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うつ病持ち設備設計が設備について熱く語るぞ:3.どうして換気は必要なの?

どうも、沖やんです。
この章では、換気が必要な理由を説明します。
序章はこちら

換気をする理由

人が生活していると、汚染物質がどうしても出てしまいます。(給排水衛生の分野でももちろん発生するのですが、これは次の分野で話します。)
空気調和の分野においても、空気を汚染する物質が常に発生しています。人の呼吸で発生する二酸化炭素、キッチンのガス器具から発生する二酸化炭素や一酸化炭素、トイレ・浴室から発生する臭気や水蒸気、建材・家具から発生するホルムアルデヒドが有害物質(汚染物質)と言われます。

それら有害物質を屋外に排出し、新鮮な空気を室内に取り入れることを換気といいます。人が快適に生活するためには、換気によって一定量の空気を室内に継続的に取り入れる必要があります。逆に換気をしなければ前述の有害物質によって、身体に様々な中毒症状や不快感をもたらすからです。また細菌・ウイルスを室内に滞留させると感染の恐れがあり、細菌などを排出することによって感染を防止させることも、換気の役割の一つといえます。新型コロナウイルスによって換気の重要性を再確認できたといえるでしょう。

従来(平成初期)までの建物は、建物の建具の隙間や窓の開閉によって行う自然換気を中心にしてきました。しかし、近年の建物は密閉性が高く、自然換気のみでは換気量が不足し、臭気や結露で悩まされることが多くなってきたので、機械による強制的な換気をおこなう、機械換気が必須となっています。

換気の方式とは

換気する、と一言でいっても、その方法は多岐にわたります。窓を開ける自然換気、機械を動かす機械換気、全体を換気する全般換気とするのか、一部の部屋を換気する局所換気とするのか…と様々です。

自然換気は設備設計にあまりかかわらないのでここでは省略しますが、機械換気については3つの換気方式があります。

第1種換気

給気と排気の両方を機械(送風機など)で換気する方式です。各部屋に必要な給気量と排気量を確保するのに最も適した方式であり、換気計画を最も立てやすい方式です。また、室内の圧力を一定に保つことが可能で、給気量/排気量の差によって正圧/負圧を作りやすい方式でもあります。さらに大風量を確保できるので、大きな空間に適した方式でもあります。

第2種換気

給気のみを機械(送風機など)で行い、排気は自然換気とする方式です。強制的に外気を取り入れることで、室内の空気を押し出し、室内を正圧に保つことができます。一般的に住宅では採用されにくい方式ではありますが、ボイラー室などで強制的に給気できるように、この換気方式を採用することがあります。

第3種換気

給気は自然換気とし、排気のみ機械(送風機など)で行う方式です。第2種換気とは逆の方式であり、強制的に空気を排出することで室内を負圧に保ち、外気を給気口から取り入れます。一般的には局所換気で採用される方式ですが、住宅ではトイレ・キッチン・浴室に送風機を付けて排気し、住宅の各所にバランスよく給気口を取り付けることで、住宅全体で換気することもできます。

機械換気の種類 ※1

一般に、給気・排気共機械で行う第1種換気は、建物の各部屋で給排気が完結するので、建物の気密性能はそれほど重要とされませんが、給気・排気のどちらかが自然換気となる第2種換気・第3種換気の場合は、建物の気密性能が低いと給気量・排気量のバランスが崩れてしまうので、計画の際には気密性能の確保が前提となります。

換気システム

建物の気密性能向上に伴い、化学物質敏感症(シックハウス症候群)が問題視され、それの対策として、2003年7月改正の建築基準法より、住宅の居室には換気回数0.5回/時以上の換気量を持つ換気設備を設置することを義務付けられました。(住宅以外の居室は0.3回/時以上の換気量が必要)これにより常時(24時間)換気することが求められるようになり、現代の建物では24時間換気システムを導入することが必須となっています。ただし24時間換気の方式は第1種~第3種のどの換気方式を採用しても良いことになっていますので、様々な換気システムが開発されています。

排気用換気扇による全般換気

トイレ、浴室、キッチンの排気用換気扇を24時間運転し、居室(リビングダイニング、寝室など)の給気口から自然給気で外気を導入するシステムです。(第3種換気)

排気用換気扇(ダクト用) ※2
自然給気口 ※3

全熱交換器を用いた全般換気

住宅全体を1つの機械で換気するが、給気と排気の温度差がある場合、排気をそのまま屋外に出すと、せっかくエアコンで温めた(冷やした)空気が逃げてしまうのでエネルギーロスにつながります。そこで、給気と排気の熱を交換してから、換気するシステムが開発されました。これによりエアコンで温めた(冷やした)熱は給気で戻るので省エネな換気が可能になります。(第1種換気)

排気ファンによる換気のデメリット ※4
全熱交換器による換気の模式図 ※4
全熱交換器(家庭用天井隠ぺいタイプ)※2

ただし、いずれのシステムでもきちんとした換気計画を立てる必要があり、そこを怠ると換気の悪い箇所ができてしまいます。具体的には下記の通りです。
●給気口と排気口が近いとショートサーキット(給気と排気の通り道が近いために狭い範囲で空気が循環する現象)が起こる
●給気口が家具などで塞がれる位置にあると、給気/排気のバランスが崩れる
●必要な風量に対して給気口が小さいと、換気量が確保できず、サッシから音鳴りしたり、ドアの開閉に支障がでたりする。
●トイレや浴室の入口にアンダーカット(空気の入れるための隙間)を入れないと、換気扇が正常に機能しない。

換気計画の模式図 ※1

上記の不具合が起こらないように、きちんと換気計画を立てて、きちんと換気量を確保することも設備設計の仕事です。

※1 建築設備パーフェクトマニュアル 集合住宅・オフィス編(エクスナレッジムック)より引用
※2 三菱電機「暮らしと設備」HP(https://www.mitsubishielectric.co.jp/ldg/ja/index.html)より引用
※3 パナソニック エコシステムズ ベンテック(株)HP(https://panasonic.co.jp/hvac/pesv/)より引用
※4 ダイキンプロショップHP(https://proshop.ac.daikin.co.jp/business/)より引用

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