見出し画像

続 3Dプリンターの家 住宅ローンから世界は脱却できるか?

写真は大林組プレスリリースからhttps://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20220610_1.html


先日、3Dプリンター住宅についてブログで書いたが、おぉ、もう実用化に限りなく近いのだなぁ(近いと言えるのか?)というのを発見した。

国内初の国土交通大臣認定を取得した構造形式を用いた3Dプリンターによる建屋の建設に着手 https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20220610_1.html

先日、セレンディックスという会社の3Dプリント住宅について記載し、さらに国内にも3Dプリント住宅を研究開発している企業が多くあるらしいが、これは大林組に一歩先を越された感じである。

基本的に建築確認申請を前提とした構造設計には一般的に3種類のルートがある(もう長い事昔の話なので、間違っていたら申し訳ない、しかし、だいたいこんな感じである)


ルート1 小規模建築物 構造計算必要なし

ルート2 中規模建築物 許容応力度計算(又の名を一時設計)小規模な地震に対してダメージのない様に(許容応力度以下に)計算して部材設計すること

ルート3 中・大規模建築物 許容応力度計算(一時設計)+保有水平耐力計算・限界耐力計算(又の名を二次設計)を行い、大地震に対して損傷を許容しながらも倒壊することのない様に(許容応力度を超え、破断強度以下の非線形部分)を計算して部材設計すること


大まかに3つのルートにより、世の中の大半の建築物は確認申請をパスしている。

前回の「3Dプリンターの家 住宅ローンから世界は脱却できるか?」で触れた通り、無筋コンクリート構造に対する構造計算の方法がない。

ざっくりとコンクリートは圧縮に対して1平方ミリあたり21N(ざっくり2.1キロ、1㎠あたり210kg、Fc21)に耐えられるが、引っ張りに対しては無視できるほど弱い。というかコンクリートの引っ張りに対して現行の建築基準法では計算法がない。計算できない。だから、コンクリート構造はコンクリート単体では存在せず、鉄筋を入れた鉄筋コンクリート構造(RC)または鉄骨鉄筋コンクリート構造(SRC)でしか存在できない。

 なぜなら鉄はコンクリートと真逆の性能があり、圧縮には弱く引っ張りに強い。


(実際は弱い訳ではなく、通常は鉄骨とか鉄筋という形で使用するため、圧縮するとグニャっと折れてしまう座屈現象があるため、鉄の性能として圧縮に弱いわけではないが、引っ張りに対して非常に優れた性能を示すためー通常の建築用の鉄骨で1平方ミリあたり400Nの引っ張りに耐えることができるー)


というわけで、コンクリートを使った構造にする場合(基礎部分を除いて)、圧縮に強いコンクリート(さらに圧縮に対しては計算可能)と引っ張りに強い鉄筋又は鉄骨(引っ張りに対しては計算可能、中高層建築物には手鉄骨鉄筋コンクリートを採用する場合もある)を組み合わせて鉄筋コンクリート(または鉄骨鉄筋コンクリート)というものしか採用できない。そこがネックとなって、3Dプリンターの普及が進まないのだ。

つまり、構造計算できないし、建築基準法に規定がないから確認申請が下りない。

という理由である。


しかし、実は、上記の構造設計3ルートの他に、第4のルートが存在する。

それが、

ルート4 国土交通大臣認定ルート

  • 超高層建築物(確か超高層建築物の定義は軒高33メートルだったか。。。)

  • 建築基準法の規定にないもの

  • その他、地区町村の建築主事では扱えない高度な構造計算を行なったもの

に対して、実物大振動実験、実物大風洞実験、時刻暦応答解析(実際の地震動波を使ったコンピューターシュミレーション)等を行い、高度に安全性を確認できるものとして国土交通大臣が認定するという方法がある。

その方法を使えば、無筋コンクリート構造でも建築確認申請をパスすることは可能である。


この大臣認定ルートを使って確認申請をクリアーした3Dプリント建築物が大林組の開発したものらしい。

さすがは大手ゼネコンだなぁ、研究部門もデカいだろうし、博士号取得者の研究員がわんさかいるんだろうなぁと。

3Dプリンターに最適なコンクリートまで開発してしまったらしい。(3Dプリンター用特殊モルタル、超高強度繊維補強コンクリート)

なるほどねぇ、コンクリートに超高強度繊維(何なのかまでは記載なし)を混ぜ込むことで、鉄筋の代わりにして引っ張り強度を出しているようだ。圧縮強度180N/mm²、引張強度8.8N/mm²、曲げ強度32.6N/mm²。


これは、大林組が国内の3Dプリンター住宅開発では、ぶっちぎりにリードしている感じですね。

ただ、大手ゼネコンが仕掛ける3Dプリンター住宅は安くないだろうなぁという気がします。

個人的には、セレンディックスの理念に期待。


何度も繰り返しになるが、日本でこんなに3D住宅が普及しないのは、無筋コンクリートが建築基準法上、構造計算が不可能であり、それを克服するためには、超難関(ほぼ大手ゼネコンしかできない)の大臣認定ルートを通るしかないという無理ゲー感(昔ファミコンであった魔界村くらい無理ゲー)があるからである。

アメリカやオランダでは、地震や台風がなくおそらく建築関係の法律も緩いのだろう。まぁヨーロッパではほぼ無筋に近いコンクリートブロック造や、組積造、レンガ構造などがあるから、3Dプリンターで印刷した住宅というのも、おそらく法的にも何の問題もないのだろう。

住宅ローンから世界は脱却できるか?世界はできる。日本は?どうだろう?

法改正を待つしかないのか?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?