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不気味すぎるぜ、ヒメアノ〜ル

2016年5月28日公開の森田剛さん主演映画『ヒメアノ〜ル』を観に行ってきた。
前評判の通り、衝撃的なシーンの連続で、心の消耗はハンパない。

私は古谷実さんの漫画が好きだ。
振り切った登場人物たちが、ギリギリの自虐ネタを披露しあう姿はとても面白いのと同時に、極論の中から生まれる哲学と、ささやかな夢と希望が込められている。

『人類最大の敵、めんどくさい、に勝つこと』。これは古谷実さんのグリーンヒルの中に出てくるセリフである。
このセリフは、私の人生の格言だ。

そして、外面も内面も不細工であるがゆえ、卑屈になった登場人物たちは、とても可愛くてセクシーな女の子に好意を寄せられる。

学生時代から古谷実作品を読んできた私には、今回の映画化には期待しかなかった。

しかも『森田正一』役は、まさかの森田剛。
(セッティングありがとうございました。)
そして、ヒメアノ〜ルのもう一人の主役は『岡田進』。V6の森田と岡田を思い出さないワケがない。なんか含みを感じるネーミング設定ではあるが…

私が感じた映画『ヒメアノ〜ル』は、人が見せたくない恥ずかしい姿や、人が人を苛める胸糞悪いシーンがてんこ盛りで、感情が揺さぶられ続ける作品だった。

哲学的な内容やギャグなんかもチラホラ見え隠れしているが、この映画の根本的なテーマは『愛』なんだと思う。

森田剛くんは「最後のセリフが言いたかった」と言っていた。
『森田正一』の人生で、希望に満ちていた最後の時間が、その『最後のセリフ』に全て詰まっているように思った。

原作と映画の本筋の捉え方は違う。
原作はもっと無機質で、渇いていた。

原作にある殺人鬼の『森田正一』は、殺人を犯すことでしか性的興奮を覚えない。
右に倣い、普通である事に一生懸命な私たちには理解しがたい存在である彼は、最初から最後までわけわかんないヤツだった。

だが、映画版の『森田正一』はもっと人間臭い。なぜ、そんな風に殺人を犯すようになったのか、原作と映画の原因は同じでも、『森田正一』の心の動きや人間らしさがあった。

怖いけど、抱きしめてあげたくなる『森田正一』が映画の中に存在した。

壊された未来と壊された人格は、救いようがないほど堕ちる所まで堕ちている。

絶望の中の『森田正一』は「めんどくさいから人を殺す」。
女の子がいれば、見境なく犯す。
喧嘩が強いわけでもなく、頭が良いわけでもなく、降ってきた火の粉を振り払うだけの、行き当たりバッタリの排除をしていく。
彼は外れた箍を取り戻すことさえしなかった。

えげつないイジメを受ける『森田正一』は「森田剛」によって、よりリアルにだった。

屈辱的な教室のシーンで見せた、口を半開きにしたあの表情。
バシャバシャと、シャワーが流れるように血を流し、ニッコリ笑うあの笑顔。
モゴモゴと甘えるような喋り方で、終わった人生を語る声。
なんの感情も感じさせない冷ややかな目線は、不気味なほど「森田剛」であって「森田剛」でなかった。

周りを囲んだ、他の役者さんたちの影響は計り知れないが、これまで観てきた殺人鬼を演じたどの役者の中でも、日常に溶け込みすぎた森田さんが1番怖い。

暗くじっとりと心に焼き付いたヒメアノ〜ル。
愛を思い出した『森田正一』を美化してはいけない。でも、「森田剛」のギリギリまで攻めた演技を私はとても美しいと思った。

#ヒメアノ〜ル
#映画
#ジャニーズ
#V6

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