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どんな空調機器が省エネか検証してみた!!!

どうもこんにちは、沖やんです。

建築設備設計に取り組んでいると、あることに気がつくわけです。

「いろんな空調機器があるけど、どれが一番省エネなんだろう?」

現代の建築設備には、いかに消費エネルギーを少なくするとするかということが求められます。また、建築物省エネ法の改正によって、基準消費エネルギー量よりさらに少ない消費エネルギーにすることが求められるようになります。

そこで今回は、どの方式が最も省エネかを決めるため、空調設備の省エネ能力をガチで検証する回をやります。設備設計オタクの回です。長くなりますがどうぞお付き合いください。


建物の条件!

今回検証するにあたって、モデルとなる建物を設定します。

東京都内(多摩地区)の2階建て事務所ビル、延床面積950㎡くらい(うち空調面積600㎡くらい)とし、合計の空調熱負荷は100kWとします。

わかりやすいように建物を設定したら、次は空調機器の比較をしましょう。

空調機器の比較!

つづいて、空調機器の紹介です。今回は以下の5種類で比較します。

●店舗用パッケージエアコン

家庭用エアコンより大きいタイプのエアコンです。こちらは電気式空調です。

比較的小型な機種が多いので、この検証では11.2kW機×10系統(各室毎に系統わけ)で、すべて同時に定格運転したときの消費電力で評価します。

●ビル用マルチエアコン

オフィスや商業施設で比較的使われやすい、各室内機ごとに個別運転ができる大型のエアコンです。こちらも電気式空調です。

この検証では1階・2階でそれぞれ系統わけをして、56kW機×2系統で定格運転したときの消費電力で評価します。

●ガスヒートポンプエアコン

こちらも各室内機ごとに個別運転が可能なマルチエアコンですが、圧縮機の回転に電動機(モーター)ではなくガスエンジンを用いたものです。よってガスを使用した、ガス式空調です。

この検証では各階でそれぞれ系統わけをして、56kW機×2系統で定格運転したときの消費電力・消費ガス量で評価します。

●空冷式ヒートポンプモジュールチラー

ビル用マルチエアコンより大型の施設で用いられることが多い空調機器です。この機器も冷凍サイクルで冷却加熱をするのですが、そこから水(冷温水)に熱を伝えてファンコイルユニット(以降FCUと表記)やエアハンドリングユニットに接続します。この機器は電気式空調です。

この検証では40馬力(118kW)機種を1台設置して、チラーユニットとFCUをすべて定格運転したときの消費電力で評価します。

●吸収式冷温水発生機

以前のこの記事で紹介した、大型の空調機器です。ガスを使用するガス式空調です。現在では使用される物件が減りましたが、以前の大型物件では主流だった機器でもあります。

この検証では40USRT(冷凍トン、およそ140kW)の機種を1台設置して、冷温水発生機とFCUを定格運転したときの消費電力・消費ガス量で評価します。

建物条件、空調機器の条件を下の画像にまとめています。

建物条件、空調機器の条件

検証結果は???

今回は省エネ性能の比較ですが、エネルギー効率を示す指標の一つとして成績係数=COP(熱源機が作り出す熱・冷熱量の、消費するエネルギー量に対する割合を示す値)があります。数字が大きければより効率が良いことを示します。

今回はCOPの数字で評価します。

計算式:COP=定格能力/(定格消費電力+定格消費ガス量)

これで評価したCOPは以下の通りです。

店舗用エアコン:4.23
ビル用マルチエアコン:3.70
ヒートポンプチラー:3.48
ガスヒートポンプエアコン:1.20
冷温水発生機:1.14

電気式空調とガス式空調でCOPにすごい差が出てしまいましたが、実は電気は石油やガスなどの燃料を燃焼させたり、太陽光エネルギーを利用したりして変換している、二次エネルギーなのです。

電気は発電や送電のときに熱ロスが発生するため、有効に使えるエネルギー量で評価する必要があります。そこで電気エネルギーを一次エネルギー換算します。

一次エネルギー換算して評価したCOPは以下の通りです。

店舗用エアコン:1.53
ビル用マルチエアコン:1.34
ヒートポンプチラー:1.26
ガスヒートポンプエアコン:1.13
冷温水発生機:0.99

結局電気式空調のほうが効率良いじゃん

評価したまとめは下の画像をご覧ください。

空調機器ごとのCOP評価

考察しよう!

1、冷温水発生機が縮小した要因

かつて大型施設では冷温水発生機が主流でしたが、現在では縮小傾向にあります。それはガスを燃焼して空調することがヒートポンプ原理より効率が劣ることと、メンテナンスが非常に手間がかかることが挙げられます。メンテナンス要員が不足する中では、メンテナンスフリーが可能な電気式空調が求められるのです。

ちなみに、ガスヒートポンプエアコンもガスエンジンの点検・メンテナンスが必須なのでそこで敬遠されることもあります。

2、電気式空調が効率良い理由

電気式空調が効率が良い理由、それは電動機(モーター)とインバータが技術競争の結果、めっちゃ技術的に発達したためです。としか言いようがない

そりゃみんな電気式空調になるし、分野は違うけど電気自動車を推してくるわけですわ〜〜〜

おまけ

1、検証結果のデータDL

今回の検証のPDFデータを以下にアップロードしました。細かい表が多いので見づらい部分もありますが、よければダウンロードしてご覧ください。

2、補足

今回は冷房モードで定格運転したときの瞬間的な効率だけを検証しました。実際は部分負荷運転が大半であり、また暖房運転時は効率が異なるので、今回の検証とは異なる運転効率になることに留意してください。

また、イニシャルコストやランニングコストについても考慮して、機器選定をする必要があることにも留意してください。

3、さらにおまけ

今回検証してみたかった理由は、設計事務所での業務で基本設計をやっているときに、ふと冒頭のことを思ったからなのです。CADオペレーターなのに

結局のところ電気式空調のモーターとインバータが優秀なことを証明したんですけどね!!!

以上、今回の検証企画でした。感想などをいただけるとありがたいです。コメントお待ちしています。

設備設計オタクの回またやりますね

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