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2024年7月8日週まで直近のM&A情報

目次

  • 燦ホールディングス、きずなホールディングスをTOBで子会社化

  • ソフトバンクグループ(SBG)、グラフコア買収

  • 日本郵船、ENEOSオーシャンのLPG船、ケミカルタンカー・プロダクトタンカー、 貨物船事業等を取得

  • レンゴー、株式会社柴田段ボールを子会社化

燦ホールディングス、きずなホールディングスをTOBで子会社化

株式会社きずなホールディングス(以下、対象者)は、2024年7月12日に開催した取締役会において、燦ホールディングス株式会社(以下、公開買付者)による公開買付け(以下、本公開買付け)に賛同することを決議しました。本公開買付けは、対象者を公開買付者の完全子会社化することを目的としており、買付価格は1株当たり2,120円です。

案件目的

  1. 出店地域における補完作用:

    • 公開買付者は関西・首都圏・山陽地域に強みを持つ一方、対象者は九州地域を中心に展開しており、出店地域が重複していません。

    • 両社の出店地域を補完し合うことで、全国規模でのサービス提供が可能となり、より多くの顧客にサービスを提供できると考えています。

  2. 家族葬・小規模葬儀の成長:

    • 対象者は、家族葬という新しいジャンルの葬儀を生み出し、その分野で高いプレゼンスを有しています。

    • 葬儀業界全体として小規模葬儀のニーズが高まる中、対象者のノウハウや人材を活用することで、公開買付者が展開する小規模葬儀ブランド「エンディングハウス」の更なる成長を目指しています。

  3. 管理コストの削減:

    • 公開買付者のグループ会社であるエクセル・サービスやライフフォワードのBPO機能を対象者の管理機能に活用することで、コスト削減を実現できると考えています。

  4. エンバーミングサービスの共用による収益機会の確保:

    • 公開買付者のグループ会社である公益社には、エンバーミングの専門スタッフが27人在籍しており、そのノウハウを対象者の事業にも活用することで、両社の顧客に提供するサービスの向上、ひいては収益機会の確保につながると考えています。

これらのシナジー効果を最大限に発揮するためには、公開買付者と対象者が一体となり、スピード感をもって事業運営を実施することが必要不可欠であり、そのためには対象者を完全子会社化することが不可欠であると判断しました。

買主と対象企業の関係性

燦ホールディングス株式会社

  • 公開買付者である燦ホールディングス株式会社は、1932年に設立された葬儀の請負及び霊柩運送事業を主な事業とする「株式会社益社」を前身としています。

  • その後、1994年に株式会社公益社として株式を上場し、2004年10月に持株会社体制への移行に伴い、商号を燦ホールディングス株式会社に変更しました。現在、公開買付者は純粋持株会社であり、葬祭サービスを提供する子会社3社及び関連会社1社で構成される公開買付者グループを統括しています。

株式会社きずなホールディングス

  • 一方、対象者である株式会社きずなホールディングスは、その前身である株式会社エポック・ジャパンが2000年7月に設立され、家族葬という新しいジャンルの葬儀を生み出し、葬儀業界内で家族葬のパイオニアとして高いプレゼンスを有しています。

  • 2020年3月に東京証券取引所マザーズ市場に上場し、2022年4月には東京証券取引所の市場区分の見直しにより、現在は東京証券取引所グロース市場に上場しています。

  • 対象者は、株式会社エポック・ジャパンを中核とする連結子会社2社及び関連会社1社で構成される対象者グループで、葬儀施行事業やインターネットを通じたプロモーション、提携葬儀店への顧客仲介などを行っています。

案件背景

燦ホールディングス

燦ホールディングスは、葬儀業界全体が再編の進む状況において、2022年5月に策定した10年ビジョンに基づき、以下の戦略を掲げています。

  • 葬儀事業の拡大: 低価格帯ながら高品質のサービスを提供する小規模家族葬向けの新たな葬儀ブランド「エンディングハウス」を全国規模で展開し、M&Aも活用して出店を加速させる。

  • ライフエンディングサポート事業の拡大: 仏壇・仏具の販売、法事・法要、相続、葬儀後のサービス、終活関連プラットフォーム事業など、葬儀前後のライフエンディングサポート事業を拡大し、顧客満足度向上を図る。

  • 既存葬儀事業の競争力強化: コントラクトセンターや葬祭関連業者への業務委託、デジタルマーケティングによる営業機能強化などにより、効率的・高品質な業務提供体制を実現する。

  • 日本一満足・感動いただけるサービスを目指した取り組み強化: 付加価値の高いサービスとその品質向上・維持のため、品質管理と教育を実施し、顧客満足度向上を目指す。

  • 経営基盤強化: 成長戦略を加速させるため、人材採用と育成を行い、組織の経営基盤を強化する。ESGにも積極的に取り組み、持続可能な社会の構築に貢献する。

きずなホールディングス

きずなホールディングスは、2000年7月の創業以来、家族葬という新しいジャンルの葬儀を生み出し、葬儀業界内で家族葬のパイオニアとして高いプレゼンスを有しています。葬儀施行事業を中核に、インターネットを通じたプロモーションや提携葬儀店への顧客仲介などを行っており、現在では12の都道府県でサービスを提供しています。

対象者は、以下の4つの事業環境の変化に対応する必要性を認識し、それぞれの対応策を講じてきました。

  1. 会葬者数の減少: 少子高齢化の進展や地域コミュニティの関係性の希薄化に伴い、葬儀における会葬者数は減少傾向にあります。対象者は、家族葬に注力し、小規模ホールを展開することで、会葬者数の変化に対応しています。

  2. 不透明な業界慣行: 従来の葬儀業界には、不要なアイテムや高額なアイテムを売り込むといった悪しき慣習がありました。対象者は、明瞭な葬儀プランを提供することで、顧客の満足度を高める取り組みを行っています。

  3. 儀礼儀式に偏った葬儀: 従来の葬儀は、儀礼儀式を滞りなく行うことのみを重視していました。対象者は、故人をお見送りし、残された家族が絆を再確認する機会としての葬儀を重視し、顧客ごとに異なる想いを葬儀に表現する「オリジナルプラン」を提供しています。

  4. 零細事業者が多い葬儀業界構造: 葬儀業界は地域に密着した形態のビジネスであるため、多くの葬儀社が特定の地場エリアで事業を展開しており、その大部分が中小零細事業者です。対象者は、M&Aを活用して零細事業者の事業を承継していくことで、全国展開を進めています。

案件後の経営方針

本公開買付け後、対象者は公開買付者の完全子会社となります。対象者の現経営体制を前提としつつ、公開買付者の他のグループ会社と同様に、公開買付者から役員を派遣するなど、機動的な連携を図っていく予定です。

案件検討の経緯

2024年2月1日、対象者と公開買付者は、アドバンテッジパートナーズからの提案を受け、本取引の検討を開始しました。その後、対象者は2024年4月12日に特別委員会を設置し、取引条件の検討やデューデリジェンスなどを実施しました。

取引スキームの特徴点

本取引は、公開買付けによる完全子会社化を第一段階とし、その後、株式併合や株式等売渡請求といった手続きを実施する二段階買収スキームを採用しています。

価格の算出方法

公開買付価格は、エスネットワークス株式会社が算定した対象者株式の株式価値を参考に決定されました。算定には、市場株価平均法、類似会社比較法、DCF法が用いられました。DCF法では、対象者が作成した2025年5月期から2029年5月期までの事業計画を基に、フリーキャッシュフローを割引率で現在価値に割り引くことで、対象者の企業価値や株式価値を評価しました。

買付価格決定までの過程

公開買付者は、当初1株当たり1,850円での買付けを提案しましたが、特別委員会からの要請を受け、最終的に2,120円まで引き上げました。
最終買付価格は、提案実施日前営業日の対象者株式の終値1,388円に対し52.74%、直近1ヶ月の終値単純平均1,369円に対し54.86%、直近3ヶ月の終値単純平均1,439円に対し47.32%、直近6ヶ月の終値単純平均1,415円に対し49.82%のプレミアムを加えた価格となっています。

公開買付者は、公開買付価格を決定するにあたり、燦ホールディングス株式会社、APファンド、及びアドバンテッジパートナーズから独立した第三者算定機関であるエスネットワークス株式会社に、対象者株式の株式価値の算定を依頼しました。

エスネットワークス株式会社は、以下の3つの算定方法を用いて対象者株式1株当たりの株式価値の範囲を算定しました。

  1. 市場株価平均法: 1,369円~1,439円

  2. 類似会社比較法: 967円~1,268円

  3. DCF法: 1,664円~2,561円

DCF法による算定

DCF法では、対象者から提出された2025年5月期から2029年5月期までの事業計画、公開された情報、その他の諸要素を前提として、2025年5月期以降に対象者が創出すると見込まれるフリーキャッシュフローを割引率で現在価値に割り引くことにより、対象者の企業価値や株式価値を評価しました。

対象者の将来の財務予測においては、出店数の増加や葬儀単価の上昇による葬儀売上高の伸長により、2025年5月期の営業利益、税引前利益、当期純利益、親会社の所有者に帰属する当期純利益が、それぞれ対前期比42%増、49%増、37%増となることを想定しています。

なお、本公開買付けの実施により期待されるシナジー効果については、算定時点において具体的に見積もることが困難であるため、上記の事業計画には加味されていません。

関連資料

ソフトバンクグループ(SBG)、グラフコア買収

当事者

  • 買主:ソフトバンクグループ(SBG)

  • 売主:記載なし

  • 対象企業:グラフコア

案件目的

  • SBGはAI分野の実業を主軸とする方針を示しており、AIの演算処理を高速化できる半導体チップを開発するグラフコアの買収はその戦略推進の一環

案件概要

  • SBGが英半導体スタートアップのグラフコアを完全子会社化。買収額は非公表だが、報道によれば約950億円

対象企業概要

  •  2016年設立の英国の半導体スタートアップ企業。人工知能(AI)の演算処理を高速化できる半導体チップを開発

取得価額:

  • 約950億円(報道ベース)

日本郵船、ENEOSオーシャンのLPG船、ケミカルタンカー・プロダクトタンカー、 貨物船事業等を取得

当事者

  • 売主:ENEOSホールディングス株式会社

  • 買主:日本郵船株式会社

  • 対象企業:ENEOSオーシャン株式会社

案件目的:

日本郵船

  • エネルギー輸送事業においては成長事業と位置付けるLNG/LPG船事業を中心に取り組みを強化するとともに、インフラ企業としての安定的なエネルギー輸送の責務を果たし、エネルギー事業をより強固にする

ENEOS

  • 近年の船価の高騰による投資負担増や、CO2排出量を始めとする世界的な環境規制への対応、DXの推進による安全性の向上・運航の効率化等の課題に対応するため

  • グローバルな海運セクターにおける成長戦略を描くことが出来る新たなオーナーのもとで事業を行うことが、対象事業、ひいてはENEOSグループにとって最適と判断したため

案件概要:

  • ENEOSオーシャンが原油タンカー事業以外のLPG船、ケミカルタンカー、プロダクトタンカーおよび貨物船等を中心とする海運事業を吸収分割により新会社に承継

  • 新会社株式の80%を日本郵船に譲渡

  • ENEOSオーシャンは、新会社株式の持分を20%保有

対象企業概要

  • 原油、LPG、ケミカル・石油製品および貨物船等の海上輸送

https://www.nyk.com/news/2024/20240708.html

会社(買主)概要

  • 日本郵船株式会社は、定期船事業、航空運送事業、物流事業、不定期専用船事業などの事業を展開する海運会社です。

  • コンテナ船事業は、Ocean Network Express(ONE)を通して行っています。

  • 自動車専用船事業では、完成車や建設機械の輸送を行っています。

  • ドライバルク事業では、鉄鉱石、石炭、穀物などの輸送を行っています。

  • タンカー事業では、原油、石油製品、LNG、LPGなどの輸送を行っています。

  • その他にも、クルーズ客船事業や不動産事業などを展開しています。

対象市場・競合状況

  • 定期船事業においては、世界的な景気後退やインフレなどの影響を受けて、貨物需要が低迷しています。また、新造船の竣工による船腹供給量の増加も、市況下落の要因となっています。

  • 航空運送事業においては、国際旅客便の回復による供給スペースの増加により、需給が緩み、運賃水準が低下しています。

  • 物流事業においては、航空貨物・海上貨物の荷動きが低迷し、市況が下落しています。

  • 不定期専用船事業においては、旺盛な輸送需要に加え、港湾混雑やパナマ運河の通航制限、中東情勢の影響などにより、需給が逼迫しています。

経営課題

  • 海運市況の変動への対応

  • 燃料価格の高騰への対応

  • 環境規制の強化への対応

  • デジタル技術の活用による業務効率化

経営戦略

  • 中期経営計画(2023~2026年度)を策定し、持続的な成長と安定的な株主還元を目指しています。

  • LNG燃料自動車船やアンモニア燃料アンモニア輸送船など、環境に配慮した船舶への投資を積極的に行っています。

  • 物流事業では、M&Aや自動化倉庫への投資などを通じて、事業の拡大を図っています。

  • デジタル技術の活用による業務効率化を推進しています。

  • 株主還元については、増配や自己株式取得などを通じて、株主への利益還元を強化しています。

財務概要(通期見込み数値)

  • 売上高:2兆2,900億円

  • 経常利益:2,500億円

  • 当期純利益:2,450億円

関連資料

レンゴー、株式会社柴田段ボールを子会社化

当事者

  • 買主:レンゴー株式会社

  • 売主:記載なし

  • 対象企業:株式会社柴田段ボール

案件目的

  • 愛知県東部および近隣の地域において、段ボール事業のさらなる拡充を図るため

案件概要

  • レンゴー株式会社が株式会社柴田段ボールの発行済株式の100%を取得し、子会社化

対象企業概要

  • 1962年設立の段ボールケースメーカー。愛知県豊橋市を拠点に地域に根差した顧客基盤を築く。段ボールケースの製造・販売を行う。

会社(買主)概要

レンゴー株式会社は、段ボール・重包装・軟包装の3つの事業を柱とする包装資材メーカーです。国内外に生産拠点を持ち、グローバルに事業を展開しています。連結ベースで100社を超える子会社を有しており、そのうち海外子会社は13社あります。

対象市場・競合状況

  • 国内段ボール市場:少子高齢化や人口減少といった構造的な課題に加えて、EC需要の増加やプラスチック代替といった環境変化の影響を受けています。競合は、王子ホールディングス、日本製紙、大王製紙などです。

  • 海外段ボール市場:経済成長に伴い拡大傾向にありますが、地域ごとの経済状況や法規制などの影響を受けやすいです。競合は、インターナショナル・ペーパー、ウェストロック、Smurfit Kappaなどです。

経営課題

  • 国内市場の縮小:国内段ボール市場は、少子高齢化や人口減少により縮小傾向にあります。

  • 原材料価格の高騰:原燃料価格や段ボール原紙価格の高騰が、収益を圧迫しています。

  • 為替変動リスク:海外事業において、為替変動による収益への影響が懸念されます。

  • 環境規制の強化:環境規制の強化に対応するための投資が必要となります。

経営戦略

  • 国内事業の構造改革:国内事業の効率化を図り、収益性の向上を目指します。

  • 海外事業の拡大:成長が見込める海外市場において、M&Aや設備投資などにより事業を拡大します。

  • 環境対応の強化:環境に配慮した製品開発や生産体制の構築を進めます。

  • デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進:デジタル技術を活用した業務効率化や新たな価値創造に取り組みます。

財務概要(2025年3月期 通期見込み数値)

  • 売上高:1兆円

  • 営業利益:500億円

  • 経常利益:520億円

  • 親会社株主に帰属する当期純利益:350億円

関連資料

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