父と遊戯王

 昨夜は眠れなかったのでYouTubeで「遊戯王」の対戦動画を見ていた。二人の男性がテンションを上げながらやっている姿を見て、面白さと懐かしさが一度にやってきた。昔の自分を思い出した。

 小学生のころ、近所の友だちと集まって、ろくにルールも知らず遊戯王カードで遊んでいた。モンスターの攻撃力の数値を勝手に「400000000」などとマジックペンで書き込んではみんなで笑っていた。今では数万円の価値があるカードもボロボロになるまで使っていた。

 父が本屋の店長だったころ、その店では遊戯王カードを取り扱っていたためか、何かあるごとに兄とぼくに何パックか買ってきてくれた。1パック5枚入りで、レアカードが入っているかドキドキしながら1枚ずつめくっていった。運よくレアカードを引き当てたときは家中を走り回るほど嬉しかった。

 ある時、「パッケージの裏のある部分に太い(細い、だったかも)黒線が入っているのはレアカード入りの可能性が高い」という噂が出回ったことがある。半信半疑だったが、自分で買うときはそこを注視して買うようにしていた。ある日曜の午後、父のもとへ弁当を届けるために母と兄とぼくとで本屋に出かけた。スタッフルームには店長である父が一人いた。机の上には遊戯王パックがいくつもあった。父はレアカード入りのパックがどれなのかを調べていたらしい。子供ながらに「仕事しなくていいの?」と思った。べつに父自身が遊戯王に熱中していたわけではない。ただ、父が仕事から帰ってくると、「これはレアカードかもしれないぞ」と兄とぼくに1パックずつくれるのだ。あの噂をもっとも信じていたのは父だったのかもしれない。

 この先、どんどんと年を取っていくなかで、あの頃の父はいったいどんな気持ちだったのかなあと想いをはせることがある。
 あと20年たてばそれがわかるのかな。