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「運動会」娘が負けた日:徒競走は男女混合であるべきか

平成18年6月 文部科学省「学校における男女の扱い等に関する調査」

文部科学省が平成18年に行った調査である。学校教育活動において男女の扱い等について集めた様々な事例と意見をまとめたもの。ここ10年でどちらの方向に動いたか、それとも変化がないかは不明だが、非常に興味深い。

調査事項は以下の通り。
・ キャンプや林間学校、修学旅行などの宿泊を伴う活動の状況
・ 内科検診などの身体検査の状況
・ 水泳時や体育時における着替えの状況
・ 運動会や体育祭等での騎馬戦や徒競走の状況
・ 児童生徒の名前を呼ぶときの呼称の状況
・ 桃の節句や端午の節句といった行事の状況
・ 学校での男女の扱い等に関する保護者等からの苦情や問い合わせの状況

昨今話題にあがる「あだ名禁止ルール」に繋がる「~さん」調査、「モンペ」調査?(ではないとは思うが)、そして私が最も気になる「運動会や体育祭等での騎馬戦や徒競走の状況」。これよ、これ!!!

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【運動会や体育祭等での徒競走の状況】

運動会や体育祭等での徒競走を男女混合で行っている学校数

<小学校>
1年生   10,835(48.78%)
2年生   10,542(47.46%)
3年生    9,293 (41.84%)
4年生    8,415 (37.88%)
5年生    7,570 (34.08%)
6年生    7,368 (33.17%)

(状況や理由)
○ 小規模校のため、学年の人数が少ない、または男女の人数のバランスが悪い。
○ 走力別に行っているので、結果的に男女混合となる。
○ 体力差がなく、別に分ける必要がないから。
○ 男女平等の意識から。

<中学校>
1年生   113(1.12%)
2年生   117(1.16%)
3年生   116(1.15%)

(状況や理由)
○ 小規模校のため、学年の人数が少ない、または男女の人数のバランスが悪い。
○ 走力別に行っているので、結果的に男女混合となる。
○ 他の行事も男女一緒だから。

<高等学校>
1年生   10(0.24%)
2年生     9(0.21%)
3年生     9(0.21%)
4年生     0(0%)

(状況や理由)
○ 女子が少ないため、女子の単独種目が成り立たないので、希望者が参加。 などであった。
※なぜ4年生まで?高専?だったら5年生もあるはず…(不明)

<中等教育学校> 0校 ※まだ中高一貫校は出始めの頃だから調査数がないのかな。
<盲・聾・養護学校>
(小学部)
1年生   347(43.43%)
2年生   348(43.55%)
3年生   350(43.80%)
4年生   344(43.05%)
5年生   344(43.05%)
6年生   338(42.62%)

(中学部)
1年生   264(33.29%)
2年生   260(32.79%)
3年生   264(36.21%)

(高等部)
1年生   176(24.14%)
2年生   173(23.73%)
3年生   172(23.59%)

(盲・聾・養護学校の状況や理由)
○ 障害の程度に応じて行っている、または学年の人数が少ないため。

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先日の運動会、娘が初めて「足」で負けた…

いや、正しく言えば2回目。小2の時に出た区の陸上競技大会。女子100メートル走。こちらは「100メートルなんてまだ走ったことがないから出てみようか!」ぐらいのノリで出た自主的参加の大会だったので、クラブチーム所属の選手が多い区大会でまさか2位になれるとは思ってもみなかった中での「棚ぼた」。それでも急に欲がでた我々両親は「もうちょっとで(お嬢様学校に通う)1位の子に勝てたのに!」とグチグチ…すると娘は「よし、絶対来年(小3)で勝ってやる!」と意気込んでいた。ま、結局奄美行きが決まっていたし、コロナで大会自体がそれどころじゃなかったけど…

そんな娘の目の前に突如として現れたライバルM君。南米チリからの帰国子女男子。噂によればイケメン、頭脳明晰、明るく活発…そして途轍もなく足が速い!娘はその「天が二物も三物も与えた男子」と同じクラスに。

迎えた4月中旬。運動会の練習がいよいよ始まり、まずは個人80メートル走のタイムを計ることに。2クラス合同で計測会をしたわけだが、娘はたまたま「元」ライバルA、娘を抜かせなくて悔しがっていた男子と同じ組み合わせ。1回目はほぼ同着、2回目は娘が身体一人分の差で勝ったらしい。

やはり徒競走は花形競技。外野は「やっぱりあいつは(東京に)帰って来ても速いな~」とか、「いや、Aとほとんど変わらないから本番でどうだろうか」などと騒ぐ中、最大ライバルM君は別の組み合わせの中で断トツの走りを見せ、タイム的には娘と元ライバルA君と同じ13秒台でありながらも、娘とコンマ3秒差で学年1位のタイムを出した!そして娘に近寄り「俺、お前と走りたい!」と堂々と宣言。なんと正直で清々しい!それでこそ現代版出木杉君…やっぱり天は三物も四物も与えるのか…

娘は帰宅後私たちに詰め寄られてすべての結果を報告。悔しい!「口」と「足」だけは学年一位だったはずなのに負ける時がこんなに早く来るなんて!きっとスタートが悪い(フライングするか、それにビビッて一歩遅くなる)、最後までしっかり走り抜いていない(悪い癖)かどちらかが原因だろうから、練習すればどうにかなるんじゃないか…と頭を悩ませた。

そして悔しがり屋の本人も、その後数回あった徒競走やリレーの練習後は、その都度「今日は(手で)これぐらいの差」「本番で本気だして絶対勝つ!」と言い続け、我が家では夕食時にライバルM君を呼び捨てにして、どうやったら勝てるかの作戦会議。しかも娘は本人に「打倒Mだ!」と宣言して帰宅し、「ねえねえ、打倒ってどういう意味?」と私に聞く始末(アホすぎる)。少しでも速くなるならとランニングシューズも新調し、陸上経験がある息子のパパ友にスタートに絞ってコツを教えてもらい、無料のかけっこ教室にまで出て本番に備えた。

「高学年リレー」

個人の徒競走が6月に回されるため、ライバルM君との対決はとりあえず「高学年リレー」しかない。しかもリレーとなると判断が難しいのだが…

お互い負けず嫌い(そして恐らく彼も目立ちたがり)の二人は、4チームの中で共にスターターを希望。お陰で勝敗は否が応でも分かる。せっかくの朝練も雨のために体育館でのバトン練習で終わってしまったため、本当に当日蓋を開けないとわからない状態に追い込まれた二人の勝負の行方だった。

そして当日…

先の調査を見て欲しい。小学3年生まで全国41.84%の学校が男女混合で徒競走をおこなうなか、小学4年生からは急にガクンと37.88%に落ち込む。やはり全国の小学校の先生方は現実を知っているのだ。そう、娘ももれなく「女子」だった。陸上を専門にしているわけでもない。体格・体力・瞬発力…いろいろな意味で「普通の平均的体格の女子」である彼女は、確かに運動神経だけはいい。でもたとえ普段男の子たちとばかり遊んでいて「暴力女」とか「金髪鬼ババア」とかあだ名をつけられる男勝りなキャラだとしても、あの「身体がデカいMに」勝つことは物理的に不利!!!なのだ。

当日初めてM君を見た我々夫婦はひっくり返りそうになった。娘と同じ背丈の元ライバルAを想像していたのに、Mはデカい。体格ががっしりしているし、出来上がりつつある!しかもチリでは自分だけが特別足が速いというわけでもない環境で走り回っていたらしい(みんなサッカーやっているからか?)。そりゃないよ~、反則だよ~、歩幅違うじゃん、バネも違うじゃん!と、どこかに電話をして苦情を入れたいぐらいだったけど、そんな暇もなくよーいスタート。

明らかな負けだった。コンマ3秒どころか、高学年リレーは校庭一周100メートルだから見た感じで「2馬身」近く離された箇所もあった。それでも娘は教わった通りにスタートを切ってぐんぐん加速し、最後まで手を抜かずに次の走者にバトンを渡した。3位の男子と4位の6年生女子をぶっちぎって。(チームごと自由に走る順を編成したらしい…でも6年生を持ってくるとは)

そして気づいた。あの「あー言えばこー言う」天才屁理屈娘が、今回は毎回練習で負けて帰っても、我々鬼夫婦に「また負けたの!」と言われても、一度も「だってMはデカいから勝てないよ…」という弱気なことを言わなかったことに。その事実、姿勢はそれだけで賞賛に値するのではないかと。

それでも私は手放しで褒めることはできない。やっぱり勝って欲しかった。みんなが「女子で一番ならいいじゃん!」と言ってくれれば言ってくれるほど、「2位じゃダメなんですか?」とR舫になればなるほど、「2位じゃダメなの!女子だからなんて言い訳はダメなの!」と言ってしまう。なぜなら最初から「壁」を設けたくないから。ミスチルは「♪高ければ高い壁の方が~登った時気持ちいいもんな~♫」と歌うけど、「壁」は登らないで済むなら登らないでおきたい笑。避けられない壁はぶち破るか登ってでも超えなければならない時が嫌でもあるけど、自分で決めたこと(勝つということ)に、壁(言い訳)を作ってはいけない。相手が強いということ自体が彼女にとっては壁だから同じ意味なのだろうけど、娘が今回すごかったことはその「壁」は登れなかったけど、最初に言い訳として設けなかったこと。絶対当日は勝ってやる!と自分に言い聞かせ、他人に宣言し、勝つことに賭けて自らスターターを選んだことだ。

私は筋金入りフェミニストでも何でもないが、「性差別」は大嫌いだし許せない。特に政治家のバカ差別発言。そして「男子も女子も完全平等だ!」と言うつもりもないから、「区別」は必要だと思う。ま、これは自分の体力に自信がなくて(持病等もあり)、男女の体力の違いや性質の違いを嫌でも思い知らされるからもある。健康にバリバリ働ける女性が羨ましい部分も。

子どもたちも4年生から体育の授業の前後は同じ教室で着替えをしなくなったそうだ。それは正しい区別だろう。むしろ諸外国と比較したら遅いぐらいなはず。男女の収入格差や、職業に性差を持ち込む時代は終わっている(べき)だし、いわゆる"Glass Ceiling"のようなものはぶち破って欲しいし、Quota制を無理やりでも導入して、北欧のように誰もが心から「だって国民の半分は女性じゃないですか?」と言える日本社会にしたい。議員席を少なくと4割は女性に。我が家が住む区議会議員さんでいつもトップ当選をする方は素敵な同年代の女性だし、こんな大都会でも困っている人のためにすぐに駆け付けてくれるフットワークがある方。そういう女性が活躍できる社会が理想。

小6まで男女混合の徒競走制をとる我が娘の小学校。小1の最初の運動会で娘が男子3人とレースをすると知った時は「先生の間違い?嫌がらせ?」とまで疑ったが笑、断トツで勝利した娘を見てすぐに「なんて平等で良い学校なんだろう!」と再評価した。なんと調子が良すぎる親バカ。

ただいよいよ「女子の一位」に甘んじなければいけない時が来た。6月に行われる個別の徒競走でも記録上1位のM君、娘、元ライバルA(しかも僅差)プラスもう1名で競うことになるだろうが、あの体格に挑んでコンマ3秒(実際は手で計測する誤差でもっと差がありそう)の壁を破ることはできないだろう。しかしそれでもあの子はまだ言うだろう…「打倒Mよ!」と。「本番に勝ちたい気持ちが強い方が勝つんでしょ?」と。高校野球児のような根性論をかざして。

驚くことに、上記の調査によれば全国の1%強の中学校では「走力別に行っているので」「他の行事も男女一緒だから」という理由で男女混合レースをしていることになる。そんなチャレンジングな学校を探して、行ってみようか?負けず嫌いの娘よ。

(※追記)あまりにこの1か月、まだ会ったこともなかった幼気な出木杉君であるM君を呼び捨てにし、敵視し、散々食卓で話題にした。リレー戦終了後、M君のご両親を探し出し、自己紹介。勝手に敵視していたことを謝罪。今度是非一緒に遊ばせて走りの練習をしましょう!と約束。噂によればM君のお父さんは陸上選手らしい。これをウチの旦那は「敵の懐に入り込む作戦」と呼び、見事我々はそれに成功。もしかするとこの作戦次第で6月の勝負の行方も変わってくるかもしれない爆!!!

白のラルフローレン開襟シャツを華麗に着こなす爽やかなパパと、素敵な淡い色のカーディガンを着て優しく微笑むママという組み合わせのキラキラご夫婦…「もしかして負けたのは親たちか?」と肩を落として帰ったセコイ夫と私だったのは言うまでもない。

KYHR/SLA




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