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年を取ることは、きっと「格好いい」

先日、町田市の公開講座で「人生会議(アドバンス・ケア・プランニング)」の話をしてきました。
参加者のほとんどは60代から80代で、90代で元気に会場までいらしゃっている方もいて、本当にすごいな素敵だなと思います。
その中に、80代で脳血管障害や心臓疾患で大手術を乗り越えてきた男性がいらっしゃいました。ご本人は「もう大病しちゃって」と笑っていましたが、背筋が伸びて姿勢がよく、にこやかに微笑みながら声をかけてくれる様子からはエネルギーを感じて、逆に私のほうが励まされる思いがしました。

たしかに歳をとるといろいろと難しいこともでてきます。
でも、先の男性はハツラツとしていて、自分の関心で今回の講座を調べて申し込み、自分の足で歩いて会場に来て、最後に私に一声かけてにこやかに去っていく後ろ姿をみて、「格好いい…!」って思いました。

歳を取ることは、格好いい。
いろいろな不具合があっても、自分の人生を、自分の気持ちで決めて行動し、前向きに生きている、その姿が本当に格好いい。
たぶん、その男性は、度重なる病気で九死に一生を得るような思いをされたのだと思います。不具合は単なる不具合なんかじゃない、すごく大変なことだったのでしょう。今でも体の調子が万全ではないのかもしれません。

それでもその男性の持っていたハツラツしたエネルギーはたぶん、自分の人生におきるさまざまなことを受け止めつつ、そのなかで自分の希望で人生を決めて行動しているからではないかと思いました。それを支えるのは間違いなく、それまで生きてきた時間とそこで培った人生観なのでしょう。

だからやっぱり、歳を取ることは格好いい。そう思います。

「人生会議」って何も終末期に備えるためにするだけじゃないんですね。終末期にどんな状態でいたいか、どこで過ごしたいか、誰と一緒にいたいのか、何をしたいか、等々を考えることで、「あ、私ってこういうことを大事にしている人なんだ」とか「私はこういうことを本当は望んでいたんだ」ということに気づくためのものでもあります。なので、講演の時には必ず、まずは自分の希望を振り返ってみること、家族や医療者に遠慮せずに今の自分の気持ちを振り返ってみることを最初におすすめします。
ちょっとずつでいいんです。
「あそこに行ってみたい」、「こんなことしてみたい」でもいい。
そうやって少しずつ、私が希望していることは何かを振り返っていくことで、自分の希望を大事にする。それが大切だと思います。

先の男性は病後に少しずつ自分の気持ちを大事にして、聴いてみたいという思いで講演に足を運んでくれたのでしょう。
そうやって自分の人生を少しずつ自分の希望で決める姿は、たとえ弱っていても、シミシワがあっても、生活に他者の援助が必要であっても、格好いいと思います。


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