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[情報工学] 物流システムの知識と技術

 技術士(情報工学)の過去問にフィジカルインターネットの出題があった。設問には、ER図を書け!とあったが、物流業界も、そこで求められるシステム要件の理解も不十分と感じ、購入した本3冊の3冊目。


1.物流システムとは?

焦点は「物品の流れ」

 なんとなく運送事業者向けの基幹システム(トラックの運航スケジュール、ドライバー、運賃、荷主を管理)を想像して読み進めていましたが、当方の認識がバグっておりました。

 物流システムとは、物品の流れを管理する。つまり

  • どんな荷物を?

  • どこから?どこへ?

  • どうやって

 物流システムを利用するクライアントは、物流事業者ではなく、ものつくりをする製造業、コンビニなどの店舗で売る小売業、ネット販売やってるEコマース事業者です。

スーパーのローディングドックにて(AI生成イメージ)

2.システムに求められるもの

在庫を減らせ!

 さて、近年の傾向は在庫を減らすことにあります。
 例えば、製造業のJIT (= Just-In-Time)。必要な部品を必要な時に必要な量だけ供給することで、在庫を減らし、その管理コストを削減する。小売業界でも、小規模店舗のコンビニが台頭。在庫自体は必要最小限にしつつ、納品を何度も行う。

コンビニで納品後の棚補充

物流システムの意義

 なるほど、在庫減らしは昨今のトレンドなのかもしれません。しかし、その一方で、一日に何度も運ばされ、荷台には多種多様な小口荷物ばかりはどうなんでしょうか?

 これでは、運送業者の負担が増えてしまうようにも思えます。

物流は、作業内容は物流部門のモノの流れだけを認識すれば良いわけではなく、物流を取り巻く、モノの流れ、業務の流れを意識しなければならない

p37, §2-1 モノの流れから物流を捉える

 つまり、物流の全体像(製造から販売まで)を俯瞰し、サプライチェーン全体を上手く協調させる所に、物流システムの意義がある。

3.どう実現するのか?

 物流システムのクライアントは物流コストを削減したい(その一つが在庫減らし)。でも、そのためには?と考えると、配送の効率化ばかりを考えてはダメで、サプライチェーン全体を上手く協調させる必要があることがわかりました。

 では、この要件を物流システムにて、どのように実現したら良いのでしょうか?本書のヒントから当方が気になった3件を抽出してみました。

①:状況を把握する

 先ずは品物の状況を把握すること。これは、トラッキングと呼ばれます。宅急便でお馴染みのこれですね。

クロネコヤマトの例

 但し、本書が語るのはサプライチェーン物流。宅急便のように自社内では完結せず、多数の業者が絡む物流です。異なる事業者だけではなく、グローバルな供給網ともなれば国境を超えてのシステム間連携が必要になってきます。

 勿論、「把握すること」=「効率化」ではありませんが…

物流トラッキングができると、荷受けのタイミングがわかるため、先読みした荷受準備をして、効率的な荷受けができるようになります。

p80 §3-8 物流トラッキングの概要

ハンディターミナルとバーコード

 さて、この荷物の状況把握。どうやって実現されているのか?

 前述したシステム間連携も欠かせませんが、現場サイドで活躍しするのが、手元の端末とダンボールのバーコード。

現場の方には着荷した荷物をピッと読み取ってもらう。その情報をシステム側のマスターデータと照合後に通知してやれば良いですね。

ロケーション管理

 状況把握から更に踏み込んで、物品の現在位置を把握しよう!という取り組みもあります。

 倉庫内では物品にビーコンやRFID、トラックにはGPS。システム側で品物の現在位置を把握できるようにしてやる。

 実際の物の動きが見えれば、物流の停滞や指示から反応するまでのタイムラグが見えるようになります。これで、より一層の効率化を目指した計画も可能になります。

②:余剰リソースの有効活用

 計画には欠かせないリソースの話が2点目です。例えば、トラックの荷台。年中稼働して、往路も復路も荷台はフル積載!これが理想。

輸送では、ある地点からある地点までの荷を運ぶことが求められます。ということは、何も手を打たなければ、帰りの荷台は空で走ることになります。

p151, §5-7 求車と求荷のマッチングアプリは進展するか?

 空きスペースを活用してくれる荷主さんが見つかれば、効率も上がります。なので、マッチングサービスが既にある。

 この共同配送のための荷主さん探し。前節のトラッキングと同様、自社内で完結するとは限りません。本書では、ASP (Application Service Provider)を活用するように推奨していました。

 自社側では余剰リソースを把握し、外部のASPと連携することでリソースを有効活用できるようにしてやります。

③:需要予測

 3番目は需要予測。品物がどの程度必要とされるか?を事前に精度良く予測できれば、物流のムダを省くことに繋がります。問題は、その実現方法。

 本書によれば、その代表的な手法は次の3種類。

  1. 顧客内示(顧客に予告してもらう)

  2. 人的需要予測(経験と勘で予測)

  3. 統計的需要予測(過去のデータから予測)

  いずれも一長一短あるのですが、1番目と2番目は、人手頼り。システム側でやるなら、3番の統計的需要予測ですかね。

統計予測に過去実績を使う場合、過去実績に突発的な特殊需要が入ったままだと予測の精度が悪くなります

p158, §6-1 発注計算で必要な需要計画と需要連動

 当方の知る事例だと、スーパーのヤオコー。

 上の記事を読むと、チューニング(調整作業)が肝だったようで、アイジャル開発(修正後とフィードバックを素早く繰り返す手法)にて2年半をかけたとありました。

まとめ

 今回は物流システムをテーマに学習しました。

 物流というと、身近な運送業や宅急便をイメージしがちですが、本書で扱う物流システムは、製造業やスーパーなどの流通小売業がクライアント。加えて、そのサプライチェーンは、複数の企業や国境をまたぐ複雑怪奇なもの。

 物流システムが期待される役割は、その複雑に入り組んだ、物品の状況や流れをクライアントに整理して伝え、余剰リソースの活用や需要予測と言った手法にて、物流の効率向上を支援する。そんなところにあるのではないか?と理解した次第です。

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