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象徴的な一時代を築き上げたウエストコースト・ロックとサザン・ロック

©English Wikipedia

今回、ご紹介するのはウエストコースト・ロックとサザン・ロックです。

1960年代後半、70年代における米国のロック・シーンの基底となる二組の重要なバンドが現れました。

それは、ロサンゼルス出身のクロスビー、スティルス&ナッシュとジョージア出身のオールマン・ブラザーズ・バンドでした。

彼らによるフォーク・ロックやブルース・ロックを進展させたスタイルは、間もなく台頭し始める後続のグループたちの大きな指針となりました。

そして、1970年代前半、西海岸や南部から現れた数々のバンドたちは、その出身エリアに限定されない広範囲にわたる支持と大規模なセールスから象徴的な一時代を築き上げました。

ウエストコースト・ロックとサザン・ロックは、音楽的な形式/サウンド技術/産業的なシステムを確立/発展させ、アメリカン・ロックの一般的なイメージ像を形成したという点においても、筆者の歴史観においては、「クラシック・ロック」として位置付けており、〈ロック史における一つのハイライト〉でもあった、と捉えています。

『Eagles』/The Eagles(1972)
作品評価★★★★(4stars)

西海岸の注目株であった歌姫のバック・バンドが母体となって結成された4人の若者は、同地の主流的なスタイル(フォーク/カントリーの手法やSSW的な内省)を軽快なロックへ調和/昇華させ、その吹き込まれた新しい風は、ウッドストック後のシーンの空気を変えてみせた。

グリン・ジョンズ産のイーグルスのファーストは、実はロンドンで主に制作されており、また、当初からバンドの音楽性を巡り意見の相違も生じているが、作品の仕上がりは、そうした経緯が想像に及ばないハイ・クオリティー且つ有機的なカルフォルニア・サウンドを誇っている。

元ディラード・クラーク/ブリトー・ブラザーズのバーニー・レドンの貢献が際立つ初期を最良とする往年のファン達の見解は正しいが、フライ/ヘンリー独裁体制から産業化/洗練化した彼らが上梓した内部告発的な一枚は、ロック史における重要なメルクマールとなったのである。

『(Pronounced 'Lĕh-'nérd 'Skin-'nérd)』/Lynyrd Skynyrd(1973)
作品評価★★★★(4stars)

フロリダ州出身の野暮ったい長髪/ブーツカットの7人組は、アトランタのクラブで培った力量をフーのオープニング・アクトで示し、ジョージア州のオールマンズが牽引する南部勢の熱風を北米に知らしめた。

レーナード・スキナードのデビュー作は、アル・クーパー監修の下で制作され、周到なアレンジ・ワークを従えたバンドは、厚みのあるギター・サウンドとストレートなフレーズを放ち、英国勢からの影響も汲む南部流ハード・ロックを堂々と披露した。

編成の強化からスリー・ギター・アーミーを確立したレイヤードのセカンドは、サザン・ロックのロマンティシズムを反映した名作となり、また、大所帯での北米大陸を股にかけた精力的なツアー・ライフは、一つのロールモデルさえなったが、その職業的な代償ともいえる悲劇的な航空機事故から暗い影も落とす事にもなった。

『Little Feat』/Little Feat(1971)
作品評価★★★★☆(4.5stars)

L.A.郊外を拠点に、優れた作家たちが集うバーバンク・シーンにおいて、この異色のグループは、ドラッグ関連の諸問題からザッパの門下を出た元マザーズ・オブ・インヴェンションの二人の奇才によって結成されている。

ワーナーからリリースされたリトル・フィートの1stは、ザ・バンドやストーンズが牽引する南部音楽に根ざしたルーツ・ロックと共振する作品であり、言い換えるならば、それは、ローウェル・ジョージというユニークな作家によって編まれた一つのアメリカーナである。

ネオン・パークの手掛けるシュールなイラストが目を惹く次作以降、編曲面における奇妙な性癖を露わにしたローウェルは、新たなメンバ編成の下、そのキャリアの代表作を完成させ、それ以降のフィートは、バレア/ポール擁するファンク・ビートの強化と共に、大胆な変貌を遂げていく。

『Can't Buy a Thrill』/Steely Dan(1972)
作品評価★★★★☆(4.5stars)

ニューヨークのリベラル・アーツ・カレッジ出身のソングライター・チームとABCのハウス・プロデューサーによって成立するこの特殊なポップ・プロジェクトは、緻密且つソフィスティケートなサウンドでシーンとリスナーに衝撃を与えた。

スティーリー・ダンと名乗るフェイゲン/ベッカーは、カッツ/ニコルスの監修/エンジニアリングとダイアス/バクスターのギター・ワークの下、ジャズ/ラテン音楽が折衷する魅惑的なソフト・ロックを巧妙に展開した。

スタジオ・ワークへ本格的に専念していく彼らは、優れたセッション・ミュージシャンの技芸に彩られた高度なフュージョンの創作を重ね、その到達点となった一枚は、今の時代においても、ずば抜けた完成度を誇り、音楽的にも商業的にもヨット・ロックの頂点となって君臨している。

それでは、今日ご紹介したアルバムの中から筆者が印象的だった楽曲を♪


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