見出し画像

#MeTooのきっかけを作った女性記者を描いた映画「SHE SAID その名を暴け」

映画(SHE SAID その名を暴け)(長文失礼します)

日本でも2020年に刊行された本の映画化作品です。本の副題には「#MeTooに火をつけたジャーナリストたちの闘い」とあり、私も当時話題の本だったので400ページ超ありましたが、買って読んだ記憶があります。 

新聞の映画評欄でこの作品が紹介されているのを見つけて、早速観に行きました。原作の内容である記事自体はピュリッツァー賞を受賞するなどかなり有名なので、ネタバレありの注釈は無しにしますが、ハリウッドの大物プロデューサーによる長年の女性への性暴力を、スクープ記事として公表したニューヨーク・タイムズの2人の女性記者の公開までの取材と葛藤を描いています。

もう2年前に読んだ本なので、詳細の記憶は定かではありませんが、原作をかなり忠実に再現していると思いました。ただ映画である以上時間的な制約があるので、プロデューサー以外の性暴力への告発や、被害者を一堂に会して行った集団インタビューなどは割愛されていましたが。

調査報道の部署に属する2人は、最初トランプ(当時はまだ大統領候補者)や有名司会者のセクハラなどを追求していく内に、ハリウッドの大物プロデューサーの存在が浮かび上がってきます。ただ彼に性被害を受けたとする女性たちが一様に沈黙するのは、相手方の弁護士が和解金を払う示談に持ち込み、守秘義務を強要するケースが多いという事実でした。

原作では「キャスティング・カウチ」というワードが登場しますが、これは日本でいう枕営業のことであり、アメリカでも長年必要悪であると女優達も割り切ってきました。
ただこれも時代の流れなのでしょう。女性の尊厳や人権などを踏みにじるこうした悪しき慣習は、断ち切るべきだと被害に遭った本人たちが自覚して、取材に応じるようになります。当初はオフレコが基本でしたが、実名が出るオンレコも承諾するような変化が見えてきました。 

2人の女性記者は共に家庭を持ち、仕事や子育ても夫の協力を受けながら、女性の人権回復のために精力的に取材を続けていきます。

#MeTooムーブメントは全世界に広がり、女性の意識改革を目覚めさせました。性被害に限らず、多くの場面で女性差別やジェンダーギャップがまだまだ存在しますが、人権の尊重や価値観の多様性など、少しずつではありながらも、時代の潮流は本来あるべき姿になりつつあります。当然そうするためには困難が生じることも多々あると予測できますが、そうした困難にも立ち向かう勇気を与えてくれる映画だと思いました。

蛇足ながら、あの新聞社の社内シーンは、巨大なセットだったのでしょうか。まさかニューヨーク・タイムズが場所を提供するとは考えられませんが。
(写真は公式サイトより引用しました。)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?