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「愛してる」を、知りたいのです

このセリフが出てくるアニメ「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」は、「武器」として戦場で戦うことしか知らなかった少女兵が代筆業を通じてその言葉の意味を探していく愛の物語である。人の想いを少しずつ理解していく中で、自分がこれまで多くの愛を奪ってきたことに気づき苦しむ。しかし、色々な人との出会いに支えられながら、彼女は一人の人間として自立していくのだ。今回は、例の放火事件で亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、このアニメを見た所感を物語の軸である手紙形式で述べたい。

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京都アニメーションの皆様

かつては人の想いをつなぐ大事な手段であったはずの「手紙」も、今では若い世代を中心に書く習慣が失われています。それだけではありません。文字が画一化され、「手紙」に現れていた“その人らしさ”もまた失われています。このアニメを見て、私たちが日頃からどれだけ「言葉」そしてそれを「伝えること」を軽んじているかを改めて考えさせられました。この物語の中とは違い、私たちはいつでもどこでも自分で言葉を相手に届けることができます。インターネットがない時代からすれば確かにそれは便利なことですが、その便利さに代わって支払っている大きな代償を、私たちは今一度認識する必要があるのかもしれません。

自動手記人形(通称:ドール)が人に代わって「手紙」を書くという設定も現代社会に通じていて面白かったです。「良きドールとは、人が話している言葉の中から、伝えたい本当の心をすくい上げるもの」というセリフがありましたが、世にある全ての文字コンテンツに言えることだと思いました。個人・企業・政府あるいは情報そのもの、相手が誰であっても彼らの真意を汲み取り、価値を最大化した上でそれを伝えること。文字に携わる身として、基本であり大切なことを思い出すとともに、広義での“代筆屋”は今後もなくならないと確信しました。

他にも、ヴァイオレットが代筆を担当する旦那様それぞれに物語があり、語りたいことは尽きませんが、このあたりで留めておきます。映像、音楽、物語どれをとっても素晴らしく、このような日本を代表する作品が世界中の多くの人に触れられることを心より願っています。そして、あのような悲劇が起きた後ではありますが、これからも最高の作品を世に発信し続けてください。一ファンとして心待ちにしております。
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最後に、言葉に並んで、今まさにデジタル化されようとしているのが「お金」である。それによって、絶対的価値と信じられてきたものが相対的になるという意味では、社会を豊かにする部分は大きいのかもしれない。しかし、お金にかかるコストが軽減することで支払う代償もあるということを私たちは心に留めなければならない。それが何であるかを現段階で言うことはできないが、その流れの最前線に立つ業界のドールとして、私はこれからも色々な想いを伝えていく。



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