【読書⑤】~『最新科学が教える!キャッチャーの技術』を読んで~
昨年の春ごろに読んだ書籍です。
筑波大学硬式野球部監督の川村卓准教授が著した書籍です。
このシリーズは、バッティングとピッチングのシリーズが出版されていて、すでに読んでいました。
日ごろから大学で教授されていて、野球を研究されている方が、基本的な技術や知識、練習方法、トレーニングメニューなどを紹介されているため、非常にわかりやすく読みやすい書籍です。
今回は、キャッチャーがテーマの書籍ですが、これまでキャッチャーの技術論に関する書籍は、元プロ野球選手がそれぞれの技術論や配球論(経験論)をまとめたような書籍が多かったように感じます。
本書は、そのような書籍とは対照的で、ある選手の経験論ではなく、誰にでも役に立つ一般的なキャッチャーの“教科書”のような書籍です。
ぜひ、高校球児の皆さんや、野球の指導にあたっている方々に、読んでいただきたい書籍です。
さて、本書を読み、私個人として非常に面白く感じたのは、数多くの興味深いデータが多く紹介されていた点です。
今回は、その興味深かったデータについて、紹介していこうと思います。
データの紹介
カウント別打率
いわゆるバッティングカウントの打率が高いです。
これは、感覚通りだなというデータです。
攻撃時はバッティングカウントでしっかりと狙い球をとらえたいところですし、守備時は他のカウントよりも打率が高いことをしっかり念頭に置いて、状況にもよりますが、丁寧に攻めたいところです。
バント・スクイズ成功率
バント・スクイズ成功率も、ある程度感覚通りです。
2ストライクからのバント成功率が大きく下がるのは、やはりスリーバント失敗のプレッシャーがかかるからでしょう。
攻撃側は、ストライクカウントが若いプレッシャーのかかならいうちにしっかりと決めたいところです。
守備側は、ファールや見逃しでストライクカウントを稼ぎ、2ストライクまで持ち込みたいところです。
球種別のバント成功率
カーブはバントしやすく、スライダーは少しバントしにくいということがわかります。
守備側は、スライダーをうまく使って攻めたいところです。
バントによる得点率
攻撃側は、得点率を上げることを考えると、1死で3塁に進めたいところです。
逆に守備時は、1死で3塁に進められないように、バントミスが起きるような配球をしたいところです。
近年よく言われるようになってきましたが、バントで2塁に進めるよりも打ったほうが得点率が高いため、走者1塁時に相手がバントをしてきたらラッキーだという考え方もあります。
「1死2塁の得点率は、0死1・2塁と比べると約15%得点率が低い」ことを考えると、守備時は“バントを防ぐ”という発想以上に、“打者は確実にアウトにする”ことをまず最優先に考えることが大切でしょう。
見逃しストライクの特徴
このデータからは、左投手(サウスポー)の重要性が見えてくると思います。
右投手は、変化球もコントロールよく投げる力が必要です。
また、右・左投手ともに、ストレートを磨くことが大事なこともわかります。
空振りストライクの特徴
前述と同様まずはストレートをしっかり磨き、そしてそれに加えて、落ちるボールとスライダーの2種類を最低限でも身に付けたい、ということが見えてきます。
出塁と失点
先頭打者を抑えることはもちろん大事ですが、逆の考え方をすれば60%の確率で失点せずにイニングを終えることができるということです。
先頭打者を抑えられればそれがベストですが、それ以上に連続出塁をされないように注意を払うことが大切です。
配球する際には、バッティングカウント、特に初球に、安易に直球で入らないことです。
逆に攻撃時には、「初球」「直球」に狙いを定めて、連続出塁を狙っていきたいところです。
ピンチの後にチャンスあり
試合中におけるチーム全体のメンタル面の浮き沈みがしっかりとデータとして現れているので、面白いなと感じます。
試合で劣勢のとき、相手に得点をされたときには、「この後にチャンスがくる」「1試合に数回はチャンスが絶対にくる」という気持ちをもって、あきらめずに食い下がっていきたいものです。
また、リード時や、自チームが得点を入れた際には、「この後もピンチはある」「相手にも数回チャンスがまだくる」「まだ勝ったわけではない」「勝負はこれから」と、気を引き締めて臨みたいものです。
このデータを選手が知っているかどうかは、メンタルの浮き沈みをなくし、気持ちを安定させてプレーするのに重要だと感じます。
バッテリーの平均安打数
このデータからだと、ピッチャー・キャッチャーが打つから勝つのか、勝っているときにピッチャー・キャッチャーが打つのかどうかまではわかりません。
ただ守備側からすると、ピッチャー・キャッチャーの気持ちを乗せないように注意を払う必要はありそうです。
ケース別の得点確率
このデータは感覚通りで、当然のデータだと思います。
このデータから、守備時には暴投(ワイルドピッチ)・捕逸(パスボール)などによる無駄な進塁を防ぐことが重要なことがわかります。
キャッチャーは、難球処理(ボディストップ)の練習に繰り返し取り組んでいきましょう。
まとめとして
今回紹介したデータは、本書の中のごく一部です。
もちろん同じデータでも、見る人が変われば、データのとらえ方も変わってくると思います。
また、冒頭にも書きましたが、これらのデータ以外にも、基本的な技術や知識、一般的な配球論、練習方法、練習メニューなども紹介されていますので、高校球児の皆さん、特にキャッチャーをやっている球児は、ぜひ読んでもらいたいと思います。
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