疲労を回復させるのは疲労?
先日ブルーバックスの”疲労とは何か”を読み終わりました
疲労という主観的で官能的にしか評価できないと思える指標を客観的で定量的に評価できるようにした話や、
疲労感がもたらされる生理的なメカニズムについて、
新型コロナウイルスが疲労の研究を進めることになった話など、
興味深い話がたくさんありましたので、面白いと思った部分を抜粋いたします
体内に侵入して様々な部位を巡るため、体の外側からしか観察ができない学者に比べて体内をウイルスの方が知り尽くしているという意味の文章
表現がわかりやすくていいですね
サイトカインのことははたらく細胞で知りました
確か免疫細胞を活性化させるタンパク質
血液脳関門の話もどこかで聞いたことがあったけど、
サイトカインが通り抜けて脳まで達し疲労感の原因になってるとは初耳でした
最後まで読んでなんとなく分かったのは、どうやら嗅覚の中枢にある嗅球(きゅうきゅう)がHHV-6に潜伏感染されやすく、その際にSITH-1という潜伏感染遺伝子が発現し、同名のSITH-1という小さなタンパク質を産生する。
このSITH-1タンパク質が細胞内のカルシウム濃度を上昇させるCAMLというタンパク質と結合し細胞内カルシウム濃度上昇を補強する。
そうなると細胞のアポトーシスが起こり、海馬の神経新生が阻害されストレス応答反応に異常が生じるらしい。。。
要はHHV-6の再活性化量をPCR検査で測定すると疲労を定量化できるということ
疲労の根本原因はelF2a(真核生物翻訳開始因子)がリン酸化したものを元のelF2aに戻す必要があるとのこと。上記の抗酸化作用によって抑制されるのは肝臓のみで、肝臓が生成する炎症性サイトカインが減少し、脳は疲れていないと錯覚することになるらしい。
要は"身体全体ではなく肝臓だけ局所的にサイトカインが減って疲労が減ったと勘違いするだけ"ということのよう。
疲労は「eIF2α」というたんぱく質を作る酵素がリン酸化しその働きが止まることである。その働きをするリン酸化eIF2a脱リン酸化酵素にはGADD34とCRePがあるがこれらは軽い運動をすることで発生することから、軽い運動をすることで疲労は回復することになる。
土日にひたすら家で寝ているより外にでて遊んだり軽く運動したほうが疲れが取れるのはこのせいなんでしょう。
慢性疲労というのが疲れを感じやすく弱い人間だと感じる人がいるんですね。
うつ病などのような周りに知られたくない病気って感じなのかしら。
2兆円・・・
アセチルコリンの二つの作用、ニコチン様作用とムスカリン様作用があり、ニコチンは骨格筋の収縮などの作用、ムスカリンは内臓の筋肉の収縮をする作用がある。ニコチン様作用を司るアセチルコリン受容体には多くの種類があり、コリン作動性抗炎症経路の中心となるα7ニコチン受容体もその一つ。つまりニコチンは脳内炎症を抑える働きをしている。
もちろんタバコによって多くの害があるものの、ニコチンそれ自体には有用性もあるにもかかわらず嫌われていることから魔女狩りに形容している。
ダーウィンが残した書簡の一節。
本来のストレス応答は外部からの刺激に対抗するための抵抗反応であり、少々の刺激なら副腎皮質ホルモンの分泌からアドレナリンの分泌につながって疲労感の抑制が発生するが、疲憊期では副腎皮質ホルモンが出せなくなるため炎症性サイトカインが抑制できなくなり、疲労感が一気に高まる。
体が”休め”と信号を出してる証拠であり、そのように人間はできているから自分を責めなくていい。という意味だと勝手に解釈してます。
SITH-1の話とかも面白かったです。
疲労なんて感じてあたり前で、どうして疲労を感じるか考えたことがなかったのですが、この本を読んで反省しました。
眼に見えるものだけでなく、感じることにも原理や原因があること、
色がどうして判別できるのか、いつから色は今のように見えるようになったのかみたいなことかもしれない。
とにかく、当たり前のことを当たり前で終わらせない大事さを思い出せる一冊でした。
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