子育ては旅のようなもの
子どもの頃に椎名誠さんの岳物語を読んだ。
自分が生まれるちょっと前に書かれた岳物語の主人公の岳が生きる時代は、私が小学校を過ごした時代と10年くらいのズレがあったけれど、なんとなく反発したい思春期の岳の気持ちなんかには共感を覚えていたし、当時、釣りを始めたところだったので、釣りにのめり込んでいく岳に感情移入したのを覚えている。
それから20年たった2016年、息子が生まれた。
生まれてすぐのタイミングから育休を取っていた私は、妻とともに生まれてすぐの息子の泣き声に翻弄されながら、ただ一つ一つの彼の行動や成長に感動を覚えながら日々を過ごしていた。
そういった生活をひと月ほど続けた頃、少しづつ生活リズムが作れてきたので読書でもしようと、本を探していた時に目に止まったのが、この記事のタイトルが帯に書かれた布施太朗さんの本。
「父親(オトン)が子どもとがっつり遊べる時期はそう何年もない。」
その帯は椎名誠さんが書いていて、こう続いている。
とくに父親と息子という男同士は、目的地がはっきりしないわりには時間が限定された心の冒険旅。
熱く深く互いに理解しあった頃に、父親は息子の背中をドシンと押して少年の旅を見送るしかない。
男の子の父親になるということ
母親にとって、男の子を育てるというのはなかなかに難しいらしい。
その証拠…というほどのことではないが、男の子の育て方を書いた育児本は本屋に行けばいやというほど並んでいる。
実際、性差による発達の仕方の違いもあるし、なかなか理解できない行動をするようだ。
それに比べると、父親の方はなんとなく気持ちが分かることも多いらしく、意味のわからない行動をすることにも(なんとなくの実感として)理解が及ぶと言われている。
それが本当かどうかは、4歳になった息子を見ていてもよく分からない。
正直、気持ちが分かるなんてことはないし、毎日、「なぜ?!」のオンパレードである。
ただ、私の場合、姉妹もいなかったし、女の子を育てるよりは、色々と扱いの面で気をつけないといけないことを覚える必要がなかった分、少し子育てに入るハードルは低かったのだろうとは思う。
とっても当たり前のことだけれど、母には母の、父には父の子どもとの接し方がある。
別に、父という役割の人全てに同じ行動様式があるわけではなくて、その家族の中で母と父が別の目線で子どもと接しているということだ。
この本は、布施さんが父として子育てしながら感じたことがとてもリアルに記述されている。
そして父親としてのエゴが存分に発揮されている。
憧れるのはカヌーで川下り
布施さん自身が「オトンのやりたかったことに息子らを付き合わせた」と書いている通り、本編の各エピソードを読むと、布施さんのやりたいことが爆発していることがよく分かるのだが、その中でも「分かるわぁ」と、一番共感したのは父子でのカヌー川下りである。
本の中でオトンと息子2人は、四万十川をカヌーで下る。
釣りをしたり、河原にテントを張って焚火をしたり、ダッチオーブンでうまい飯を作ったり(食べたり)、大人は酒を飲んだり。
あまり直接的な描写はないけれど、おそらく子どもたちの変化を目の前でオトンは感じているだろうなぁと思う。
その変化を肴に、夜は焚火を囲んで、酒を飲みながらもの想いにふけるなんて、とても贅沢で、良いではないかと思う。
息子と一緒にやってみたい。
このエピソードを見て、そういう想いと共に岳物語のことを思い出した。
そして、懐かしさからKindleで即購入して再読した。
(なんて便利な時代だろうか。。)
主人公の岳は、十勝川なんかをカヌーで下るわけなのだけれど、「オトンと」を読んでから読むと、昔のように岳に感情移入する自分はそこにはいなくて、このカヌーの経験を通じて親離れしていく岳の様子が親目線で入ってくる。
岳物語は、椎名誠さんが父親として書いているわけで、親目線が入っていないわけはないのだけれど、そこに昔は気づかずに読んでいたことに、今更ながらに気づいた。
人は立場が変わると、感じるものが変わるものなんだなぁ。
すごく当たり前のことだけれど、そういうことをこの「オトンと」をきっかけに再確認したのであった。
自分のオトンとしての旬はこれから
筆者の布施さんは、この本のタイトル通り、オトンが子どもとがっつり遊べる時期はそう何年もなく、だいたい幼稚園の年長さん頃から小学校の3、4年生くらいまでだと書いている。
息子は現在、保育園で年少クラスの学年。
これから始まる短いワクワク期間を父親として、大いに楽しみたい。
その行き着く先は見えないけれど、一緒に楽しんだ先にはきっと、息子が旅立っていく大きな海が広がっているに違いない。
私もそこから息子とは別の航路で、その海を進んでいければよいなと思う。
息子は、親に新しい世界を見せてくれる、旅の道先案内人でもある。
…と、なんとなく格好をつけて〆たのだけれど、この記事を書いたのは、How to系の育児本よりも読んでいて楽しく、父親として今から始まる子育てが楽しみだなと思える本だと思い、そのことを伝えたかったからです。
ワクワクできる子育て、みんなでやっていきましょう!
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