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TENET

クリストファー・ノーランの新作『TENET テネット』を観ました。

あらすじ:名もなき男(ジョン・デヴィッド・ワシントン)は第三次世界大戦を阻止するべく、『時間の逆行』を操る敵と戦う。

あらすじこれで合ってる?

『時間の逆行』の仕組みがよく理解できていないし、(エントロピーとかアルゴリズムとかには一定の距離を置いているので…)
そういうのはそういうのが好きな方々の考察がたくさんありますから、そちらを読んでもらって…あまり本筋に関係ない話をします。でもネタバレ気になる人は観てからお読みください。

まあそういう仕組み云々で頭は使うのだけど、クリストファー・ノーランの作品の中で一番気楽に観られる気がしました。
見ていて「今回はスパイものが撮りたかったんだな」と素直に思った。

スパイ映画といっても、どちらかといえば007じゃなくてミッション:インポッシブルの方が近い。
『ミッション:インポッシブル フォールアウト』の、イーサン・ハントの上空8000mからパラシュート着陸よろしく、「それもっと簡単な方法があるのでは?でもスパイ映画にそんなこと言うのは野暮…」というような、テネットでも同じような気持ちになるシーンがいくつか見られました。
見せ場でもあるからどんどんやってくれて良いんだけど。
あと、主人公の最後のセリフにちょっと注目…

主人公の名もなき男‪について。
佇まいが飄々と深刻の絶妙なバランスなのが良かった。ジョン・デヴィッド・ワシントン、目が死んでるような時あるけど冷たくないのが最高。
名もなき男の心情が過剰に表現されず、思う相手や強い希望がないところも(これが逆に嫌な人もいそうだけど)良いと思いました。

‪とはいえ、妻の亡霊に囚われた男(『インセプション』のコブ)や娘と人類を救うために宇宙へ繰り出す男(『インターステラー』のクーパー)ではないので、胸に迫るストーリーではない。あくまで軽い。あんなに贅沢で壮大な映画のルックスなのにそこが良い。‬
スパイ映画としてはこのくらい湿っぽくなくてもいいんじゃないかなー。‪
ストーリーではない部分で、こういう映画つくりたかったんだな、って随所に感じられて観てて楽しくなりました。それは全ノーラン作品に言えることか。‬

多分‪ですけど、感情面で成功してる作品は脚本に弟ジョナサン・ノーランが入ってる場合が多いと思う。ジョナサン・ノーランといえば製作のドラマ『ウエスト・ワールド』はすごいです。人工知能の感情が。

兄ノーランに感情面であまり期待をしていないのかもしれない。‪(褒めてない…でもそこが良いところでもあったりする…)


映像の話をします。
有色人種がほぼ主人公のみの構成って、撮影をもっと考えないといけないのでは…と思いました。
これは以前から言われていることですが、ほとんどのハリウッド映画が、明度が高い肌の色を映す前提で撮影されている。
今回も、有色人種の肌の色は明度の関係性で負けてしまう時が多いと感じました。
「有色人種だから(明度の問題として)しょうがないじゃん」と思うかもしれないけど、『ムーンライト』や『ビール・ストリートの恋人たち』などのめちゃめちゃ設計された美しい画面を観ると、そうとも言えないです。(この二本ともにほぼ登場人物が黒人のみだからできる演出も多いと思いますが…)
参考↓

『テネット』で映像が良いと思ったのは、イラストにも描いた赤と青の部屋のシーン。
(赤と青がそれぞれ意味することは…ぜひ観てください。)
主人公は赤い部屋にいて、窓越しに青い部屋を見るから顔が赤と青が混ざる。他の登場人物もいるけど、このシーンは主人公の肌の色がすごく生かされてる撮影だと思いました。こういう印象を受けるシーンがもっとあれば良かったと思う。
撮影監督の腕だけではどうにもならないかもしれなくて、「白人多数の中に黒人(主人公)」という構成をより生かせる演出がもっとあれば良かった…のか?
アンドリュー・ワイエスくらい劇的な明暗のシーンとか見たかった〜!(私の個人的な趣味)
ちなみに今回の撮影監督は私の一番の推し撮影監督ホイテ・ヴァン・ホイテマさんです!撮影した『ダンケルク』や『裏切りのサーカス』など、とっても画面が好きなのです。彼ならできないことはないはず!


最後に映画館の話をします。
まだまだ不安はありますが、久しぶりに大作映画が公開されて、それを観に来る人達がいるという当たり前の光景がなんだか久しぶりすぎてちょっと感動しました。
左右の座席間隔空けは継続して欲しいけど、映画館の経営としては深刻でしょうし、どちらにせよしっかり対策してこれからも映画館に通いたいものです。

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