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【指導観②】〜高校野球における“三盗”の指導〜
近況になりますが、先週末に私の大学時代の友人が監督を務めている学校の野球部の練習にお邪魔しました。
現任校では異動してから野球部の顧問ではなく、特に今年度は毎週末のように活動するような部活動の顧問ではないため、時々、ご縁のある他校の野球部を見学させていただき、私自身の指導者としての知見を深めています。
この日の練習メニューに関しては、他校さんなので紹介するのは控えさせてもらいますが、練習の最後に監督から「三盗(2塁から3塁への盗塁)の指導をしてもらいたい」とのことでしたので、僭越ながらポイントを選手たちに指導させていただきました。
そこで今回は、私の中で“三盗”の指導で大切にしていることを、すべては紹介できませんが、ヒント風に紹介させていただきます。
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盗塁しやすい状況
(盗塁の成功率を高めるには)
まずは、前提条件としてです。
どういう投手、打者、球種、コースの時に盗塁しやすいのか考えてみましょう。
これは二盗でも考えるべき内容です。
2塁走者が三盗を試みるとき、
◯ 右投手と左投手のどちらの方が盗塁しやすいでしょうか?
(どちらが走者を見にくいか?)
◯ 右打者と左打者のどちらの方が盗塁しやすいでしょうか?
(どちらか捕手が送球しにくいか?)
◯ (右打者の)インコースとアウトコースのどちらの方が盗塁しやすいでしょうか?
(どちらか捕手が送球しにくいか?)
◯ ストレートと変化球のどちらの方が盗塁しやすいでしょうか?
この4点をまず考えましょう。
そうすると、盗塁しやすい状況が見えてきます。
以下の表は、私が作成した“三盗しやすさ”の“早見表”です。
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申し訳ありませんが、今後野球部の顧問に復帰した際に相手校にすべてバレてしまいますので、【指導観①】〜高校野球における“配球”の指導〜同様、詳しい内容は伏せさせていただきます。
実際に早見表を公開するのは、またいずれ野球部の顧問に復帰した際の、将来の教え子たちのために秘めておきます。
ですが、内容はシンプルで、野球をやってきた方々なら“当たり前”に感じることですので、ぜひご自身で内容を考えてみてください。
まずはこのように、盗塁を試みる前の前提条件として、盗塁を成功しやすい状況であるかどうかを見定めます。
もちろん、これに投手のクイックのスピードや、捕手の肩の強さ、送球の安定感、自分自身の走力なども考慮して考えます。
球種に関しては、投手の投球や捕手のリードの傾向、ストライク・ボールのカウント、前の投球の球種などから予測していきましょう。
「ディスボール(次の投球で必ず盗塁せよ)」とサインを出す指導者(監督)さんでしたら、これらを考えて“盗塁させるかどうか”の判断を常にしていることでしょう。
「走ってもよい」「行けたら行け」という形のサインが出されるチームでしたら、選手自身がこれらのことを考えて、成功確率の高い状況で、思い切って盗塁を試みましょう。
三盗の指導
(三盗の成功率を高めるには)
教えるやり方は1つの“型”だけ
前回の【指導観①】〜高校野球における“配球”の指導〜でも述べましたが、私は指導の中で、
三流は「簡単なことを、難しく」考える。
二流は「難しいことを、難しく」考える。
一流は「難しいことを、簡単に」考える。
という言葉を大切にしています。
難しく(こと細かく)指導しても、すべてが定着するわけではありません。
難しいこと(さまざまな内容)をできるだけ簡単にコンパクトにまとめ、指導内容をシンプルにして、普段の実戦練習や練習試合で反復練習できるようにし、大事な公式戦で頭の中から引き出せるようにしていきたいと思っています。
三盗は、こと細かく指導すれば、状況に応じればいろいろなスタートの切り方のパターンが出てきます。
ですが、私の“三盗”の指導で伝えることは、シンプルです。
これもあくまで1つの“型”であり、必ず守らなければいけないものではありません。
その“型”から派生し、選手たちは守備側の反応などを見て、リードの取り方などを臨機応変に変更してよいとし、最終的には選手らに委ねます。
このような“型”を作っておくことで、チームとしてやるべきことが明確になることが良い点です。
“9mリード”をとる
では、本題に入りますが、三盗の成功率を高めるには、まずは投手が投球動作に入る直前までに2塁ベースから3塁ベースに向かって9mの第2リードを取ることです。
9mのリードを取った位置からですと、
◯ 投手の投球
→捕手の3塁送球
【盗塁】
◯ 投手からの2塁牽制球
→二遊間からの3塁送球
【牽制球を誘い出しての盗塁】
◯ 捕手からのリターン(2塁牽制球)
→ 二遊間からの3塁送球
【牽制球を誘い出しての盗塁】
のほとんどが、タイム計測をすると、だいたい間一髪のタイミングになります。
投手にバレて、プレートを外され、追いかけられない限り、3塁ベース上で勝負できます。
次に出てくる疑問として、「9mの位置をどのように把握するのか」という問題が出てきます。
もちろん経験からの肌感覚でわかれば、それがベストですが、野球のグラウンドには目印になるヒントがたくさんあります。
正解は言いませんが、2塁走者が中心視で投手に注目しながら9mの位置までリードをとると、周辺視野で視界に入る範囲に目印になるものが出てきます。
できる方はぜひご自身のグラウンドで、9mの位置から投手に注目しつつ、グラウンドの周りの景色を見てみてください。
私の考える目印ではなく、ご自身の中での目印を見つけてみてもよいと思います。
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“9mリード”をするタイミング
話は、次の展開に移ります。
「2塁ベースから3塁ベースに向かって9mの第2リードを取る」と述べましたが、“その最中に牽制球が来たらどうするんだ”というご指摘が入ります。
2塁走者が他の塁の走者と違う点は、
① ベースに野手が入っていないこと
(二遊間が定位置を守っている)
② 右投手・左投手ともに走者の動きがよく見えること
の、大きく2点です。
この2つの特徴を生かして考えると、
① 確実に2塁ベースに野手がいないとき
(二遊間が走者への警戒を解き、ベースから大きく離れて投球に備えて定位置に移動したとき)
② 投手が自身の投球に集中するために打者の方へ視界を向けたとき
(走者が見えない方向を向いたとき)
であれば、9mの位置までリードをとることができます。
その9mの位置まで助走をつけていき、投球の動き出しや、打者へ意識が集中したタイミングに合わせてスタートを切る、という流れです。
二遊間の動きの確認
では、次に、
「① 確実に2塁ベースに野手がいないとき」
と
「② 投手が自身の投球に集中するために打者の方へ視界を向けたとき」
を、どのように把握するのかという話です。
まずは、「① 確実に2塁ベースに野手がいない」状態をどう把握するのか、です。
私のオススメは、リードを後方に取ることです。
3塁ベースまでの距離が遠くなると感じるでしょうが、右斜め前に向かって助走をつけていき、9mの位置あたりで2・3塁間の直前上らへんに来るようにすれば大丈夫です。
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9mのリードを取ると、三盗で走る最短距離は最短(2・3塁間の直前上)で18.431m(=27.431-9)になります。
その直前上の2m後ろからスタートすると、三盗で走る距離(=縦2m・横18.431mの直角三角形の斜辺)は、三平方の定理で計算すると約18.54mになります。
直前上のラインから2m後ろからスタートしても、走る距離の差はたった10cm程度です。
走るタイムにしたら、ほんの一瞬“0.0何秒”です。
この一瞬“0.0何秒” ・10cmにこだわるかこだわらないか、は指導者や選手ごとに考え方が変わってくるところでしょう。
最初から2・3塁間の直前上にリードをして、サイドステップで第2リードを取るよりも、スタートもバックもしやすいと思います。
話は戻りますが、後方にリードを取ることでメリットが2点あります。
1つ目は、中心視で投手に注目しながら周辺視野で“二塁手”が視界に入ることです。
これにより、“二塁手”が牽制球のベースカバーに入る動きをすれば、走者自身の視界に入るため、反応して帰塁することができます。
2つ目は、直前上にリードをしているよりも“遊撃手(ショート)”がベースカバーに入りにくくなります。
では、後方にリードを取ることで“二塁手”の位置を自分で確認できることはご理解いただいたかと思いますが、問題は“遊撃手”の位置をどのように把握するかです。
“遊撃手”が自分の後ろでガサガサと動いているのはわかっても、どの位置でどういう動きをしているのかは、自分ではよくわかりません。
ここからは“チームプレイ”です。
すべての正解は言いませんが、簡単です。
2塁走者が、中心視で投手に注目しながら、視界に入る“チームメイト”を探してください。
そのチームメイト(たち)のジェスチャーや声の指示で、“遊撃手”の位置は把握できます。
そして、二遊間が走者への警戒を解き、ベースから大きく離れて投球に備えて定位置に移動したときに、9mの位置まで助走をつけていくように第2リードをとっていくわけです。
投手に気づかれてもベースに二遊間が入っていないため、プレートを外すことしかできないので、心配はいりません。
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投手の首の動き
次に「② 投手が自身の投球に集中するために打者の方へ視界を向けたとき」に関して、です。
二遊間が走者への警戒を解き、ベースから大きく離れて投球に備えて定位置に移動していき、あとは投手が打者に集中したところでスタートを切ります。
走者が見えない打者の方向を向いたときがチャンスです。
高校生の投手が2塁走者を目で牽制する回数は、ある程度のクセが出ます。
試合中に観察して、早い段階でクセを盗みましょう。
実際にグラウンドで選手たちに指導する際には、投手が目で牽制したり、打者に集中したりする際の、投手の首の動きの点に関しては、細かく深く指導します。
ここがポイントで、この首の動きを理解すると、2塁走者が心理的優位になって“勇気”が出てきます。
この点に関しては、言葉で説明するより体感した方が早い話なので、申し訳ないですが、割愛します。
守備側の対策として、たまに2塁走者を目で牽制しながら投球をするトリッキーな投手が出てきますが、普段からそのような投球を練習していない投手は、投球のリズムや制球が崩れていくことが多いです。
走塁は、相手投手にプレッシャーをかけることも重要な役割です。
そういう時は打者に任せて、失投をしっかりと打ってもらいましょう。
走者を見ながら投球する投手も、走者を見ておきながら心の中では牽制せずに投球すると決めていることが多いので、スタートを切ればボークを誘うこともできるかもしれません。
これまで述べてきたように、①と②の2つの条件が揃い、9mの位置まで助走をつけていくように第2リードを取ることができれば、三盗の成功率は格段に上がります。
「走ってもよい」「行けたら行け」という形のサインが出されるチームの球児は、ぜひチャレンジしてみてください。
もちろん、試合展開などはしっかり考えて、チャレンジしてくださいね。
相手を惑わし、掻き回す面白さがわかってきて、味をしめるようになると、走塁がより楽しくなってくると思いますよ。
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まとめとして
これまで述べてきたように、前回の【指導観①】〜高校野球における“配球”の指導〜と同様に、三盗の指導に関する私見を述べました。
この考えに賛同してくださる指導者の方もいれば、受け入れなれないという指導者の方もいらっしゃると思います。
どの考え方が正解だ、ということはないと思います。
また、配球と同じく、結果論で語られることが多い盗塁ですが、その正解・不正解は結果論だけで説明できるものでもありません。
盗塁(三盗)の面白いところは、相手チームのクセを見抜く“観察眼”が養われていくこと、チーム全体として相手のスキを突くようになっていくこと、チームワークが良くなっていくことです。
野球というスポーツは、少ないアウトでベースという陣地を奪っていき、最後はホームベースを奪う“陣取り合戦”です。
これも配球同様、野球の醍醐味でもありますので、野球界に携わる指導者の皆さんで、それぞれの手法で、その面白さを伝えていきましょう。
高校球児の皆さんも、試合の中でその“駆け引き”をぜひ存分に楽しんでください。
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