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"ポスト平成"のCS - CS HACK #29 に行ってきた


長年、コールセンター専門誌の編集者として企業における顧客対応、コールセンター業務を見てきたコールセンタージャパン編集部 編集長・矢島 竜児氏による、CS HACK#29 講演に行ってきました。

イベント概要

日時:2019年4月24日(水)19:30〜
場所:株式会社DeNA(ヒカリエ24F サクラカフェ)

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会場はDeNAさんの休憩スペース(?)超おしゃれ!

登壇者

株式会社リックテレコム
コールセンタージャパン編集部 編集長 矢島 竜児氏

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登壇者の矢島さん。CS系のイベントであまりお目にかかったことのタイプの方。いかにも業界誌の編集者、というオーラ。

500社超のコールセンターを見てきたバブル世代の編集者が考える、平成のCS/コンタクトセンター業界が残しつつある課題と「ポスト平成」の顧客体験マネジメント

自己紹介

1968年生まれ。1998年からリックテレコム社に入社し「コールセンタージャパン」の編集に従事。
平成に元号が変わったのが二十歳のとき。世の中的にはギリギリバブル世代と言われているが、40社以上受けて全部落ちた。20代の大半を年収200万円台で過ごす。
平成はアナログからデジタルの移行期。バブル世代の殆どは、移行期に最も消費した経験のある年代であり、ビジネスの最前線にいた世代。それゆえ、根拠のない自信がある。ミニマリストのような存在はバブル世代にはあまりいない。なぜなら「無駄」が美徳とされて世代だから。
バブル世代として、長年コールセンターを見てきた立場として、平成時代を総括したい。

平成をCX視点で振り返る

平成初期のCXとは?最大の特徴は「顧客体験の地域格差」最大の情報源はテレビ。その他雑誌、紙媒体。全てのCXの起点がTVだった。視聴率が普通に30%を超えていた時代。
それでも、地方は放送局が少なく、全国で同じ体験はできなかった。雑誌も地域によって発売日が異なった。そのため、若者はよりよい経験を求めて都会を目指した。

CXを変えたのは誰か?

CXはどの様に変わっていったのか。
平成10年〜Win95、iMac、Yahoo!BBがサービス開始→インターネットへの常時接続が可能になった。
平成20年〜iPhone販売開始
Webが顧客体験をアナログからデジタルに広げ、地域格差を埋めた。

顧客接点を変えた事件、法律

PL法(製造物責任法)の制定により、先進的な考えをもつ人は「受け皿を用意しなければ」と考えた。それによって生まれたのが「お客様相談室」。
その後、東芝クレーマー事件、雪印事件などが顧客への初期対応を失敗したことで発生。VOC(企業品質)という考えが浸透。
個人情報保護法の制定、YahooBB!での情報漏えい等により、CRM、情報セキュリティの考え方、コールセンターが広まるきっかけになっていった。
世の中に不幸な出来事がおきるほど、コールセンター業界が盛り上がる。あんまり言っては行けないことだけど、そんな時代だったのが平成。

変化するコンセプト(コールセンターの役割)

1990年台後半「窓口」
 顧客対応の効率化、窓口業務を集約した「処理起点」
2000年台〜2008年位まで「CRM」
 顧客との関係強化を示したコンセプト。
 コミュニケーションに対するこだわりを持つ。
2009年以降「カスタマーエクスペリエンス」
 顧客に「心地よい体験」を提供する事によるロイヤリティ向上
直近「カスタマーサクセス」
 まだ、それが何なのか定義できていないため、紙面では取り上げていない。今の所、カスタマーサービス(エクスペリエンスだったかも?記録できず。。)の言い換えでしかないのでは、と考えている。

変化するチャネル

電話→メール&Web問合せフォーム→チャット&チャットボット
既にコールセンターの9割がWebフォームの問合せにも対応している。
チャット対応はUSでは既に一般的になっている。日本語では難しいと言われていたが、直近1〜2年で急速に広まりつつある。原因はおそらくLINE。
コールセンターがWebサイトのFAQコンテンツをうまく作れていないため、チャネル間で情報の断絶が起きてしまっているのが次世代に残ってしまった課題。

顧客はどうやってチャネルを選ぶのか

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パーソナリティ:顧客の性格、リテラシー
シチュエーション:置かれている状況
コンタクトリーズン:コンタクトした理由
経験:その企業にアクセスした印象
の足し算の結果チャネルが選択されている。

チャネルの優先度は明白

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電話する前に会社のHP等を調べたか?という設問に対して、50%以上が事前にググっている。回答者の半数以上は50代以上にもかかわらず。顧客は既にWeb→電話の流れになっている。

「自動化」を前提に顧客接点を設計する時代

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電話は「自己解決ができなかった顧客」が最終的に選択する手段であり、Webで顧客が自己解決出来ることを前提に接点を設計すべき時代になっている。

チャット対応の今後

FAQで解決しない→チャットボットでも解決しない(内容はFAQと同じだからあたりまえ)→有人チャット対応にアクセスが集中してつながらない、といったことが既に多くのサイトで起きている

メール/有人チャット対応の基本的KPIの考え方

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メールはレスポンスタイムによるマネジメント。X時間以内に回答する、など。
チャットはサービスレベルによるマネジメント。X秒以内にY%のコンタクトに応答する、など。
コンタクトの特徴として、チャットはランダムに着信しリアルタイムに対応する必要があるが、メールはランダムに着信するが処理はスムーズ。
メールと有人チャットとでは、サービス品質や生産性に関するマネジメント手法が異なるため、チャットをメール対応の片手間でやっていると必ず破綻する。

「採用難」と「離職増」

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結局コールセンターとかCSは不人気職種。
顧客に怒られるのはある程度仕方ないが、それを減らすための仕組み、顧客に不快な思いをさせないための仕組みづくりが必要。

勝手な令和の予想

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フリーダイヤルはなくなるかも?

フリーダイヤルの功罪。企業と消費者の垣根を下げた役割は大きかったが、「カスハラ」時代においては現場のストレスは限界を迎えている。
フリーダイヤルを続けていると、本当に大切にすべき顧客への対応がおろそかになりかねない。つまり、ESはもちろん、CXの観点から言っても疑問符がつく状況になっている。

検索しないで住むサービスの登場

デジタルシフトによってCXの地域格差はだいぶ埋まった。でも、リテラシーによる格差はどうにもし難い。今後は、音声認識等で好きなデバイスに回答が表示されるようなチャネルが台頭するのではないだろうか

「CXを理解している経営者」がいない

日本を代表するような有名大手企業の経営者で、コールセンターやカスタマーサービスの経験者はほとんどいない。ベゾスはやってた。日本の企業価値がだだ下がりなことと無関係ではないと思う。

質疑応答(というか藤本さんとのパネルディスカッション)

Q.給与を上げれば採用難等の課題は解決出来るのではないか?
A.SVの平均年齢が37歳くらいで、平均年収が350万程度。安すぎるし、正当な報酬になるよう考え直すべきなのは間違いないが、うなぎのぼりに上げ続けるのもちょっと違うとは思う。

Q.チャットがだめなら、結局電話に戻ってしまうのか?
A.音声インターフェイスが広まると考えている。電話番号はなくなると思う。技術の進化によって、音声に回答するのが人なのか、デジタルなのかは技術の発展次第だと思うが、ボイスインターフェイスが来るのは間違いないと思う。

Q.JTBが窓口を有料化したことについてどの様に考えるか。本来は有料で、サービスとして無料にしていた。今回の取り組みは、有料で対応し、実際に旅行に行った際に相殺されるような、冷やかしを防ぐような仕組みになっている。
A.広まってほしい。サービスは無料という考え方が今の閉塞感につながっていると思う。4,000円の価値が提供出来るのかは判断が難しいとは思うが、JTBは教育がしっかりしていることもあり、事業判断として行けると考えたのだと思う。

Q.FAQの成功事例
A.「メルトラ」のサイトがイケてる。CSだけに押し付けるな、と言った人がいて、CS部門手動のもと、商品デザイン部等、全社を巻き込んで作り上げた。FAQだけ頑張ってもコールセンターだけ頑張ってもダメ。

Q.コールセンターの採用の成功事例
A.頑張っている会社はいっぱいある。どうやっても採用は難しい。選んでくれない。入ってくれた人材に対する投資に経営がどれだけ本気かどうか。うまくいっている会社は、スタッフの養成機関を作って教育、品質管理に力を入れている。

Q.ビジネスとコールセンターをつなぐ役割が必要になるか?
A.チャットが主体になる会社が多いと思うが、メール対応と違いすぎるため、コールセンターの治験が必ず必要になるフェーズが来ると思う。

感想、アウトプット

この前参加していたイベントで誰かも言っていましたが、「勉強になりました」はアウトプットじゃないし何の価値も無いと思っています。インプットに自分なりに考えたこと、自分の身に置き換えてスタンスを取って初めて、アウトプットとして価値があると思います。

で、前置きはさておき、企業のCX活動をコールセンター業務を通じて長年見て来られた矢島さんが「カスタマーサクセス」を未だ明確に定義できていない、と冒頭おっしゃっていたのにびっくりしました。実は自分も同じ考えで、「カスタマーサクセス」はCX的な取り組みではなく、既存顧客に対して属人的に行われて来たルートセールス、アフターセールスを、組織としてWebを使いながら効率的に行なう仕組みの総称だと考えていて、CX的視点で見るとやはり同じベクトルで定義し辛いワードなのかな、と感じました。

今日伺った、C向けを中心としたCXやコールセンターの取り組みと比較すると、自分が普段相対している不動産業界における顧客対応の取り組みは、誤解を恐れずに正直に言うと、3周遅れくらい遅れているな、、と感じました。コールセンターの9割がFAQからのメール対応を業務として請け負い、有人チャットにもその一環として対応しているが、既に対応しきれなくなっている平成の終わりに、コールセンター同様にクレーム産業と呼ばれる不動産賃貸業界において、顧客対応の窓口に専用の電話窓口、コールセンターすら設けていない企業が多いこと多いこと。。同じ消費者を相手にしている業界であるにもかかわらずここまで差が生まれているのは、顧客志向、CX向上という考えがあるかどうか、なのではないかと思います。賃貸業界でも頑張っている会社が居るのは知っていますが、スタンダードでは無いですし、そういった会社が市場を牛耳るような業界になって欲しいと思います。

話が逸れました。今日、一つヒントになったのは「チャネル」の話で、消費者が課題解決手段(チャネル)として電話を選択するのは最終手段で、大多数の消費者はググってFAQで自己解決しようとする、というのが世代を問わず一般的、という話。これはCSにおけるハイタッチで対応すべきなのかテックタッチなのか、という話にも繋がるなと思いました。

B向けSaaS、というか、今自分が関わっているサービスの場合、マニュアル・FAQ等のドキュメント類を充実させるだけで、オンボーディングやアクティブ化のフェーズにおいて顧客が自走(調べて自己解決)する環境が作れ、CSは操作説明やインバウンドの電話対応などにかける時間、コストを最小限にした上でLTV向上のためのアプローチにリソースを割くことができそうだな、と思いました。





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