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春めいてライスバーガー

「はーい、静かに。今日は皆さんに、提案があります。」
と、先生が言った。

千代田区立ちよちよ小学校、2年1組の朝の会だ。

れな「なんだろ?」

さくらこ「ミンネ・アードラーちゃんのことかな? ドイツから来た女の子。」


きゅうじ「あいつ、全然来てないもんな!」

先生「ミンネ・アードラーさんのことです。学校に来ていないですよね。ですから、みんなでおいしいものをつくって、お見舞いに行ったらどうかしら?」

「さんせーい!」
「つくるー!」
「俺らも食べていいのー?」

先生「もちろんいいわよ。みんなの分を食べてもらうから、ミニサイズにしましょう。班ごとに、おうちの人たちに手伝ってもらいましょう。」

れな「わーい! ママのバケッドサンドは、日本一なんだから!」


しかし、先生が言う。

「あのね、リクエストがあるの。ミンネちゃん、ごはん料理が食べたいって。」


そう、ドイツ人のミンネだが、日本のご飯が大好き。白いご飯より、何か手を加えたものが好きだというのだ。ミンネのママがごはん料理をつくれず、困っているのだという。

さくらこ「じゃあ、ママが作り方を教えてあげるといいね!」
しえり「何がいいかなー。」
れな「あ! じゃあ、ラ……。」


「ライスバーガーにしようかな。」


と言ったのは、メイぷる子ちゃんだ。おっとりした優しい子で、男子に癒し系と言われてひそかな人気である。

れな「わたしも、ライスバーガーにしようと思ったんだー!」
と、大きな声で言う。

先生「ごはん料理なんてそんなにたくさんないから、同じ料理でもいいですよ。では、1班に2人、おうちの方に来てもらいましょう。誰にきていただくか、相談してくださいね。もちものは、ご飯ひとり1合と、切ったり焼いたりした具、鍋を使う人は……。」


れなの班は、ライスバーガーにすることにした。ウキウキしながら、ママに話すと意外な答えが返ってきた。

れなママ「えー? ママ、作ったことないのよ。モスバーガーでしか食べたことないわ。」


その後、さくらこママと、長時間電話をしていた。どうやら、ふたりとも作ったことがないらしい。ネットで調べても、ぱっとしたレシピがなかったようだ。

れな「えーん! おいしいライスバーガーを、ミンナちゃんに食べてもらいたかったのにー!」


メイぷる子ちゃんに、ちょっと対抗意識を持ったことは内緒だ。

そして、当日。他の班は、あとはママが炒めるだけ、みんなが盛り付けるだけのごはん料理を持ってきた。

ライスバーガーのライスの部分を、一から作ろうと思っているのは、れなママとさくらこママだけである。

れなママ「とりあえず、水溶き片栗粉はどうかしら?」
れな「片栗粉の味ばっかりするよう。」
さくらこママ「一度冷凍したのを持ってきたんだけど……。」
さくらこ「べしょべしょしてて、おいしくないよう。」

時間はどんどん、過ぎていく。他の班はもう、ラッピングしている。

れなママ「そうだ! これだわ。」


「ピンポーン。ちよちよ小学校2年1組ですー。」
先生が、ミンネちゃんのおうちの呼び鈴を鳴らした。
「はーい。」
出てきたのは、ミンネちゃんのママだ。なんだかちょっとげっそりしている。

「先生、ありがとうございます。わたしがごはん料理をつくれないばかりに。」


「いえいえ、子どもたちが頑張りましたよ。好きなものを食べてもらいましょう。」

ミンネちゃんの部屋に行く。ほっそりした女の子が、ベッドから起き上がった。

先生「ミンネちゃん、いろんなごはん料理を持ってきたのよ。好きなのから食べてね。」


こくんとうなずくミンネちゃん。おいしそうなにおいに、思わず息をのむ。

「あ、これ……。おいしそう。」


と言って、最初に手に取ったのは、メイぷる子ちゃんのライスバーガーだ。一口、食べる。

ミンネ「中身は切り干し大根に、たくわんが並んでる。それから……ほうれん草のごま和えね! おいしい……。」


みんなも、ミニサイズのライスバーガーを食べる。ミンネちゃんのママは、作り方を聞いていた。

みんな、おいしいおいしいと食べている。れなも食べた。おいしい。どうやってご飯を固めるんだろう。あ、ママは何を作ったんだっけ?

ミンネ「これ、かわいい。梅の花がのっているわ。」


れなママ「単純なうめぼしのおにぎりですよ。でも春めいてきたから、校庭で探して、きれいに洗って飾ってみたの。」

ミンネ「おいしい~! 梅干し、大好き! こっちは……。え、チーズ? おいしい!」

れなママ「チーズは意外としょっぱいから、おにぎりに合うんですよ。」


ミンネママ「これならわたしもすぐ作れるわ!」


そう、れなママは最後に、ライスバーガーをあきらめて、梅の花つきおにぎりと、チーズおにぎりをにぎったのだ。

れな「チーズおにぎり……。ひいばあばのころから、うちに伝わるおいしいおにぎり。ミンネちゃんがおいしいって言ってくれた!」


れなは、すっきりした気持ちになって、メイぷる子ちゃんのところにいった。

れな「わたしはライスバーガー、うまくつくれなかったー。どうやってつくるの? おいしいね。」


メイぷる子「うん、ママの得意料理なの。まずはお米をね……。」


ミンネちゃんはすっかり元気になった。

「わたし、明日から学校に行くわ!」


メイぷる子「うん、今度は普通サイズのライスバーガー、一緒に作ろう!」

れな「メイぷる子ちゃんが、すっごくおいしいのを教えてくれるからね。


ミンネちゃんママは、ごはん料理レシピをたくさん知ることができてハッピー。ミンネちゃんやれな、メイぷる子ちゃんも、新しいお友だちができて、ハッピーな気持ちになれた。

やっぱり、おいしいものは人を幸せにする。
それがごはん料理なら、なおさらだ。

青ブラ文学部のお題を、今日、小論文を書いてくれたメイぷる子さんのネタを交えて書きました。よろしくお願いします!

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