイケースのことが多いですね。
クリエイターさんへのデザイン制作依頼分以外、すべての工程を社内で行なっています。
家業のハンコ屋の事業で運営していたオンラインショップにも影響がありました。「脱ハンコ」の流れが世間に広がり、印鑑やシャチハタなど実用的な役割を担うハンコが近い将来不要になると会社全体で課題視していた時期でした。
そこで新たな切り口で新規事業をつくることになり、スタンプマルシェが誕生しました。
「STAMP MARCHÉだからできること」にこだわり続けたい
はじめは、別業種への参入も検討していました。でも、心のどこかで「モノづくり」を続けたいという想いが捨てきれなくて……。悩む日々が続きました。
そのときに「降谷ハンコ」の出来事を思い出し、お客さまの声を元に商品化するスタイルの「ハンコ屋」なら!とスタンプマルシェの構想が少しずつできてきました。
シャチハタは各苗字につき1つずつあらかじめ用意しています。ですが、とても珍しい苗字の受注が増えているのは、受注してから制作しているので気づけた出来事でした。
この出来事があってより一層「ハンコを通じてお客さまにもっと喜んでもらうには何ができるだろう?」と考えるようになりました。
シャチハタも自社工房で1本ずつ作ってお届けしています。シャチハタはご注文の際に「書体」「インキ色」「本体色」が選べます。
その時に、「降谷」の各書体見本を見ながら注文できたら、喜んでいただけるかなと思い、「降谷」専用のオンラインショップページを作りSNSに公開しました。
ハンコやスタンプを必要とするお客さまのニーズを汲み取りながら、一緒に商品を作っていくお店にしたいとスタンプマルシェの構想はより具体的になりました。
降谷ハンコは、お客さまの声を聞いて商品をつくることの面白さ・やりがいを肌で感じる出来事でした。SNSでお客さまとコミュニケーションを図る意味ではいい影響を与えてくれたと思います。
「スタンプマルシェ」はいろんなスタンプが並ぶマルシェ、市場のようなお店にしたいという意味と想いを込めて名付けました。
降谷ハンコのように、お客さまの「あったらいいな」を商品にするのはもちろん、ビジネスシーンの業務効率化による「脱ハンコの時代」でも柔軟に対応していけるお店を目指しています。
他にもブレない軸を見つけたきっかけがあります。スタンプマルシェ誕生の前に自社の強みを考えました。その中で見つけた強みは3つあります。
1つめが「オーダーに合わせて受注生産でものづくりをすることに慣れていること」2つめに「ゴム印・シャチハタ・印鑑など、あらゆるハンコを自社で製造できる設備が整っていること」最後に「受注管理・製造・発送等それぞれの工程に専任のスタッフがいること」でした。
そうですね。でもこの強みは私にとって当たり前に感じていたことだったんです。
強みにフォーカスしたら、「在庫を持つことなく完全受注生産でオリジナルスタンプを届けられる」「メーカーさんには拾いきれないような、たったひとりの声も取り入れて商品企画ができる」というスタンプマルシェの独自性を発見できました。
お客さまの声から生まれた「商品」から気づきをもらっている
スタンプマルシェのお客さまは、InstagramやTwitterがきっかけで、ご購入いただいた方が約8割です。
SNSのコメントやDM、メールでお客さまからリクエストやアイデアを送っていただき、何通かやりとりをしてから制作を進めます。
「◯◯なハンコといえば、具体的にどんな項目があったら便利だと感じますか?」「◯◯なハンコをつくるとして、どんなイラストだと嬉しいですか?」など、お客さまに使用するシーンをより具体的にイメージしてもらえるようにお返事をしています。
お客さまとのコミュニケーションは、商品企画において大切にしている工程の1つです。
スタンプマルシェでは受注生産で商品を届けています。受注生産のメリットは在庫リスクが少ない点です。受注生産のメリットを最大限に活用することで「需要は多くない。でも一部の人にとってはすごく欲しい商品」を制作して届けられています。
アイデアを送っていただいたお客さまには、実際にリクエストが商品化したときに、愛着を持って商品を手にとっていただきたいと思っています。
私は日頃からモノづくりをしていて、頭の中のイメージが実際に商品になるってすごく幸せなことだと感じています。お客さまにも、リクエストしていただいたアイデアが形になることで、少しでもその幸せを感じてもらえたら……なんて願いもあります。
2021年12月中旬に、「吉日・開運スタンプ」のリクエストをいただいたんです。
お客さまとやり取りする中で「このスタンプはきっと2022年1月から使いたいスタンプだよね」と思い、リクエストから1週間後に商品として販売しました。
リクエストの内容的にタイムリーに応えたほうがいい商品のはず!との想いからです。
販売後お客さまからメッセージが届いて。「2022年から使うのはきっと難しいと思っていました。再来年の手帳から使えたらいいなという気持ちでリクエストしていました。ありがとうございます!」と伝えていただけだのはとても嬉しかったですね。
メーカーさんであれば商品企画課があるはずです。
でも私たちには整ったシステムも専門部署もない。私たちは専門チームがない分、お客さまとのコミュニケーションから商品開発のヒントを得ることを大切にしています。
お客さまとのコミュニケーションを通じて、お客さまと一緒に商品開発をしている。「お客さまはスタンプマルシェの商品開発のチームメンバー」的な存在なんです。
今はまず、「このお店はリクエストした声を聞いてくれるんだ!」と思ってもらうことを重視しています。たった1人からのリクエストやびっくりするほど珍しいリクエストもなるべく商品化しています。
「お客さまの声」を商品化し続けること。地道でも積み重ねることで、お客さまとの信頼関係を築いていけるのだと思います。
「こんなスタンプがあったらいいのにな」と感じたときに一番最初に思い浮び、声をかけやすいお店になることを目指しています。
お客さまの視野の広さがスタンプの可能性を広げてくれる
実は、スタンプマルシェアカウントの投稿自体は少ない方です。
でも、商品を手に取ったお客さまが自らスタンプの使い方や手帳に使用して発信してくださっています。ありがたいことに、お客さまの投稿がきっかけでスタンプマルシェを知ってもらえたりすることも。
手帳アカウントの方の投稿が割合では多いです。
手帳用スタンプ以外にも保育士さんだけが使える「先生スタンプ」も需要ある商品なんです。でも、保護者の方向けの日誌は投稿できないので(笑)
保育士の方から「毎日書く内容をスタンプにできないか」とリクエストもいただきましたし、私も3歳の娘を子育て中です。
保護者の目線でも「毎日先生、日誌書くの大変そう」と思っていたので、先生目線と私の保護者目線が合致して生まれた商品ですね。
TVでは、「推し活スタンプ」を紹介してもらったのですが、著名人の方が「雑誌掲載」や「TV出演」のスタンプを自分の予定として使ってくださっていることを知ったんです。
「推し活スタンプ」は、芸能人やアイドルなど“推し”の予定記録に使うことを想定したニッチな分野のスタンプでした。紹介してくださった方が想像をいい方向に越えて新たな使い方を発見してくださり嬉しく感じています。
同時にスタンプマルシェのスタンプは、私の想像よりをはるかに越えて、さらにニッチな用途で使用してくださる方のもとにまで商品を届けることができるんだ!と気づきをもらいとても面白い経験でした。
手書きが苦手な人や自分の字が好きになれない人にこそオススメです!
スタンプを押すことでまとまりがある見やすい手帳になります。ページの色合いや使い道に合わせてスタンプを押す色を変えるといった、使い方に広がりのある文房具が「スタンプ」だと考えています。
スタンプの一番の特長は、同じ絵や文字を繰り返し押すことができる点です。
シールやマスキングテープはなくなるけど、スタンプはなくならない。
ペンだと同じ絵や文字は2度と書けないけど、スタンプは同じ絵や文字を何度でも残すことができる。
スタンプの特長を活かして、手帳を彩る文房具のひとつとして使ってもらったり、時には便利な事務用品のひとつとして使ってもらったりして楽しんでもらえたら嬉しいですね。
お客さまとコミュニケーションを通じて信頼関係を構築したい
弊社が運営している別店舗に比べても、スタンプマルシェはリピーターのお客さまの比率が高いです。
今年度はリピーターであるお客さま方々にも毎回楽しんでもらえるようなお店作りを目指していきたいと考えています。
前年度は定番商品の充実化に注力しました。今年度は季節のイベントに絡めたセールや期間限定の商品、ノベルティの同封など、お客さまと一緒に季節を楽しんだり、長くワクワクしてもらえる取り組みをしたいですね。
ゆくゆくは海外のお客さまにも購入いただけるオンラインショップも開店していきたいです!
変化の多い時代なので「絶対こういうお店にする!」と考えるより「今お客さまはどんな悩みがあるのか、解決する方法はないか」とお客さま目線での課題解決を、常に考えていきたいと思います。
「ひとりひとりに合わせたものづくり」が得意なので、強みや長所を大切に守りこれからもスタンプマルシェを通じてたくさんの商品をお届けしていきたいです。
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今回のインタビューで、「スタンプマルシェ」のハンコ業界で独自性ある立ち位置と店主中野さんのモノづくりへの想いについて語っていただきました。
新しいものを作り出すには、お客さまの目線を忘れないこと、そして商品が届いた後まで具体的にイメージするのが欠かせないと中野さんの言葉から気付きをもらいました。
きっとスタンプマルシェは「脱ハンコ文化」の風穴となるでしょう。日々時代やニーズに耳を傾け続け柔軟にニーズを形にしています。
しかし時代に身を任せすぎず、受け身の姿勢でないと感じたのは、中野さんのモノづくりへのこだわりが、商品から伝わってくるからかもしれません。
スタンプマルシェにとって、「お客さまは商品を作るための大切なメンバー」この言葉が忘れられません。
スタンプマルシェ公式Instagramには、愛用者の声で溢れています。あなたにとって「あったらいいな、こんな商品欲しかった」がスタンプマルシェでならきっと出会えるはずです。
自分らしく使えるとっておきのスタンプを見つけてみてくださいね。
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