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Japan Customer Success Community(JCSC) #11 に行ってきた!

JCSC#11のテーマは『顧客を成功に導くオンボーディングの削ぎ落とし〜トレタが辞めた4つのポイント〜』として、トレタ社で行ったオンボーディング施策について。オンボーディングって、アダプションを実現し、チャーンを回避するために、ついつい手間をかけてしまいがちですが、トレタ社は何を削ぎ落としたのか?やらないと決めたことは何なのか?学んできました!

■概要
日時:2019/11/25 (月) 18:30 - 21:30
会場:株式会社SmartHR セミナールーム(六本木グランドタワー 8F)
詳細:https://jcsc11.peatix.com/

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(最近、SmartHR社の8Fセミナールームに来る頻度高すぎてSmartHR社にオンボーディングされてる感ある。)

■登壇者
トレタ株式会社 カスタマーサクセス部 部長 鈴木 高太郎 氏
■パネリスト
株式会社SmartHR 執行役員・VPカスタマーサクセス 高橋 昌臣 氏
■モデレーター
ベルフェイス株式会社 カスタマーサクセスマーケティングチーム マネージャー 小林 泰己 氏

はじめに

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JCSCはCSを初めて少し経った人、用語の解説はしなくてもOKな人を対象にコンテンツを用意している。

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徐々にCS取り組み歴が長い人が増えてきている。JCSC初回からCSとして参加している人がずっと残っているのでは。

オンボーディングの削ぎ落とし方
〜顧客の成功のために僕らが辞めた4つのこと〜

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トレタ入社前から入社してしばらくしてまで、ずっと営業。トレタ7番目の社員。

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トレタのCS組織。訪問型のCSとインサイドCSに分かれている。

トレタの課題
CS1人の担当店舗数が1,000店舗超え。顧客とコミュニケーション取れる時間がアイドルタイム(14:00〜17:00)の3時間しか無い。

オンボーディング完了の定義
・以前まで使っていた予約台帳がなくなった時
・転記もNG
・電話+Metabase(顧客の活用状況が見れるシステム)で利用状況を確認
※定着についてはまた別の指標を見ている。

1.オンボーディングの歴史

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2014年〜無我夢中期
良かれと思って何でもやってあげていた

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2015年〜CSチーム発足
やり方がバラバラでハイパフォーマーとボトムとで30%程度成功率に開きがあった。

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2018年〜リモート期
オプションも顧客も増え、オンボーディング対応が激増。商品を追加するとすぐにオンボーディングが発生。

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2019年〜セルフ期
動画で顧客に事前学習してもらうことで、オンボーディングの負の連鎖を脱出。

2.機能説明をしないことへの決断

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顧客の課題
・人は7つまでしか覚えられない=7つ以上やることが無いように設計する必要がある。
・現状のオペレーションにフィットするか不安
・日々の業務で疲れてしまい、説明してても寝てしまう

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説明会の型をつくることにした
ハイパフォーマーとローパフォーマーとの違いを調べた結果、ハイパフォーマーは顧客の状況に柔軟に対応しているが、ローパフォーマーは機能の説明を懇切丁寧にしていることがわかった。
顧客の状況に応じて柔軟に対応できるようにする必要があるが、型を作ろうとしてスクリプトを用意すると柔軟性が損なわれる。そこで、導入説明会をディスカッション形式にし、機能の説明を60分→15分にした。

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機能説明の時間短縮のポイント
・「因みに〇〇出来ます」を全て排除
・便利機能の説明をカット

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質疑応答に時間を使うようにした結果
・質問=相手のオペレーションに集約される
・信頼関係が構築されやすくなった
・重箱の隅をつつく様な質問がなくなった
・誰でもできるようになった

効果
ハイパフォーマーとローパフォーマーとの差が30%→10%に。
CS業務を外部に委託できるようにもなった。

3.お客様のところへ行かないことへの決断

顧客の要望
・すぐに問題を解決したい、早く使いたい

2017年当時、CSメンバーが8名いたが、納品が契約から2ヶ月待ち→セールスから4名人手を借りることができた。が、時間がかかりすぎて、納品・オンボーディングが「ごめんなさい」から始まっていた。CSが導入のボトルネックになってしまっていた。最悪。
インサイドセールスが使っていたベルフェイスを導入、逃げ場が無いように、デスクを改造してやりきった。

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インサイドに振り切るポイント
メンバーにもクライアントにも、心理的なハードルを下げる。まずはやってみる。やりきってみる。
訪問未経験なメンバーを混ぜる。訪問した方が楽だが、未経験者をチームに混ぜることで訪問しにくくなる。
やらなければいけない環境をつくる。

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インサイドに振り切った結果、平均オンボーディング成功率:5%UP。
顧客とのタッチ回数が増え、オンボーディング期間が短縮。

4.人が説明しないことへの決断

顧客の課題
人間は贅沢な生き物で、どんどん要望水準が上がりがち。
自社の課題
メンバーの8割くらいがオンボーディング業務に関わっていてカスタマーサクセス出来ていなかった
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難しいスキルが必要ない業務→パートナーに対応を依頼
トレーニングが必要で社内対応すべき業務の内、
・機能説明:ほぼ全クライアント同じ
・定着フォロー:顧客ごとに違う
と判断して機能説明を動画で行うことにした。

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機能説明の際のPushの流れ
まずはメールで案内
→日程調整は電話で案内、その際に担当の携帯番号を必ずヒアリング
→動画を見てもらうようSMSで事前に通知
→機能説明の動画へ誘導

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動画に振り切るポイント
・何度もプッシュする
・みるだけじゃなく、宿題もやってもらう

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成果
・平均オンボーディング成功率4%UP
・オンボーディング期間が更に短縮
・CS全員がサクセス活動できるように

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まとめ

施策
1.トークはできるだけシンプルに
2.リモートでも大体のことはできる。出来ないのは謝罪だけ。
3.社員がやるのはそれによってValueが出るところだけ
4.動画も粘れば見てくれる
顧客
1.人は7つしか覚えられない
2.Time to Value
3.人は贅沢な生き物である

質疑応答 及び パネルディスカッション

Q:45分の質疑応答で顧客から具体的な質問が浮かばない場合はどうやって質問を引き出すか?
トレタ鈴木氏
切り替えの日付、締切を煽り気味に設定しているため、焦った顧客が色々質問してくる。意思決定者に早めに締切を設定してもらい、導入担当者に「○○部長がこの日から導入してほしい、と言っている」と伝えている。
意思決定者と導入担当者が同席する場合は、ゴールから逆算して「すぐやらないとダメですね」と言い切る。
小林氏
現場の「お局」的な反発者がいた場合はどうしているのか?
トレタ鈴木氏
他の全店舗で実績を作って、やらざるを得ない環境を作る。

Q:リテラシーが低すぎる顧客のリモートオンボーディングで工夫したことは?
トレタ高橋氏
1回目「行きます」と言いつつ、行った先でちゃんと使って貰う。
2回目以降は行かない。逆に出来ない理由をリモートで掘り下げてヒアリングし、潰す様にしている。
SmartHR高橋氏
労務担当者は労務管理システム等で多少リテラシーはある。
従業員の方がリテラシーが低い(と担当者が言ってる)ケースが多い。

Q:機能説明を簡潔にすることは合理的だと思うが、その後のサポート負荷が上がらないか?
トレタ鈴木氏
人は7つしか覚えられないので、どれだけ詰め込んでもその後の質問の総量は変わらない。7つをできるだけ大きな枠組みにしておくのが大事。
SmartHR高橋氏
顧客トレーニングをウェビナーで1対Nにした結果、業務負荷が10分の1になった。顧客の理解や活用度合いも大きく変わっていない。

Q:オンボーディング成功率とチャーンレートの関係について
※数値情報SNS共有NG※
トレタ鈴木氏
チャーンのうちのXX割がオンボーディング失敗。
また、社員がバリューを出すべき業務を外部に委託してしまうと、LTVがガタガタになりやすい。
小林氏:再オンボーディング成功率は?
トレタ鈴木氏
XX日以内に○○に再オンボーディングした場合の成功率はXX%。
●●から再度オンボーディングする場合はXX割〜XX割程度まで上がる。
SmartHR高橋氏
同じく、チャーンのXX割程度がオンボーディングに失敗してる。
失敗というよりオンボーディングまでたどり着けないケースが多い。
同時に給与や勤怠等のシステムを導入していることが多く、労務にたどり着くまでに担当者が疲弊していることがある。

Q:相手方でオンボーディングが止まるとき、どのくらいプッシュするか?
トレタ鈴木氏
オンボーディングが止まって4日経過後にPush→「やります」
→4日後に止まってたらまたPush「なんでやってないんですか?」→「やります」
3回「やります」の後に止まったら以降は追わない。
SmartHR高橋
何度か試みてオンボーディングが止まる場合、一度営業に戻してオンボーディングを設定してもらっている。

Q:動画の後に宿題をやらない顧客はどうやって進めるのでしょうか?
トレタ鈴木氏
そもそもニーズがなくオンボーディングが進まないような顧客はセールスがアプローチしていない。宿題をやらない顧客は普通にオンボーディングのプロセスに乗せる。オンボーディングの成功によってその後のアップセル、クロスセルの確度がぜんぜん違う。

Q:動画の後の宿題にはどんな質問を出してますか?
トレタ鈴木氏
基本的には「使ってみてどうですか?」しか聞かない。むしろ顧客から色々利用方法について質問が出てくる。

Q:動画を作成するのに使っているツールはなに?
トレタ鈴木氏
フィジビリと正式版で分けている。正式版は外注、フィジビリはKeynoteで作っている。
SmartHR高橋氏
MacのScreenFlow(パッケージソフト1万円程度)を利用。

Q:トレタ社のハイタッチCSとインサイドCSのアクション内容の違い
トレタ鈴木氏
ハイタッチCSは決裁者とコミュニケーションを取る、インサイドCSは導入推進者とコミュニケーションを取っている。

Q:オンボーディングが失敗するときに1番多い理由
SmartHR高橋氏
前出のとおり、失敗というよりオンボーディングまでたどり着けないケースが多い。
トレタ鈴木氏
チャーンの原因は細かく見ていて、施策とタイミング毎に違うが、今現時点で一番多いのは「店長の異動」。知らない間にコミュニケーションが途切れることが原因になることが多い。
小林氏:顧客の社内状況の変化をどう捕捉しているか?
SmartHR高橋氏
テックタッチでやりたいところだが、今の所上手い方法は見つかっていない
トレタ鈴木氏
サービスの利用が止まって4日経過後に連絡した際に異動を知る場合はよくある。ヘルススコアも見ていて、スコアの変化を元に気づくこともある。定量情報と定性情報とのバランスが大事。

まとめ、感想

SaaSのセールス・CS共に難しいところが、意思決定者(決裁者)と導入担当者(現場責任者)が異なることだと思う。トレタ社が質疑応答で言っていたように、どちらうまく巻き込み、意思決定やスケジュール決定は意思決定者に、オンボーディングは導入担当者に、それぞれ判断をさせた上で進めていく他無いと感じる。
トレタ社がCSでやっている機能説明は最小限に止め、顧客がやりたいことを顧客から引き出す、というアプローチは、セールスにおけるビジョンセリングの手法と近いアプローチの様に感じる。細かい仕様の確認や業務フローの調整まで話が及んでしまうと、全体の中で数%しか発生しないレアケースが解消されないのなら、導入の意思決定を見送る、という話に及びがち。
レアケースは発生したときに考える、あるいは運用でカバーする、全体最適で最も効果やインパクトが得られるところから手を付けるべきで、そこをフォローしだすと受託っぽくなる。大きいメリットを享受するために、細かな部分は削り取って顧客が業務をプロダクトに寄せる様になってくれるのが、本当にオンボーディングが達成された瞬間なんじゃないかと感じました。

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