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「ポパイ」や「ブルータス」でお馴染みの編集者・都築響一さんの新刊「圏外編集者」

本(圏外編集者)(長文失礼します)

雑誌「ポパイ」や「ブルータス」で活躍した編集者の都築響一さん著の本です。学生の頃から「ポパイ」で編集アルバイトを始めて、その後フリーの編集者となり数々の話題の本を出版している気鋭の編集者といえます。

私自身も「ポパイ」や「ブルータス」の編集者時代から名前は知っていましたが、やはり一躍注目されたのは写真集の「TOKYOU STYLE」だったと思います。それまでの雑誌で紹介されたスタイリッシュな東京スタイルから一変して、リアルな東京生活を撮った写真集でした。またこの写真集とは別の作品になりますが、編集者ながらプロ写真家の登竜門である木村伊兵衛写真賞も受賞しています。

そうした編集者としての才能が光る筆者の仕事では、先ず企画書を書かないと断じています。机上で企画書を書くよりも先ず現場へ行って確かめる、興味があれば現場へ足を運んでその面白さを見つけ出していく徹底した現場主義を貫いています。
よって普通の取材であれば必ず事前にやるマーケティングリサーチもしません。対象となる読者ターゲットを自ら固定してしまうからです。

木村伊兵衛写真賞を受賞した経歴を持ちながらも、本人はあくまでも編集者の立ち位置を変えずに、写真家ではないので出版した本は、あくまでも読者に対する媒体であり作品ではない訳です。

こうした編集方針を書き連ねると、本のタイトルである「圏外編集者」の意味が理解できると思います。「圏外」とは従来の方針に囚われない自分自身の独自の編集スタイルであり、自己のポリシーを信じて突き進むことが、結果的に読者の共感を得て、数々の話題作を出版してきたと思います。

勿論「TOKYOU STYLE」などの著書は見たことがありますが、個人的に買ったのは「独居老人スタイル」という本で、高齢者年齢に達する以前に準備期間の参考にと読んだ記憶があります。

とにかく全ての登場人物が個性的で、若い頃我慢して働き老後に趣味でも見つけて余生を過ごそうというヤワな考えではなく、若い頃からひたすら好きなことをして生きてきた人たちの一途な人生が紹介されています。勿論経済的に裕福ではないケースもありますが、本人たちは、自分の人生に悔いがないので至って前向きです。

こうした内容も筆者の編集方針というよりも、人生に対する姿勢が反映されていると感じました。

「TOKYOU STYLE」に限らず、虚飾ではないストレートな現実を描き出す、そこには等身大の生活や価値観があり、それぞれの特徴や個性がある。そうした素材を見つけ出して編集し、出版化して本という媒介を通じ、読者に自分と同じ価値観を問いただす。それが結果的に共感を呼び話題作になっていくことになると感じました。

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